火守女と灰と高校教師(完)   作:矢部 涼

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45.数的不利

 下田は俯いた。

 

『わかるけどねえ、でも、はっちゃけすぎかなあ』

「わかってるよ。もう、突っ込まないで」

 

 ここしばらくの記憶がない。だが、どういう状態だったのかはわかっていた。逃避にだけ専念した結果がこれだ。自分のことだからこそ、より一層恥ずかしかった。

 

『もういいの?』

「僕だって、好きでやってたわけじゃないよ。だいぶ落ち着いたし。冷静にイーゴン突破の方法を考えよう」

『笑いながら?』

「うるさいって」

 

 右手で、左手の膿を殴った。それは黒い体を震わせながら、しゅんとする。本気でやってはいないはずだから、これもくだらない演技だろう。ただ、少しだけ可愛らしくて、思わず微笑みが漏れた。

 

『あ、笑ったじゃん』

「いや、これは」

『そっちの方がいいよ。まともって感じがする』

「まあ、そうだね」

 

 諦めないと決めたはずだった。

 その決意だけは、続けなければならない。まともなままで、乗り越えていこう。

 部屋を出ると、目の前にちとせがいた。なぜかすごく驚いている様子だったので、下田は首を傾げた。

 

「どうしたの?」

 

 ちとせは何か言いづらそうなことを抱えているかのように、しばらくもじもじしていた。そして、覚悟を決めたように息を吐いて、下田の両肩をつかんできた。

 

「私は、あんたにどんな事情が今あるのかわからない。それでも、ちゃんと相談して」

「どうして」

「あんたずっと独り言ばっかり言ってるから、その、ちょっと、異常だよ」

『ウフフフ、異常だって』

「お前は黙ってろ」

 

 ちとせの指摘で、少し我に返った。そういえばいつから自分は、この膿と話せるようになったのだろう。どう考えてもおかしかった。怪しい予感しかしなかった。

 だが、下田の言葉を自分に向けられたと思ったちとせは、視線を鋭くした。

 

「あ、違う。これは、君に言ったんじゃなくて。うーんと」

 

 相手の手が、自分の腕に移動する。やや強くつかまれると、引っ張られ始めた。

 

「ちとせ?」

「イリーナさんの所に行こう。あんたを、戻してもらえるかもしれない」

 

 さすがは、ちとせだと思った。

 下田は足で思いっきり踏ん張った。前を行こうとする彼女を、強引に止まらせる。

 そう、イリーナ。イリーナだ。彼女が、イーゴンと何かしらの関係があることは確かだった。

 どうして、今まで試そうとしてこなかったんだろう。

 彼はちとせを思いっきり抱きしめた。

 思えば、今まで目の前の事を片付けるのに必死で、誰かと落ち着いて関われたことがなかった。大事な友達の、ちとせとの時間も大切だ。

 既に広場近くまで来ていたので、周りの人通りもそれなりにあった。下田は見せつけるように抱きしめる腕を強くした。どうだ、これが彼女だ。自分の友人の、高原ちとせだ。

 

「ちょっと…」

 

 戦いの面だけを知ろうとするのは間違いだった、イーゴンの事情をちゃんと知れば、そのルーツもきっと理解できる。理解できれば、ちゃんとした敵として、殺せる。

 そう、殺さなければならない。殺すとまではいかなくても、それ以上戦えないようになるまでダメージを負わせる必要がある。なぜなら、ただ正面からの戦いを避けて突破しても、結局は無意味だからだ。イーゴンを超えても、ヨルシカに辿り着けるわけではない。それまでに、おそらく何度も壁にぶつかることになる。イーゴンを放っておけば、邪魔になるのは確実だ。

 ちとせが腕を突っ張って、下田の体から離れた。髪が少し乱れて、かなり焦っているようだった。

 

「アキ、いい加減にして。あんたさすがに、落ち着いた方が」

「ありがとう」

 

 彼女の頬に口を付ける。昔小さかったころ母がよくしていた仕草だ。下田が何かためになることをすると、褒める言葉と一緒にキスをしてくれた。今回彼は本当に感動したので、母のやり方に従って示すことにした。

 よく見れば、儀式の直前だったらしい。

 全員の視線が二人に向いていた。何とも言えない空気が漂っていた。

 真っ赤な顔になっているちとせが、頬のあたりを手で触れている。それを目に焼き付けてから、イリーナの方へ走り出した。彼女は状況についていけない様子だったので、好都合だと思った。物は試しだと、彼女にナイフを突きつける。

 

「全員、動かないでください。従わなければ、イリーナさんを殺します」

 

 間を置かずに、下田はナイフをイリーナの首に刺しこんだ。血が飛び散っていく。本当に気持ちの悪い感触がしたが、彼女達はそうされて当然だという思いもあったので、吐き気がやってくることはない。

 

『フフフ…、いいねえ。アナタ、最高だよ』

 

 下田の手の膿が、身もだえした。

 

 

 

 

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 怒りは、確実に枷になる。下田も、それで我を忘れて、グウィンをも殺そうとした。熟達した者なら、上手く感情を制御する術を身に付けているのだろうが、それでも限界はある。

 厳密には、イリーナを殺したわけではなかった。彼女の首を掻き切った直後、そこに放つ回復を素早く刺し込んだ。完治するほどではないが、出血を抑えるくらいの働きはする。ちゃんと合理的な行動だった。彼女の篝火の移動能力は、別に声を出せなくても使えるのだ。事前に調べておいて、良かったと思った。

 イーゴンの攻撃は、一見苛烈さを増したようにも感じる。だがその思考の方向性は異なっているようだった。下田を殺すというよりも、より苦しめるための軌道。だから、甘くなる。頭に血が上っているから、攻撃の切れ目がすぐにやってくる。

 二撃目をかわしたところで、その隙がやってきた。だが、実はそれが隙ではないのも知っている。ただの準備だ。あの光の衝撃を放つための。

 下田は、盾を自分の身体全体に即座に展開し、それを五つ重ねた。成功率は半々程度だったが、今回は上手くいったらしい。範囲も強度も、初めの方とは段違いだった。

 それでも、軽々と衝撃が防御を破壊していく。吹っ飛ばされて壁に叩きつけられながら、彼は結論付けた。やはり、自分の魔術だけの防護では、無理らしい。同時に展開できる魔術は、五つが限界だ。これ以上、魔術の盾を強化する術はない。

 

 

 

 

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「訊きたいこととは、何ですか?」

 

 イリーナは下田が呼び出した理由を、未だ計りかねているようだった。

 ずっと、気になってはいたのだ。

 

「イーゴンさんと貴方は、何か因縁があるんですか?」

 

 彼女はしばらく固まっていた。本当に予想外の質問だったらしい。それから、さりげなく別の方向へと視線をやった。誰かが聞いているのかもしれないと、気にしているようだ。

 

「どうして、シモダさんがそのようなことを」

「すみません。踏み込んだことを訊いて。もし差支えがなければ、教えてくれませんか」

 

 二人は、まったく関わりがなかった。言葉をかわしているのは、罪の都でのことしか記憶がない。単純に判断するなら、他人以下の関係性だとしてもおかしくはなかった。

 ただ、イーゴンとの戦いを経て、その考えは誤りではないのかと考えるようになっていた。イリーナを人質にしたり、傷つけたりすると、必ず真っ先に彼は向かってくる。その時の感情は、本物の感じがした。全霊で、怒りをあらわにしていた。

 解せないのは、どう考えても彼がイリーナの事を深く思っているのは確かなのに、彼女と話すどころか、冷たく突き放そうとしていることだった。

 そういう違和感の答えを、彼女も知っているらしい。

 

「あまり、気持ちの良い話ではありません。それでも、構いませんか?」

「お願いします」

 

 彼女が話し出したことは、まず彼と故郷を同じくしているということだった。

 宗教国カリム。

 そこに住む聖職者の女性は聖女と呼ばれ、火継ぎのための巡礼を義務としていた。その護衛のために、騎士を一人就けるのが決まりだそうだ。イリーナもほとんどの者の例にもれず、自分の使命を火継ぎにすがっていた。

 問題だったのは、火守女としての責務を背負うのに、彼女が少し臆病が過ぎたことだった。

 闇に慣れずに苦しむ彼女を、初めイーゴンは何度も助けてくれたらしい。彼は己の騎士としての任務に従順だった。そして、それ以上に彼女を助ける理由があった。

 

「私が、いけないのです。あの方は、イーゴンは昔から言っていました。私の様な者が火守女になるべきではないと。他の大多数の女性と同じように、国の中で働くか、誰か…夫を見つけて、その人のために尽くすべきだと。全ては、自分の使命を貫こうとした、私の責任です」

 

 任務に私情が挟むとろくなことにならないのは、どこでも共通のようだった。

 イーゴンとイリーナは、子供のころからお互いを知っていたという。代々続く騎士の家系であるイーゴンの親の元へ、奉公としてやってきたのが彼女だった。二人とも敬虔な信徒だったので、子供ながらのつたない語彙で使命の素晴らしさを語り合ったらしい。

 そういう思い出を話すときのイリーナは、大切な宝物に触れているような顔だった。それでいて、二度と戻らない何かを惜しんでいる様子だった。

 話を聞くに、イーゴンは、徐々に己の中の天秤が使命とは反対の方向に傾き始めたようだ。目の前の女性が苦しまないことの方が、大事になってきたらしい。それは、巡礼中の様子を知るほどよくわかる。何度も、彼女に戻るよう言った。時には強い言葉も使って、イリーナが使命にはふさわしくないと伝えていた。

 それが変わったのは、カリムが亡国の憂き目にあってからだ。それから彼は、逆に彼女に使命へもっと向き合うように言うようになった。彼女が弱音を吐くところを怒鳴りつける以外は、まったく関わらないようになった。

 自暴自棄になっていく過程は、下田にもわかる気がした。自分にも彼女にも、希望を見出せなくなったということだろう。何も変わっていかない現状に耐えられる者が、一体どれだけいるだろうか。

 

「ありがとうございます。関係ない僕に話してくれて」

 

 話をしながら、イリーナは下田の左手に奇跡を施していた。そういえば定期的に膿を静めるためにそうしていたと、思い出した。今思えば、この行為に意味はないのだろう。どうせ灰として消えていくのに、この治療に何の意味があるのだろう。

 彼女は、おそらく学ぶことをしない女性なのだと考えた。自分の使命のために男の思いから目を背け、そして自分の罪悪感を消すために、意味のない行為をしている。それが悪いとは言えなかった。普通だからだ。己も苦しむことになる使命を背負うには決して値しない、普通の女性だからだ。

 もったいないなとは思う。お互いに言葉がもう少し足りていれば、少し違う未来もあったのだろう。二人の事は、今までよりもよくわかった気がした。彼らは血も涙もない悪魔ではない。苦しみながら進もうとしている、下田と同じ存在なのだと。

 だが、心底どうでもよかった。イリーナの話に心が動かされるものは何もなかった。ただ理解をするためだけに、我慢をしていた。それで下田達を騙し、犠牲にすることが正当化されるとは、少しも思えなかった。

 

 

 

 

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 赤黒い肌の巨体の男が、槌を振るっている。色が変わるほど熱せられた刃に打ち付けられる度、大きな音が鳴り響いた。火の粉が飛んで、その白い髪や髭を照らした。

 鍛冶師アンドレイ。ほとんど、喋ったことはない。一度草野と一緒に武器を修理してもらいに行った時くらいだ。その時も、草野が一方的に話しているだけで、相手側から何かを言うことは、ほとんどなかった。

 そもそも奥の工房にいつもこもっているので、会う機会すらなかった。それが今や。下田はアンドレイを目の前にして思った。もう、この男の顔を何度見たことだろう。

 下田の頼みが聞こえていないはずはなかった。それにしばらく答えることなく、剣を打ち据えている。無視をされているわけではないのはわかっていた。彼がまともにこちらを見るのには、もう少しだけ待つ必要がある。

 

「…盾だ?」

 

 かすれた声が返ってくる。その開いているのかよくわからない瞳は、下田をまっすぐ見据えていた。

 

「そうです。別に、作ってもらたいわけじゃありません。何か、こう、術に対して耐性のある盾が欲しいんです。できる限り大きいもので」

 

 アンドレイは槌を置くと、両手を自分の膝につけた。

 

「そういう大盾なら、いくつかある。だが、お前なんぞがどう扱うつもりだ? 動かすことさえままならないだろう」

「勝てない相手がいるので、その人を殺したいんです」

 

 とんとんと、膝を叩いていた手が止まった。気の抜けたような空気が漂った後、アンドレイは低く呻くように笑い始めた。

 ここで情に訴えても無駄だ。もっともらしい嘘をつくことも、意味はない。事実をそのまま言うことで、この鍛冶師の印象に残ることができるのを、試行錯誤を重ねて知った。

 

「一度来たな。やかましい坊主にくっついて。随分と様変わりした。で、そんなになるまで殺したい相手は誰だ?」

「殺したいのは、ヨルシカです。でも今殺さないといけないのはイーゴンですね。知ってます?」

「あいつの兜は、俺がいつも直してる」

 

 アンドレイは楽しそうな笑顔だった。それはきっと、彼が自分の職務にしか重きを置いていないからだ。下田が真実に気付いていようが、祭祀場に反逆しようが、たいして気にしてはいない。ただ無謀なことを淡々と話す彼に対して、滑稽さを感じているだけだ。

 椅子から立ち上がり、アンドレイは奥から下田の丈を優に超える巨大な盾を抱えて出てきた。十字を少し崩した、赤い紋章が印象的だ。その構成している金属は、下田には種類が特定できない。常に青白いきらめきが、近くで舞っているように見えた。

 

「ただでやってもいい。使う者がいなくて、腐っていた。だが、お前に渡すのは条件がある。この盾を自分だけで動かすことができたら、くれてやる」

「やってみます」

 

 下田は地面に突き立てられた大盾に触った。地面に少しめり込んでいる。数十キロは最低でもあるだろう。少し指を当てて動かそうとしたが、当然びくともしなかった。その重さもまた、対策になりうる。

 最後の確認をしたら、後は条件を満たすだけだ。

 彼の手が少し動く、その瞬間、大盾は消失した。

 アンドレイが立ち上がる。その反応にも、飽き飽きしていた。

 

「おい、何を」

 

 下田はそのまま二、三歩下がると、地面に向けて手をかざした。インベントリの、保管庫の欄を見て、そこにあるものを取り出す操作をする。

 先ほど消えた盾が、再び出現した。かなり大きな音をたてて地面に転がる。一度それに巻き込まれて足の指を潰したことがあったので、しっかりと離れておいた。

 まだ呑み込めていない様子のアンドレイに向けて、言う。

 

「動かしましたよ。これ、ください」

 

 この、インベントリの能力を利用することは、まだ諦めてはいなかった。ソウルを消費して出現させたものでは、祭祀場の者達に害を与えることはできない。だが、この世界に元からあるものを、インベントリのもう一つの力である保管庫にしまうことができれば、それはいつでも取り出せる防護になる。

 再び盾をインベントリにしまい、工房を出る途中で、考え事を続けた。

 できれば本番までに出さないのが正解だ。誰かに見られでもしたら、やろうとしていることが看破される恐れがある。それでも、練習に使わなければならなかった。

 何度も、この盾を自分の前に出現させて、イーゴンの術を防ごうとした。だが、この大層な盾でも、駄目だったのだ。最初の方は耐えることができたのだが、やがてひびが入り、抑えられていた衝撃がまたいつものように下田を襲った。

 だが、手はまだ残されている。

 符呪系統の魔術を、今までも何度か見たことがあった。

 例えば、シーリスが自分の刺突剣に青紫色の光を纏わせて、戦っていた。後で訊いてみると、それをすれば威力は段違いになるらしい。例え術にほとんど適性がない剣士でも、符呪だけは覚えておいて損のない術だと教えてもらった。

 それが鎧や盾にも使えるものだと、カルラが言っていた。物理にも術にも対抗できる強力な防護を作れると。そこから、下田は思いついた。彼の魔術でも、大盾でも防げない。だが、その二つを合わせたら、どうだろうか。

 これからも、カルラともたくさん話すことになりそうだと、彼は歩き続けた。

 

 

 

 

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 ただ、それだけを練習し続けた。魔力の盾。そう呼ばれている防御の符呪は何かを作るというイメージよりも、何かを覆うイメージを強くする必要があった。ソウルで大盾を覆うことは、比較的早くに成功していた。だが、それを実戦でも通用するほど、正確にそして素早く盾全体をカバーするのには、相当の鍛錬が必要だった。

 今回は下半分の防護が甘くなっていて、横に真っ二つに割れてしまった。ついでに下田の下半身も上半身から離れてしまった。

 

 

 

 

  (2万6293)

 

 

 速さは合格だ。問題は全ての衝撃を受けきるように全体に過不足なく符呪を行きわたらせるのが、未だに成功していないことだった。どこかが甘ければ、全体が崩壊する。それほど、イーゴンの切り札は容赦がないということだ。

 

 

 

 

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 その術は、神の怒りと称されているらしい。イリーナから訊いた。意外に思ったのが、それが奇跡に分類される術だということだ。下田は治療以外の奇跡があることを、今まで知らなかった。

 いかにも、あの僧兵が使いそうな術の名前だ。もし自分があれを乗り越えれば、神を超えたということになるのだろうか。ならないだろう。それに、この世界で神と呼ばれている存在は、もう実際に会っている。

 グウィンの事を思い返すと、到底信じられないあの事実までくっついてきて、これ以上考えるのを止めた。とりあえずは目の前のことに集中しよう。

 

 

 

 

 

  (3万1433)

 

 

 ほとんど、衝撃を殺しきることには成功していた。

 だが、それだけでは足りない。こちらの立て直しが遅ければ、相手の行動を許してしまう。それでも今までの連撃よりも、たやすいのは確かだった。どうやら神の怒りを使うと、一時的にかなり消耗するらしい。そして、再び動き出すまでにもそれなりの隙ができる。

 受けた後の攻撃も考えねばならなかった。魔術では駄目だろう。相手の鎧の防護に弾かれる。かといって、闇雲にナイフで切りつけようとしても、同じ結果になる。

 彼の堅牢な鎧にも、弱点はあった。下田と同じ人間の構造をしている以上、手足や首の関節部分は、ある程度自由を効かせていないといけない。つまり、防御も薄くなる。

 そこへピンポイントに攻撃するには、突きが一番だろう。アンドレイの工房を眺めていて、これはと思うものを見つけた。スティレットと呼ばれている刃渡りの短い刺突剣だ。鎧の隙間から肉へ刺し込むのに適している。

 これを首の関節部分に刺したとしても、相手が戦闘不能になる保証はない。何せ、相手は厳密には人間ではないのだ。人なら動けなくなる怪我でも、通用しない可能性がある。

 そこで、刃に細工をすることにした。工房の奥まで見えない体で忍び込んで見つけた、毒だ。自分で試したから間違いない。微量でも、全身が痺れて、すぐに意識を失うほど強力だ。他にも種類があったようだったが、できればこれで通用してほしかった。毒を自分から飲むことは、何度やっても慣れないからだ。

 毒を塗り込んだスティレットをインベントリにしまえば、完璧な暗器の出来上がりだ。任意のタイミングで、取り出すことができる。 

 あとは、術後の隙をついて、何とか相手の体に接近できればいい。

 

 

 

 

 

  (3万1822)

 

 

 少しでも遅れると、首元へ飛び掛かっても、大槌を抱えていない方の腕で殴り飛ばされるだけだ。この男、体術にも熟達しているらしい。とにかく、相手の術が終わった瞬間には、盾をしまい、代わりにスティレットを取り出して、接近を始めていなければならない。少しでも気が逸れば、術の効果が残っている内に飛び出してしまうことになる。

 タイミング。あとはタイミングだけ。

 

 

 

 

  (3万2300)

 

 

 遅い。まるで間に合っていない。

 

 

 

 

  (3万3423)

 

 

 遅い。

 

 

 

 

  (3万5647)

 

 

 少し、合ってきた。だが、首を狙ってきているのは相手もわかっている。あんなに重そうな兜や鎧を着ていても、下田の一撃はぎりぎりでかわされた。

 工夫が、必要だ。相手の逃げる先を予測しろ。

 

 

 

 

  (3万8932)

 

 

 いや、誘導する。

 

 

 

 

  (4万1476)

 

 

 焦りは、禁物。

 雑念は混ぜるな。標的を仕留めることだけを、考えろ。

 

 

 

 

  (4万5632)

 

 

 タイミング。

 タイミングを。

 

 

 

 

  (4万6767)

 

 

 やれる。

 やってやる。

 できるんだ。

 乗り越えろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 イリーナの首を刺して、背後を狙うソウルの矢を同じ術で相殺する。

 イーゴンの大槌が目の前に迫ってくる。

 今ならわかる、彼の技量は、敵である下田にとっても、尊敬に値するものだ。一体、これだけの得物を軽々と扱えるようになるまで、どれほど努力したのだろう。どれほど、傷ついてきたのだろう。

 少なくとも、下田よりは苦労していないだろう。はっきりと実感した。自分は、戦いの才能がない。まるでない。反対に、イーゴンは、天才だ。自分とは次元が違う存在だ。

 だが勝つ。

 三撃目を体をひねって避けると、相手は準備態勢に入った。その術が炸裂する直前に、インベントリの操作を終える。手元に大盾を出現させて、その重さを利用しながら地面に突き立てた。やや斜めにして、自分の身体を潜り込ませる。

 炸裂。

 ほぼ同時に、符呪が盾全体に行きわたっていた。光の奔流がやってくる。防護の中にいても、その震えが伝わってくる。魔力の盾の一部が、崩壊を始めた。彼は歯を食いしばる。もう少し、もう少しだ。カウントを始める。衝撃が終わるまで、あと一秒。

 光が消える。

 ほとんど同時に粉々になった盾を消して、下田は地面を蹴った。利き手にはスティレット。そしてもう片方の手で、ソウルの矢を操作した。

 矢を相手の首に向ける。イーゴンはその軌道を正確に読んでいた。読んでいたからこそ、下田の次の手を避けることができなかった。

 彼のスティレットは、初め空を切る予定だった。だが、ちょうどその先に、ソウルの矢を回避したイーゴンの首がやってくる。それはまるで吸い込まれているかのようだった。多数の試行に裏付けされた。完璧な動きだった。

 刃の先が、兜の下の隙間に入り込んでいく。肉を裂いていく感触がする。下田は、確かに相手の呼吸が乱れるのを聞いた。止まらずに、奥まで差し込む。

 イーゴンの体はすぐに固まり、床へと倒れた。そこに覆いかぶさるようにして、スティレットを引き抜く。

 思った通り、相手は身動きが取れないようだった。だが、まだ生きている。首から血を流しながらもがいている。それでも、もう立ち上がれはしない。じきに死ぬだろう。

 出血のショックで意識を失っているイリーナへ、イーゴンは這っていこうとしている。下田を止めるのではなく、その反対の方向へ向かっている時点で、彼にはもう戦意がないことは確実だった。そもそも初めから、その男は自分の望みを、使命とは別の所に置いていたのかもしれなかった。

 イーゴンの結末を、最後まで見る必要性を感じなかった。

 下田は叫びたい気持ちを抑えて、ヨルシカの方向へと向き直った。そして走り始める。

 彼の行く手を、三人が阻んだ。

 彼らを認識した瞬間、下田は胸に穴をあけられていることに気がついた。太く青白い矢が、体を貫通している。

 なすすべなくその場に倒れ、彼は自嘲した。

 

 

 …わかってる。

 気を緩めたらいけないなんてことは。

 何かに勝利したわけではないのだ。いくつかある点の一つを通過しただけ。イーゴンは、ただの通過点。初めの関門。

 死ぬ間際、次の相手を見定めた。

 ジークバルド、シーリス、フォドリック。

 彼らは、あり得ないものを見る目で、下田の最期を見届けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

  (5万9879)

 

 

 その魔術は、何かで相殺するとか、盾で受けるという選択肢を全て無駄にさせた。単純に、威力が強すぎる。五重の魔力の盾でも、容易く貫通してきた。五本の矢を同時にぶつけても、一ミリも軌道がずれることはない。

 避けるしか、選択肢がなかった。おそらく、最初の矢は侮りも含まれていた。今回のは違う。イーゴンを倒したことで、下田に対する評価が変わったのだろう。本気で殺す攻撃をしてきた。

 そして、今まで二回にわたってソウルの矢を放ってきた者が誰なのか、もうわかってはいた。ヨルシカだ。下田を仕留めた時の、愉悦に満ちた表情が物語っていた。

 そんなに、焦らなくてもいいのにと思った。あっちが憎んでいるのと同じくらい、こちらも殺したいと思っているのだ。もう少し待ってくれれば、直接戦ってやるのに。一番苦しむ方法で、葬ってやる。

 矢を乗り越えると、下田の前にいる三人は、既に気持ちを切り替えているようだった。どくつもりはないらしい。戦うしかないようだ。

 下田はそこで、思考が止まった。

 どう、戦えばいいんだ?

 そのまま間抜けな形で突っ込み、ジークバルドの大剣が彼の首を飛ばした。

 

 

 

 

  (6万2343)

 

 

 今まで、どうしていたか。

 下田の経験上、数の不利をよしとしたまま戦いを続けたことはなかった。そういう時は逃げていたか、他の誰かに助けを求めていたのだ。そもそも、彼は前線に立つ役割ではなかった。他の皆の支援をしていればそれでよかった。

 ジーグバルドの攻撃を気にしていれば、シーリスにやられる。

 シーリスとジークバルドを同時に目に入れようとしたら、いつの間にか死角に回っていたフォドリックにやられる。

 その困難さを、理解し始めた。

 三対一だ。

 イーゴンの時の、三倍は難しい。

 どころの、話ではない。

 あの三人は、お互いの隙をなくすような連携をしてくる。だから、少なくとも十倍以上は難易度が跳ね上がっていると考えてよかった。思考と行動のどちらも、まるで追いつかない。今までの経験が、ほとんど役に立たない。大体、一人一人に勝つのも難しいのに、数でも負けているというのは、何というか。

 

「無理ゲー」

 

 そう呟いて、ぽん、と頭の中で何かが落ちた。

 宇部や丸戸が言っていたことだ。この世界は、あるゲームと酷似しているという。下田はあまりそういうものをしたことがなかったが、確かに今の状況は、少し似ている。一応何度もやり直しはできているし、敵もいる。たくさんいる。ヨルシカを倒せばクリアーというわけだ。

 そう考えると、多少は気が楽になった。

 課題のレベルが上がっているのなら、自分のレベルも上げればいい。今までしてきたことに加えて、何か、新しい風が必要なのかもしれない。

 

 

 

 

 (6万7565)

 

 

 有利な点も、ちゃんと探すことにした。

 彼らは連携ができているが、それはお互いの存在も気にするということだ。上手くはまらなければ、事故も起こるだろう。現に、下田へは三人同時に攻撃してくるということはなかった。同士討ちの危険があるからだろう。基本的に一人が陽動で、残った二人が別々の方向から攻撃をするという形だった。

 一方、下田の方は単純でいて複雑だ。どれも敵なのだから、遠慮をせずに行動できる。ただ、それで考えることが相手よりも少なくなるというわけではなかった。むしろ、絶望的に多い。三つの脳、三つの体を同時に動かせて、それらを監督する四つ目の脳と体があるくらいでなければ、到底突破は無理だと感じる。

 穴があるとすれば、シーリスだ。おそらく、この三人の中で一番技量が下田と近い。とは言え、その考えは気休めでしかなかった。

 

「模擬戦、ですか?」

 

 シーリスは大体いつも、自分の祖父であるフォドリックと共に鍛錬を行っている。これまでと同じく、下田は敵と過ごす時間をなるべく多くしようと考えていた。

 

「ですが、シモダさんは、そういうことをする必要はないと思いますよ。私達に、今でも十分役立ってくれています」

 

 あまり関わりたくないというのが本音なのだろう。儀式の日が近づいてくるにつれて、彼女も含めたほとんどの祭祀場の者達は、さりげなく下田達から距離を取ろうとしていた。シーリスは特に、その傾向が顕著だ。残酷な事実を知っていて、それを相手に黙っている罪悪感。彼女は、まだ、優しい方なのかもしれない。

 

「できることは何でもしたいんです。まだ、戦いは残っていますから」

 

 そして、下田がちゃんと頼めば、それを無下にすることはない。シーリスはフォドリックと少しの間目を合わせた後、頷いた。

 

「では、お互いにちゃんとした決まりを設けましょう。それを決着の目安とします」

「決まり?」

 

 下田は、インベントリから、スティレットを取り出した。

 

「別に要らないんじゃないんですか。ここには優秀な奇跡使いもいますし。決着は、僕が死ぬか、シーリスさんがこれ以上続けられなくなるほど負傷した時でいいと思います」

 

 シーリスは茫然としていた。何を言われているのかを理解すると、大きな勢いで首を振る。目だけは下田からそらされていた。

 

「そのようなことは…」

「模擬戦とは言っても、実戦に沿わないと意味ないですよ。やってみましょう。大丈夫です、どうせそっちが勝ちますから。僕が死んでもすぐに蘇りますし。大したことないですよ」

「私は、貴方を手にかけるようなことは、したくありません」

「なんで、嘘をつくんですか」

 

 下田は苛々し始めた。空気が変わったのが周りにも伝わったのか、静まり返っている。

 シーリスは確かに本心で言っているのだろう。彼女は理由もなしに誰かを殺すことのできる女性ではない。

 でも、あの時は違った。今のシーリスは知る由もないだろうが、彼女の持つ刺突剣は、もう呆れるほど下田の頭蓋を貫いている。理由があれば、下田を殺せるだけの覚悟を、ちゃんと持っているということだ。

 

「そのようなことは認められない」

 

 黙って聞いていたフォドリックが、割り込んできた。孫が責められているのだ。何とか止めようとしてくるのは当然だろう。

 

「ここは、鍛錬の場だ。殺し合いをするために、皆励んでいるわけではない」

 

 だが、卑怯な嘘を、ついている場でもあるわけだ。

 下田は自分の狙い通りになったことを、内心喜んだ。

 今度はフォドリックへと口先を向ける。

 

「なら、貴方でもいいです。貴方が負けたら、シーリスさんとも戦います。決まりは、ちゃんと作りましょう。ただ、武器はありにしてください。素手で殴り合っても、大した意味はありません」

 

 フォドリックは、話している下田をじっと観察していた。彼の企みを、全て見透かそうとしているかのような、鋭い視線だった。下田としては、あまり隠しているつもりはない。そのままだ。彼ら二人との、経験が欲しい。

 結局フォドリックは了承して、一秒で下田は負けた。

 今までシーリスとも何度も模擬戦をしてきたが、全敗だ。彼女は歳だけなら、下田とはそう変わらないらしい。そこでも才能の違いを痛感した。自分が今までどれだけの時間繰り返してきたかは、もう数えてはいない。だが、もう人生が何回も終わりを迎えているくらいだとは、感覚としてあった。きっと、これからもたくさん時間を消費していくのだろう。

 

 

 

 

  (7万9283)

 

 

 順番を、決めるべきだ。

 とにかく一刻も早く、少しでも数を減らせば、それだけどんどん負担は軽くなる。ならば、誰を一番最初に処理するべきか。

 シーリスは駄目だ。たとえ彼女の隙を見出せたとしても、フォドリックが完璧にカバーをしてくるだろう。それに彼女にはまだ利用できる余地がある。二番目か、最後に殺した方がいい。

 下田は、ジークバルドからもらった酒を、一気に飲んだ。やや甘口で、とても飲みやすい。

 

「美味しい」

「そうだろう。今回はなかなかの自信作だ。他の者の評判もいい」

 

 相手は口ひげを同じ酒で濡らして、快活な笑みを浮かべている。

 冷酷なのか、はたまた、度を越えて優しいのか。

 ジークバルドは、下田達と積極的に関わろうとしていた。騙しているという負い目を決して表には出さずに、こちらへの気遣いを忘れない。多分、本気だ。上手く感情の折り合いをつけて、矛盾した行動を当たり前のようにできる。

 

「ジークさんは…」

「何だ?」

「カルラさんの足の事について、何か知っているんですか」

 

 杯をおいて、ジークバルドは、こちらを推し量るように見てきた。

 

「フム。どうしてそんなことを訊いてくる?」

「実は、二人がそんなような話をしてるのを聞いちゃって」

「そうか…」

 

 少し考えるように、頭をかいた。

 

「彼女の足が深淵に浸食されているのは、ヨームの都での所業のせいだ。私が、カルラをあそこから助け出してからの縁だな」

「所業?」

「最初の火を作りだそうとした。神に唾を吐くような行為だ。当然報いを受けた。国民のほとんどが死に絶え、直接かかわった術師たちは正気を失った。カルラだけが残った」

 

 下田はパズルのピースを一つ一つ当てはめてるように考えた。

 

「つまり、ジョックもそこで死んだんですね」

 

 今度はもっと反応が大きかった。ジークバルトはこちらを目を見開いて見た後、額を抑えた。深く溜息をつき、頭を下げてくる。

 

「あいつは、かなり、疲れているんだ。すまない。シモダのことを侮辱しているも同然だ」

「似ているんですか?」

「いや…姿は違う。だが、あの子も、奇跡を一番得意としていた。多分、そこを重ねてしまっているんだろう」

 

 やめてくれ、と思った。自分の母親は、ただ一人だけだ。残された大切な部分までを、彼らは奪っていこうとする。自分は、カルラの息子でも、この世界の住人でもない。かなり不愉快だった。

 

「いいんです。それよりも…、どうしてジークさんは何もしないんですか?」

 

 相手は、何を言われたのかわからないという顔をした。

 

「カルラさんが弱ってきているのは明らかです。どうして、何か手を施さないんですか?」

「いや、私は」

「傍目で見ている僕でも、わかります。彼女は、貴方を頼っている。ただの恩人以上の何かを、抱いているはずだ。貴方もそれをわかっている。なのに、助けようとはしない」

 

 ジークバルドは、首を振る。

 

「手の施しようがないのだ。先に限りがあるとしても、祭祀場に協力すると言ってくれた。彼女の使命に対する思いを、無下にするわけにはいかない」

「使命なんて、投げ出せばいいじゃないですか。一緒に逃げればいい」

「それは駄目だ」

 

 はっきりとした声で否定する。

 

「私の使命もある。火継ぎから目を背けることは、私を信じてくれた者達を全て裏切ることになる。死んだ者達もだ」

「家族、とか?」

 

 彼はさらにもう一杯、酒をあおった。かなり口が進んでいる。この人たちも酔うことがあるんだろうか。下田は冷静に観察をした。

 

「ああ。私にも…妻と子供がいた。だから、先へ進まなければならない」

 

 そこで初めて、ジークバルドの中で揺れるものがあるのを感じた。今までないものとして扱おうとしていた矛盾が目の前にまで迫ってきているのだろう。

 ジークバルドは、今、妻子の事を口にした。使命を果たさなければ、彼らに顔向けができないと。だが、果たしてそれは正しい認識なのだろうか。彼の子供は、一体何歳くらいで死んだのだろう。自分達と同じくらいだろうか。

 火継ぎのために何も知らない子供達を騙し、贄にすることは、使命に背くこととどれくらいの違いがあるのだろう。それをして使命を叶え、自分の家族と正面から向き合えるとでも、本気で思っているのだろうか。

 疑念はあるに違いない。だが、ジークバルドは選んだ。その矛盾を押し通し、先へ進むことを決めた。下田達を捨てる方を選んだ。

 酒を酌み交わしながら、一番最初に処理する相手を決めた。

 

 

 

 

 (8万5424)

 

 

 位置取りが、最も重要だ。

 馬鹿正直に真っすぐ向かえば、囲まれて終わる。どれだけ繰り返そうとも、自分の身体の構造を変えることはできない。同時に三人を、視界に入れることは不可能だ。

 だから、絶対に囲まれないよう、下田もまた常に移動をする必要がある。できれば、一人だけを相手にできるような位置。だが、相手の方も狙いはわかっている。そうならないように、動いてくるだろう。つまり残る二人の動きも、何とかして妨害する必要があるわけだ。その間に、目標の一人をできる限り早く倒す。

 最初の道筋としては、そういう感じだ。

 下田は思わず笑った。

 ふざけんな。

 

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