というかゲームとか映画とかのエイリアンって基本齢0歳なんだよな。
最前線のプレデリアン達がクラッシャーを数匹掛かりで受け止めれば、それぞれの背中を駆け登ってプレデリアンとゼノモーフ達が更に衝突する。
ただ、クラッシャーの上からクラッシャーが更に飛び掛かって来れば、足場が不安定な状態では一気に押し込まれた。
この三匹目の女王が取った戦法は、愚直なまでの力押し。二列にも三列にも連なるクラッシャーの隊列は、そうして数多のプレデリアンを一気に踏み潰した。
当然、プレデリアン達もやられているばかりではない。クラッシャーが多い分、前回までは油断を晒した者を刈り取る役目として存在していたランナーは少ない。それにいち早く気付いたプレデリアン達は跳躍してクラッシャーの背後を取った。そしてまた、回り込んだプレデリアンはその部隊の両端に重点的に配備されているランナー達を潰し始める。
短期決戦になる。そう察したプレデターは、クラッシャーの奥で待ち受けるクイーンに目を据えた。
女王も、何よりも自らに強く注意を払っている。とにかく、その女王の元にまで辿り着かなければ始まらない。
ぐ、と膝を強く折り、強く跳躍する。跳躍に関してだけ言えば、重量のあるプレデリアン達よりもプレデターの方が高く、速い。プレデリアンとクラッシャーが入り混じっている中を、クラッシャーの頭を一度踏みつけるだけで飛越し、飛び掛かって来たランナーの数匹を身を捩るだけで躱し、一匹を捕まえる。その尾を掴み直して最後尾に居たクラッシャーへと叩きつける。
ランナーは叩きつけられた衝撃で首を折って死んだが、ただ叩きつけただけではクラッシャーには何ともない。
そのクラッシャーの背中に、プレデターは飛び乗った。
そのプレデターが武器を持っていない事に、周りのゼノモーフ達やクイーンが気付く中、プレデターはそのクラッシャーの首を踏みつけ、より発達している甲殻を両腕で掴んだ。
そうして全力で捻ろうとしたが、クラッシャーの膂力はプレデリアンをも大きく凌ぐ。銃弾やプラズマキャノンすらものともしないその頭を支える首は、プレデターの力ではどうしようもなかった。
「クソ……」
暴れるクラッシャーから飛び退き、そして半ば逃げるようにして女王の元まで辿り着いた。
そんなプレデターに対して、女王は怒りを露わにしながらも聞いて来た。
ーー貴様、何を考えている。
ーー素手でただの女王を倒せる程の無謀を出来なければ、どうせあの女王には負けるだけだと悟ったのさ。
そう答えた瞬間、尾がプレデターを串刺しにしようと飛んできた。軽く躱せば、瞬時に巻きつこうと動きが変わる。身を屈めてすり抜け、女王の足元へと寄り、全身の力を込めた掌底を叩き込んだ。
それでも、僅か、ほんの僅かに後退しただけ。それもそうだ、クラッシャー以上の体重をその二本足だけで支え、クラッシャー以上の速度で走り回る事が出来るのだから。蹴りを躱す、その全体重を支えている一本足にまた掌底を叩き込んだが、やはりびくともしない。拳を握って殴ったのならば、逆にこちら側の手の骨が砕けそうな強度。
その冠を持つ巨大な頭を支える首に叩き込んだところで同じだろう。すると残るは、胸。心臓を動かす事によって血流を発生させ、全身に力を行き渡らせているのはゼノモーフであろうと同じだ。
如何に頑強な骨で覆われていようと、そこは衝撃に弱い。また、骨や甲殻も隙間なく胸を覆っている訳ではない。
残る活路はそれだけだ。だが……、と一度距離を取って女王を見上げる。
屈んだ姿勢を取っているとは言え、女王の体躯はざっとプレデターの三倍以上はある。しかも胸周りからは小さな、それでもプレデターよりも長く太い腕が生えている。
その最後に残った弱点に対しては、残念ながら防御は厚い。
そんな狭過ぎる活路に、ゼノモーフが備え持つ尾や隠し顎が羨ましくなる程だ。
女王が今度は尾を目の前の地面に突き刺した。深く刺さったそれが持ち上げられれば砂礫が幾多に襲い掛かる。その直前にプレデターは横に回避していたが、女王が迫って腕を振り回してくる。
大振りな攻撃は躱すのは簡単だ。しかし、迂闊に強い跳躍などをしてはいけない。特に今、何の武器も持っていない状態で、宙に居る間に串刺しなどを狙われたら殆ど何も出来ない。
その為にも最低限の動きで躱す。掠るかどうかの瀬戸際、まともに食らえば体が千切れ飛ぶ程の威力を間近に感じながら、そして一撃を狙う。
槍を持っていれば、もう決着を付けられているのに。そう考えるプレデターに、再び懐に潜り込まれた女王は蹴りと尾で追い払おうとする。
ただ、するりゆるりと躱すプレデターに女王は触れる事すら適わない。プレデターからは多少響く程度の打撃が時折来るだけでそれは何の問題もないが、何かしらの有効打を狙っている事には気付いている。また、一向にその狙いを見せて来ない事から攻めあぐねている事も分かっている。
だが……膠着状態は敗北と同義でもあった。クラッシャーとランナーだけに完全に絞った軍勢は、プレデリアンに対して今までの攻防の何よりも有効に働いていた。しかしそれでも、プレデリアン達の方が上手だった。
以前なら、プレデターという異分子がこの群れに入り込む前ならば、プレデリアンの戦い方が恵まれたスペック任せで愚直に叩き潰すものであったならば、この軍勢で鏖殺する事が出来ただろう。しかし今となっては、そのプレデターに影響されてか、戦い方に戦略や技術と言ったものが混じっていた。
華奢なランナーを倒すのに一々首を握り潰したり、骨を粉々に砕いたり、頭を掴んで隠し顎で貫いたり、そんな反撃を貰う時間を要するような殺し方をしない。頭を叩けば首が捻じ折れる。尾を振り回すだけでランナーの内臓は破裂する。
プレデリアン以上に剛力なクラッシャーに対して、正面から力比べを余りしなくなっていた。背中に乗ってその首の骨を隠し顎で貫く。横からひっくり返してその心臓を抉り抜く。
互いに数を減らしつつも、その命を失わせていく速度は女王の軍勢の方が確かに速かった。
そして更に、プレデリアンの数匹が女王の方へと漏れ出してきた。
女王が尾を一匹に向けて突き刺す。狙われたプレデリアンは避けきれずに片腕を千切り飛ばされ、怯んでいる内に首を刎ね飛ばされた。
そのまま薙ぎ払えば、プレデリアンの一匹が引っ掛かる。跳躍した二匹は愚直に目の前にまで飛びかかってきた。一匹は隠し顎で胸を貫く。もう一匹は掴んで握り砕き、そして転んだプレデリアンは起き上がる前に踏み潰した。
一瞬にして四匹が屠られ、他にも抜け出してきたプレデリアン達は流石にたじろぐ。
やはり、このプレデターの方が異常なのだ。女王はそう認識する。そのプレデターはそんな全員から自身に対して意識が薄れていた瞬間に、ランナーの一匹に最後の情報である、巣の入り口の場所を伝えていた。
女王が意識を再び向けた時には、ランナーはもうそれを伝えに去った後。
微塵も自らに対して恐怖も怯えも抱いていないその様子には、やはり腹が立つ。
だが……プレデリアンは女王の方へと更に漏れ出し続けている。通常のゼノモーフの比率を抑えた結果、小回りの効かないクラッシャー達ではプレデリアン達を封じ込む事が出来なかった。
そして、プレデリアン達は波状に襲い掛かって来る。尾を振るう。握り潰す、噛み貫く。
しかし、その肉体にしがみ捕まれ、胸から生える腕を引き千切ろうとしてくる。足に尾で、隠し顎で穴を開けられ、血が吹き出す。
「ギアアアアッ!!」
堪らず軍勢を自らへと呼び戻す。それはすぐさま女王も入り混じっての大混戦の様相を生み出し、プレデターは思わず苦い顔をした。
素手のプレデターがこんな混戦の中で出来る事は、ほぼほぼ無かった。
酸の血が飛び散り、それを厭わず全てのゼノモーフは戦い続ける。その血溜まりが至る所に出来始める。
未だクラッシャーも多く混じり、プレデターはそれに対して有効打を持たない。
……やはり、武器を持つしかないのか。
いや、と思い直す。そもそも、自分は異星人から狩人と呼ばれる立場ではもう無くなっている。肉体的スペックと文明のスペックで圧倒的優位から狩を行う、今しているのはそんな狩りではない。
自らを屠ろうと泥に塗れて姿を隠し、罠を幾多に仕掛けて待ち構えていた肉体的に遥かに劣る異星人。敵わないと知りながらも群れの為に命を投げ捨てるゼノモーフ達。
そんな、狩人ではなく挑戦者と呼称すべき立場に今、自分は立っている。それをどこかしらで未だ認識出来ていなかった。
プレデリアンに肉体的に敵う部分が殆どない。それを理解しつつも、認められていなかった。
混戦から離れ、そこらで死んでいたランナーの尾を二つ手に取る。尾も細いそれは鞭として使うにも心許なく、しかし先端に近い部分で切り落として短剣として使うのならば中々使える。
事実は、覆せない。覆そうとする事自体が、間違いだった。
「認めるよ。俺は武器なしじゃ、お前等より強く劣る」
自らに言い聞かせるように、プレデターは呟いた。
手にしたその短剣をぐ、と握るとぽたりぽたりと酸の血が染み出してくる。
「だが、武器があるなら俺の方が上だ」
こんな短剣でも、上回れる。
クラッシャーに飛び乗り、その首を引き裂いた。
女王をも巻き込んだ混戦は、意外と長く続く。プレデリアン達は戦果を挙げようと女王を積極的に狙うが、そんな事は当然女王も分かっている。
自らを囮としながら、不用意な姿を見せたプレデリアン達を屠っていく。そんな中、再び武器を手にしたプレデターは効率良くランナーやクラッシャーを狩りながら、再び女王へと近づいていった。
プレデリアンよりプレデターの方が優っている最大の点は、生きた長さだ。それは即ち、自らの事を深く理解している事。敵対した相手への経験値が多く存在する事。
目的の場所まで跳躍する為に、どの程度の溜めが必要か。これからこの動作をする為にどれだけの時間を要するか。
この相手の何が脅威なのか、そして何が弱点なのか。
そんな情報が体の中に刻み込まれている。物事への判断のスピードが格段に早い。
ゼノモーフは一日足らずで幼体から成体まで成長する。プレデリアンに至ってはその段階でプレデターを肉体面で凌駕する。しかし、そこで勝負する必要はないのだ。自分達の強みの本質はそこじゃない。
この女王だろうと、縄張り争いの激しいこの地では自分より長くは生きていないだろう。
自分より長生きしている可能性があるのは、精々あのプレデリアンの女王だけだ。
するりするりと、その混戦の中をプレデターは潜っていく。背後から距離を取って突き刺そうとしたランナーの尾はギリギリ届かず、叩き潰そうとしたクラッシャーの肢体は逆に引きずられたランナーを叩き潰している。
そんな先程とは様子の違うプレデターにプレデリアンが気付けば、力づくでしか動けない自らに負い目を感じる程であり、それは怒りとなってしかし同時に隙ともなって屠られる。
そうして、辿り着いた。
気付いた女王が、プレデターの方を向く。
ーー……武器を使わないのではなかったのか?
その問いには、畏れを隠しきれていなかった。
自分からは一度も触れられていない相手が、必殺を持ってやってきた、その絶望だ。
ーー……認めたのさ。武器なしじゃお前等には何をしようと勝てないとな。
プレデリアンにも伝わるように、プレデターは答えた。
突き刺す、薙ぎ払う、掴む、叩きつける。女王の持つ何もかもがプレデターに届く気がしない。自分の体が一歩後ずさっている事に気付いた。
だが、ここは混戦の中だ。女王は命令を下した。
周りのゼノモーフ達が一斉にプレデターに飛びかかった。しかし、そんな唐突の命令は、生まれてそう時間の経っていないゼノモーフ達の動きは、一矢乱れず、と言ったものとは程遠い。隙間をすり抜ける事は容易く、それを補うようなチームワークもない。
加えてその最中、軍勢から孤立した女王はプレデリアン達に群がられた。
数多のプレデリアンに、女王はそれを払い切る事が出来ずに足に、腹に、首に頭に辿り着かれる。まるで、全身をプレデリアンで覆われたかのように。
そして、巨体を支える足の骨を隠し顎で貫かれた。腹を抉られ、胸の腕を引き千切られた。両腕はべきべきとへし折られていく。首を切り裂かれて冠を砕かれる。
子供達が振り返った時にはもう遅く、女王は悲鳴を上げながら崩れ落ちていた。
ーー……馬鹿な事だ、このプレデターは女王に叛逆を志しているというのに、それに気付かないなど。
女王はそう言い残して、事切れた。
その瞬間、プレデターは逃げ始めていた。
一瞬遅れて、残党を屠るよりもプレデターを捕える事を優先したプレデリアン達が追い始める。生き残ったプレデリアン達は何十と居り、それら全てが追い掛けてくる。
純粋な肉体では敵わない。距離はあるが、その内追いつかれる。
捕えられたら最期、その場で息の根を止められれば幸いな程の目に遭うだろう。
地理も分からず、装備は数多のプレデリアンを相手にするには流石に心許ない即席の短剣二つだけ。
だが、それでもプレデターはそこまで絶望していなかった。
プレデリアンの女王の支配から完全に離れたこの地での戦いの最中、矜持というものがより強く行動原理に組み込まれている事が見て取れた。群れの為ではなく、自らの矜持の為にプレデリアン達はあの女王を優先的に屠ろうと動いていたのだ。
そこまで明確なものを見れば、この問いはきっとプレデリアン達に大きな変化をもたらすだろうと思えた。
距離が段々縮まってくる。プレデリアン達の殺意が言葉として届いてくる。
それに、プレデターは短く返した。
ーーお前達は自らが女王になろうとは思わないのか?
その途端、プレデリアン達の足が緩まった。何者をも弾き飛ばしてしまうであろう程の勢いで駆けていた足が急激に収まり、そして立ち止まる。
全てが全て棒立ちに成り果てて、まるで不具合を起こした機械のように動かなくなった。
プレデターも距離を取って立ち止まった。
……自分のしてきた事は、無駄ではなかった。
ただ逃げていただけならば、こんな結果にはならなかっただろう。
しかし、ここまでの効果があるとも思っていなかった。
プレデターは続けた。
ーー女王は、あの巣の中でお前達の意識を抑制させている。そんな気を万が一にでも起こさせないように。
プレデリアン達は、面白い程に動揺し始めていた。
……少なくとも、こいつらは女王の敵になる。
面白くなってきた、とプレデターは久々に余裕を覚えていた。
*****
いつまで経ってもプレデリアンの一匹も、そしてプレデターも帰ってこなかった。
翌日になって数匹を偵察に行かせたが、それも帰って来なかった。
何か、起きたか、起こされたか。
そう思考し、久々に産卵菅を引き千切ったその時、全ての出入り口からゼノモーフの群れが雪崩れ込んできた。
プレデリアンの女王は強い苛立ちと共に、プレデターに対してその寿命が来るまで永劫に苦しみを味わわせる事に決めた。
ゼノモーフ、プレデリアンに対する設定というか考察というか。
・優れている種族を宿主とする程、外見にも影響が出る
・内面、精神もある程度引き継ぐ
・プレデターの狩りへのこだわり、矜持も多少引き継がれていたが、元々のゼノモーフとしての本能に加えて、女王の抑制にもよってそれは表に出てこなかった
・それがプレデターの行動、問いかけによって表面化させられる
最後のプレデリアンの戸惑いは、例えるならDetroit: Become Humanで「さあ起きて」とされたような感じ。
Good Endまでは後3話かな。
で、次はちょっと間空くと思う。
好きなエイリアンの種類
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