このままだと15000文字とか行きそうな予感もしたので。
何故、プレデリアンは自分にその液体を飲ませなかったのか。
その疑問を考えようにも、プレデターが受けた仕打ちは、肉体的にも、そして精神的にも激しく強く身を蝕んでいた。
立ち上がる事さえもままならず、プレデリアンが近くにやってくれば体が怯えるその始末。
だが、プレデリアンは自分の方に多少顔を向けるだけで何もして来なかった。
少なくとも、これ以上自分が虐げられる事はないようだ。
「クソ……」
それに安堵する自分にも強い不甲斐なさを覚えた。今ここに刃物でもあったならば首を掻っ切って死んでしまいたい程でもあった。だが、ゼノモーフという種族はあれだけ暴力的な姿形をしておきながら、巣の中は粘液に覆われてどこも柔らかだ。石の一つも転がっていない。
プレデターが自らの自我だけが失われて傀儡とされる事を恐れていた事には、自覚もなかった。ただそれは、自ら命を絶つよりも、フェイスハガーに寄生されるよりも遥かに恐ろしい事だった。
これからどうするにせよ、まだ、生きている。受けた仕打ちは屈辱過ぎて、矜持を根こそぎ奪われたようで本当に死にたい程であったが、死ぬ事も出来なければ、復讐心が湧いてこない訳でもなかった。ふらつく肉体を叱咤して、体を起き上がらせる。吐き気が酷い。腹の中にはプレデターの子をプレデリアンが咀嚼したものを突っ込まれている事を思い出した。
その瞬間、思い切り吐いた。口周りは粘液で固まっていて、それも引き剥がす。
「はぁっ、はぁっ、クソ、クソ……」
とにかく、今は。体を休ませなければいけない。何か普通の物を口に入れ直して、体を清潔にして、そして眠ろう。
全てはそれからだ。
壁に手を付きながらふらふらと。
肉を食い、水を飲んで体を洗う。その間にもプレデリアンとすれ違えば体は勝手に怯えてしまう。だが、それら全ては自分を見て来はするものの、特段何もして来る事もなかった。
虐げられる前の完全な無関心とも違うその仕草。
この女王の目の届く領域内でも、自我を持ちつつある。それは断言しても良いだろうが、喜べる事ではもうなかった。
「俺が蒔いた種なんだよな……」
種が芽生えた結果がこれだ。三匹目の女王を倒したならばもうここには戻って来れないが、三匹目の女王を普通に倒したところでプレデリアンの女王に手が届くとは全く思えない。
それに、と前の戦闘の事を思い出す。一度だけゼノモーフに腕を掴まれた。それがプレデリアンであったならば、自分はその時点で敗北が決まっていた。自分が何をするよりも先に、腕を握り潰すも投げ飛ばすも出来るだろう。
どうすれば良い。
絶望ばかりが襲ってくる。考えたところで良い案が出てくるようにも思えない。
ただ、それでも考える事をやめては本当の終わりだが……とにかく、今は考えるのもとにかく後だ。
体を洗う腕も震えている。二足で立っている事すら未だに危うい。首に手を当てれば、幾度となく長時間スパイクのある尾で締められた跡が強く残っていた。全身も青痣だらけだ。
休まなければいけない。ここまで虐げられた体は、一度寝ただけでは全快しないだろう。後は……それまでに三体目の女王が仕掛けて来ない事を祈るばかりだ。そんな、祈るしか出来ない自分にも酷く嫌気が差した。
*****
一度眠れば、少なくとも壁に手を付かずとも歩く事までは出来た。ただ、手足には余り力が入らない。
ひたすらに長時間虐げられた肉体からは、体内に蓄えられていたエネルギーをすっかり奪い取られてしまっていたようだった。その日もプレデリアンが側を通り過ぎるのに怯えながら肉を食い、水を飲む。
これ程に肉体が求めていた食事をする時などいつ振りだろうか。
だからと言って感謝など絶対にしないが。腹が膨れるまで胃に肉を詰め込むと、再び眠気が襲ってくる。
ただ、その前に仕事をしなければいけない。……きっと、これも命の危険に晒されて元気を見せるのだろうと思いながら。
磔にされ、その上で四肢を粘液と同化させられ、そして子種にされている女性のプレデター達は、自分と行為に及ぶ時だけ僅かながらに表情を見せる。
自分が前に立つと、ほんの僅かにだけ目に光が灯る。
「あ、う……」
言葉も知らず、この外の世界も知らず。何故このように子を産むだけの生き方をさせられているのか、そのプレデリアンがどのように誕生するのか、それらの何も知らない。
……自分が何よりも恐れていたのは、こうなる事だった。
誇りを抱いたままに死ぬ事よりも、より強大な力に打ち負けて単純にその糧にされるよりも。このように生かされながらひたすらに利用され続ける事が最も恐ろしい。
体を密着させ、雄と雌を交わらせる。想像通りにすぐに活発になった雄は、肉体の疲弊振りとは反して平時よりも幾度でも精を放つ事が出来そうだあった。
息を切らせながら、精を放つ。
「うう、ああっ」
言葉を知らないプレデターが、もっと、と懇願するのを無視して、次に移る。それを何度か繰り返す。
精が尽きる頃にはまた疲労が襲って来る。去る前にプレデリアンがやって来て、その女性のプレデター達を物色し始めた。
まだ子を産めるかどうかを確認しているのだろう。そんな最中のプレデリアンに聞いてみた。
ーー何故、俺にアレを飲ませなかったんだ?
答えを返される事は期待していなかったが、プレデリアンは自分の方を振り向いて来た。観察するかのように。
殺意などもなく、単純にまじまじと。少しの時間、それだけが続く。
しかしプレデリアンは無言のまま顔を背けて、磔にされている女性プレデターの一人を引き剥がして女王の元へと持ち去って行った。
「……」
分からずじまいか、とは思わなかった。自分を観察するその仕草には、何らかの理由があった。軽蔑のような所作も感じられなかった。
寝て起きれば、何か思いつくだろうか。
未だ、体力は尽きかけたままだ。
プレデターは、プレデリアンの後を追うように歩き始めた。寝床は、プレデリアンが歩いて行った方向と同じだった。
途中で寝床に着けば、役に立たなくなったプレデターを持っていくプレデリアンが通路の先へと去っていくのを眺めながら立ち止まる。
あのプレデターが何を思っているのかが分かる事は無いだろうが、きっと自分がああなってしまったら、やっと死ねるとでも思うのだろうか。
そんな事を思っている時点で、自分の矜持も何もが完全に折られている事を自覚する。
これが元に戻る事は、あるのだろうか……?
憂鬱な気持ちが抑えられないままに、寝床に座り、体を丸める。ゼノモーフが眠る姿と似たように。
いや……最初に捕らえられて女王に命を乞うたその瞬間にはもう既に、戻らない程に歪められていたのだろう。
性行を経て覚醒しかかっていた体は、けれどもすぐに眠気を取り戻していた。
*****
プレデリアンは、この女王の支配下でも少なからず自我を持ち始める程に自分に嫉妬していた。矜持というものを抱いていた。
だからこそ、プレデリアンは自分を虐げた。歪ながらもその感情を晴らす為に。
……だからこそ、だろうか?
深く、浅くを繰り返す眠りの狭間の中で、プレデターの思考はゆっくりと巡っていた。
だからこそ、プレデリアンは自分に液体を飲ませなかったのだろうか?
女王の支配下でも自分への嫉妬を抑えきれない程のその矜持は、何もかもをかなぐり捨ててまで液体を飲む事を拒絶しようとした自分に対して虐げる事を止める矜持と同等だった。
その予想は、どうしてか確信が持てるものだった。
理由は、すぐに分かる事になる。
頭を叩かれ、乱雑にプレデリアンに起こされる。
ーー狩りの時間だ。
「……ああ」
プレデリアンの会話が多少流れて来ていたのだろう。微睡の中での思考は、正しい。
それは要するに。
あの時、あそこまで恥を捨てたからこそ、液体を飲まされずに今も尚、自分は自分として生きている。あの時、未だ矜持を保てる程の強さがあったならば、液体を飲まされて傀儡となっていた。
何という皮肉だろう、何という皮肉だろう!
強さだけを追い求めて生きてきたというのに、それを最後まで通せなかったからこそ生き延びたとは!
果てしなく複雑な感情に襲われるが、ゼノモーフという生物はそんな事を待ってくれる訳もなく、さっさと歩いて行く。
……そもそも、プレデリアンは何故自分を起こしたのだろう?
自分が外に出る許可を貰っているとはいえ、今までは自分から勝手に着いて行っているようなものだったのに。
ただ、呼びに来たという事は行かなければいけないと言う事だ。行かなかったとして起きる事は、少なくとも良い事ではない。
けれども……槍は持って行っているのだろうか? 虐げられた後では、分からない。聞く事など出来ない。
三体目の女王と戦ったら最後、ここに戻る事は出来ないと言うのに。
だが、それでも選択肢はない。槍を持ち出されていなかった場合、まず、素手で女王と戦わなければいけない。
それは前回よりも遥かに困難な試練だ。しかし、プレデリアンの女王と槍を持って戦うよりは格段に容易な試練である事には違いない。
窪みから体を起こし、軽く体を動かして体調を確認する。
万全ではない。全身の虐げられた痕跡は未だ痛々しく残っていれば、続いている疲労感は体に淀みを強く感じさせる。だが、それは連日の狩りを敢行している時と同等程度のものだった。最悪でもない。
「行こうか」
自らを奮い立たせるように、呟いた。
プレデリアンの後を付いていけば、段々と別の道からプレデリアン達が合流して来て、数が増えていく。
どれ程の技量を身につけたところで、こんな閉鎖空間でこれ程に数多のプレデリアンに囲まれれば役には立たないだろう。役に立つものがあるとしたとしても、それはもう既に狩りとしての道具ではなく、完全に一方的な殺戮をする為の道具だ。
自らの種族から誕生したゼノモーフに対して、純粋な肉体で敵うところは存在しない。その事実は技術によってしか覆せず、しかしそれも限度がある。
出口が近付いてくる頃には、四方八方をプレデリアンによって二重、三重に囲まれている。
プレデターよりも一回り大きいその肉体に囲まれるその圧は、一時期前までは慣れていたものだった。しかし今となってはそれだけで体が既に怯えてしまっている。時折聞こえる息遣い、垂れる涎の音、そして新しく自分に対して無関心でない振る舞いが、その時間を鮮明に思い出させる。
目の前で揺れる尻尾が、背後から背中に掛かる生暖かい呼吸が、両脇で時折握られる拳が、今にも自らに襲いかかって来そうな予感を払拭出来ない。
……落ち着け、落ち着け。今はまだ、こいつらは敵ではない。
そう言い聞かせる。
それでも外に出て、開けた空間と風を感じれば、今にでもこの包囲から逃げ出したいその意欲が浮かんできて仕方がなかった。
見せた瞬間、捕まったら最期、八つ裂きの穴だらけにされれば幸福であろう程の目に遭うだろうが。
そして、周りのプレデリアンを幾ら見回しても、槍を持ってきているような個体は見当たらなかった。
虐げられていなかったならば、貴様らが武器を使うという発想は持たないのか? とかでも皮肉でも言っていた事だろう。ただ、今は流石に言える気にはなれなかった。
折られた誇りは、完全には元通りになりもしない。それも既に確信していた。
事実は覆りはしない。誰に見てられなくとも、記憶には強く残り続ける。
……もし女王を倒せてこの星から去れたとしても、いつか自分は衝動的に首を掻っ切りそうだ。
そんな事を思った。
暫く歩いていけば、プレデリアン達の動きの乱れが強くなっていく。その乱れは、当初と比べればもう見違える程だ。
子種としての生を受け入れていた時のプレデリアン達は、巣の中では生気が感じられない程に無機質な暮らしをしていた。久々に外に出て、多少自我を取り戻した所で、そこには女王からの呪縛とも取れる程の忠誠が染み付いていた。
それが自分へ嫉妬するようになってからは巣の中であれど、その動きに生物味が多少なりとも見え始めた。外に出れば、自分へ意思疎通を図ってくる程だった。
ーーその槍とやらがなければ、貴様は何も出来ないだろう?
……やはり、持ってきてはいないのか。
そう思いながらもプレデターは返した。
ーー……どうだろうな。
そんな答えに、聞いてきたプレデリアンは苛立ちを隠さなかった。
誇りなども捨てて命乞いしていた癖に、という見下す意思も幾多に伝わってきた。不快感を露わにするその感情に怯えもするが、それ以上に溜息でも吐きたい気分になっていた。
ゼノモーフとしての何よりも繁殖を重視する尖り過ぎた本能に、プレデターとしての狩りを生き甲斐とし誇りを重視する本能が混じり合った結果がこれだ。
芽生えたのは子供のような短絡的な誇り。ありのままの自身を至上とし、それが汚されたのならば陰湿に原因を潰す事も厭わないような幼稚な誇り。
プレデターを基にしたゼノモーフが他の生物を基にした時よりも色濃くプレデターの特徴を残していようとも、自分が多少働きかけたところで結局ゼノモーフというその本質までが変わる事はなかった。
まあ……それでも、誇りである事には変わりない。無機質であるよりは、唆せる可能性もよっぽど高いだろう。
それからも時折来る問いを有耶無耶に返す。
そうしている内に、三体目の女王が地平線の先からその巨躯を現してきた。
出来れば、今回は来ないで欲しかった。プレデターはそう切に思った。
槍を持たずに女王と戦う事になるのも不安要素ではあったが、それよりももうあの巣に戻る事は出来ないと言う事がプレデターにとって懸念していた事柄であった。唯一且つ一番の武器である槍を持ち出す事が出来なかった。それは即ち、プレデリアンの女王に対しては、自らの手で作ったような武器で挑むしか無いという事だった。
ただ、それでもその不幸は、プレデターが思っていた程の絶望をもたらすものではなかった。
プレデリアンの女王に挑むのに対して、優れた装備の必要性は薄いと分かっていたからだろう。あれば嬉しいが、無いところでそう強い差異にはならない。その程度の事だった。
……今は、目の前に集中しよう。
プレデターは無言で気合を入れ直した。
広くばらけ始めたプレデリアン達も、いつもより気合を入れていた。武器を持たない自分よりも戦果を上げられなかったら、その屈辱は果てしないものだろう。そうして共に巣へと戻ったならば、自分は今度こそその憂さを晴らす為に死か、それに等しい仕打ちを受ける程に。
それを想像したら体が震えてしまった。
もう、戻らないと分かっているだろう! そう自らを奮い立たせるように拳を握り締めた。
また、戦場として選ばれたのは、それぞれの縄張りの境界であった。
これ以前にも何度も戦場として使われたであろうこの場所は、草木が枯れ果て、強く荒廃している。
加えて、ゼノモーフの死体は形を残したまま残り続けている。生半可な攻撃は通さない甲殻と強酸が染み付いた肉体を分解出来る微生物など、どの星に行っても少ないものだ。それは即ち、引きちぎればそのまま武器として使える尾や、盾として使える頭蓋もそのまま残っているという事だった。後者は加工が必要だが、本当に素手で戦うしか道がない訳でもない。
だが……プレデリアンにも女王への叛逆を志すように誑かす為ならば、完全に素手で女王まで倒した方が可能性は上がるだろう。
それをやるべきか、やらざるべきか。
そもそも、素手で女王に通る攻撃などあるだろうか? 首に抱きついて全身で締め上げたところで、窒息させるにせよ首を折るにせよ、その前に尾が体を貫くか、掴まれて引き千切られるか、その方が早いだろう。
拳や貫手が女王の体を貫けたところで、この肉体は多少酸に対して耐性が付いているとしても本家程でもない。焼け爛れて使い物にならなくなるのは確かだ。
それはもう、挑戦ではなく無謀と言って良い。それも、自分の実力を履き違えるような馬鹿でもここまではしないであろう程の無謀だ。
しかし、それでも、プレデリアンの女王に挑むよりは容易であると思えた。だからこそ乗り越えなければいけない壁であると感じた。
二つの勢力が近付いていく。
プレデリアン達も今回は中々に数が多い。きっと、数百は居る。
しかし、女王率いるゼノモーフの群れはそれの倍以上に居た。クラッシャーとランナーだけで構成されているその軍隊は、距離が近付くに連れて地響きを伝え始めてくる。
クラッシャーの比率がこれまでよりも遥かに多かった。
反省を踏まえてか、プレトリアンは一匹たりとも居なかった。
確かに同じ重量級として見るのならば、よりプレデリアンの暴力にも耐えられるクラッシャーの方が適しているだろう。至極正しい判断だ。
「……」
クラッシャーに対しても、素手では有効打が殆ど無い。
ゼノモーフの尾の先端を短剣のように使う程度ならば、まだ良いだろうか?
そんな弱気が頭を過るがしかし、やはりこれでもプレデリアンの女王に挑むよりかは絶望を感じない。
もう、自分には無謀をするしか活路が無いのだと理解した。どうせここで素手でクラッシャーも女王も屠るような無謀を果たす事が出来なければ、プレデリアンの女王に挑んだところで惨めに散るだけだ。
距離が近付いてくるに連れてクラッシャーが駆け始める。より激しい地響きが体に伝わってくる。
プレデリアン達がそれに応じるように胸を膨らませ、一斉に吼えた。ゼノモーフの咆哮よりも一段とおぞましく、そして何倍もの音量を響かせるそれはプレデターに怯えをもたらすがしかし、まだ共闘する関係である事も知らしめる。
だが、それも最後だ。
クラッシャーとプレデリアンの激突の瞬間、プレデターは前へと足を進めた。
Marvelの新しいエイリアンのコミック買って読んでみたけど、バカがバカしてさぁ大変というような内容で、アメリカンだなぁ、という感想。
あ、後日間16位まで入ったようで。こんな性癖てんこ盛りな作品が日間の結構上位まで入っちゃってちょっと恥ずかしい気もしますが、まあ、読んで下さってありがとうございます。
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