エイリアンvsプレデター Level 2   作:ムラムリ

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8.

 ある日突然の事だった。

 結託していた全ての群れがそのプレデリアンの巣へと攻め込んできた。

 出入り口の場所など、まだ誰にもばれていなかったはずだ。その周辺は入念に警戒させていたし、偵察しに来ていたゼノモーフも生かして帰した事などなかったはずだった。

 だが、そんな事はどうでも良い。原因は分かり切っている。あの子種が裏切ったのだ。暇潰しに多少好きにさせていたらこれだ。

 最後に掃討に行かせてから我が子までもが一匹たりとも帰って来ないのも、あの子種が自らの種を基に群れを構成する事への弱みに気付いたからだろう。

 女王になりたいとは思わないのか? とか、そんな事を伝えたのだ。

 そう、女王は理解していた。

 

 プレデターを子種とする群れを統率する為に、引き継がれる狩猟本能は酷く邪魔であった。

 何もさせずに放っておけば、すぐにでもストレスが溜まって仲間内でも争い始める。かと言って狩猟させに行けば、そのまま自らが女王になろうと叛逆を志してどこかへと消えていく。

 それを抑える為に必要だったのは、女王として以上の絶対的な強さ、それによる強烈な支配。

 隔絶した力量差こそが、プレデターの狩猟本能を引き継いだプレデリアンとしての子供達を従順にさせる唯一の手段だったのだ。

 だがそれも仮初のもの。

 またそれは女王になろうとも同様である事を女王自身が良く理解していた。

 ゼノモーフとしての巣を荒らされる怒り、それと同等に沸き上がって来る、引き継いだ狩猟本能からの強い高揚。

 それに身を委ねるのは、心地悪い事ではなかった。

 

 巣の中に突入した複数の群れのゼノモーフ達の総数は、防衛に入ったプレデリアン達が応戦しようとも多勢に無勢にも程がある程だった。

 結託しながらも、プレデターという優れた子種を我が群れへと持ち帰ろうと躍起になるゼノモーフ達は一心不乱にその巣の中央部、プレデターの飼育所へと駆けていた。

 押さえ込もうとするプレデリアンも、中央に近付いて来るに連れて雪崩込んで来るかの如くに突進してくるゼノモーフ達に押し倒され、殺す間も惜しいと追い越されていく。だが、次から次へとやって来るゼノモーフ達に踏まれ、潰され、一匹たりとも再び立ち上がる事は敵わなかった。

 だが、その中央部に辿り着いた時にゼノモーフ達が目の当たりにしたのは、その女王が子種のプレデター達を残ったプレデリアン達と共に皆殺しにしているその様だった。

 唖然とするゼノモーフ達。

 訳も分からずゼノモーフの方へと逃げて来るプレデターの子供を捕まえようとした時、女王が尾を払った。

 ただの女王よりも太く、長く、鋭利なそれは、大振りであっても軌道上に居た半数以上のゼノモーフの全身を砕き、真っ二つにした。

 辛うじてプレデターの子を抱えて地面に伏せたそのゼノモーフ。起き上がって逃げようとするのを女王が許す訳もなく、プレデターの子供ごと串刺しにして投げ捨てた。

「ギイィィィルアアアアアアアアアアッ!!!!」

 女王が吼えた。それは、殺意と同等の愉悦に溢れたものであり、女王に身を捧げて命を賭ける事をも厭わないゼノモーフと言えども、恐怖に染まる程のものであった。

 尾が振るわれる度に、数多のゼノモーフの命が刈り取られていく。盾になろうとしたプレトリアンやクラッシャーが前に出れば、プレデターのプラズマキャノンも容易に耐えるそのクラッシャーの頭蓋すらもが容易に握り潰され、また蹴られればプレトリアンは面白い程の"く"の字に折れ曲がって、もう立ち上がる事はなかった。

 それでもどうにかその身へと辿り着いたゼノモーフの一体が、隠し顎をその身に突き立てた。だが、プレデターの鎧をも貫くそれが途中で止まる。

 しかも抜けない。それ程の密な外骨格、そして立ち止まった女王がその隠し顎を突き立てたゼノモーフを睨んだ。

 ただそれだけで、そのゼノモーフは自死を選ぼうと尾を自らの首に突き立てようとした。だが、女王がそれを許すはずもなく。

 捕まれ、強引に引き抜かれたゼノモーフの隠し顎は千切れて、そして地面へと叩きつけられる。

「〜! 〜〜!?」

 声にならない叫び、そこへと高く掲げられた足。

 ドヂャァ! ベヂュッ! ジャムッ! ビヂィッ!

 この空間全体に響き渡るその振動。その一匹を執拗に踏み潰している間、しかしその余りの迫力に他のゼノモーフ達は攻め立てる事が出来なかった。

 そして音が止むと、その足裏からはぼたぼたと血肉が垂れ落ちる。

 ざりゅっ、ずりゅっ。

 それを地面に擦って落とし、女王があらかさまに怖気付いたゼノモーフに向き直れば、ゼノモーフ達の恐怖はとうとう限界に達してしまい、背を向けて逃げ始めた。

 だがそれは、その暴虐の嵐を知らずとして後から次々とやって来るゼノモーフ達とぶつかり合う結果を生み、より激しい混乱となる。

 迫って来る女王。クラッシャーが片手で持ち上げられ、その混乱の中に投げつけられる。

 ぶつかったゼノモーフは文字通りに四散し、そこへと女王がゼノモーフを踏み潰し、蹴り散らしていく。そのまま外へと一匹の配下も連れずに邁進していくのに、残ったプレデリアン達も唖然とするばかりだった。

 

*****

 

 プレデターは武器を作っていた。

 必要なものは多くない。

 ゼノモーフの尾の刃を適切に加工すれば、また大柄なゼノモーフの骨を手に入れられれば、プレデターの膂力にも耐えうる槍も作れる。特に、女王の骨までが手に入っているのだから、今のプレデターの膂力にも耐えうる槍は何本も作れていた。

 流石に伸縮させる機構までは加えられないが、それは戦う為だけには必要ない。

「さて……」

 結局、自分はあの女王にこの身一つで正々堂々と勝つ事は出来ない。肉体は言わずもがな、生きた長さも自らが優っているとも疑問が強い。それにちょっとばかし強くなった程度の肉体一つと原始的な武器で勝とうとはそもそも無理があった。

 如何にあの女王が自らが仕える事を望むような個とはかけ離れていようとも、それは事実で、変わりようがない。

 プレデターはそれも認めた。

 地位の為に、実績の為に。そんな上面で行う狩猟ではなく、挑戦者として、生き延びる為に、失われた誇りを取り戻す為に。

 如何なる手を使ってでも最終的に女王が地に伏し、自らが立ち続けている。

 その結果だけを求めて戦うべき、そうでなければそもそも勝利なぞ微塵も望めない相手だ。

 だから、消耗させる事が必要になる。

 それは自分が誑かしたプレデリアン達に賭かっている。

 そこまでの思考を振り返り、プレデターは自らの思考がゼノモーフ寄りに偏っているのではないかと少し恐れた。

 ……だが、それは仕方がない事だ。

 元を辿れば、俺があの時プレデリアンに巣の中へと落とされてしまったのが悪いのだから。

 数多に作った槍の感触を確かめにいく事にした。

 

*****

 

 女王の支配から解放されたプレデリアン達は百を軽く超えている。

 そのそれぞれが解放された瞬間から新たな女王への道を求め始めたが、同時に自らにその資質がないという事実を理解してしまうプレデリアンも多かった。

 だがそれでも、もう女王の元へと戻るプレデリアンは一匹たりとも居なかった。

 その自ら達を覚醒させ、困惑している間に逃げ切ったプレデターを捕らえる事も難しく、それ以上に内在しているプレデターとしての性質が、抑え付けられている事を良しとしなかった。

 そうしていれば、女王自らが離反した自ら達を屠りに来るであろう事は想像に難くないが、それでもだ。

 屈服と挑戦、後者がどれだけ辛い道であろうとも、プレデリアン達は全員がそれを選んだ。

 そうして支配から解放された群れの中でも強者であるアルファ個体ーー特に繁殖させられているプレデターではなく、敗北して苗床にされた強者を基にして誕生したプレデリアンは、もう既に新たな女王への変態を遂げ始めていた。

 そうでない個体達も自らが女王にならずとも、共にかつての支配者に抗う為に各々が変態を遂げ始めていた。

 そして、そのどちらも強く必要としていたのは、その変態の為の莫大なエネルギーだった。

 

*****

 

 プレデリアンの女王が手強いであろう事は理解していた。

 だからそのプレデリアンの群れを囲んでいた、プレデターという優秀な子種を欲した群れの女王達は、全員が産卵管を引き千切って自ら達も戦闘に赴いた。

 だが。

 外で待機していた女王達は、程なくして異変に気付いた。それぞれの群れが縄張りの守りすらも捨てて、この群れを叩き潰す為に、そしてプレデターという子種を手に入れる為に、全勢力を注ぎ込んだのだ。

 見張りをしていたプレデリアンも、中で待機していた数多のプレデリアンもその数の暴力に鏖殺されていった。

 しかし、順調に思えていたその子供達から次に伝わってきたのは、果てしない絶望。群れの為に命を捨てる時にすら抱かないその感情。

 最初は信じられなかった。だが、確固として伝わって来る。間違いない。

 何があった? 子供伝いに問うても恐慌状態に陥った子供達からは中々伝わって来ない。

 子供達が穴から這い出して来る。その両腕にも尾にも、何も持っていない。念願のプレデターという子種は手に入らない。そしてそのまま、女王が目の前に居ると言うのにどこかへとひたすらに逃げていく。

 その光景も信じられないものだった。

 一匹を捕まえて何が起きた? と聞こうとすれば、恐慌状態のままに、あろうことか自らの首を掻っ切って事切れた。

 呆然とする女王。他の穴の近くに居る女王とも意思疎通をしてみれば、どこも似通った状況のようで、だがしかし、中で起きている事は分かった。

 プレデターが全て殺された事と、プレデリアンの女王が子供達を鏖殺しながら突き進んでいる事。

 いや、いや……どれだけの数をこの群れに投入したと思っている? 合わせて千は軽く超えている。万までは行っているかは怪しいが、それ程の数だぞ?

 どんな相手でも鏖殺出来ないとは信じられないのだが……。

 けれど、目の前で起きている事はそれが事実であると信じざるを得ない。

 一度体勢を立て直した方が良いのでは? そう提案しようとした時、巣の中から肉を潰し、骨を砕いてくる音が聞こえて来た。

 ……やって来ている。

 数多の命を踏み潰しながら、それが。

 そして、穴の中から見上げる程に高く跳び、ズンッ!! と目の前に着地してきたプレデリアンの女王。

 自らよりも一回りも二回りも大きいその女王の全身は緑の血肉で覆われている。当然それは、プレデリアンの女王のものではなく、体を震わせるとそれらが一気に弾け飛んだ。

 びちゃっ、ばちゅっ。

 それらが全て落とされて露わになったその肉体。自らの肉体がみすぼらしく思える程の筋肉と鎧で覆われた全身は、ただの女王から見ても恐ろしく、おぞましく、正に天と地と言える程に違う。

 プレデターが従っていた事にも、中で起きていた事にも納得がいくものだった。

 ずんっ。

 そのプレデリアンの女王が一歩前へと歩いた。

 ただの女王は動けなかった。

 ぺきゃっ。

 逃げようとした仲間に踏み潰されていたゼノモーフが更に踏み潰されて、乾いた音を立てた。

 ……ああ。

 今更ながらに、ただの女王は理解した。

 このプレデリアンの女王にとっては、自らの子供達でさえもが木端に過ぎなかったのだ。全ては自らが動けばどうとでもなると見逃されているだけだった。

 腕が伸びて来て、首を掴まれた。

「ギッ、アッ」

 漸く体が反応しようとした時には、その首は握り潰され、胴は頭から離れて崩れ落ちていた。

 

 どっ、どっ、どっ、どっ。

 背後から重厚な足音が迫ってきている。攻め入ろうとした女王達が集まろうとした時にはもう、プレデリアンの女王はそれらの女王を一匹ずつ屠りに駆け始めていた。

 せめて、他の誰か一匹とでも合流出来れば!

 最も近くに居た女王がまず目をつけられ、必死に逃げていた。

 ダンッ!

 踏み切りをしたような、より強い足音。まだ距離はあるはずだ、それをまさか一飛びで?

 そう振り向いた時には、先程プレデリアンの女王が素手で縊り殺した女王の頭蓋が眼前に迫っていた。

 投げつけられたそれは胴体に派手にぶつかり、女王の外骨格を粉々にしながら四散した。

「ギッ、ガァッ?!」

 崩れ落ちる女王。そこに追いついた女王はその胸を踏んで両手をその冠に手を掛ける。

 ーーや、やめっ

 ごりゅんっ。

 

*****

 

 逃走したゼノモーフ達が恐慌状態から落ち着いたのは、自らの縄張りに戻って、更にその巣の中にまで辿り着いてからだった。

 安心出来る自らの巣の中。柔らかい壁。暖かい、慣れ親しんだ空間。

 そこでやっと、女王の命令に背いてしまった事に気付いて絶望し、しかしそれでもあの場所に戻りたくないという恐怖が勝る。

 ゼノモーフは群れの為に命を投げ打つ事もあるとは言え、そこには自らの意志、感情がある。それは社会性を持つただの虫やらと確固として区別出来る点であり、だからこそ、その心は無惨にもへし折れてもう元には戻らない。

 まるで抜け殻のように呆然とするゼノモーフの前に、唐突にプレデリアンが数多に現れた。

 見てきたそれより巨大な、女王になりかけの個体から、はたまたスピードやパワーに特化した形までのそれぞれが、口を緑色のゼノモーフの血で汚していた。中に残っていたのは女王が残したエッグチェンバーや捕獲した苗床、食料など……。

 どうしてプレデリアンがここに居るのか。それを考える気力も、抗う気力も、また逃げる気力すらもゼノモーフにはもう、なかった。群れの為に生きる事を放棄してしまった時点で、自らの存在価値も失われていた。

 ぐちゅ、ぐちゅ。ぺき、ぱき。べりり、ぶちっ。ごきゅん。

 プレデリアン達はそんな、どうしてか抵抗しないゼノモーフ達をひたすらに腹に収めた。

 

*****

 

 どうにか集まる事の出来た女王達。その全ての子供達に恐慌状態は伝播して、殆どの子供達は命令に従わなくなってしまっていた。

 逃げる事も適わない。群れの縄張りにしか逃げる場所もなければ、そもそも肉体的な部分でプレデリアンの女王に優っている点はない。勿論、脚力も。

 戦うしかないが、こんな数多の子供達を能無しにしてしまう程の存在に、勝てる望みなどあるのだろうか?

人間が調査したところ、IQは175もあったというその優れた脳味噌が集まろうとも、策は一つも思い浮かばなかった。それにそこらの動物を基にして誕生した自ら達よりも、プレデターという優れた文明を持つ生物を基にして誕生したプレデリアンの女王の方が知能も優れている事を内心理解していた。

 分かるのは、導き出せたのは、先に死亡した女王と大して変わらず。あのプレデリアンの女王は、自らの子供達を生み出して群れを作る必要すら無かったのだ。

 現に、今暴れているのは女王ただ一匹。子供のプレデリアン達は何もしていない。

 個として幾多の群れの全勢力すら上回る力を持つ、そのプレデリアンの女王にが群れを形成していたのは、単純に自分の身の回りを世話させたかっただけか、それかゼノモーフとしての種の意向に惰性で従っていただけか。

 その程度の理由だったのだ。

 

 どっ、どっ、どっ、どっ。

 遠くから足音が響いてくる。その行手を阻む木々は弾けて吹き飛び、近付くに連れて地響きすら起きるその迫力。

 そうして堂々と目の前に姿を表したプレデリアンの女王達に対して、ただの女王達は誰も先手を仕掛ける事はなかった。

 女王と成ったそれぞれは、もう子供のように命を捨ててまで群れを守ろうとする気概など持つはずもなく、誰か一匹でも生き残る為に捨て身になる事も出来なかった。

 それに対し、一度立ち止まったプレデリアンの女王は、ふーっ、すーっ、と大きい呼吸音を鳴らしている。その歯を剥き出しにしている顔は、殺意と愉悦に塗れていた。

 それに対して怒りの感情は大してないのが、更に異質さを感じさせる。

 本当に、この女王は群れの事すらも大切に思っていなければ、複数の女王を相手取る事に何の迷いも持ち合わせていないのだ。

 ずん。

 プレデリアンの女王が一歩踏み出した。その一歩は、それぞれの間合いが、尾の届く範囲が重なる寸前。

 ずん!

 更にもう一歩。プレデリアンの女王は変わらず堂々と、その間合いへと入り込んだ。女王達との距離は、一歩踏み込めば頭がぶつかる程。

 余りの躊躇いの無さに、女王達は一瞬硬直する。しかしその直後、女王達は意を決してプレデリアンの女王に襲い掛かった。

 

 目の前に居た女王が腕を振りかざしながら突っ込んだ。その両隣に居た女王は胸を、首を貫こうと尾を伸ばし、更にその両脇に居た女王は後ろへと回り込んだ。

 べぎゅっ!

 響くその音は、突っ込んだ女王の頭がプレデリアンの女王に掴まれ、容易く握り潰された音。弾ける緑色。

「ガッ……」

 その断末魔は伸ばした尾を絡め取られながら、逆に喉から首へと尾を貫かれた女王の末路。

「ギアアッ?!」

 その悲鳴は、伸ばした尾が容易く掴まれ、握り潰しながら千切られた結果。

 崩れ落ちた女王を踏み潰しながら、プレデリアンの女王はその千切った尾を、怯んでいる元の持ち主の脳天へと思い切り突き刺した。

 そうすれば突き刺されたどころか、頭そのものが地面へと叩き落とされてベヂャッ! と弾け飛ぶ。

 また、突き刺した尾をずっ、と引き抜けば、がくがくと震える腕でその尾を掴もうとしていた女王も崩れ落ちる。

 ……たった一合で三匹の女王が瞬く間に殺された。

 その事実は受け入れ難く、受け入れ難く。背後を取ったはずの残り二匹の女王は、攻める事が出来ないままにプレデリアンの女王が振り向くのを許してしまう。

 ずん。

 また歩み寄ってくるそのプレデリアンの女王。

 ざり……。

 残された女王達は思わず後ろに足を引いた。

 ずん。

 その直後、二匹の女王はとうとう背を向けて逃げ出した。

 しかし一匹は尾を掴まれて捕らえられ、もう一匹は恐怖の余り、そのプレデリアンの巣の中へと飛び込んでいった。

「ギィッ、アッ、ガッ、ガァッ!!」

 転んで手で地面に虚しく爪を立てる女王を引っ張ると、プレデリアンの女王はその尾を両手でしっかりと掴み直す。

 そして次の瞬間、女王の巨体は宙を舞っていた。

 ドヂャッ!

 半回転し、背中から地面へと叩きつけられたその女王。背中の突起は余す事なく砕け散り、背骨すらもが砕けてしまう。

「〜〜ッ?!」

 肺から空気が飛び出し、のたうち回る事すらままならないその女王は、また投げられて今度は腹から地面へと叩きつけられる。

 そうして二度も叩きつけられて仕舞えば、全身は砕けて自由にされている四肢すらもう動かせない。そんな女王の首を、プレデリアンの女王は踏みつけた。

「…………」

 しかし、もう命乞いすら出来なくなっていた女王は、プレデリアンの女王にとっては玩具にすらならなかった。

 踏み砕いてから、巣の中へと意識を移した。

 

 巣の中へと逃げ込んだ女王は残っていたプレデリアン達に襲われ、必死に逃げていた。

 至る所に散らばる子供達の死体。血に染まったその巣の中。

 プレデターから受け取ったこの巣の構造さえ頭からは吹き飛び、右へ、左へととにかくプレデリアンが居ない方向へと逃げて逃げて、逃げ走る。

 もう、頭では理解している。生き延びる術はないと。だが、女王としての生存欲求がそれを認める事を拒否していた。

 そして呼吸が乱れても、走る速度が衰えても、プレデリアン達はただただ距離を取りながら追いかけてくるばかり。

 これは……誘い込まれている。

 そう、絶望に陥った頭の僅かに残った正常な部分がそう判断してしまえば、これ以上酷い目に遭う事すらも拒絶しようと、自ずと尾が自らの首へと伸びていく。

 その途端、プレデリアン達が全力で駆けてきた。

 尾を掴まれ、数匹掛かりで引き千切られた。

「ギッ、ギアッ」

 悲鳴を上げながら抵抗しようとするが、その振り回される腕も簡単にへし折られ、膝をつくよりも先にその脚には、尾で、隠し顎で数多の穴が作られていった。

 

 ずりゅ、ずりゅ。

 血塗れの道を、血塗れになった、もう自死すら叶わなくなった最後の女王が引きずられていく。

 穴だらけになった脚の付け根にはプレデリアンの尾が幾多に締め付けられ、丁寧に失血死も許さないようになっている。

 女王も虐げる時すらも殆ど無感情だったそのプレデリアン達は、女王の子供達よりも遥かに強く支配されていた。自由など微塵もないであろうその所作。

 最後の抵抗にと、女王は言った。

 ーー女王からも何とも思われていないのは、哀れだな。

 びく、とプレデリアン達がそれに対して震えたが、しかしそれ以上何もして来なかった。

 ずりゅ、ずりゅ。

 程なくしてプレデリアンの女王の前へと辿り着いた。

 ーープレデターが貴様等を唆したのだろう?

 抵抗にと答えずに居ると、容赦無く傷口に指を捩じ込まれた。激しい悲鳴を上げた女王は、そうだと訴えた。

 だが。

 ーー我等には生物を好きにする手段もある事を忘れていたようで何よりだ。

 ぞっとした時には、もう手遅れだった。

 殺してくれと懇願する女王は、しかしプレデリアン達に引きずられて壁へと磔にされると、丁寧に、丁寧に四肢を粘液と同化されていく。

 ーー貴様は永遠に生かして甚振ってやろう。何、気にするな。すぐにでもその隣に裏切り者も添えてやる。孤独はつまらないからな。

 そうして、プレデリアンの女王はその裏切り者を捕える為に去っていった。

 残るのは、その子供達。プレデリアンの女王が去っていった事により多少の自由を取り戻したそれぞれは、今更ながらに巣を荒らされた怒りの矛先を、最後の女王へと向け始めていた。




プレデリアンの女王:
身長: 通常の女王の1.2~1.4倍を想定。通常の女王が4.5mらしいので、大体5.5~6.5mくらい。
体重: 通常の女王の2倍程度を想定。通常が10tらしいので、20tくらい。

身長自体はそこまで大差ないけれど、単純にプレデリアンの女王として以上に強くならなければプレデリアンを統率出来なかったのもあって、更に強く、肉体は密になっている。
備える能力自体は通常の女王とそんなに変わらないけれど、スペックは段違い。
ゼノモーフの因子を取り込む前のプレデターが飛び越えられなかった崖をも跳んで乗り越えるし、その脚力は、全力を出してしまえば、少なくともこの星に逃れられる者は居ない。
ゼノモーフの隠し顎を食らってもそれが外骨格を貫く事は出来ない。
両腕はクラッシャーの冠だろうと簡単に握り潰し、尾を振り回せば切断出来ないものも基本ない。
隠し顎の威力は、きっと戦車だろうとどでかい穴を空けてみせる。

ただ、弱点は無い事もない。

……元々の構想だと、周りの群れ全てに攻め込まれたら流石に苦戦するくらいだったんだけど、どうしてか無双するレベルへとやばいアッパー調整入りました。

次もまた時間空きます。

Predator: Hunting Grounds, Aliens: Fireteam

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