「あれが見えるな? お前ら」
さすがに、宇部の顔にも緊張が見てとれた。全員が注視する先は、大きな門の先にある広場の中心。そこには、銀色の甲冑を身にまとい、王冠を模した鋳鉄の兜を被った大男が屈みこんでいた。すぐ横には巨大な斧槍が立てられている。
灰の審判者グンダ。
ダークソウルⅢにおける最初のボスであり、多くの初心者プレイヤ―を餌食にしてきた。斧槍モーションの速さや軽快な体術は、慣れるまで苦戦を強いられる。さらに、体力が半分を切ると変身し、人の膿と呼ばれる怪物になり、広範囲の攻撃を繰り返してくる。
「女子の皆は、門のぎりぎりの所まで離れてて。下田君が中距離で待機。接近戦をする男子に怪我人が出たら、すぐに対応してほしい」
国広が指示を出す。彼はアクションゲ―ムをほとんどしたことがないそうだが、早くも戦い方を飲みこんできている。クラスで一番成績の良い彼だからこそ、先の見えない状況でも対応していけるのだろう。
作戦がまとまりかけたように思えたが、宇部が首を振った。
「駄目だ。それだけじゃ完璧じゃねえ。奴の注意を攻撃役からそらしておく必要がある。ヘイト管理ってやつだ。そうだな、新宮それに実織。お前ら二人がソウルの矢と火球で最初にグンダへ攻撃しろ。その後は適度に注意を引きつけながら逃げ回れ」
「えっ……」
「私達が?」
指名された女子生徒二人は、未熟ながらも遠距離攻撃のできる人員だった。
「危険すぎる。そんなことしたら」
「こいつらに攻撃は届かせねえ。そのために俺ら前衛がいるんだろ、国広。幸いなことに奴の体力だけはそれほど多くない。戦士か騎士職の男子十五人で一斉にやれば、短時間で片がつく。お前のあやふやな指示より、よっぽど成功しそうだろ?」
新宮が、納得のいかない様子で手を上げる。
「でも、ちょっと待って。実織はまだ意識が戻ってからそんなに経ってない。負担が大きいよ。やるなら、私一人でお願い」
「そう言ってるが?」
「大丈夫。血もちゃんと足りてる。心配には及ばないから」
新宮の肩に手を置き、実織はあまり血色の良くない顔で笑ってみせる。
「宇部。本当にこの先に、安全地帯があるんでしょうね」
「確実だ。そこには、亡者どもも他のどんな化物も入ってこれない」
「わかった。紗奈、私にもやらせて? ここで踏ん張れば、私達は助かる。多少の危険くらい、乗り越えないと」
新宮はしばらく逡巡した後、肩にかかっている実織の手を握った。
「うん……。そうだね。でも、絶対死なないでね? 万が一のことがあったら、私、私」
「あ、うん。わかったわかった。気をつけるよ。だから、もう少し離れてね」
二人の仲の良さは、妙な噂が立つほどだった。見栄えがいいので、男女共にその説を支持する層がいる。丸戸がその筆頭であることはよく知られている事実だ。ちなみに貴樹は欠片も興味を持っていない。
宇部が手を叩き、全員の意識を集める。
「これで打ち合わせは完了だ。残りの女子も魔術の練習は続けろよ。できるようになった奴から、攻撃に参加してくれ。その分、かかる時間は少なくなる。じゃあ、行こうぜ」
おお、と男子の方から掛け声が上がった。生徒達の中で、明るい空気が満ちていった。他のクラスから文句が出ていたほどに、このクラスには人材がそろっている。もしこのメンバーではなかったらとっくに全滅していたことは確かだろう。
その担任教師といえば、
(この、嫌な予感しかしない展開。まあ、俺が生きてれば万事オッケーなんで。どうでもいいや。せめて役立ってから死んでくださぁい)
安定のゲス思考である。
グンダは初め、どれほどプレイヤ―が近づいても行動することはない。その胸に刺さっている螺旋形の剣を抜かなければ、動き出さない。ならばそのまま攻撃すればいいのだが、抜かない限りグンダがダメージを負うことはない。さらにその剣は後に必要となる重要アイテムだ。
故に、誰か一人この危険な仕事をやらなければいけなかった。
「本当に大丈夫か、丸戸」
この時を待っていた男がいた。やりこんでいたゲームの世界で、普段の扱いから脱却しようと鼻息を荒くしていたデブ。あれよという間に宇部に株を奪われ、未経験の国広にすら水をあけられてしまっている状況で、こんな美味しい場面を逃すはずがない。
「ぬ、抜くだけだろ。それに、あいつが動き出すまでにかなりのタイムラグがあるんだ。その間に、二撃は、い入れてやるからさ」
「あのな、それじゃあお前にヘイトが向かって、作戦が台無しになるんだよ。余計なことはすんな」
「ふ、ふん。俺に偉そうに命令す、するな」
「んだと?」
宇部の声を聞きもしないうちに、丸戸は小走りでグンダのもとへ近づいていった。何となくしまらない形だが、これで戦いは始まる。男子達は武器を構えて丸戸の後をついていき、下田、新宮、実織の三人はその少し離れた所で待機した。貴樹は最後尾の女子集団に囲まれる形で、鼻をかきたい衝動を我慢しながら立っていた。
丸戸が恐る恐るグンダに近付く。彼も脂肪のせいで体格はかなりごついが、グンダの偉丈夫ぶりには敵わない。膨らんだ両手で、螺旋剣の柄を手に取った。
「いいか、抜くぞ!」
言い終えたと同時に、丸戸は剣を一気に引き抜いた。暗い色の血が、グンダの胸から飛び散っていく。誰かが唾を飲み、ほぼ全員の緊張が高まった。
丸戸は呼吸を荒くしながらも、振り向いて走り去ろうとする。
「おい、今だ! お前ら魔術をはな、げっ」
タイムラグもくそもない速さで、グンダの左手が動いた。その硬く握りしめられた拳はいとも簡単に丸戸の頭を潰し、胴体を割いて下半身にまで到達した。ゆっくりと手が上がると、もはや原形をとどめない死体が残るのみ。しばらく血を吐き出すシャワーの役割を果たした後、死体は存在が霞んでいき、やがて霧のように消え去った。
誰一人、声を出せなかった。
(おい)
クラスメイトが目の前でグロテスクに殺された実感はなく。
脅威は戦慄に身を任せる間もなく悠々と立ち上がり、己の斧槍を握った。
「ひっ」
誰が挙げたのかわからない悲鳴。内心の叫びたい気持ちはだれもが同じだっただろう。生徒の中で最初にまともな声を上げることができたのは、宇部だった。
「新宮、実織、やれ!」
この状況で指示を出せる者は、なかなかいない。そして、憶えたての術を対象にちゃんと当てることのできる者も。彼らはそれができただけ、褒めるべきだっただろう。
二人の放ったソウルの矢と火球は完璧なコースで、グンダに向かった。そして体に直接当たる直前に、グンダの空いていた片手が動き、それらを受け止めた。起きた煙が晴れると、少しも傷ついていない手が現れた。
「そんな」
全く効いていない。
「ふざけんなよ、こんな、こんなの聞いてない! 勝てるんじゃなかったのかよ!」
男子の一人がパニックになって叫び、回れ右をして逃げ出した。その横腹に斧槍の刃が食い込み、呆気なく体が上下に分かれた。二人目の犠牲者が出た事で勝利ムードも何もかもが崩れ去り、男子達は我先にと逃げようとする。
「ぐぎゃっ」
「助けて助けて助けて」
「死にたくない。こんな所で嫌だあああああ、ぐぇ」
「くそ、くそくそくそくそくそぉ、が」
グンダは機械的に武器を振り回し、離れて行く肉体達を切り裂いていった。
(おいおいおい)
「くそがぁ!」
グンダの背後に運よく回れた数人が接近して剣を突き刺す。しかし、刃は鎧に虚しくはじかれるだけだった。グンダは体を瞬時に回転させ、呆然としている彼らにタックルをかます。倒れ込んだ彼らは、立ちあがる間もないまま巨大な刃の餌食になった。
「あ」
貴樹はすぐ隣で水音を聞いた。女子生徒の一人が失禁している。腰が抜け、彼女はそのままへたり込んでしまった。
グンダは斧槍を数回扱うだけで、男子のほとんどを葬っていた。辛うじて盾で防いだ宇部と国広も吹き飛ばされ、離れた岩壁に激突する。
固まってしまった女子生徒達の方へと、グンダは体を向ける。武器を下げ、低くしゃがみ込んだ。
(やば)
それを攻撃の予備動作だと判断した貴樹は、一応体面を保つために周りへ逃げるよう声をかけた。しかし、反応するものは誰もいない。この光景を現実だと受け止める気力すら投げ出している女子が大半だった。
グンダが、全身のバネを使って飛び上がる。貴樹は冷や汗を大量にかきながら、女子の集団から離れていた。
巨体が落ちてくるのを呆けた面で見ていた女子達の大半が、押し潰されるか直後のなぎ払いで命を落とした。先ほどよりも甲高い悲鳴がこだましたが、すぐに沈黙が訪れる。
(おいおいおいおい、ちょっと待て。いくらなんでも、これは。うっ)
血に濡れたグンダが、貴樹の方へ突進してきた。動き自体は単調なものだったので、横っ飛びに避ける。そして、予想通り追撃の振り下ろしがやってきた。
必死の思いで体勢を立て直し、後ろに飛んで逃れるも、彼自身の知識がまだ最大限の警告を送ってきていた。グンダの攻撃パターンの一つ。下ろした斧槍をさらに踏み込んでからかち上げる。彼はさらに後方へと転がる事で、回避に成功した。そこで安心せずにグンダを目に捉えたまま後ろ向きに走る。
(い、いくらなんでもお前ら、役に立たなすぎだろおおおおおおお! あっという間に死にやがって、恥を知れええええええ)
コントローラーを握って操作するのと、実際に体を動かすのとはまるで違う。画面からは敵の威圧感や武器の重々しさ、そしてこちらへ向かってくるという真の恐怖は伝わってこないのだ。そこを理解していなかった時点で、何もかもゲームと同じだと決めつけていた時点で、宇部達の試みが成功するはずがなかった。
予想に反し、グンダは追撃をしてこなかった。頭に突如として火が立ち上ったからだ。
「み、実織、逃げようよ! もう駄目だよ」
「私が時間を稼ぐから、走って。戻っても敵はいないから」
「やだっ、一緒じゃないとやだ。 ここに残ったら実織も死んじゃうよ! 私、実織がいなかったら生きていけないよ……」
「あなたの、そういう誤解を招く言動は直してほしいかな。私も紗奈に死なれるのは絶対に嫌だから、ね? 今くらいお願い聞いてくれたっていいでしょ」
新宮の頬を優しく撫でるその手は、小刻みに震えていた。涙をこぼすのを瀬戸際でこらえている表情をして、何とか元気づけるように微笑んでみせる。新宮はそれでも首を振り続けている。
できた隙を、グンダは見逃すはずがなかった。
「危ないっ、実織!」
とっさに出たソウルの矢が、実織の胸に直撃した。未完成な魔術は、彼女の着ているローブの耐性によって貫通力をほとんど殺され、残った魔力圧だけが作用し体を飛ばす。
「あ……」
親友を庇えた事で新宮は安堵するように目を閉じ、そのままグンダの斧槍で両断された。痛む間もなく絶命した彼女は、苦悶で顔を歪ませることもなく、ただ満足そうに前へと倒れた。
「うそ」
その死体が消え去った瞬間、実織は自失や悲嘆で思考を放棄することを選択しなかった。真っすぐに片手を上へ掲げた。その掌から火が生じ、球状に形成されてグンダへと投げつけられる。到達するのを確認する前に、次の火球を作り上げる。
「この、この化物! 許さない、絶対に許さない! 私達が何したっていうのよっ。訳もわからずこんな所に連れて来られて、前に進むしかなかったのに、あんたには何にもしてないでしょう! 紗奈を、よくも殺したな化物っ!」
グンダは立ち止まり、火球を受け続けた。感情に任せ、実織は絶え間なく炎を投擲していたが、やがてその勢いは弱まり、最後に爪の先程度の火の粉を作り出すと、胸を抑えてうずくまった。
そんな進退きわまった場面を遠巻きに見ながら、貴樹は墓所へと戻る入口近くに到着していた。左側は高い岩壁、右は崖になっていて、入口の方にしか活路はない。
(ギリギリってとこだな。注意がそれているおかげで楽に移動できた。これは戦略的撤退だな。敗因は単純な戦力差。あとはもうどうにかして、グンダを迂回できるルートを見つけるしかない。死んだら元も子もねえからな)
へへへと、心の中でほくそ笑んでいたら、頬を鋭い何かがかすめた。
(何だ?)
答えはすぐ正面に数をなして用意されていた。入口の門下に、亡者の群れが待ちかまえている。十を優に超える数で、弓矢を持つ一匹がこちらに狙いを定めている。
(倒したはずの雑魚が復活してる? 突破するか? 駄目だ。武器持ち複数人とか絶対に殺される。つまり、なんだ、逃げられねえってことじゃん。いやああああああああああああ)
クズは置いといて、実織は徐々に強まっていく疲労感で身動きが取れなくなっていた。
「なんで、もう力が」
グンダの迫る足音は聞こえている。しかし、もはや逃げる力さえもなくなっていた。歯を食いしばり、爪が白くなるほど拳を握り、悔し涙を流した。
「死にたくない。いや、死にたくない……」
斧槍が振り上げられる。もう何も見たくない彼女は、うずくまったまま最後の瞬間を迎えようとしていた。
小柄な影が走り寄り、実織の体を抱え上げた。彼女は運ばれ、グンダの攻撃は空振り、土埃だけが辺りに舞った。
「……下田? どうして」
「運だけは良いんだ。他の人治そうとしたんだけど、その前に消えちゃって。こんな情けない僕じゃなかったら、きっと」
「違う。私は、そんなこと責めたいんじゃない。紗奈が、死んじゃったの。これ以上頑張ったってどうせ」
下田は被っていたフードを外し、抱きかかえている実織に顔を近づける。長い前髪の間から、澄んだ瞳が燃えていた。
「ぼ、僕は、死にたくないんだ。君だってそうだろ。なら生きようよ! 諦めちゃいけない。無事に現実へ戻って会いたい人だっているんじゃないのか!」
「だけど、もう私力が出なくて……え?」
彼女の背に触れ、手から白い光を放った。それだけで、彼女の顔色は劇的によくなっていく。
「気力も、回復できるみたいだ。実織さん、君の炎で少しは足止めできるはずだ。僕はその間に入口に向かってくれてる先生と協力して、他の敵を倒す。そうしたら逃げ道ができるよ」
(げ、見られてた)
「私」
「迷ってる暇はないんだ。う、動きたくないなら君を抱えてでも逃げるけど、僕は運動なんてできない。そしたらあいつにすぐ追いつかれて、二人も殺されるよ。いいの?」
実織は目を見開いたまま、ぼうっとした表情で首を振った。そして目に光が戻り、ぐっと口を引き結ぶ。
「わかった。全力で放てるのは多分十発くらい。それで助けになるのなら」
「十分だよ」
下田から離れた彼女は、深呼吸をしてから冷静にグンダの頭を狙って火球を作り出した。下田は側に落ちていた誰かの剣を拾い、貴樹の方へと駆け出した。
(下田なんか加わったって、突破できるわけねえだろうが。かくなる上は、あいつを囮にし、やられている間に全力疾走だな。決まり)
しかし、肝心のグンダは再び動きを止めていた。攻撃をしている実織へ接近することも、逃げ出そうとしている貴樹に注意を向けることもなかった。その沈黙に不審を感じたのか、実織も火を作る手を止めた。
グンダはその場に佇み、斧槍を横の地面に突き立てた。空いた両腕を組み、何かを逡巡するように呼吸を置く。
「ふぅむ……、頃合いかな」
そして、驚くべきことに声を発した。
「聞いていたよりも、随分と数が多かった。対して粒なのはこの程度か。ンンン……かなり手加減したはずだがな。我輩、予想外であった。救世主たり得る存在と聞いていたからこそ、期待し過ぎていた部分も否めないが。難儀なものである」
漏れる声はくぐもり、不自然な重低音が混ざっていたが、れっきとした人間の言葉だった。
(我輩? この人、我輩なんて言っちゃってるよ……)
ゲームの中でグンダが喋ることはない。王達との戦いの前に見られるようなイベントシ―ンもなく、淡々と戦いは始まり、やられる時も黙って消える。
(き、きき奇跡が起きたあああああああああああああああああああ! グンダの声なんて、他のどのプレイヤーも聞いたことなんかねえ。この場に立ち会えたこの俺は、つまり、この上なく特別なんだ。ふぉおおおおおおおおおお)
危機感はどこへやら。貴樹は強烈な歓喜、この世界に来たと知った時と同等のものを感じ、小さく肩が浮き上がっていた。内心をそのまま表に出すことはほとんどしない彼にとっては、類をみないほどの感情の昂ぶりだろう。
だがもちろん、他の者は少しもこれで助かったとは思っていないようだった。
「くそ、こんなの知らねえぞ。周回プレイ時の別ルートか。丸戸の野郎、肝心なことは黙ってやがった」
「宇部、他の皆がいない。どうしたんだ、逃げ出せたのかな。記憶が曖昧だ」
国広と宇部が、崩れた岸壁から身を起こす。受けた盾はどちらともひびが入り、道具としての機能は死んでいた。
「阿保か。この、飛び散った血の量を見ろ。今ちらほら立っている奴以外、やられちまったんだよ」
国広は口を半開きにして、周りの光景を見回した。死体はとうに消えているが、宇部の言った事や、グンダの全身にかかっている返り血で察したのだろう。膝から崩れ落ち、うめき声を上げ始めた。
「残ったのは、五名である。お前達は我輩の攻撃に多少なりとも対応し、あるいは立ち向かおうとする気概を見せた。見込みはある方だと言えよう」
「なら、見逃してくれませんか? 僕ら、いきなりここへ連れて来られたんです。これ以上、そちらへは何もしませんから」
話が通じた事で希望を持ったのか、下田がそうお願いをした。しかし、グンダは首を振る。
「引き返すことは許されぬ。我輩が承った使命の一つは、お前達火の無き灰を試し、そして殺すことだ。すまないが、死んでもらわなければならない」
「そん──」
下田の言葉が、途中で消失した。顔の上半分とそれ以外に分断された体が、投げ込まれた斧槍の勢いに流されて、後ろの岩壁に湿った音を立ててぶつかる。グンダはいつ間にか武器の柄元に取り付けられた鎖を引き、己の手元へ斧槍を戻した。
実織が、力が抜けたように座りこむ。
(ハルバードを、投げた? しかも虜囚の鎖を利用している。こんな攻撃の仕方、見たことがねえ。いや、むしろ)
この世界は、グラフィックソフトのテクスチャーで作られた集合体ではない。裸足で砂利を踏む感触も、吹き下ろす激しい風も確かな現実味を持って感覚できるものだ。つまりそれは、グンダにも言えることではないのか。プログラムされた人工知能の塊ではなく、確固たる意志と知恵を持った真っ当な生命なのだ。
今まで何とか対応できたゲーム通りの攻撃も、グンダが相手を早めに殺しつくしてしまわないよう対応を容易にしたものにすぎないとしたら。あの巨体、あの巨大な武器が能力を最大限に生かした戦略で振るわれるのならば。
(勝てるはずがねえだろ。こっちは生身で、普通の人間で、一発でも食らえば終わりだ。ダークソウルなんかよりもずっと鬼畜な無理ゲーじゃねえか。喜んでる場合かよ。早く逃げないと。グンダと比べたら、亡者共なんて小さい障害だ)
貴樹が覚悟を決めた所で、轟音が鳴った。
実織のいた場所に斧槍が突き立っていた。
「残り三名。苦痛はない。即殺である」
グンダは、国広と宇部の所へ歩み寄っていく。武器を握り直し、二人まとめて両断しようと振り下ろした。
「ざけんな!」
「う、宇部?」
蒼白な顔つきで吐き捨てた宇部は、国広の腕をつかみ、上に向かって放り投げた。放心したままだった国広は何の抵抗もなく飛び上がり、頭から股下までをいっぺんに寸断される。
「友を盾としたか」
地面に刺さった斧槍を足場にして、宇部がグンダの顔面に向かって跳びかかる。剣先は兜の目の部分にある隙間を狙い、狂いなく突き出された。
「死ねっ!」
「武器がなければ、無力だと思うのか?」
グンダの上段蹴りが、宇部の腹部に直撃した。彼は声もなく大量の血を吐き出し、背骨の折れる音を響かせ上空へと飛んでいく。そして地面に落ちた時には、その全身の骨が粉砕され、壊れた人形のような悲惨な姿の死体となった。
「残り一名」
貴樹が決心し、入口へ特攻するまでのわずかな間の事だった。彼はもはや途中から亡者に挑むのも忘れ、呆然と生徒が全滅する様を眺めていた。
(え? 終わり? もう終わったの?)
「お前は、見た所あの中で最も年長のようだ。他の者がやられ、苦痛と憎悪にあふれているだろうが、安心するといい。すぐに、同じ場所へゆけるぞ」
(う──ん、これは死んだ。終わった。あんなこと言ってるし。こうなるなら、まだあいつらが生きてるときに、見せ場作って死んどけばよかったわ。痛みないらしいし、受け入れるのも手だな。どちらにしろ、この先に行けた所で──―)
体の内奥で、何かが熱を持った。
(いや、待て)
鎖が鳴る。宙を舞う斧槍が落ちてくる。
貴樹は自分の体が勝手に反応して動くのを感じていた。受け身の体勢を取りながらも横転し、降ってきた刃を避ける。
(違うだろ。ここで死ぬ? ありえない。駄目に決まってる。馬鹿げた選択だ。思い出せ。俺がもしダークソウルの世界に来られたら、一番したかったことは何だ)
「なかなかの身のこなしである。さらされている肉体を鑑みても、相当鍛えているな。何かしらの武にうち込んでいると見た。前の回避も読みは完璧だった。お前は最も見込みがありそうだ」
グンダが攻撃の体勢を取る。まぐれもどれだけ通用するかわからない。あれだけ殺しても涼しい様子のあちらに比べ、貴樹は全身に汗をかいている。いつかそう遠くないうちに、その広い攻撃範囲に捕えられるだろう。
(死にたくない)
四十五回。
貴樹がダ―クソウルⅢにおいて、最終ボスである王の化身を倒した回数だ。
このゲ―ムは周回プレイ用のやりこみがいくつかあり、ボスも回を重ねるごとに強化されていく仕様だった。しかし、それは八周で限界を迎え、アイテムのレ―トアップや得られるソウル量の増加も止まる。大抵のプレイヤ―は、そこで十分やりきったと満足し他のソフトへ向かうだろう。
ただ、彼はこのゲ―ムを勧められやり始めた時から、異常なほどはまった。それはもう、仕事以外の全てを注ぎ込んだ。今まで取ろうともしなかった有給を使い、たった二日で一週目をクリア―した。そして本筋だけを追っていた初回のスタイルを改め、全NPCイベントおよび全エンディングを自力で進めていった。
集められるアイテムもすべて網羅し、存在するやり込み要素を全て終えても、彼は満足しなかった。むしろ、そこからが本番と言えた。
(死んでたまるか)
その時点で、彼はその世界自体に惚れこんでいたのだ。今まで心から何かに好意を抱けなかっただけに、尚更どっぷりと浸かってしまった。各エリアの様々な風景に見入り、一つ一つの敵のデザインにすらつぶさに観察し、ボス戦では毎回違った縛りを加えて楽しんだ。もはやゲームとしてではなく、己の生活リズムを保つためには欠かせない習慣となっていた。
彼がなによりもダ―クソウルⅢにおいて愛したのが、登場するキャラクタ―達である。さらにその中でも心酔の域に達し、あらゆる画像、グッズ、二次創作に至るまでを漁ったあるキャラクタ―がいる。
(俺は、絶対に、この先の祭祀場にたどり着かなきゃならねえ。どんなことがあっても、どれだけ大きい壁があろうとも)
体の芯が、熱くなった気がした。初め彼はそれを極度に興奮しているからだととらえていた。しかし、自分の拳を見て、間違いだと気が付いた。
拳から、炎が出ている。目を凝らしてやっとそれだとわかる程度の幼火は腕へと燃え広がり、一瞬にして全身を覆った。
(全然熱くねえ。まさか、これは)
途端、炎の色は薄まり、貴樹の体内へと吸い込まれていった。元の肌色に戻ったが、体にあふれている充実感が今までよりも段違いに高まっている。
「今、お前の体が……。ム、気のせいか。それにしても」
グンダは持っていた斧槍を横に放り投げる。誰もいない所に落ち、これでグンダは素手になった。
「どういうつもりですか?」
「思ったのであるが、お前のその格好。鎧も着ず、武器も持たずに挑もうとする無謀はなかなか尊敬に値する。我輩とて戦士の端くれ。あえて苦難の道を進もうとする若人に対して、有利な条件で相対する無粋は犯さぬ。徒手で戦うのは久方振りなので、よろしく」
(いや、さっきの蹴り見たらそれほどハンデにならないと思うんですが。むしろ当たったらよりむごいことになりそうです……)
右足を引き、左の拳を前に突き出す構えを取り、グンダはこちらを見据えてくる。そこから伝わってくる言い表せないほどの迫力を感じ取り、貴樹は半べそをかいていた。
(投げるのは無理。受け流すなんてもってのほか。それだけで腕が折れるだろ。こっちが本気で殴ったって、虫が止まった程度のものにしかならない。体格が違いすぎる。どうにかして、逃げる算段を付けないと)
「ふむ、そうだな。これだけではまだ足りない。最初の一撃は、お前に譲るとしよう。本気の力で打ちこんでこい。防御は理解したが、攻撃はどうか」
「え、じ、じゃあ、やりますよ?」
(見えた。向こうの壁、意外と登れそうじゃねえか。一発適当に叩きこんでからこいつの股下をくぐり抜けて、全力で走るしかねえ。さすがに祭祀場にまで追ってくることはないだろ。よっしゃ、希望はあるぜ。妙に体も軽いし)
貴樹もまた、柔道における基本の構えを取った。何年も習い続けていたおかげか、意識せずとも足と手が所定の位置に移動する。なるべく全力を出している風に見られるよう、表情は気合いで引き締め、拳は血管が浮き出るほどに強く握りしめた。
「やあっ!」
グンダの腹に当たった瞬間に股下へ滑りこめ、滑りこめ、股下股下股下股下股下と身構えていた彼は、直後起こった予想外の出来事に思考が一瞬で消し飛んだ。
その拳は、速度をある程度保ちながらも威力皆無のつもりだったが、体に当たった瞬間、グンダが空気を吐き出し大きく身をのけぞらせて、盛大に吹っ飛んだ。面白いほどに綺麗な放物線を描いてから、祭祀場へと続く石造りの壁に激突した。壁は砕けはしないもののひびが大きく入り、砂埃が舞い、飛んだ瓦礫がぱらぱらと降り注ぐ。
一番驚いていたのは、貴樹本人だった。
(あれえええええええええええええええええええ? 違う違う違う違う。意味わからん。何が起こった? はあああああああ? 俺、どうしちゃったの? 何も力入れてないんだけど。グンダって実は中身すっかすかだったの? なわけあるかああああ)
突然の事に貴樹はすっかり動揺していた。表面上は落ち着いてその場に佇んでいるようだったが、煙の中から飛び出し、上から降ってくる巨体の影に反応すらできなかった。
グンダの拳が、貴樹の体に振り下ろされた。間違いなく全力の攻撃で、衝撃に周囲の地面がぐらぐらと揺れた。
「油断をした。鍛錬が足りないのである。まさか全員が貧弱なわけがなかったな。その気配にすら気付けないようでは、まだまだ我輩も未熟者である。だがこれで全て────何?」
グンダの兜から漏れる赤い眼の光が驚愕を表すかのように点滅した。己の体重も加えて本気で叩きこんだ打撃が、どう考えても受け切れるわけがない小さなその腕で止められていたからだ。
(止められたし。全然痛くねえし。うそん。何がどうなって。……まさか)
まだわからないことは多い。しかし、やはり先ほどの炎が貴樹の体に何らかの強化を施したのではないか。つまり、前に拾った残り火というアイテムが、その効果を発揮した。
(それにしたってあれは生命力を増やすだけのはず。こんな馬鹿げた力、ありえねえ。けど、まあ、そんなことはもうどうでもいいんだ。げっへっへっへっへ)
この男、自らがある程度追い込まれると弱い。必死に勝とうという気持ちは一切なくなる。しかし、逆転できる目ができた以上、調子に乗るのもあっという間だった。
グンダはすぐさま拳を引き、もう片方の腕を貴樹へ叩きつけた。彼はある確信を抱き、構えすらせずに受ける。
結果貴樹はそのまま押し込まれて地面にめり込んだが、それだけだった。生徒達のように潰れて肉塊となることはない。足が地中へと埋もれ、自力では動けることすらかなわなくなったが、彼の高揚は止まらなかった。
「うぬぅ」
グンダは呻きをあげても、攻撃の手を緩めることはなかった。さらに足で踏みつけそれでも効果がないとわかれば、貴樹の体を引っこ抜き、宙に放って、岩壁に向かって殴り飛ばした。さらに落ちていた斧槍を再び手に取り、貴樹の飛んで行った方向へ投げる。そのまま動かないでいた彼は、うなる巨大な刃をその身に受ける前に、右の拳でそれを打撃した。
鈍い金属音が、辺りに響く。
「──なるほど。お前の本当の力は、それほどなのか」
今度こそ、グンダはしばし固まらざるをえなかった。
長く共に歩んできた相棒とも称すべき斧槍の刃が、部分的に割られていたのだ。今までその攻撃をかわした者は数あれど、破壊に至った瞬間に出会ったのは初めてのようだった。しかも、一見して生身の人間が、何も持たない素手で。
「ふ」
グンダは感嘆とも呆れともとれる溜息をついた。何かをこらえるようにして肩が震え、自然と両手が持ち上がり、指を絡めて己の額に当てた。
強い、感謝の祈りだった。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハッ! こんな役割、弱者を屠るだけの汚れ仕事など、嫌で嫌で仕方がなかった。だが、このような僥倖に出会えるとは。あの曲者に感謝をしなければならなんな。これほど時が経ってもなお、武には未知の領域があると知った! 感謝するぞ、若人よ。名は何という?」
「貴樹、です」
「ではタカキ。これから吾輩、このグンダの全力を持って、お前の驚異的な身体能力に抗って見せよう。では、よろしく頼む」
グンダは華麗な所作でお辞儀をしたあと、立っていた岩盤が砕けるほど強く足を踏み込んで突進してきた。巨体にまるで似合わない、冗談じみた速度。一呼吸の間に、貴樹の目の前で腕を振りかぶっていた。
それらの全てを、貴樹ははっきりと知覚した。
(見える。すげえ……。あいつの動きが予測できる。さっきまで、俺はこれにビクビク怯えてたのか? 笑えるぜ)
刹那の間で彼は最小限の動きを選択し、グンダの打撃をかわしていく。自分の体が異常なほど軽くなるのを感じた。ちょっと跳び上がる程度の力で、グンダのはるか頭上に到達する。空中にいる時を狙ってくるグンダの拳と真正面からぶつけあい、受け流すことも容易だ。間隙を縫ってその胸に巻きついている鎖を破壊した。貴樹の腕の二倍の太さはある鉄鎖がいとも簡単に割れた。
「いいぞ、いいぞ! こうではなくては。我輩ももっと強くなろう!」
もはやゲーム時のイメージとは違い、グンダは喋りまくっていた。口が見えるわけでもないのに、満面の笑みをたたえているように錯覚する。ずっと親しみやすくなっているようにも、貴樹は感じた。
(やべえよこれ、やべえよ……)
彼の興奮もまた、最高潮に達していた。もはやガンギマリしている薬中よりも精神は天へと羽ばたき、至極冷静な表情の中で唇から涎をダラダラ垂らしている。グンダもまた狂ったように笑いながら高速で動いているので、傍目からすればドン引きな光景だった。変態が二人でくんずほぐれつしているようにしか思えないだろう。
真面目に攻撃に対応することもできたし、わざと食らってもまるで痛くなかった。グンダの渾身の一撃を顔面に受けても薄ら笑う余裕さえあった。吹き飛ばされながらも、貴樹ははっちゃける。
(ひゃっはあああああああああああああああああっ。やばい、俺やばい。どうするよ、これ。大丈夫か? かつて俺は超絶イケメンであり、他の凡人共を圧倒する頭脳を持ち、聖母すら凌駕する崇高な精神を持った世界最高の完璧人間だった。でも、それにこの素晴らしい強さを手に入れてしまったら、一体どうしろというんだ? 神は不公平だという主張も今なら納得できる。俺はそう、神に最も愛された人間。いや、その神すら超えるゴッドオブゴッド。全世界全宇宙は俺のものだああああああああああああああああああ! ひょほおおおおおおおお)
この男の死体にたかる蠅すら体ごと背ける腐食した精神構造に嫌気がさし、こいつが歩んでいく先の展開にまるで興味を失くした者もいるだろう。
だが、安心してほしい。
(ん、あれ? やけに飛んでる時間が長いような……。あ、俺、崖を背にして殴り飛ばされたんじゃん。きゃあああああああああああああああああああああああ助けてええええええええええええええ)
こいつの場合、自分に酔えるのはごくわずかな間である。
現実でもダークソウルにおいても、超高所からの落下は即死判定がつく。プレイヤ―の中でもノ―デス挑戦の時、敵全てに完璧な対応をしたのにもかかわらず、たった一つのミスで転落死、泣きを見る羽目になった例がたくさんある。
貴樹は今、崖の底へ落ちようとしていた。来るもの全てを飲みこむような闇が眼下で大口を開けている。深さは百メートルでは済まされないだろう。加速度的にも考えて、地面に激突した時の衝撃は人知を超える。強化された体でも、人の形すら成さない細かい肉片へと弾けるのは間違いない。
(ああ。終わった。ついに)
頭の中で、今まで過ごしてきた人生の思い出が閃光のように駆け巡る。
今思い起こせば、なかなか涙を誘う生涯だった。
両親は健全だったが、彼の上っ面の優しさにころりと騙され、一度も本性に気がつくことはなく。彼がぎりぎりで負担にならないように上手く理由を付けては彼らの仕送りを催促し、そのほとんどを冷やかし半分の競馬で使い果たしたのは切ない思い出だ。酒に溺れることなく、学業も申し分なく修めて就職が決まった際にも、立派な腕時計をプレゼントしてくれた。すぐ質屋に売って得た万札でパチンコに全額投資したのも捨てがたい。これでギャンブルには飽き、仕事でこそこそ不正をするスリルに目覚めたのは記念すべき人生の転機だった。自分を目の敵にしていた先生や生徒を、大事にならない程度に評判を貶め、まさか彼が犯人だとは気が付かずに、必死になって相談してきた時の気分は最高だった。そして最後には、ダ―クソウルというゲームに出会えた。
本当に誰かが知ったら、胸が締め付けられ涙を流しそうな来歴である。
(体が、浮いていく。天国へ行くのってこんな感じかぁ。いい気持ち)
これで天国行きだと思っているのが、貴樹の貴樹たる所以かもしれない。
目を閉じると共に、にこにこと笑う女性の顔が浮かんでくる。
──―いい? 貴くん。私は遠くに行っちゃうけど、ずっと家族だからね。連絡、忘れないで。
薄ら目の縁を赤くさせ、両手を広げ抱きしめてくるその人の幻影を見て、彼は胃袋ごと吐きそうになった。
(よりにもよって何であんなゴミクズ女の顔が浮かぶんだ。どこまでも俺の人生を邪魔しやがってえええええ糞があああああ死にさらせええええええええ!)
呪詛を叫び続けていると、自分がまだ意識を保てている事に気が付いた。
おかしい、何かがおかしい、と慎重に目を開ける。すぐ前にそびえたつ岩壁があり、足は空中を蹴っている。自分はなぜ浮いているのかと不思議に思い、腕の引っ張られる感触で上を向いた。
何やらでかい銀色の手甲が、貴樹の腕を掴んでいた。
「間に合ったようで、重畳である。このようなつまらない決着のつき方はないであろう?」
(グンダ、ナイスプレエエイ!)
引き上げられた貴樹は、さりげなく距離を取りグンダに問いかけた。
「再開しますか?」
彼の脳は再び快楽物質を分泌し始めた。先ほどの無双状態にドハマリしたようである。特にグンダのような体格差のある者を手玉に取る快感は、形容が難しかった。すっかりドラッグを求める中毒者の心境で、彼の頬は期待で紅潮した。
グンダは彼の全身をじっと観察し、考えごとをした後、何かに納得した様子で笑い声を洩らした。
「いや、もう十分である」
「はい?」
「お前の実力ははっきりと証明された。このまま打ち合っても、徒に長引くだけである。我輩の拳も、あまつさえ武器ですらほとんど通用しないとあっては、やがて負けるのは明白。殺すなどと恐れ多いことを言った。お前ならば、ふむ、他の者達も納得するだろう。我輩に付いてくるがよい」
数秒考えて、ようやく今の状況を理解した。
ダークソウルⅢで言う所の、最初のボス戦が終了したのだ。