Muv-Luv Alternative shattered skies   作:vitman

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ちょっと短め


Mission 2-2

 ある日、ボーニング社戦術機開発部門主任であるフランク・ハイネマンのもとに一通のデジタルメッセージが届いた。

 はて何か重要な会議の通達かと思えば違う。送り主の名前は聞いたことも見たこともないもので、アメリカ陸軍の衛士からのものとは分かったが、それ以外はしっかり調べない限り出てこないような末端の人物のようだった。

 そんな人物が何の用なのかとメッセージの文を読んでみれば、そこに書かれていた内容はハイネマンが特に気に入るような面白いものだった。

 

「F-4の近代化改修計画書……中々興味深いものを送ってくるものだ」

 

 F-4の開発元はマクダエル・ドグラム。これを知らない衛士はいないだろうに、わざわざ別の会社のエンジニアである彼のもとにこれを送る。狙っているのでなければ送り間違いか、それともなければただの大馬鹿者だろう。が、この送り主は確実にハイネマンのことをよく知った上で送り付けた。

 かつて、YF-23の開発にも携わった彼のことを知っていて、それで声をかけているのだ。それがメッセージの中に分かるように仕込まれている。

 

『はじめまして。フランク・ハイネマン教授

 私はアメリカ陸軍で衛士をしているメビウス・N・フィッツジェラルドという者です

 この度このメッセージを送らせていただいたのは、私が現在課せられている任務に手を貸して頂きたいからに他なりません

 勿論、これは軍からの要請ではありません。私個人による要望あるいは依頼となります。ですので、拒否されたとしてもなんらペナルティなどが企業に課せられる訳ではないのでご安心ください

 ですが、ただ理由もなしに拒否する前に添付された画像だけでも見てから決めて頂きたい

 私の任務の内容は大声で叫べるものではないですが、恐らくそれを見るだけでなんとなく理解はできるはずです

 それでは、返答をお待ちしております』

 

 添付されていた画像は三枚。

 一枚目はハイネマンが興味をそそられたF-4の改修計画書。

 二枚目は主にフェニックスミサイルを使用することを前提にF-14(トムキャット)に装備されていた、肩部装甲のウェポンラックを改良されたものとそれに装備する武装案。

 三枚目は蜘蛛(スパイダー)。この写真のみ戦術機に関係のない画像のように思えるが、その意図をなんとなくハイネマンは理解できていた。

 かつて彼が研究・開発で関わった機体。F-22と次期主力機の座を争った機体、YF-23の一号機に付けられた愛称。それが蜘蛛(スパイダー)だというのを知っているのは、その分野についてしっかり調べておいた人物だけだ。

 

「面白い男だ。いいだろう、乗ってみようじゃないか」

 

 報酬も期待できない仕事だとしても、なんとなくハイネマンはこのメッセージの送り主が気になってしまった。

 このタイミングでF-4の改修案を出してくる衛士に。

 わざわざYF-23の研究に携わった自分にその話を持ち込んでくる男に。

 

 

 

 

 

≪≫

 

 

 

 

 

「来てくださってありがとうございます。ハイネマン教授」

 

「いやいや、驚いたよ。まさか君があの噂の衛士だったとはね」

 

 オーカニエーバ隊のブリーフィングルームに、設立以来初めての来客が来ていた。

 実は軍から出されていた命令とは裏腹に、それに必要な技術屋と呼べる人物はこれといって出向してきているわけではなかったので、改修案を出そうにもそれが通る形にするのが難しい状況だったのだ。

 これに仰天したメビウスはと言えば、自分達で呼ぶ形にすれば、どんな大御所だろうと呼ぶのだけはタダだと言い張り、その道で知らぬ人はいないだろう人物に声をかけた。

 戦術機開発という道を進む者なら誰もが知っている、教科書級に有名な開発者であるフランク・ハイネマンその人にだ。

 整備士として腕は一流なヴィンセントから言わせれば「本当に来たなら奇蹟」との評の彼は、大勢の予想を大いに裏切る形で、しかもラブコールをメビウスが送ってからそう日が経たないうちにエドワーズ基地にやってきた。

 固く両手で握手をする二人を見て、隊員達は驚いた表情以外できないといった様子だ。

 

「あの……噂って一体どんなものなんでしょうか」

 

 意を決した表情でレオンが聞くと、ハイネマンは実ににこやかな表情で嬉しそうに語り始めた。

 なんでも、整備士からの転向という形で衛士になったメビウス中尉による模擬戦やシミュレーション訓練の記録は、軍の一部で非常に高い評価が下されており、ここ二週間ほどの間で猛烈な勢いで関係者に出回っているというのだ。

 もちろんハイネマンもその一部を閲覧し、特にF-15Eによる一対十二の模擬戦で勝利を収めた映像や、アメリカ軍全体で見ても珍しい長刀を用いた戦闘映像、空力を最大限に活用する機動など、挙げ続ければキリがないくらいにはメビウス・N・フィッツジェラルドという衛士を絶賛していた。

 その褒める内容に自分達との模擬戦の話があったことに、隊員三名は苦笑いを浮かべたものの、実際手も足も出なかったことは事実なので反論すらできなかった。

 

「教授、そろそろ本題の方に」

 

「ん? ああ、そうだったね。今更F-4の改修案なんか出してくるからどんなものかと思ったんだけど、意外に現実的だったし、他の戦術機にもちょっとした改造を施せば流用が可能そうなだったから難しい話ではないと思うんだよね」

 

 先日から行っている対BETA戦想定プログラム内で、特にメビウスが感じていたのは、F-4のというより、戦術機全体に対する火力不足感であった。

 メイン武装として携行するのは、最大4丁の突撃砲。それも口径は36mmと小さい機関砲と、弾数が極めて少ない120mmのみ。短刀も一応初期装備として持たされているが、とても主兵装として扱っていけるものではない。

 メビウス個人としては長刀を好んで使っているが、他の面子曰くそんなに気軽に使えるものではないという話だし、そもそもメビウス自身も攻撃面で好んでいるというよりも、機体バランスの調整などに重きを置いて運用している。

 こう見ると、そもそも近づかれた場合の死亡率が跳ね上がる割には、遠距離攻撃面に秀でているとはお世辞にも言えないのが戦術機だ。

 勿論、火力過多になって重量が増し、機動力が落ちたら元も子もないし、相手の絶対数が多いということから、ひたすら連射ができる現在の突撃砲が有用なのは確かなのだが、現行の突撃砲では突撃級(デストロイヤー)要塞級(フォート)、重光線(レーザー)級の対処が厳しいのは確かだ。

 という事を踏まえ、過去の戦術機データなどを調べて貰ったメビウスは、“いいもの”を発見した。

 F-14(トムキャット)で運用されていたフェニックスミサイルが彼が探し求めていたものだったのだ。

 

「F-4を改良する上で、軽量化や跳躍ユニットの改良案は胃もたれするほど見てきた。だけど、こう、シンプルに火力の増設に関する改修案は出てきたことが殆ど無くてね。新鮮な感じがしたよ」

 

「しかし教授、フェニックスミサイルは運用コストが高く、製造が打ち切られた過去があります。軍が承認するでしょうか」

 

 その資料を作成してメビウスに手渡した、云わば今回の件の発端であるシャロンは、「難しい話ではない」というハイネマンの言葉に疑問を抱いた。

 長距離誘導兵器を用いて面制圧を行い、一定の安全性を確保するという意図があったフェニックスミサイルは、有用性と比例する形でその運用コストも非常に高価であった。

 ミサイル本体の価格も高かったが、誘導装置などの戦術機に搭載するシステム面が特に高価で、しかも一定以上の効果を出すには中隊規模での運用が必須という代物。完全に失う事も多い戦術機に搭載するには些か高すぎるものだった。

 ともすれば、「難しい話ではない」というのは少しばかりおかしいのではないかという意見だった。

 

「その点については問題ないと思うね。別にミサイルだけが追加兵装じゃないからね。彼は本当に多彩な兵装を提案してくれた。ガンポッド、無誘導爆弾、ロケットランチャー、他にも色々あるけど、どれも画期的だ。何しろ大抵は安上がりな兵装だからね」

 

 戦闘機に慣れ親しんだメビウスは、突撃砲が戦闘機における機関砲とAAM(空対空ミサイル)の役割を担っていると想定した場合、装備として欠けているのは特殊兵装だと考えた。

 考えてみれば、彼は戦術機に爆弾を搭載したりという話は聞いた事がなかったし、実際シミュレーション訓練内でも、ここでアレが使えたらと考える場面は多かった。

 そしてもう一つ、改修案に載せられたものがあった。それは機体の胴体に固定装備される機関砲だった。

 最初に戦術機に乗った時から、何故この兵器は腕に持った武装しかないのだろうかと考えていたメビウスが構想した、彼らしい兵装ではあった。

 こちらには突撃砲にも採用されている36mm機関砲が、装弾数の減少と弾倉の交換が戦闘中にできないという制約を付けた上でなら搭載が可能だろうという見解に至り、メビウスを満足させる結果となった。

 

「これに関しては自分の好みになっていますから、実現されるかどうかは微妙ですがね」

 

「いや、意外と前線国家には受けがいいかもしれない。戦闘中の腕部破損は致命的で、為す術なくBETAに襲われることもあるけど、そんな時に射撃が可能っていうのは大きいはずだ」

 

 最後に、ハイネマンが呼ばれた理由がわかる改造が資料にあった。

 肩部装甲ブロックへの兵装担架ハードポイントの増設。これが示すのは、YF-23の対BETA設計思想を他の戦術機に流用することができるのではないかという試みだった。

 持っていける武装が増えるということは、継戦能力の増加は勿論、兵装担架を用いた掃討戦能力の上昇、様々な種類の兵装の装備が可能になる。

 しかしながら当然、実際に採用された戦術機にこのシステムはなかったため、設計を取り入れるにあたっては、YF-23を設計した企業もしくは個人に技術提供を申し出る必要があった。

 そのためのハイネマンというわけだ。

 

「という訳で、もしよろしければそちらの企業と一種のタッグを組みたいわけなのです」

 

「そういうことなら任せて欲しい。これでも私は重役でね。次の会議でこのことは話させてもらうよ」

 

 メビウスの予想通り、いや、それを通り越す程にハイネマンは異様なほど積極的で、こちらに好意的だった。

 元々、彼はステルス機などではなく、こういった機体を作りたかったのかもしれない。

 かつて、F-22の持つステルス性能に助けられた経験を持つメビウスは、その機能に対して否定的なわけではなかったが、BETAに対してそれが無意味であるのも理解していた。なのにも関わらずこの世界のF-22が高価なステルス機であるにも関わらず次期主力機として採用されたのは、メビウスが感じるこの国に対しての疑問の一つであった。

 おそらくはハイネマンもそうなのだろう。

 

 

 

 

≪≫

 

 

 

 

 ハイネマンは来るのもそうだが、仕事も恐ろしく早い人物だった。

 乱雑な計画書をメビウスが渡した二日後にはそれを纏め上げ、更にはそのさらに三日後にはシミュレーターに改修後のデータを打ち込んでしまった。

 仮のとはいえ、その筋の素人が書き込んだものをたった五日の間で訓練に使えるものにまで昇華させた彼の手腕に、メビウスは喜んで絶賛することしかできなかった。なにしろ、暫くの間は別の機体のデータでも取っていようかなどと考えていた彼の予定が狂うほどの早さだったのだ。

 

『どうだね、メビウス中尉。とりあえず君の要求した性能を参考にしてデータを打ち込んでみた。勿論、それ通りの機体に実際になるとは限らんが』

 

「思ったより動きやすいですね。ただ、元よりもピーキーなバランスですね」

 

 管制室のマイクを使って語りかけてくるハイネマンの声を聞きながら、電子空間内で改造されたF-4を動かす。

 中距離掃討を主体に行う装備を想定し、肩部ユニットにロケットランチャーポッドを装備、主腕と背部兵装担架の合計四門の突撃砲、増設された肩部兵装担架には、右に長刀、左に予備弾薬パックと元のF-4と比べるまでもなく重装備になっている。のにも関わらず、以前より機動力が落ちている感じはない。むしろ、跳躍ユニットを使用した動きに限っては良くなっている気もした。

 機動力のカラクリは、増加した上半身の重量だ。

 第二世代戦術機の機動力の高さは、なにも主機の出力上昇や機体の軽量化だけが要因ではない。その他の様々な工夫があってのものだ。その一つに、機体静安性の低下がある。

 静安性とは、簡単に言えばどれだけ安定してそのままの姿勢でいられるか。というものである。高ければバランスの良い機体だということになるし、低ければ転びやすい機体だと分かる。第二世代以降の戦術機は軒並みこの静安性が低く、逆に第一世代は高い。

 これがなんの役に立つかと言えば、転びやすいということは前傾姿勢になりやすく、それ故に飛び出し時の初速が向上する。ということに繋がり、戦術機で言えば跳躍時の加速にプラスに働く。勿論、姿勢制御はシビアになるが、それはコンピューター制御で補えばなんとかなるということだ。

 設計者はジャパンの剣道というスポーツで使われる技を参考にしたとかしなかったとか。

 

『そりゃ中尉、機体のバランスが崩れれば操作性は悪くなるのは道理だろうに。君はてっきり、それも込みであの計画書を書いたのだとばかり思ってたよ』

 

 航空機についての教養は深いメビウスは、戦術機についてのプロフェッショナルであるハイネマンにそんなことを言われて苦笑いした。彼はメビウスのことを相当に戦術機に詳しい人物だと踏んでいたみたいだったのだ。

 こうなるなら整備士上がりというカバーストーリーに合うよう、戦術機のことをもっと勉強するべきだったと少し反省する。

 

「買い被りすぎですよ教授。さて、各員準備は整ったかい?」

 

「メビウス2問題ありません」

 

「メビウス3いつでもいける」

 

「メビウス4こちらも問題ないです」

 

「ようし、それじゃあ始めてみようか! プログラムJ-8を起動!」

 

 小隊員全員の確認が取れたところで、演習プログラムを起動させる。

 今回のプログラムは以前のような大掛かりのものではなく、小規模のBETA群を殲滅する形のもので、最も米軍内の対BETAプログラムとしてメジャーなものだ。というのも、今回はあくまでもデータを取るのが目的なので、そこまで気張る必要もないのだ。

 数は総数でざっと1000と少しといったところだろうか。戦車や歩兵を中心とした部隊が相手するには厳しい量だが、戦術機からすればそこまで多いとは感じない物量だ。

 特に、ついこの間光線吶喊のプログラムを行った四人からすれば、物足りないと感じるくらいだろう。

 

「さて、今回はこの機体……名づけるならF-4EJ(スーパーファントム)とでもいったところか? その試験なんだから、追加兵装をしっかり使ってけよ。特に、各機の肩部装甲に装備されている特殊兵装に関しては、後程レポートも書いてもらうからな」

 

「ゲッ! レポートかよ……」

 

「何か不都合でもあったかね? ブリッジス少尉」

 

「いえ、何も」

 

 ユウヤの蚊の鳴くような小ささの声を耳聡く聞きつけたメビウスは、軽口を叩きながらUIが少しばかり戦闘機っぽくなった戦術機のチェックをし、そして操縦桿を握り直して全員に喝を入れる。

 

「演習だからといって気を抜くな! 帰還率は100%だ!」

 

「「了解!」」

 

 以前より初動が速くなった機体を動かし、一気にBETA群との距離を詰める。少しばかりの扱いずらさと引き換えに見違えるほどの機動力を手に入れたF-4は、F-15もかくやという素早さでマッピングがされた荒野を駆けていく。

 BETA群との距離が2kmをきろうかというところで、メビウスは武装変更システムを動かし、肩の特殊兵装であるRKTL(ロケットランチャー)の照準システムを起動させる。

 突撃砲のものとは全く異なる見た目の独特な照準を化け物の群れの中心に合わせ、両手の引き金を同時に引く。

 機体の両肩から放たれた無数のロケット弾は、わざと機体を左右に揺すったメビウスの操縦によってかなり横に広がったが、それを帳消しにするほどの効力を発揮した。

 さすがに突撃級を木っ端微塵にするほどの火力ではなかったらしいが、120mmHE弾と遜色ない効果を見せた他、後方にまで届いた弾は小型種を消し炭にしながら要撃級の身体の一部を吹き飛ばした。

 露払いには十分だ。

 

『メビウス1、ロケット弾発射!』

 

 そして、CPが放ったその言葉が合図となり、メビウス2(レオン)メビウス3(ユウヤ)が前に出る。

 彼らはこれまでの強襲掃討(ガン・スイーパー)の装備に加え、両肩に戦術歩行攻撃機のものを流用した36mmガンポッドを追加搭載していた。

 

『メビウス2、3、MGP(機関砲ポッド)射程圏内! 掃射開始!』

 

 両手、両背中合わせて四門の突撃砲に加え、両肩のガンポッド二門。それが二機。その火力が一斉にBETAへと放たれる。

 突撃級の攻撃に晒されないよう、少し浮いた状態で放たれる射撃は、彼ら二人の目に入ったものを片っ端から肉片へと変えていき、ものの数秒で一本の安全な赤い道を作るほどだ。

 しかしRKTLとMGPは高い掃討能力こそあれど突撃級を正面から撃破するには、少々物足りないらしい。RKTLでならもしやとメビウス1は思っていたが、どうもその正面装甲は思ったよりも硬いらしい。

 だがそのためのメビウス4(シャロン)の特殊兵装だ。

 

『メビウス4、FOX3!』

 

 フェニックスシステムを採用し、爆撃機で用いられる爆弾を改良することで構築される新型兵装『|SAAGPM《セミアクティブホーミング空対地貫通ミサイル》』が彼女の機体から合計8発放たれた。

 電子戦において効果が認められたブレードアンテナを使用した誘導は、彼女の腕もあって非常にスムーズに進行し、全弾が別の突撃級に命中するという結果を残した。

 ミサイルはモース硬度15を誇る突撃級の正面装甲に突き刺さり、HEAT弾の要領でその装甲を融解、貫通し、柔らかな肉への道が通る。そして、そのまま爆発。周囲のBETAを巻き込んでの中規模爆発を起こした。

 その後はそのままBETA集団をガンポッドを使用して掃討していた二機が小型種の殆どを殲滅したほか、メビウスとシャロンが残った大型種をちまちまと掃除しただけで終わってしまった。なんとも呆気ないもので、十分とかからずに終了してしまった。

 

 

 

《》

 

 

 

「いやはや、素晴らしかった!」

 

 シュミレーターマシンから四人が出るや否や、管制室から出迎えたハイネマンは傍目から見ても分かるぐらいに満面の笑みでウキウキしていた。

 その様子はユウヤが苦笑いを浮かべるほどのものだったが、そのすぐさま後に技術的な話をガンポッドの如き早口でまくし立て始めたことで、ギリギリ彼の天才科学者という印象が消え去ることは防がれた。

 特に彼が話していたのは、特殊兵装の搭載による重量増加とそれによる操作性悪化と機動力向上についてだった。

 増加した重量から、機体バランスは第二世代戦術機のそれと同程度まで低下しており、OBW(オペレーション・バイ・ワイヤ)を搭載していないF-4では不安が残るものとなっているとのことだった。操縦技術を十分に得るまでの過程で前線に投入されることも多い前線国家の衛士にとっては、これは非常に苦しいものになるかもしれないとのことで、特殊兵装の減量が急務だとのことだった。

 更にはSAAGPMは計算上では、重光線級や要塞級を簡単に撃破しうる性能を持っているが、それだけの性能を確保するのには勿論コストがかかるのは道理であり、これだけではフェニックスミサイルと同様ということで、コスト面の問題から採用が見送られるのは目に見えているとのこと。

 現状の戦術機の兵装で撃破するのは厳しいとされてされていた二種を容易に撃破できるとなれば、それだけ大幅な被害削減に繋がると思われていただけに、その話は残念だったが、逆にその他の特殊兵装に関してはハイネマンも肯定的な意見が多かった。

 特に、36mmガンポッドに関しては低コストかつ高火力で、戦術機の掃討能力を大幅に向上させることができるとしてその有用性を社内に持ち帰ると約束すらしていた。

 RKTLに関しては苦し紛れにメビウスに対してこう言った。

 

「火力も掃討能力も申し分ないし、弾薬自体も攻撃ヘリに搭載されているものを流用すればいいだけだから問題は少ないんだけど……なにぶん使いにくそうな性能でね。本当に君以外に使いこなせる衛士がいるのかだけが疑問なんだよ」

 

 これに関してはメビウス以外満場一致の意見だったようで、とりあえずはガンポッドのみが軍の上層部とノースロック社に送られることになった。

 もちろん彼がこれに抗議したのは言うまでもない。




ここから少しづつ架空機が出てきます……が、大抵は火力向上版だったりします
機体名は現実にある航空機に準じますのでご安心を

今のところは今回出てきたF-4EJに加え、自衛隊機でおなじみF-2、とあるエスコン作品でライバル機となっていたF-15S/MTD、最近話題のF-15CX/EXを様々な形で登場させようと計画しています

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