荒ぶる神々に救いを   作:マスターBT

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どうも。今回はエノクの血の力が見れます。使う理由はすごくしょうもないですけど


第4話

フェンリル極東支部。

 複数の要因が複雑に絡み合った結果、他のどの支部よりアラガミが多く強い場所。当然、そこに配属されるゴッドイーターも他の支部より強い者が多い。例えば雨宮リンドウ。ゴッドイーターとして最も長いキャリアを持っており、ウロヴォロスを単騎で撃破した実績を持つ男。エノクとて名を覚えているゴッドイーターの一人だ。

 難しいことが分からなければ、所謂精鋭の集う場所と思っていれば構わない。本日、フライアはその極東支部を訪れていた。

 

「ラケルに言われたから引き受けたが、なんで俺がヴァジュラ共の相手をしなければならないんだ?」

 

『私の最高戦力を見せつける為ですよエノク。極東ではヴァジュラ一体を倒せれば一人前らしいので、貴方なら10体倒せますよね』

 

 無茶な要求である。今現在、エノクの近くには5体のヴァジュラが確認できている。

 何故、ラケルがこれ程までの無茶振りをしているかというと極東支部所属のゴッドイーターがあろうことかフライアから降りてきた面々を見て一言。

 『お高く纏まった奴らか…弱いくせに雰囲気だけは一人前だな』

 などと言ったのだ。それがラケルの耳に入り、ブラッドの面々は兎も角、エノク(お気に入り)が馬鹿にされた事に苛立ち、現支部長である榊に頼みという名の脅しでエノクが戦う様子を中継する様に用意させた。

 

「近くには5体なんだろ?数足りてないが」

 

 いくらアラガミ動物園となっている極東支部とはいえ、ヴァジュラがそう沢山いたら悪夢だ。

 

『大丈夫なのかい?一人でどうこう出来る限界を超えてると思うけど』

 

『エノク。血の力も存分に振るっていいですよ』

 

 榊の発言に一切答える事なく、ラケルはエノクに指示を出す。

 血の力を存分に使っていいとは……かなり苛立ってるなと思うエノク。しかし、彼にはその理由は分からない。

 

『ガァァァァ!!』

 

「ウルセェ」

 

 遂に気がついたヴァジュラが咆哮する。それを片耳押さえ睨み付けるエノク。

 一体が咆哮すれば他も連鎖的にエノクという存在に気がつく。連続的に咆哮していく事で苛立ちが増していくエノク。三体目の咆哮辺りから目が座り始めていた。

 バチバチとヴァジュラが雷を纏う。このアラガミの強い所は自由に雷を操れる事だ。

 電撃というのは生物に致命的なダメージを与える。生物というのは身体の構成に水分が必ずと言っていいほど含まれている。

 純粋な水というのは電気を流す事はないが、生物は水一つでは生まれない。故に電気をよく通してしまう。さらにその電気により水分が蒸発。肉体に致命的な欠陥を起こす事に繋がるのだ。自然に起きる電気の最大が雷。落雷による被害は説明するまでもないだろう。

 

「バチバチと…俺はな静電気が大っ嫌いなんだよ!」

 

 エノクを中心に強力な感応波が発生する。

 直後、ヴァジュラ達が身に纏っていた雷が完全に霧散していく。

 

『ガルゥ?』

 

 首を傾け不思議そうにするヴァジュラ。奇しくも極東支部にいるラケル以外の人間達と同じ動きだ。

 見ようによっては少し可愛いかもしれないが残念。この男にそんな感性はない。

 

「とっとと失せろ!」

 

 跳躍。その後重力に従いヴァジュラの脳天に神機を突き刺す。

 

『ガァ!』

 

 当然それだけで死に至る生物ではない。

 エノクは笑みを浮かべながら突き刺した神機を回転させる。肉を掻き混ぜる嫌な音ともにヴァジュラの肉が脳が物理的に混ざる。

 振り払う為に暴れても、深く刺さった神機とエノクは吹き飛ばない。未だにヴァジュラは雷を纏う事はない。

 

「まずは一体ぃ!」

 

 グシャリという音共に神機がヴァジュラの脳天から顎下まで貫通する。そのまま捻り切る事でヴァジュラの頭部と胴体が別れる。

 凄まじい返り血がエノクに降り掛かるが気にせず神機に刺さったままの頭部を振り払う。そのまま捕食モードに切り替え首なしヴァジュラのコアを喰らう。自身の力が使えなくなり混乱している間に同族が消された。その事実を認識したか単にエノクを捕食対象から敵と認識を変えたのか。ヴァジュラ達は各々の動きを見せる。

 距離を取るもの、エノクへと詰め寄るもの、その場で警戒するもの。

 エノクを殺したければ纏めてくれば可能性があったかもしれない。逃げるのなら全員で逃げれば一体ぐらいは逃げれたかもしれない。だが、そのどちらもしなかった。その時点で結末は決まった様なものだ。

 エノクに向かってきたのは二体。雷が使えなくてもヴァジュラの力は驚異だ。ゴッドイーターといえど直撃を受ければ挽肉となる。

 二体の突進を獰猛な笑みで見つめた後、二体の隙間を縫って駆け抜ける。小さな目標に向かった巨大な二体。

 

ゴォォォン!

 

 二体は凄まじい勢いで互いに頭突きをして、頭を揺らす。

 口を大きく開け下を向く一体。視界を取り戻し捉えたのは、アサルトに切り替え自身の口へと銃口を向けているエノクの姿だった。

 

「お目覚めか?じゃあ死ね!」

 

 連射!連射!連射!連射!

 アサルトから凄まじい勢いで弾が吐き出される。消費するオラクルより彼が得るオラクルの方が多いから出来る荒技。しかし、連射弾と神属性をぶつけていくだけでは流石のヴァジュラも落ちない。もう一台の覚醒の方が仕留めきるより早い。

 そして、アラガミには同族意識なんてものはない。ただ、同種を食べても美味しくないから食べないだけだ。故に蜂の巣にされているヴァジュラへの遠慮など一切なく目の前で背中を晒しているエノクへと噛み付きにいく。

 

「ほれ。食いたければ同族を食えよ」

 

 それに気づかないエノクではない。背後のヴァジュラが攻撃するタイミングで跳躍。

 目的が消えたヴァジュラの噛みつきは同族のヴァジュラの顔面を抉る結果となった。重なった二体に対し特殊なエフェクトを纏った一撃が降り注ぐ。

 

 ブラッドアーツ:スピンペンデュラム

 

 空中でエノクが回転すると同時にヴァジュラ二体が引き裂かれていく。

 彼が着地する頃には、ズタズタになり動かなくなったヴァジュラと瀕死のヴァジュラが生まれた。動かなくなった方を冷静に捕食すると、エノクが自分を見ていないと思ったのかヴァジュラが傷を癒す為に捕食行動に走る。

 

「…逃がさねぇよ?」

 

 ヴァリアントサイズの特徴である咬刃展開状態へ移行。

 ぐるっと辺りを一回転させる。結果、未だそこまで離れていなかったヴァジュラを両断。コアごと切り裂いてしまった。

 

「あぁ?コアごと切っちまったか。ラケルが喜ばねぇ…」

 

 残ったのは二体のヴァジュラ。最初に距離を取ったヴァジュラと様子見をしていたヴァジュラだ。

 どちらも不用意にエノクに襲いかかる事はせずエノクの出方を見ている。どうやら先の三体より戦い慣れている個体の様だ。しかし、そんな事はこの男に関係ない。来ないと言うならこちらからいくまでだ。

 作戦というものなどカケラもなく、目の前で様子見していたヴァジュラへと襲いかかるエノク。それを見たヴァジュラは前脚を横なぎする。それをエノクはシールドで受け止め、即座にバックステップ。先ほどまでエノクがいた場所にヴァジュラの噛みつきが通過する。

 

「少しは歯応えがあるやつか?まぁ、その程度で良い気になられても困るがな!」

 

 再び神機を咬刃展開状態へ移行させ横なぎに振るう。それをヴァジュラは空中へ跳躍する事で回避する。

 直後、ヴァジュラが見たのは自分へと振り下ろされる刃だった。ラウンドファングから繋がる攻撃、バーティカルファング。今、振り下ろされてる刃の正体だ。空中では避ける事は出来ない。ヴァジュラの身に刃が深々と突き刺さる。

 

「そら、抉り喰らえ」

 

 伸びた刃が引き戻される。クリーヴファング、振り下ろした刃を引き戻し直線状のアラガミを斬り裂く攻撃だ。

 ヴァジュラの肉が引き裂かれ、悲鳴の様な咆哮をあげる。そして、それと同時に離れていた一体がエノクへ襲いかかる。獲物と隙が出来るまで狡猾に待ち続けたのは正しい。しかし、侮ってはならない。神を喰らう者にして荒ぶる神を宿す男。そんな者が後ろで待機していただけのヴァジュラを忘れている訳がないのだから。

 ヴァジュラの視界が光に覆われる。攻撃すると同時に閃光手榴弾を取り出し、迫ってきた時点でピンを抜いていた。当然、斬り裂かれたヴァジュラもその光に視界を奪われる。

 

「甘いっての。所詮は獣だな」

 

 ゆっくりと捕食形態に形を変え、ヴァジュラを喰らいバースト状態へ移行。神機を銃形態に切り替え、捕食で得たアラガミバレットを斬り裂いたヴァジュラへと全て放つ。アサルトの連射力で放たれた銃撃に視界が潰されながらも攻撃しようとする。しかし、焦っているのだろう。エノクにより雷を発する事は出来ないのに吠え雷を起こそうとする。

 

「まぬけ」

 

 命を刈り取る刃が首に刺さり、そのまま胴体まで縦に振り下ろされる。コアが露出したところを捕食形態で喰らう。これで4体目のヴァジュラが死んだ。残るは一体。

 

『ガァァァァ!!』

 

「ウルセェ!」

 

 吠えると同時に放たれた前脚をバースト状態で強化された筋力と苛立ちで斬り裂く。

 ヴァジュラの右前脚が宙に舞い、地に落ちる。ヴァジュラの選択は早かった。目の前の存在から逃亡。

 生存本能に突き動かされた行動だ。

 

「はぁ…追いかけるのが手間だから逃げんな」

 

 グッと脚に力を込めて加速。ヴァジュラの尻尾を掴み、振り払おうとする反応を利用しヴァジュラの目の前に着地する。

 口を大きく開けたヴァジュラに身体を捻り神機を進路上に出し、ヴァジュラ自体の速度を利用し斬り裂く。刃は途中で止まるがヴァジュラの生命活動も停止する。5体のヴァジュラが全て討伐された。

 

「……はぁぁ、これで帰って良いのか?ラケル」

 

『えぇ。迎えは送ってありますのでそれに乗って戻ってきてください。今日はとても気分が良いので褒美になんでもしてあげますよ』

 

「本当か!?んじゃ、戻ったらゆっくり話そうぜ。流石に疲れたからなぁ」

 

『構いませんよ。では、待っていますね。私の可愛いエノク』

 

 極東支部のゴッドイーター達が認識を変えるには十分すぎる戦果を叩き出した。

 なお、エノクが戦っている間終始どことなくドヤ顔でいたラケル先生が居たという。

 




え?ドヤ顔ラケル先生が見たい?私も見たいよ…!
番外編とかで、この時のラケル先生が何してたか書くのもアリかと思いました。

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