クエストを終え、ボロボロになって帰ってきた晴哉。
「ハルさん?!大丈夫ですか…!?」
ガブリエルが心配になって寄り添った。
「だっ…駄目かもしれない。」
晴哉は自然と息が荒くなる。
「は、ハルさぁ〜ん…」
ガブリエルが泣きそうになっていると、どこからか光の粉が降り注ぎ、晴哉の傷はみるみるうちに癒えた。
「ご心配なさらないで。」
進化ビナーが晴哉の傷を癒やしてくれた。
「あ、ありがとう…ビナー。」
「そんな傷だらけで“別れ”なんて、寂しいでしょう?」
ビナーがそう言った。
もう終わってしまったのだ、長い長いと思っていた強者の界がついに終わった。
晴哉は涙を堪えた。
「さ、来てください。」
ビナーに手を引かれ、晴哉はモンスターBOXへと入った。
──ーモンスターBOX 広場
特になんら変わりない広場。
しかし今日はモンスターが全然いない。
「なぁ…ビナー。なんで広場に来るんだ?」
「いいですから。付いてきてください♪」
ビナーは楽しげにそう言った。
「ばっ!」
進化前のソロモンが急に後ろから驚かせてきた。
晴哉は思わず声を上げた。
「あは、びっくりした?」
「な、なんだよ急に…」
「はは、ハルくん。もうお別れだね。」
モーセも歩いてきた。
「主人様、お疲れ様でございます。」
ミロクも来た。
なんなんだ──と言いたいが、もう晴哉はなんとなく予想はついていた。
『ご主人!!!!強者の界クリア!!おめでとう!!!!!』
突然、無数の声がモンスターBOX中に響いた。
晴哉がふと周りを見ると、窓からたくさんのモンスターが顔を覗かせていた。
そこにはジキルとハイド、マナやカエサル、などの顔見知りの姿もあった。
「ハルさーん!あなたとの実験は素晴らしかったですよ!!」
「ハ〜ルさ〜ん!どうかお元気で〜!!」
ジキルとマナが手を振っていた。
モンスター達の声援と、拍手に包まれ、晴哉の目からは自然と涙が溢れた。
「あらあら。」
ビナーが困ったように微笑んだ。
「だってよ……こんなの…嬉しいだろ……」
晴哉は拭っても溢れる涙を拭いつつ言った。
「ハルくん。」
「ありがとう。私、ハルくんと会えてなんだか元気が出たよ。」
「……あぁ…俺だってありがとう…お前らと会えて良かったよ…」
晴哉は涙を流しながら答えた。
モーセもソロモンも涙目になっていた。
「皆さん!!ハルさんとはもうお別れです。もう一度!ハルさんを見送るために!皆で叫びましょう!さようなら!!」
『さようなら!!!』
またBOX中に声が響いた。
晴哉はもっともっと涙が溢れてきた。
「もう…良いですか?ハルさん。」
ガブリエルが立っていた。
その隣には青色の渦があった。
あれが恐らく現実へ繋がるゲートだろう。
涙で霞んでよく見えなかったが。
「あぁ、でも最後に……」
晴哉は泣くのをピタリと止め、後ろへ振り向いた。
「皆!!!ありがとう!!!」
晴哉が思い切り叫ぶと、モンスターも「ありがとう」と叫んだ。
「じゃあな。ソロモン、モーセ、ビナー、ミロク。」
「またいつか、お呼びするかもしれませんよ。」
ガブリエルがそう言った。
晴哉はもう何も言うことなく、ゲートに入り、モンスター達の声援に包まれながらモンストの世界を去った。
──ー気づけば晴哉はいつもの自分の部屋の椅子に座っていた。
課題もやった後、モンストを開いたスマホがポツンと机の上に置かれていた。
(あぁ…終わったんだな…)
晴哉はまた泣きそうになったが、堪えた。
でもこのことは一生忘れないだろう。
──だって心の中に、それは永遠に残り続ける。
あの世界で学んだこと、あの世界で作った仲間達。
決して無駄ではない。
あの世界で得たことを糧とし、晴哉はこれから強く、強く生きていく。
そう決めた。
────ーおわり