ゼノモーフの因子を取り入れた肉体に慣れる事は勿論、武器を手に持ち自身の培ってきた経験、技術を底上げ出来た事までは実感を持てるようになった。
ただ、それだけでプレデリアンの女王に勝つ事が出来るかと言われれば、否、だ。
プレデリアンの巣窟に戻った後には、いつも通りに槍を渡す。それから虚ろな顔をする同族を目の前に子種としての役目を果たしながら、プレデターは脳裏でその女王の事を思い浮かべる。
植え付けられた恐怖は、未だ強く体に根付いている。思い浮かべるだけで、命の危険がその雄が生存本能に駆られる程だ。この地下に入っただけで自我を奪われる程ではなくとも、女王には逆らえないように仕組まれているその因子は、完全に抜け落ちる事もないだろう。
しかし、それは武器にもなる。
外に出て、自我を取り戻したプレデリアン達と戦いを共にして、それを確信していた。
プレデターの本能として存在する、本能的な狩りへの欲求、向上意欲。それは確かにプレデリアンにも引き継がれている。
そんなゼノモーフが群れとしての繁栄、安寧に身を捧げるだけの一生に満足出来るか? 自ら女王となりたい者も居るだろう。
誑かせば、多少なりともその意欲に心が揺れるプレデリアンが居ないはずがない。
ただ、それは女王と共闘してくれる、自分の味方になってくれるという意味でもない事を理解していた。
最良でも、結果的に女王を倒す目的が合致するだけだ。
……厳しいな。
結局のところ、この敬意とも呼べる程の恐怖を身に抱いたままに戦う事からは逃れられない。
それは、無謀か、挑戦かと問われれば、無謀に近い。
だがしかし、もう選んだこの道から外れる事も出来ない。このプレデターという優秀な苗床を欲しがっている他の群れ達には、この巣のある程度の構造も、保有している苗床の数も、プレデリアンの数も教えてしまっているのだ。
最後に教えていないのは、この巣を攻めるのに最も重要な、この巣の入り口の場所のみ。それさえ教えてしまえば、周りの群れが一斉に効率よく、攻め込んで来る事だろう。
そしてそうなった時に自分がまだこの巣の中に居たのならば、自分はそれに対峙する事もなく疑念を抱いた女王によって処刑される事だろう。
無慈悲に、誇り高き死から最も遠く離れた死に方で。
行為を終えてから、プレデターは休む事にする。
ゼノモーフの粘液で固められた壁の窪み、そこに体を丸めて目を閉じる。小さい呼吸で、精神を落ち着かせた。
だから次に掃討に出た後には、この巣の入り口を教えた後には、もうここには戻らない。
プレデリアンの女王はきっと、怒りに任せてどこまでも追って来るだろう。それに対し、逃げる事は出来る。
逃げ続けて、その内やって来る船に乗って帰る事も出来るかもしれない。
だが、それはしない。立ち向かう事が如何に無謀に近い挑戦だろうとも、それは自らの生き方に反する。
「俺は、強くなった……」
そう呟いたのは、それでも恐れを打ち消せない自分を鼓舞する為だった。
*****
目が覚めて暫く。自我の無いプレデリアンが呼びに来た。
また、女王の元へと来いという事だった。
今度は何だろうか。そう思うも、体は変わらず怯え始める。自分がこの巣の情報を他の群れに流した事はばれていないはずだ。あの時、まだプレデリアン達は包囲を突破し始めたばかりだった。辿り着いた一匹のプレデリアンは女王によって真っ二つにされた挙句に踏み潰された。
そのプレデリアンにも、自分がゼノモーフの一匹に情報を流した所は見られていないはずだ。
反逆を示す材料は、無い、はずだ。
そう考えながらも怯えは止まらない。何一つとして武器を持たされず、自分の身軽さを生かせない通路の中でプレデリアンが至る場所に居る、この状況。
女王がつまらない安寧を望んでいる事などに気付かずに子種として貢献するだけの生を送っていたならば、それは幸福だっただろうか?
そんな事を一瞬でも考えた自分が情けなくて仕方がなかった。
そして、心の準備も何も出来ないままに着いてしまう。エッグチェンバーが数え切れない程に置かれた、女王の鎮座する広間。
そのエッグチャンバーの間をすり抜けるように女王の元へと歩いて行く。一つとして反応しない。これら全てに潜んでいるフェイスハガーが自分に襲い掛かって来たら、槍を持っていても逃げ切るのは難しいだろう。
そんな中を歩いて、抜けた。プレデリアンの女王、ただの女王より一回り大きく、そのプレデターという優れた種を元にして成長した肉体はまた、ただの女王よりも何倍も密に詰まった筋肉を秘めている。
また改めて近くで見れば、その肉体は巨大になろうとも、自分が広大な地上に出ても逃げる事すら許さないような、プレデターからのしなやかさと敏捷性を未だ兼ね備えていた。
その目の前で膝を着き、頭を下げる。
全く慣れる事が無い、存在感、禍々しさ。
本当に自分はこれに挑もうとしているのか?
全体重、全力を込めて槍を突き刺そうが、その表皮を削る程度しか出来なさそうな予感。
女王の吐息が聞こえた。それから兜がずれる音。
――何故、他の群れの長が一匹一匹、貴様に挑んで散って行く?
唐突に問われたのは、その疑問。咄嗟には返せなかった。
少しばかりの間を置いて、プレデターは答えた。
――口減らしの為かと思います。苗床となるような生き物はもうこの地を除いて見かけませんし、特に、一体目の女王は弱者でした。
――それならば、やはり一気に捨てるべきだ。一匹一匹勢力を分散させて潰していく理由など無い。
否定出来ない。一匹一匹寄越せと言ったのはプレデター自身だったのだから。
そして、こんな形で頭を使う事などプレデターは今までする事は無かった。狩りの腕前さえあれば誰もが道を開くその価値観の中では、する必要が無かった。
大した思いつきも出ずにプレデターは答えた。
――何かそうする思惑があるのかもしれません。
――この私も思いつかない思惑がか?
体がびぐ、と震えた。答え方を間違えたのだと感じた。
首の下に、その尾の先端が差し込んでくる。そうして顎を持ち上げ、女王が目の無い顔でじっと自分を見て来る。
今、自分はどのような顔をしているのだろう。
呆然と思うそれは、共に競い合った同胞達の事を走馬灯のように思い出したからだった。
――ただ、それは別に大した事ではない。他の群れの長が幾ら結託したところで、私が出れば済むのだからな。
結局、自分はこの女王にとって、脅威でも何でも無いのだろう。ただの女王を倒したところで、この女王を倒す為の経験値に出来ると思っていた事自体が間違いだったのかもしれない。
そして、女王は聞いて来た。
――貴様は、我が子供達より功績を立てて嬉しいのだろう?
怒りの表情は向けられていない。ただ、気に食わない答えを返したのならば、無慈悲にこの尾が首を切り飛ばすように思えた。
正直になど答えられない。だが、答えずにいると顎を乗せていた尾が僅かに滑り、その切っ先が喉に触れる。
女王を満足させられる答えなど、思いつく訳も無かった。
――……はい。
――我が子達は、貴様のせいで苛立ちを抑えられていない。私が命令しても、鬱憤は溜まるばかりだ。これをどうしてくれる?
それを女王の支配からプレデリアン達が抗おうとしている、と前向きに捉える事など勿論、出来はしなかった。
――……私は、武器を持てなければ、貴方の子には遥かに劣ります。
――そうだな。
首を乗せていた尻尾が離れたかと思えば、頬を叩かれて、後ろを向けられた。
いつの間にかプレデリアン達が数多にやって来ていた。体が冷え切る。
――こんな面倒な事をする必要が出てくると分かっていたならば貴様を殺しておきたかったが、武器を持たない貴様を殺したところで、我が子達には一生貴様を追い越せなかった屈辱が残るだけだ。我が子のいずれかが武器を持つ貴様を超えるまでは生きて貰う。
辛うじて、ほっとする。死にはしない、が……。
プレデリアンの一匹がやって来るのに対して、女王が鬱陶し気に命令した。
――別のところでやっていろ。うるさいのは嫌いだ。
プレデターが立ち上がると、プレデリアンが来いというように首を振った。
……最悪ではなかったが、最悪だ。
これら全てのプレデリアンの鬱憤を晴らした後、自分は生きていても、まだ五体満足で、槍を握れる体で居られるだろうか?
女王の元から歩いて戻る。エッグチェンバーの間をすり抜けて、相変わらずそれらはぴくりとも動かない。
だが、それらを抜けた後にはもう、四方をプレデリアンが囲っていた。
自分に向けて滾らされているのは、殺意ではない、と思う。しかし、敵意ではあった。それは間違いない。
喉を鳴らし、隠し顎を出す。力を込められた尻尾がゆっくりと揺れている。この中に、自分の子種を元にしたプレデリアンも居る事だろう。いや、それが大半なのかもしれない。だからこそ、これ程に敵意を向けられているのかもしれない。
歩いて行く。女王の広間を出て、何度も曲がりくねった通路を抜けて、そして更にもう暫く。
そこでプレデリアン達は止まった。
――それで、俺をどうするんだ?
そう聞けば、無言で腹を尾で叩かれた。体が強く吹き飛ぶ。
「ゲホッ、ゴホッ」
立ち上がろうとすれば、プレデリアンの一匹が馬乗りになり、組み敷いて来る。両腕を掴まれ首に尾が巻き付いてくる。ただのゼノモーフでもプレデターを持ち上げられるだけのパワーを持つその尾は、プレデリアンとなれば、もうプレデターの腕と同等な程に太い。そんな尾が、スパイクが首を貫かないように、しかし絶妙に痛みを与えるように締め付けて来る。
他のプレデリアンも寄って来て、そんな自分を上から覗いて来る。
ただただ痛みを堪えていれば、首を絞める力が強くなってきた。ぷつ、ぷつと皮膚に穴が開く音がした。
「ウッ、グッ」
これは、自らが如何に活躍しようと子種に過ぎないという事を再認識させる為の行為であり、そして鬱憤を晴らす行為であり、また武器など持たされなければこうも無力な存在なのだと思い知らす為の行為であり。
抗わなければ、より強い苦痛を与えられる。気絶したところですぐに起こされるだろう。
しかし、抗おうとしたところで、プレデリアンに掴まれている腕は僅かに動かせる程度で、拘束から外れる事は全く出来ない。
確かに、このプレデターの膂力はゼノモーフの因子を取り込んで強くなっている。とは言え、それは利用しているに過ぎない。
ゼノモーフのように、プレデターの長所のみを奪い取り、より尖らせるような事までは出来ていない。プレデリアンには純粋な身体能力で敵う事はない。
頭を別のプレデリアンに踏みつけられ、柔らかい地面に埋められていく。
如何に力を込めようとも、何も実を結ぶ事はなく、段々と限界が訪れて来る。意識が薄れていく。すると、頭を踏みにじっていた脚が退いて、馬乗りになっていたプレデリアンが立ち上がる。続いて首を絞めていた尾が自分の体を持ち上げた。腰が浮き上がり、足が地面から離れる。首吊りにされた。
首の拘束が僅かに緩む。尾を掴んで、首吊りになるのから免れるだけの力を込められる、ギリギリの拘束。
次に何をするのかと思えば、延々と、延々とそれが続く。他のプレデリアン達も何もせず、ただひたすらに自分を眺めている。
延々と、延々と。プレデリアン達の小さな呼吸の声。時折口から地面へと垂れる涎の音。他に暴れられるだけの余力を許さない力で絞め続けられる。
ただひたすらに、ひたすらに。自分を吊り続けるプレデリアンの目の無い顔は、今は敵意も無い。ひたすらに冷淡だった。強く鍛えているとは言え、いい加減指が、腕が僅かながらも疲れてきていた。
それでもずっと、ずっと。後は何も聞こえない。何も起こらない。
指が、腕の疲労が徐々に加速してくるのに対して、けれどもプレデリアンの尻尾はどれだけの時間が経とうともびくとも動かない。
優秀な肉体を備える種族がそれを鍛え上げ、更にゼノモーフの因子を取り込んで更に強くなったその腕二本の持久力は、ただ生まれて成長しただけのプレデリアンの一本の尻尾に劣るその事実。
とうとう呼吸が荒くなっていく。腕が、指が激しく痛んでくる。強く尾を握ればスパイクに指が突き刺さり、血がだらだらと流れ始めた。
もう止めてくれと懇願したくなる。けれどそれだけはプライドが許さず、必死に堪えていた。
武器を持って、自由に動ける空間があれば貴様らなど一匹残らず串刺しに出来るのだからな!!
そう信じ、しかしそんな挑発を、自分を囲んでいるプレデリアンにする反逆も出来なかった。
そんな事をすれば最悪、殺されるか、本当に自分は子種としか生きられない体にされる予感が強くしていた。
ただただ、堪えるしか出来ない。
そして、とうとう限界が訪れる。両腕がだらりと垂れ、その指先からは血がたらたらと流れていた。首が吊られ、意識が急激に薄れていく。周りを囲んでいたプレデリアン達が一部退くと、その開いた空間にそのまま投げ飛ばされた。
受け身を取る事も出来ずに、プレデターはバウンドしてごろごろと転がる。
「う、ぐ……」
ぜえ、ぜえと、やっと自由になった呼吸に体が喜んだ。だが、腕に力が入らない。立ち上がる事すらままならないその時にプレデリアン達はまた囲んできて、胸を蹴られた。
手加減されている。本気で蹴られたら肋骨は砕けているが、それでも必死に空気を取り込んでいた肺が動きを止めるのには十分だった。
声にならない悲鳴を上げてのたうち回るプレデターが、プレデリアンの足にぶつかる。そのプレデリアンが頭を掴んで持ち上げた。こめかみを握り締められ、呼吸が戻ったプレデターがまた強い悲鳴を上げた。
力の入らない腕が必死にプレデリアンのその片腕を引きはがそうとするが、両腕で掴んでもびくともしない。
それでも叩いて、爪を立てて、そんな事を何度もしていると、唐突に腕が離れた。
「あ」
拳を振りかぶったプレデリアンが見えた。
すぐさま覚醒させられる。
強く傷付けるような事はされず。だが、尻尾の一本で持ち上げられ、そのまま地面へと叩き付けられる。胸を蹴られてのたうち回るのをじっと見つめられる。腹を蹴られて何度も吐いた。髪の毛を掴まれ、そのまま壁まで投げつけられる。その度に金具で束ねているその束が幾つか根本から千切れた。
腕の力が回復してくると、また限界が来るまで首を吊られる。
そんな事がひたすらに繰り返される。気絶した回数も数えられない程に疲弊し、もう何も抵抗出来なくなる。
プレデリアン達はそこで虐げる事をやめた。
地面に横たわり、ぴくりとも動けないプレデターに、しかし散ってはいかない。周りを囲み続ける。
暫くするとプレデリアンの一匹が、苗床となるプレデターの子供を連れて来た。苗床として生かされている事すらも理解していないその無垢な子供。連れて来たプレデリアンはその子供の頭を掴むと、額を隠し顎で貫いた。
自分がこれから死ぬ事すら理解しないままに絶命した子供に、プレデリアン達が群がって捕食していく。そんな緑色の血で口を染めたプレデリアン達が、プレデターの頭を掴んで口を近付けて来た。
何をされるのか分かっていても、もう抵抗する気力も体力も尽き果てている。
口を開けられ、そして四つに開いた口同士が密着する。そして、ごきゅり、ごきゅりとプレデリアンがその咀嚼した子供の肉をプレデターの中へと流し込んでいく。
その後ろには、プレデリアン達が並んでいた。
吐き気が込み上げて来るのに対して、プレデリアンが接吻を終えると、すぐさま口を強く閉じさせて吐き出せないようにしてくる。その間に待っていたプレデリアンが口を開いて寄って来る。
そうして十匹以上のプレデリアンに口移しで子の肉を与えられ、終わった時には、腹はパンパンに膨れ上がっていた。
そして、仕上げにと、吐き出せないように口は粘液で固められた。
「…………」
しかし、プレデリアンはそれでも去っていかない。
……もしかして、終わりじゃないのか? 俺の体力が回復したら、またこれを続けられるのか?
いつまで? 俺が屈するまで?
そんな絶望を味わいながら、プレデターは気を失っていった。
*****
目を覚ませば、プレデリアン達は未だ周りを囲んでいた。
プレデターはそれを見てとうとう限界を迎えた。
――こんな……こんな寄ってたかって、武器も持たない俺を虐げて、それで満足か?
気付いた時には、そう聞いていた。プレデリアン達の動きが変わる。だが、それでまた虐げられる事はなかった。相談するような素振りを一瞬見せた後、足を掴まれた。
そしてどこかへと引きずられていく。
殺される訳じゃなければ、どこに?
答えは一つしかなかった。アレを、飲まされる。これ以上アレを飲んだら……俺が、俺じゃなくなる。
それは、死ぬのと同義だ。
「ン、ンーーーー!!」
動くようになっていた腕で、必死に地面を掴む。だが、プレデリアンには敵わない。何度も何度も地面を掴んでも、全てが無意味なように引きずられていく。
――悪かった、お前等が上だ、認める、認めるから、だから!
無意味でもプレデターは足掻いた。柔らかな地面は何度も千切れ、自由な足でばたばたとプレデリアンの腕を蹴る。
しかし、プレデリアン達は何にも反応しなかった。ただただ、その場所へと歩いて行く。
――ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい! こんな生意気な口はもう二度と聞きませんから、貴方達より活躍などしませんから!!
「ンー!! ンー!! ンンーー!! ンー!」
矜持をも、恥をもかなぐり捨てて、プレデターは懇願した。しかし、ゼノモーフという生物はそんな情を持つ存在ではない。
そして、その場所へとは呆気なく着いてしまう。プレデリアン達の寛ぐ場所の一つであり、そしてゼノモーフの因子を取り込ませる為の液体が溜められている場所。
そこでは既にプレデリアンの一匹が胸を膨らませ、口を閉じて待機していた。
そして口を覆っていた粘液を引き千切られ、プレデターは叫ぶ。
「嫌だ嫌だ、ごめんなさいごめんなさい、もう一生あなた達の下僕で構いませんから、お願いしますお願いしますお願いしますお願いします!!」
涙を流し、糞尿をも撒き散らしてプレデターは、口からも、思念でも懇願していた。
「げほっ、ごほっ、おぶぇっ」
そして口からも詰め込まれていた肉を吐き出し、その吐瀉物がプレデリアン達に飛び散っていく。
そんなプレデターを、足を掴んでいたプレデリアンが、待機しているプレデリアンへと無造作に投げ飛ばす。
その目の前へと転がったプレデターは、立ち上がる事すら忘れて、ひたすらに這いずって逃げようとする。その目の前へとプレデリアンは歩いて行き、そして因子を溜め込んだ口を近付けていく。
「ひ、いや、いやだ、いやだいやだいやだいやだ」
頭を両腕で掴まれた。振り回される腕は尻尾で縛られ、暴れる足は踏みつけられる。
「あ゛ーーーーーーーーーーーーー!!!!」
しかし、それ以上プレデリアンは何もして来なかった。満を持していた口を開く事もなく、周りのプレデリアン達もそれに何をする事も無い。
ひたすらに泣き喚き、今となっては懇願ですらない支離滅裂な思念を飛ばしてくるプレデターに対して、プレデリアンは拘束を解いた。
それでももう既に正気を失っていたプレデターは喚き続け、そんなプレデターに対してプレデリアン達は去って行った。
プレデターが正気に戻ったのは、それから暫くの後だった。
「え、あ…………?」
何故飲まされなかったのか、どうしてプレデリアン達は凌辱をやめたのか。そんな事を考える余裕もない。
それから更に長い間、プレデターは体を縮こまらせて、ひたすらに安堵を噛み締めていた。
このまま順調に行っても面白くないなと思った結果がこれだよ!!
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