エイリアンvsプレデター Level 2   作:ムラムリ

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 プレデターは、プレデリアン達は、そして生き残ったゼノモーフ達が、女王が行動するまでの数日間に行ったのは、女王から全ての生命を遠ざける事だった。

 それには、遠方にある他の群れも含まれていた。

 プレデリアンの女王を殺す為に協力して欲しい、だなんてお願いをした訳じゃない。

 プレデターは襲い掛かるゼノモーフを一匹残さず刈り取りながら、女王の首に刃を突きつけて立ち去るか死ぬかと脅迫した。

 プレデリアン達は幾度と女王を含む群れとの死闘を経ており、それらを抑え込めるゼノモーフは存在しなかった。

 今でも震えるばかりで何も出来ないゼノモーフは、きっとプレデリアンの女王の暴力を本当に間近で見てしまったのだろう。それを群れの近くに置いていけば、そこにあった群れは近い内にもぬけの殻になっていた。

 そして、運も味方したのだろう。

 プレデリアンの女王が獲物を喰らおうと駆けた方角にあったのは、高低差の激しい荒れ地だった。

 そこに陣取っていたゼノモーフの群れは既に卵も含めて残っている気配はなかった。

 残るのは、唐突に姿を現した巨大で禍々しい姿の女王に対して、崖をひょいひょいと登って逃げていく野生動物だけであった。

「…………」

 もう既に、ローヤルゼリーは殆ど消費してしまった。

 この崖。飛び越える事はこの身体であれば可能ではあるが、エネルギーを強く消費する。

 ……この崖を登って降りてを繰り返して野生動物を数匹喰らったところで、収支は良くてゼロと言ったところだろう。

 だが、更に先へと向かうにも、もう身に残るエネルギーも、ローヤルゼリーにも余裕はない。

 加えて、ゼノモーフが居た痕跡はどこにでもあれど、やはりゼノモーフが近くに居る気配は全くと言っていい程に無い。

 力だけでは解決出来ない事がある。

 その事実を、僅かながらでも女王は悟り始めていた。

 

 そして、その夜。

 どうにか空腹を癒やしたものの、一時凌ぎ程度にしかなっていない歯痒さを噛み締めていると。

 殺気を感じて尾を振り回した。

 カァンッ!!

 弾き飛ばしたのは、ゼノモーフの骨と尾を使って作られた槍。

 ーー殺してやる。

 湧き上がってきたのはどす黒い殺意。

 この苦難を楽しもうだなんて、もう思えなかった。こんな歯痒さを、力でどうにもならないような苛立ちは、望んでいない。

 捕らえたらどうしてやろうか、なんて事ももう女王の頭には微塵もなかった。

 生かしたままに延々に苦痛を与え続けるなんて悠長な事をするよりも、踏み砕いて、踏み潰して、踏み躙って、肉も骨も全てを粉々にしたくて堪らなかった。

 ーー随分と苛立っているじゃないか。

 冷静なままに返すプレデターの言動が、更に女王を苛立たせた。

 

 この星には月は無い。完全な闇夜に、しかしゼノモーフの因子を取り込んで向上した五感は、女王の様相を色濃くプレデターへと伝えていた。

 正直なところ、未だに足は竦んでいた。ゆらりと立ち上がり、振り向いたその女王が、歯を剥き出しにしながらぼたぼたと血混じりの涎を垂らしているのを感じてしまえば、武器も捨てて一目散に逃げ出したい衝動に駆られてしまう。

 その牙に食い千切られれば、尾で一思いに串刺しにしてくれれば、それも恐怖を感じ続けるよりはマシなのではと思ってしまう。

 だが、出来ればもう少し飢餓にさせたかったにせよ、この場所は戦いを挑むのに理想的な場所の一つだった。

 その巨体でこの地を飛び降りする事が出来ようとも、それにどれだけのエネルギーを使う? 着地を失敗した時点で身体は砕けてしまうだろう。

 そして女王は、プレデターに距離を詰めるよりも前に、残していたローヤルゼリーを全て口へと含んだ。

 ……耐えろ。その巨体は、やはり燃費が悪い。それは、この女王の行動が証明している。だから、耐えろ。

 ごぐり。

「ギイィグガアアアアアアアアッッ!!!!」

 ビリビリと体に響いてくる咆哮。身体の心底から震え上がってしまう。

 しかし、その咆哮には淀みがある事も感じていた。本調子とは程遠い、隠しきれない空腹。

 プレデターは槍を握り、そして崖から飛び降りた。

 女王がこの地から逃げる事は、その矜持の為にあり得ない。だから、仕掛けるのは耐久戦。女王の体力が尽きるまで、ひたすらにこの地で逃げ続ける。

 プレデリアンがプレデターの因子を受け継ぎ、狩りへの欲求を、誇りを抱いて元来の群れの形を保てなくなったように。

 プレデターがゼノモーフの因子を受け継がなければ、そんな作戦など実行する事はおろか、思いつく事もしなかっただろう。

 その影響を、プレデターは自覚しながらも。

 そんな過去の自分を馬鹿らしいと切り捨てた。正攻法で勝てない相手に誇りを抱きながらただ死んでいくより、どんな手段を使おうとも勝とうとする方が高尚ではないだろうか?

 今はそう信じていた。

 

*****

 

 女王が続いて崖から飛び降りて地上を見れば、そこにプレデターは居ない。

 どずんっ!!

 派手に地面に着地しながらも、今や四つの手を使って衝撃を緩和しなければ足はどうにかなってしまいそうだった。

 振り返れば、崖のすぐ下でプレデターは槍を突き立てていた。

 ーー捕まえてみせろよ?

 余りにも安い挑発。だが、女王は今まで挑発などされた事など無かった。

 そもそも、生まれながらに産みの女王からも恐れられていたその個は、下に見られた事すらなかった。

 再び崖の上へと戻ったプレデターに、冷静さを失った女王は全力で崖を跳び上がる。手足を強引に岩肌に突き刺して、その身を支えさせながら。

 そして再び崖を登った時には、プレデターはその高台の上からは消えている。

「ギガガガガガッ!!」

 ーー臆病者がッ! どこに居るッ!

 当然プレデターは答えない。

 ただ。その巨大な頭殻は受信器でもある。巣の中に居ようとも、数多の子供達と意思疎通を可能とするそれは、集中すれば辺りの生物の存在を感知出来る。

 ……そこか?

 崖下で僅かに動いているそれ。だが、如何に苛立っていても、エネルギーの浪費への危機感が飛び降りるのを留まらせた。

 下を覗けば、そこに居たのは腹の足しにもならなさそうな小動物が足を折られている。

 じゃり、と後ろから音が鳴る。

 自分が休息をし始めてから、近くでじっと隠れていたのだろう。走る事に特化した形になっていた子供達が崖上へと上がってきていた。

 反逆を志したのは想定内だ。だが、それ以上に。

 ーーあの子種と組んだのか?

 思わず女王は聞いていた。それに対して、子供達は何も答えない。だが……そんな屈辱的な事に対して否定もしなかった。

 ーー……もういい。

 そこまで形振り構わなければ自分を殺せるとは思えなかった事実よりも、それでもその選択肢を取った事にどこか酷い落胆をしていた。

 足を進める。尾の範囲内に届く直前、子供達は広く散開したかと思えば、そのまま逃げていった。

 ……は?

 そんな逃げ腰に唖然とし、そして気付く。

 どこまでも苛立たせて、どこまでも飢餓へと追い込むつもりだ。まともに戦うつもりなんて、微塵もない。

 腹が立つ腹が立つ!

 一匹を追いかければ、崖から飛び降りた。女王は更に追いかけて再び飛び降りる。

 先程のプレデターの事を鑑みて、その一匹が崖に張り付いているのを確認すると同時に尾を振るった。

 どずずうぅっっ!!

 着地がやや疎かになる。四つの手を使ってやや不格好な姿勢。全身に痺れが走る。

 だが、そんな事よりも。

 避けられた……? ……避けられた?

 肉を切り裂く感触もなければ、落ちても来ない。

 頭殻から伝わって来る感覚は、未だ元気に崖に張りついているプレデリアン。だが、切ろうとした位置よりかなり遠くまで動いていた。

 単純に、崖を這いずって尾の一撃を避けたのだ。

 それ程の敏捷性を手に入れていたとは思わなかった。

 そしてそのプレデリアンは崖の上へと戻ると同時に、他のプレデリアン達も自分を覗き込んでくる。

 苛立ち。空腹。もう既に飢餓に近い程の空腹。

 加えて、新たなる敵。未知の力。

 あれ等を捕食する事は、この場所では子種を捕えるよりも難しい事だろう。

 ……一回、逃げた方が良い。

 辛うじて残っている冷静な部分がそう告げてくる。

 この場所でこの肉体を満たす事は出来ない。体力をひたすらに削り取ろうとしてくるその意志に、今の己は対応出来ていない。

 だから、一回逃げてエネルギーを補給するべきだ。

 ……そんな事をこの己がするとでも?

 ふざけるな! ただ空腹を狙うだけの策を練られただけで、この己が惨めな敗北を認めろというのか!?

 全く。微塵も。

 その選択肢はやはり、選べなかった。この現状を打開する策を思いつく事が出来なくとも。

 ただ……試せる事は色々とある。

 じゃり、と音がした。

 

*****

 

*****

 

 女王はこの星の外から来た自分達に対して、所持している武器などに興味も抱かなかったのか。はたまた、その外の世界に興味も抱かなかったのか。

 きっとそうだろう。腕利きのプレデターが何体居ようが、正攻法では勝ち目の無い肉体を持っているのだから。外からやって来たプレデターという種を捕らえて苗床どころか子種にして繁殖させる事までやっていたのだから。

 また、女王になるまで、集団の中の個として戦った事もあるだろう。

 女王となってからあの群れを成り立たさせるまで、プレデターや反逆を翻した子供達を迎え撃った事もあるだろう。

 だが、こうして狡猾に……ゼノモーフが手強い外敵に対して、手を変え品を変え攻め立てていくような行為への対応はした事はなかった。

 それは、もう断定して良い事だった。

 幾ら頭が良かろうが、知識や経験といったものがなければそれを活かす事は難しい。考え抜いたものが机上の空論であるかどうか分からない。

 女王の策は、結局のところプレデターの想像の域を出る事はなかった。

 

 ただ、それでも。

 あれから数日が経ち、女王が窪地に座してびくとも動かなくなって一日以上が経とうとも。

 プレデリアン達に、プレデターに刻まれているその絶大な力というものは、近付くのに対して恐怖を覚えさせた。

 飢餓に陥っているのは間違いない。だが、その上で近付くのを待っているのも間違いない。

 窪地の上からプレデリアン達やプレデターが覗いても、挑発しても、まるで休眠しているかのようにただただじっとしていた。

 これは、どうしようもなくなった女王なりの最後の策であり、そして挑発だった。

 女王は逃走も選べなかった。個としての策で上回る事も出来そうになかった。

 だが、このまま餓死するまで待つ事もないと理解してもいる。この首を獲りたいのだと理解されている。

 どれだけこの己が弱るまで待つつもりだ? どれだけお前達は臆病者なんだ?

 そういう問いをプレデリアン達とプレデターに投げかけている。

 ……女王は、あの場所から動く事はもう無いだろう。

 走る事に特化していないプレデリアン達も、段々と集まって来始めている。

 …………。もし屠る事が出来たとしても、その次の瞬間、こいつらに囲まれている事になる。

 難しいな。とても難しい。それこそ自殺行為とほぼ同義だ。

 だが、今、ここにあるのは。子種だからどうだというような、そんなちっぽけな事柄じゃない。

 手の届きそうな場所まで引き摺り下ろせた事への、そしてそれを引きずり落とそうとする事への覚悟。そして高揚。

 どの形のプレデリアンであろうとも、子種のプレデターであろうとも。

 逸る気持ちを誰もが抑えながら、等しく首を刈り取ってやろうと意気込みながら、女王にいつ挑むかを見極めていた。

 

*****

 

*****

 

 更に二日。女王は本当に身動き一つもしない。遠目では呼吸しているかすらも分からない。

 だが、それでも一人飛び降りて挑んだところで、幾ら飢餓だろうと勝てる見込みはとても薄い。

 そして勝てたとしても、周囲に臨むプレデリアン達を相手にして生き延びられるかと言われれば、それも不可能だ。

 だから、飛び込む時はプレデリアン達と合わせなければいけなかった。

 それを協調しているだなんて思いたくない、でもそれは必要不可欠だ、だから最終的に勝利をもぎ取る為には仕方のない事だ、そう言い聞かせていた……のだが。

 プレデリアン達の中でも、高揚が苛立ちへと変わりつつあるのが感じられる。

 けれど、それでもプレデリアン達は軍隊ではなかった。ここに居る全てが、その首を、唯一の名誉を欲している。そしてプレデリアン達も一匹ではどう足掻こうとも殺せない事を理解している。

 苛立っても未だ仕掛けないのは、不安の裏返しだ。

 もう十分に飢餓に至っただろうか? 総力を上げて、その中で自らが首を狩れるまでに衰えているだろうか?

 長年その女王に仕えてきたプレデリアン達であろうとも、それは見極められていない。

 プレデターもそれは同じではあるが。

 流石にずっと起きてはいるはずだろうし、この場所に来て包囲を敷いてからは、女王は水すらも飲んでいない。

 見た目は変わっていない。だが、変わり果てた、正に瀕死な女王を殺したところで何の名誉を得られると言うのだ?

 一度離れて適当に獲物を狩る。

 血肉を食らって口を汚しながら腹を満たす。

 その口を拭う事すらせずにプレデターは歩いて登って戻る。

 そしてそのまま、いつも通りの足取りで未だ迷い続けているプレデリアン達の隣を横切って、窪地へと降りた。

 女王が、僅かに顔を上げた。

 枯れて久しい涎が、再び口から垂れ始めた。




プレデターの誇りってどういうもんなんだろって考え直すと、
不意打ちとかも普通にやるから、武士道的なもんじゃないよなーっていうのがまず来て、
じゃあどういう表現がしっくり来る? って思ったら、
身内で条件揃えて、その中でランキング競ってるっていうのが一番だった。
ソシャゲのマラソンイベントかよ。

残りは多分、
12、good end, bad endで計3話になります。
一番書きたいのは勿論、bad endです。
ソシャゲのマラソンイベントの誇りを今度こそ再起不能までに粉々にしたいなーっていうね。
どうして私の性癖、ここまで狂ったんでしょうね。

Predator: Hunting Grounds, Aliens: Fireteam

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