激闘の末、五界をクリアした晴哉はモンスターBOXに久々に帰ってきた。
「ぱんぱかぱんぱんぱ〜〜ん!ハルさん!五界クリアおめでとうございます〜〜!」
進化前のガブリエルが盛大に迎えてくれた。一人で。
「五界クリアでこんな祝ってもらえるのか?」
「当たり前じゃないですか。だってもうあと半分ですよ!」
晴哉はガブリエルのその言葉を聞いて複雑な気持ちになった。
クリアすれば、ようやく家に帰れるが、せっかく仲良くなれたソロモン達とは別れることになる。
「どうしました?」
そんな感情が顔に出ていたのだろうか、ガブリエルが心配してくれた。
「いいや…なんでもない。」
「と、いう訳で。今日はささやかな祝いの日です。名一杯休んでくださいね!」
特にパーティーとかも用意してくれる訳でもなく、名一杯休め…という日。
パーティーなどはしない方が、晴哉にとっては良かった。
別れが辛くなる。
そんなこんなで、晴哉はソロモンの部屋に泊めてもらう…のではない。
別の奴に誘われた。嫌な方だ。
「どうです?美しいでしょう?」
「ヒャハハハハハハハハ!」
ジキルとハイドだ。
ジキルはフラスコの中に入った変な液体を晴哉に見せつけてきて、ハイドはベッドの上で跳ねまくっている。
「は、ははは…」
晴哉はもう笑うしかなかった。
「どうしたのです?浮かない顔をして。もっと楽しく行きませんか?」
「ヒャハハハハハハハハ!!」
「ちょ、ちょっとトイレに行ってくるよ。」
晴哉はそそくさと部屋を抜け出した。
(アイツらといたら、こっちまであぁなっちまいそうだ…)
トイレになど行かず、そのままモンスターBOXの広場へと直行した。
広場はたくさんのモンスターが休憩を取る場所。緑が生い茂り、真ん中には見上げれないと見えないほどの大木がある。
顔見知りがいればいいが。
「おや?ハル君じゃないか。」
ベンチに座っていた進化のモーセがこちらに気づいて話しかけてきた。
「おぉ、モーセ。元気か?」
「相変わらずだよ。」
晴哉も隣にさり気なく座る。
「見てごらん、あの木。」
「あれは“ビナーさん”が毎日育てている木だ。
どうだい?とっても綺麗だろう?」
「ビナー…さん?」
ビナー。メタイ話をすれば、新春ガチャで新登場したキャラだ。公式的な話でいうと、彼女は『天聖』の一人、希望へと導く者として知られているらしい。
「ハル君はあったことあるかい?」
モーセの言葉に、晴哉は首を振った。
「丁度今、周りの花の水やりでもしてるんじゃないかな。会いに行ってごらんよ、ハル君なら話してくれるさ。」
「へぇ、分かった。ちょっと会いに行ってみるよ。じゃ、またな!」
晴哉は立ち上がってそう言うと、木へ向かって走った。
モーセは笑顔で手を振って見送った。
──広場 大木周辺
一人のピンクの髪の女性が、ジョウロで鼻歌交じりに花に水をやっていた。
「あら、誰か来たようですね。」
近づいてきた晴哉に気が付き、くるっと頭を向ける。
「こんにちは、ハルさん。はじめまして、ですね。」
彼女がビナー。木属性のモンスターだ。
「こ、こんにちは。」
「この木が気になりまして?」
「え、えぇ…」
ビナーは再び、木の方向へ振り向くと、こう言った。
「この木は、“祈りの木”と言うんです。ほら、あれを見てください。」
ビナーが指差した方向を見ると、そこにはヒトポタスやパワタス、スピタスが気持ち良さそうに眠っていた。
「この木に祈れば、あのタス達が力を授けてくれるんです。」
「祈れば…?」
「そう。祈れば叶うんです。単なる祈りがいずれ力となります。」
ビナーが目を瞑って言う。
「もう強者の界を半分突破したらしいですね。」
「えぇ、疲れましたよ。」
「なら、この木に祈って見てください。」
ビナーが晴哉の背中を押す。
「祈るって…どうやれば?」
「両手を握って、目を瞑ってください。そうすれば、自然と、タス達は力を貸してくれます。」
晴哉は言われた通り、両手を握り目を瞑って祈りを捧げた。
「目を開けてはいけませんよ。」
晴哉は感じていた。背中にじんわりと感じる、ほのかな暖かさを。
ヒトポタス、パワタス、スピタスが晴哉の背中にそっと手を差し伸べていた。
力を授けたタス達は再び木へと戻って行った。
「もう開けていいですよ。」
「どうなったんですか?!」
晴哉は焦りながら聞く。
「彼らは、あなたに希望と勇気を授けてくれました。これからあなたが進み続けるための…ね。」
ビナーはニッコリと微笑んだ。
「ありがとう。ビナー。」
「お礼なら、彼らにどうぞ。」
晴哉は木の方を向き、軽く頭を下げた。
「またどこかで会おう!」
「さようなら〜」
ビナーは手を振って見送ってくれた。
──
「力を授けてもらったんだね。」
モーセがベンチにまだ座っていた。
「あれは僕らモンスターが必ずもらわなければならない物だ。」
「必ず…?」
「パワタスは勇気を、ヒトポタスは希望を、スピタスは正義を授けてくれる。」
モンストのゲーム内では、パワタスはパワー、ヒトポタスはヒットポイント、スピタスはスピードを授けてくれる。
実際にはこのように表現されてるらしい。
「勇気は力に、希望は命へと、正義は己を動かす動力源として…ってね。」
「僕らはあの力を授けてもらってから、必ずクエストに行く。あの力が無ければ、僕らは無力も同然なのさ。」
モンスター達は必ずあの木で三つの力を授かってからクエストへと行く、必ず。その力が無ければ無力だ──
「いましたよハルさん!さぁ!私の研究の続きと行きましょう!!」
「ヒャハハハハハハハハ!!」
ジキルが晴哉の学ランをガシッと掴んだ。
「あ、あははは…ば、バイバイ…モーセ。」
モーセは微笑みながら、ジキルに引っ張られる晴哉を眺めていた。
「彼も、分かってくれたかな。」
モーセは杖を持ち、ベンチをようやく離れた。
────
「ハル…面白い男だ。…奴に勝つためには、もっと、もっと“強さ”が必要だ。」
「強さこそが正義、強さこそが我の生き様。」
「強く無ければ、──すぐに死ぬ!!」
ガルドは神殿で剣を思い切り振るいながら叫ぶ。
「強さ、強さ、強さァァ!!」
──欲する物にはいずれ天罰が下る。
そんなことを彼はまだ知らなかったのだろう。
──六界に続く
おまけ回です。おまけっつてもバチコリストーリーに関係ありますけども…