強者の界   作:24代目イエヤス

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『それは永遠に』

クエストを終え、ボロボロになって帰ってきた晴哉。

 

「ハルさん?!大丈夫ですか…!?」

 

ガブリエルが心配になって寄り添った。

 

「だっ…駄目かもしれない。」

 

晴哉は自然と息が荒くなる。

 

「は、ハルさぁ〜ん…」

 

ガブリエルが泣きそうになっていると、どこからか光の粉が降り注ぎ、晴哉の傷はみるみるうちに癒えた。

 

「ご心配なさらないで。」

 

進化ビナーが晴哉の傷を癒やしてくれた。

 

「あ、ありがとう…ビナー。」

 

「そんな傷だらけで“別れ”なんて、寂しいでしょう?」

 

ビナーがそう言った。

 

もう終わってしまったのだ、長い長いと思っていた強者の界がついに終わった。

晴哉は涙を堪えた。

 

「さ、来てください。」

 

ビナーに手を引かれ、晴哉はモンスターBOXへと入った。

 

 

──ーモンスターBOX 広場

 

特になんら変わりない広場。

しかし今日はモンスターが全然いない。

 

「なぁ…ビナー。なんで広場に来るんだ?」

 

「いいですから。付いてきてください♪」

 

ビナーは楽しげにそう言った。

 

「ばっ!」

 

進化前のソロモンが急に後ろから驚かせてきた。

晴哉は思わず声を上げた。

 

「あは、びっくりした?」

 

「な、なんだよ急に…」

 

「はは、ハルくん。もうお別れだね。」

 

モーセも歩いてきた。

 

「主人様、お疲れ様でございます。」

 

ミロクも来た。

なんなんだ──と言いたいが、もう晴哉はなんとなく予想はついていた。

 

 

 

 

『ご主人!!!!強者の界クリア!!おめでとう!!!!!』

 

 

 

 

突然、無数の声がモンスターBOX中に響いた。

 

晴哉がふと周りを見ると、窓からたくさんのモンスターが顔を覗かせていた。

そこにはジキルとハイド、マナやカエサル、などの顔見知りの姿もあった。

 

「ハルさーん!あなたとの実験は素晴らしかったですよ!!」

 

「ハ〜ルさ〜ん!どうかお元気で〜!!」

 

ジキルとマナが手を振っていた。

モンスター達の声援と、拍手に包まれ、晴哉の目からは自然と涙が溢れた。

 

「あらあら。」

 

ビナーが困ったように微笑んだ。

 

「だってよ……こんなの…嬉しいだろ……」

 

晴哉は拭っても溢れる涙を拭いつつ言った。

 

「ハルくん。」

 

「ありがとう。私、ハルくんと会えてなんだか元気が出たよ。」

 

「……あぁ…俺だってありがとう…お前らと会えて良かったよ…」

 

晴哉は涙を流しながら答えた。

モーセもソロモンも涙目になっていた。

 

「皆さん!!ハルさんとはもうお別れです。もう一度!ハルさんを見送るために!皆で叫びましょう!さようなら!!」

 

 

 

『さようなら!!!』

 

 

 

またBOX中に声が響いた。

晴哉はもっともっと涙が溢れてきた。

 

「もう…良いですか?ハルさん。」

 

ガブリエルが立っていた。

その隣には青色の渦があった。

あれが恐らく現実へ繋がるゲートだろう。

涙で霞んでよく見えなかったが。

 

「あぁ、でも最後に……」

 

晴哉は泣くのをピタリと止め、後ろへ振り向いた。

 

 

「皆!!!ありがとう!!!」

 

 

晴哉が思い切り叫ぶと、モンスターも「ありがとう」と叫んだ。

 

「じゃあな。ソロモン、モーセ、ビナー、ミロク。」

 

「またいつか、お呼びするかもしれませんよ。」

 

ガブリエルがそう言った。

 

晴哉はもう何も言うことなく、ゲートに入り、モンスター達の声援に包まれながらモンストの世界を去った。

 

 

 

 

──ー気づけば晴哉はいつもの自分の部屋の椅子に座っていた。

課題もやった後、モンストを開いたスマホがポツンと机の上に置かれていた。

 

(あぁ…終わったんだな…)

 

晴哉はまた泣きそうになったが、堪えた。

でもこのことは一生忘れないだろう。

 

──だって心の中に、それは永遠に残り続ける。

あの世界で学んだこと、あの世界で作った仲間達。

 

決して無駄ではない。

 

あの世界で得たことを糧とし、晴哉はこれから強く、強く生きていく。

 

そう決めた。

 

 

────ーおわり

 

 


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