エイリアンvsプレデター Level 2   作:ムラムリ

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なんとか書き上げました。


Good End

 周りのプレデリアン達は、立ち尽くすばかりだった。

 以前のように怒りのままにプレデターに襲い掛かって虐げる事もない。

 そんな中、プレデターは戦利品としては大き過ぎる頭蓋ではなく、尾の先を切り取って手にした。

 死して尚、然とある重量と、切っ先の鋭さだけで体が震えてしまいそうな。

 ただ、槍の穂先として使うには大き過ぎる、重過ぎる。武器として使うのならば、そのまま大きな剣として扱う方が相応しそうだった。

 顔を上げる。プレデリアン達は、自分が唆した時と同等なように固まったままだった。

 ……俺達は、狩猟への欲求を本能的に抱いている。

 ただ、それだけで宇宙の中でも優れた種族になった訳じゃない。

 過去から知見を、教訓を受け継ぎ、そして昇華させていく事。

 それを弛まず続けてきたからこそ、宇宙を駆ける狩猟が可能となった。

 この俺もそうして心身を鍛えてきた。自らの歴史を知り、どのようにして生きる事が真に誇り高きプレデターと成れるかを学ぶと共に、自問自答を重ねてきた。

 狩猟への精神の持ちよう。受け継がれて成熟した文化。

 女王の下で抑圧され続け、やっと解放されたばかりのプレデリアン達には、そのようなものは微塵もなかった。

 狩りへの欲求はあれど、それは幼稚なものでしかなかった。思い通りに事が運ばなかった時、どうしたら良いのか分からず固まってしまうように。この子種が自分達より優れているという事実を認められていないように。

 けれど幸いなのは、それでも僅かながらにも、女王と戦うまでに時間があった事だった。

 今のままじゃ倒せない女王に、どのように立ち向かえば良いのかという思考する時間は、少なからずプレデリアン達の精神を成長させていた。

 子種が女王を倒してしまったという事実に対して、それを否定したり横取りしようと襲いかかってこない位には。

 少なくとも、流刑にされるような同族よりは矜持というものに真摯だった。

 そんなプレデリアン達の間をすり抜ける。それでもこんな囲まれている状態で襲いかかられたら一溜まりもない事に内心冷や汗を掻きながらも、平静を努めながら。

 ……きっとここで怯えた素振りを見せたら、その途端に襲いかかってくる。

 そう確信しながら歩くのは正直なところ、女王と戦っている時よりも緊張していた。時間の流れが酷く遅く感じられた。

 それでも群れの間をどうにか通り過ぎて。

 ……ほっとしたら駄目だ。それでも襲いかかってくるかもしれない。

 そのまま窪地から跳躍して高台へと登る。そして振り向けば、プレデリアン達が一斉にこちらを見ていた。

 思わず体が震えたが、よくよく見てみれば誰も憎たらしいと言うような強い負の感情までは、こちらには向けてきていなかった。

 そんな様子に足を止めてしまう。

 ……。

 自分は子種から脱却した。女王とはまた違った強さを持つ、正々堂々と倒すべき敵と見做された。

 そう、感じられた。

 踵を返し、この場所を去る。

 流石に疲れがどっと出てきていた。

 いつからの疲れだろう。もしかしたら、女王に反逆すると決めた日からずっとあった緊張かもしれない。

 そして今、この近辺には、プレデリアン達以外にはゼノモーフは居ないと言っても過言ではない。

「……休める場所を探すか」

 いつ振りか、緊張の無い声でプレデターは独り言を呟いた。

 

*****

 

 重装備のプレデターが多数のゼノモーフと対峙していた。

 プレデリアンと同等な巨躯を鎧と武具で纏うその姿は、見た目としては身軽さを微塵も感じさせない。だが、その巨体の成せる技か、見た目以上の俊敏さを伴って襲い掛かるゼノモーフ達を返り討ちにしていた。

 両肩に備えるプラズマキャノンは並のゼノモーフを逃さず四散させ、近寄れたとしてもその体捌きは刺突はおろか、体に手を掛ける事すらも許さない。酸を飛ばして鎧を溶かそうとも試みたが、防具がその対策をしていない訳もなく、また隙間から染みて傷になる事もない。

 こんな試練に臨むくらいだ。武器の扱いにも長けており、両腕に備えるリストブレイドと槍を同時に振るう事で、屍の山を効率的に積み上げる事も可能としていた。

 ……これだけなら、そう恐れる事はないな。女王も倒していこうか。

 そんな余裕も段々と芽生えて来る。

 ただ、途中で異変に気付いた。

 ……誰か、他に居る?

 遠くでも戦闘が起きているようだった。しかも……私よりも迅速に殺してないか?

 全身に数多の武装をしている私よりも、一体どうやって?

 それにそもそも、ここ最近でこの試練を突破した奴は居ないと聞いているのだが。

 試練とは別に個人で来ているのだろうか。いや、こんなゼノモーフ塗れの場所に飛行艇で来るなんて、この星に閉じ込めてくれと言っているようなもんだ。

 傍に逸れた思考。集中が薄れたのがゼノモーフにも分かったのか、同時に数匹が襲いかかって来たのに反応が遅れた。

 咄嗟に振るった槍の柄を掴まれる。同時に蹴り飛ばし、リストブレイドで胸を貫くが、それでも必死にしがみついてきた。

 くそ。とにかく、こいつ等を片付けてからだ。

 プラズマキャノンで頭を弾き飛ばし、力づくで引き剥がしながら体勢を立て直す。

 顔を持ち上げれば、今が好機だと言わんばかりに一気に襲いかかってきた。

 

 三割程を殺したところで、ゼノモーフ達は撤退していった。

「……油断してしまった、か」

 槍が少し曲がって収縮出来なくなってしまったのに加え、プラズマキャノンの一つが破壊されてしまった。鎧も一部が強く削れて耐酸の分厚いコーティングが剥げてしまっている。

 手痛い損害だ。

 だが……それよりも気になる事は。

 その原因になった、自分以上の速さで屍の山を積み上げていた同胞。

 鎧もヘルメットすらも身につけていない裸でありながら、呼吸に苦労しているような様子は全く見られない。

 その代わりに身に纏っている蔦には、ゼノモーフの肉体……しかも女王の肉体を加工して作ったような武器が幾つか。そして手に持っているのは、女王の尾よりも一際大きな尾を使った剣だった。

 それだけで強さは見て取れる。悔しいが、私よりも強いのは確実だろう。

 ……けれど。

「あんた、その体に何があったんだい?」

 ヘルメットは、それを同族と見做していなかった。まるで……プレデリアンをゼノモーフと認識出来ないように。

「……強けりゃ、その内分かるさ」

 余り話したくないようだったが、それにしても不可解な返しだった。

「弱けりゃ、なら分かるけど、強けりゃって何さ?」

 暫くの間言葉を選ぶように悩んでから、言った。

「う、ん……。…………そうだな。強ければ、死ぬより更に厳しい地獄に落とされる。そう言っておこうか」

「……? はっきりとは言ってくれないんだな」

「余り思い出したくはないんだよ」

 ただ、推察出来る事もある。この同胞はきっと、ゼノモーフ達に一度敗北したのだ。

 そこから何らかの理由で生かされて、その身体にされ、そして反撃に出た。腑に落ちない部分もあるが、そんなところだろう。

 そうなると、私に接触してきた理由は。

「私の迎えがいつ、どこに来るかを知りたいのか?」

「察しが良くて助かる」

 伝えると、同胞は感謝の意を示してから。

「プレデリアンもここらには居る。もし会ってしまっても、戦おうだなんて考えるなよ。

 一匹だけならあんたでもどうにかなるだろうが、十匹、二十匹も相手にしたいとは思わないだろう?」

「……お、おおう」

「それじゃあな。あんたも健闘を祈る」

「え、あ、おいっ。共闘しようとかは思わないのか?」

 さっさと去っていくその同胞に、思わず呼び返した。

「…………これは助け合うような試練じゃないだろう?」

 また、言葉を選ぶような時間が。

 返答の内容もあって、お前みたいな弱者を連れていられるかよと言うような裏の言葉が見て取れた。

 ただ、それは正論でもあった。己だけの力で試練を突破しようと、この地にやって来たのだから。

「…………分かった」

 返せば、今度こそ去っていった。

「……どうしようか」

 何十体ものプレデリアン。きっと、これまで試練に臨んだ同胞達はそいつらにやられて、腹を食い破られたのだろう。

『強ければ、死ぬより更に厳しい地獄に落とされる』

 …………。

「まさか、な」

 嫌な予感を振り払うように行動を再開した。

 

 それから暫く経った後には、あの女性のプレデターの破壊された装備が転がっているのが見つかった。

 周りには他にゼノモーフ等の死体はなく、それも含めて抵抗出来たような痕跡は何一つとして無かった。

 プレデリアン達に捕らえられたのは明らかだった。

 そもそも。

「あんな重装備と腕前じゃあな」

 俺を越そうとしているあのプレデリアン達に太刀打ち出来るはずもない。

 子種は一匹たりとも居なくなってしまったから、きっと生かされたまま拘束されているだろうと思うも、今となっては別に増やす必要もそう無いだろうから、苗床にされていてもおかしくはない。

 どちらの方がマシかと問われたら、俺という子種から脱してしまった存在が居る以上、もう自由にさせる事はないだろうから……苗床になってさっさと死んだ方がマシだろう。

 冷徹に思考を巡らせていれば、そんな弱者を助けに行こうとも思うはずもなかった。

 破壊されたガントレットを拾い上げて、一部の機能だけでも使えないか試してみるが、流石に無理で再び捨てる。

 それから、空を見上げた。

「……後、もう少し」

 流石に母星が懐かしくなっていた。

 

*****

 

 時が経つに連れても、この地に他の群れのゼノモーフ達が戻ってくる事はなかった。

 あのプレデリアンの女王が死んだ事も分かっているだろうが、残ったプレデリアン達も強者揃いであり、そして今やもう、そのプレデリアンを生み出す為の苗床も無くなっている。

 広大な縄張りではあるが、攻める価値はなかった。

 しかし、そのプレデリアン達は強く結束している訳でもなかった。

 引き継がれた狩猟本能は抑えつけなければ、群れとしてそもそも形を為す事が出来ない。

 そして、反逆を決めた後に女王と成った二体は、呆気なく死んだ。

 何よりも強かった元来の女王も、数の有利と空腹に追い込むという策を正面から覆せる程ではなかった。

 そんな事を経験してしまえば、もう誰もが女王に成ろうとも思わず、そしてまた、女王を持たない群れの在り方はプレデリアン達に合っていた。

 群れの為にこの身を犠牲にする事も厭わないという考え方はプレデリアンには合うものではなかったし、そもそも外敵という脅威に怯える必要もなければ、群れである必要もそうなかった。

 誰が誰に忠誠を誓うでもない。だが、緩いながらも仲間意識はあり、志は共有している。

 そんな群れの在り方は、少しばかりプレデターの在り方に似ているように思えた。

 

 そして、その志とは、より強くなる事。あの子種だったプレデターを上回る事。

 まだ、あのプレデターに勝つには自分達には欠けているものが多過ぎる。

 そう自覚したプレデリアン達は、各々が思うがままに鍛錬に取り組んでいた。女王の抑圧から開放されたプレデリアン達は、そんな日々を少なからず楽しげに過ごしている。

 いつか、あのプレデターをまた子種へと堕とせる時が来たならば、それは今まで経験した事のない絶頂へと誘ってくれるだろうと思いながら。

 だが……それにタイムリミットがある事など、理解していなかった。望郷の思いなど、プレデリアン達の前では微塵も見せていなかったから。そして、この地にやって来たプレデターは全て苗床か子種にしていたのだから。

 

*****

 

 その日がとうとうやって来た。

 気持ちの昂りは、十日以上前から抑えきれていない。

 この試練は自分の至らなさを、矮小さを自覚させると共に、自らをより一段高みへと持ち上げてくれた。

 ただ、それでも、この星からはもう一刻も早く去りたい気持ちばかりだった。

 この地で浅い睡眠を取っていれば、嫌な夢ばかりを見る。あの巣の中で、憂さ晴らしにとひたすらに虐げられ続けた時の事や、女王の存在感だけで足が震えて止まらなくなった時の事を。

 女王を倒したというのに。子種という地位から脱却出来たというのに。それでも全てをかなぐり捨てて泣き叫んだ記憶は、この身に刻まれた恐怖は、微塵も消える事はなかった。

 昨晩も浅い睡眠の中で見た夢は、あの女王に敗北して好きなようにされる夢だった。

 ……アレに正々堂々と勝つ事を諦めたのを、俺は少なからず後悔しているらしい。

 その末路は、夢の通りに敗北しかないだろうに。ゼノモーフの因子を押しのけて主張する、元々のプレデターとしての純真な誇りは、それでもこんな形で勝利を得るくらいならば、正々堂々戦って死ぬ方がマシだと訴えているようだった。

「どれだけ鍛錬しようとも、無理だろうに」

 そう呟きながら、回収地点に立った。

 ……きっと、これから先、俺は内外色々と面倒な事に巻き込まれるのだろうな。

 ゼノモーフの因子を取り入れた事による、内面の変化。完全には混じりきっていないそれぞれの反発。消える事は無いであろうこの星での記憶。

 また、同胞達が忌み嫌う存在に近付いた事による、批判。押し付けられるかもしれない烙印。

 だから、せめて一度くらいは、何も警戒する事なく眠っておきたい。

 そう願っていた。

 

 この地の太陽が空高くに登る頃。

 光学迷彩を解いていきなり空から現れたその船は、ぱかりとその扉を開けた。

 そして、紐が降りて来る。

 地上まで降りてくるのに待ちきれず、跳躍してそれを掴んだ。

 その瞬間。

「ギアアアアアッ!!」

 遠くからプレデリアンの咆哮が響いた。

「ガアアアッ!!」

「グギガガガガガッ!!」

 運が悪かったのか、近くに数匹のプレデリアンが居たようだった。

 それらが、この星から去ろうとする自分に対して強い怒りを向けてきていた。

 ……帰りたいと少しでも思われていたならば、きっと俺はあの時、あの包囲から逃げる事は出来なかったのだろうな。

 意図して隠していた訳ではない。その偶然に、そしてもしそう思われていて、捕まっていたらという事を考えてしまうと、それだけで背筋が強く震え上がった。

 そして、プレデリアン達は捕らえようと跳躍して来た。船が持ち上がるよりも早く、より高く。

 プレデターは上へと一気に体を持ち上げた。

 戦うのは得策じゃない。登れば、すぐ下にまでプレデリアンが跳び上がって来て、紐を掴んだ。

 その紐を切る直前。

 ーー逃げるな、この臆病者がァ!!

 臆病者か。確かにその通りかもしれないがな。

 ーー元々帰る予定だったんだよ。気付けなかった方が悪い。

 ぶつっ。

 プレデリアンは喚き散らしながら落ちていった、と思いきや。

 もう数匹下から跳躍していたプレデリアンを踏み台にして、空中で再び跳び上がった。

 そのままプレデターを捕らえようと、一直線に両腕を前に突き出して。

 だが、プレデターはそんなプレデリアンに対して冷静に、女王の尾の剣を振るった。

 他のどの尾よりも重厚で鋭利なその刃は、プレデリアンの両腕すらをも容易く切り飛ばし、それでも隠し顎で最悪な接吻をしようとしてきたのを最後に蹴って退けた。

「……全く」

 緑色の血を撒き散らしながら落ちていくプレデリアンを目にしながら、胸を撫で下ろした。

 そして登りきれば、今、正に試練に臨もうとしているプレデターが出迎えた。

「降りないのか?」

 そう聞けば。

「死ねと?」

 下を覗いてみれば、もう十体以上のプレデリアンが集まってきていた。

「……囲まれてなきゃ、俺なら行けるかもな」

 そう答えれば。

「…………鍛え直す事にするよ」

 そう言って、試練を止めて船の中へと戻っていく。

 そうして、船は再び宇宙へと飛び立った。

 

*****

 

 宇宙船の中で、数多の手続きをこなしていく。

 当然の如く、もう死んだ扱いになっていたが、実は生きていたという事はプレデターにとってはそう珍しい事でもないので、手続きはそこまで煩雑にはならない。

 ただ、その途中で自分の生体認証が効かなくなっている事に気付いた。

「だよな」

 もう既に自分がただのプレデターではない事は、すれ違っただけの同胞にも分かられているようで。

 試練をやめたプレデターが聞いてきた。

「あんた……あのプレデリアン達とただの敵同士では無かったんじゃないか?

 あそこまで執着するのは、何かおかしいように思えたんだが」

「……そうだな」

 女王の尾の剣を手に持って、眺めながら続けた。

「色々とあったが……もう二度とあの星には降りたくないね」

 自分でも想像以上に辟易とした声が出る。

「……苦労したんだな」

 それ以上は聞いては来なかったが、船で働くプレデター達はもう既に、自分に対して精密検査を行おうとしていた。

 これから色々と問いただされる事になる。

 プレデターは聞いた。

「ひとまず……どこか寝れる場所はあるか?」

 そう聞けば親切にそこまで案内してくれて、一人にもしてくれた。

 窓から外を覗いてみれば、見える宇宙の景色の中で、そのゼノモーフが蔓延る星がどこにあるのかも分からなかった。

 武器を全て置いて、ベッドに横になる。

「あぁ……」

 一気に眠気が襲ってきた。

 これだけ安心して眠れるのは、いつ振りの事だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び女王の夢を見た。

 捕らえられた後、踏まれて、土下座を強要された時の事が鮮明に夢として出てきていた。

 目が覚めた時、体はあの時と同じ程に震えている。

 そして、気付いた。

「……そうか、俺はもうずっと」

 死ぬまであの女王に屈服したままなのか。

 プレデターとしての純真な意識が、正々堂々と倒さなかった事に後悔を覚えているとか、そんなちっぽけなものじゃない。

 単純に、あの女王に俺が追いつけることはない。正々堂々と戦える程に俺が強くなる事はない。

 それを確固と刻まれたのだ。

 外からノックが響く。

「起きていますか? 貴方の身体を検査したいのですが」

「ああ、行く」

 身体を起こして部屋を出る。

 ただ、あの女王より弱い存在になら。

 もう、怖気づく事などないだろう。




ハーメルン的にはgood endの方が需要あって、
pixiv的にはbad endの方が需要あるような予感がしている。

Predator: Hunting Grounds, Aliens: Fireteam

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