遅筆ですので、少しずつ進めていけたらと思います。
オリ主がどこから来たのかは気にしないでください。ただの旅人なのです。
帰宅するといつものルーティーンを繰り返す。外出用コートの汚れを吸引室でおとし、マスクを手入れし、部屋着に着替えたら液状栄養食を咥えたまま準備を整える。ゲーミングチェアに深く身を沈め、ダイブマシンに接続し、身じろぎして違和感をなくす。
うん、いつも通りの具合である。早速ログイン画面を呼び出す。いつもなら意気揚々といった心持ちだが、今日は、さすがにそうもいかないようだ。
(前にも経験があるとはいえ、慣れるもんでもねえな)
ログイン手順をさっさと済ませ、馴れ親しんだ自身のアバターに同期する。
(今日は最終日。期待通りならvPルームには猛者共が溢れているはず・・・。最後の最後だが、どこまで喰らいつけるか、いざ勝負だ)
これが最後。今日はユグドラシルのサービス終了日。vP狂いの生活も今日が年貢の納め時。素晴らしい思い出にするべく死力をつくすのみ。この世界は終わってしまうが、全てが無に帰するわけではない。共に戦った仲間、倒せなかったライバルたち、全ては永遠の友となる。
地下深くの玉座の間。大水晶から創り出された荘厳な玉座に
「ふふ・・・。最後くらいは少しくらいの勝手は許してくれますよね・・・」
そっとコンソールを閉じると、何かを噛みしめるように宙を仰いだ。傍には微笑みを浮かべる美しい守護者統括アルベドがたたずんでいる。
(今日でお終いか・・・)
視界には41枚のエンブレムが施された旗が下がっている。自身の、現実と仮想の世界を合わせて振り返ってみても、間違いなく最高の日々を過ごした、その残滓。視線を下げれば、ここまで付き従わせてきた、執事と戦闘メイドたち。築き上げてきた全てに思い出が詰まっている。短かったな。
何も考えられず眺めていると玉座の間の扉が開き、一人の人物が入ってきた。
「よう、モモ。約束通りちゃんと戻ってきたぜ?」
気安く声をかけ、足取り軽く玉座へと歩み寄る人物。ローブの上から頭、胸部、肩、前腕、膝下を中世を思わせるアーマーで覆った大柄な人型。全体的に使い込まれた薄汚れ感のある外装、右腰には大型リボルバー、背中には武骨なショットガンを担いでいる。中世騎士になりたいのか、ガンマンになりたいのか、魔法戦士っぽくもあり、ロールプレイがはっきりとしない装いである。
「お帰りなさい、オシリスさん。その様子だと、最後のvPは上々の成果でしたか?」
オシリスは大げさに手を広げておどけて見せた。
「サービス最終日。夢の終わりにすらなおvPランクマッチに籠る連中は生粋の戦闘
ははは、と乾いた笑いを漏らす姿は哀愁を纏いつつもどこか晴々とした様子だ。その様子をみて
「オシリスさんは最後の最後までvP一筋でしたね。その根気には脱帽しますよ」
手を腰に当てつつオシリスは返す。
「それだけ魅力的なシステムだったってだけよ。残ってた猛者共はどこのvP界隈でも上位を張れるキチガイばかりだ。贅沢な環境だぜまったく」
そのまま少しの間、中空を眺めたままだった。モモンガも先ほどそうであったため、そのまま黙って待ってあげることにした。
「しばらくは気の抜けたビールみたいな状態になっちまうな。モモもしばらくそうなるぞ。結構辛いんだよなー」
オシリスの姿勢はそのままである。
「オシリスさんは前に一度経験されてるんですよね。ドはまりしたゲームのサービス終了。僕は初めてなので・・・。そんなにつらいんですかね?」
ああ、と姿勢を変えずに言って寄こした。モーションを変えるのが面倒なだけかもしれない。
「はまった分だけ辛さが増すぜ。モモだったら枯れ木みたいに干からびちまうぜ。マジで」
うへぁー、とモモンガはゲッソリアイコンを出した。
「でも・・・でもな、モモ。これだけは忘れないでくれ」
オシリスは姿勢を戻し、視線をモモンガに注いだ。
「「共に闘ったファイアチームは!永遠の友となる!!」」
あれ?とオシリスは首を傾げた。何で知ってるの?と。モモンガは笑いアイコンを出しつつ答えた。
「オシリスさん、vPで戦ってるときとか、勝ったときによく叫んでましたよ。気づいてなかったんですか?それ聞くとテンション上がるって、皆結構気に入ってたんですよ?」
はは、恥ずかしいな。と頭を掻くモーションをした。
「カッコよく決めたかったんだけどな。伝わってるならそれでいいぜ。まぁ、言いたいことはわかるだろ?肝心なのは世界の方じゃなくて、俺たちのありようだからな。落ち着いたらメンバー全員にオフ会の連絡いれようぜ。」
明るくサムズアップするオシリスに、モモンガもサムズアップで応える。今は平気だ、まだ終わっていないから。だが、ログアウトして、ベッドに横になったら・・・。サービス終了時刻が迫る。もう残すところ僅かだ。
「最後によ・・・。モモ・・・」
「なんですか?」
最後の最後になんだろう。モモンガは神妙に聞き入った。これだけ切り取ると茶釜さんが喜ぶヤツだ、と思った。
「今vPログ見返して気づいちまった。俺、モモに負け越してるじゃねぇか。お前はなにシレッと勝ち逃げしようとしてんだよ!許さねえからな!リベンジマッチの場所は俺が押さえるから、絶対再戦しろよな!」
最後の最後にこれである。望むところです、と返して笑いあった。この人なりの優しさなのは今までの付き合いでわかっている。体育会系の脳筋戦闘