あいりすペドフィリア   作:サッドライプ

29 / 74

 あいりすミスティリア第四章攻略RTAはーじまーるよー。

 レギュレーションはストーリーイベントをスキップしてナジャの研究室に入ってからカウント開始、金庫を開けて《世界樹の種子》を入手したところでカウントストップです。

 この原作の投稿自体が未だに他に2件しかなく、ここまで話が進行しているものも無かったので当然これが最速になります(激おこ




白嶺の魔術塔

 

 周辺諸国への侵略を加速するグラーゼル帝国、その背後で暗躍し人類絶滅を目論む天使達に先を越されぬために、より精力的に種子集めの旅に繰り出す冥王一行。

 今回の目的地は大陸北部に位置するドワリンド・エンデュラシア自治領。その名の通りドワリンが中心となって築かれた亜人主体の国家であり、聖樹教会の影響力は当然弱い。

 

 更に言えばこの通称『魔術塔』と呼ばれる区域に住むのは真理の探究に日々勤しむ魔術師ばかり。宗教なんて主観的で抽象的なものは当然のこと、例え世が戦乱に突入しようがどうでもいい、あるいは実験の絶好のチャンスと考えるような奇人変人の集まりである。

 そういう場所で高純度エネルギー結晶体である種子の反応をユーが感知したのは、ある意味当然のことなのかもしれなかった。

 

「あー、帰りたくねー」

「その割には着いて来るのだな」

 

 まさにその場所でとある魔術師の門下として魔術の研鑽に励んでいたラディスが、道中憂鬱そうに溜息を吐く。

 寒冷かつ山岳の多いこの国特有の傾斜の激しい道のりは、緑が視界に入ることもあまりなく、歩いていても疲れるだけであまり気分が上向くものではないが、彼女がその低い身長をさらに悪い姿勢で縮こまらせているのはそのせいばかりではなかった。

 

 道中もう回数を数えるのも飽きるほど聞かされた『帰りたくない』のセリフにうんざりした顔で、背中の翼をばさばさ羽ばたかせながら隣で滞空する竜人シャロンが混ぜっかえす。

 

 ラディスの事情自体は、冥界から地上の転送拠点である冥王の祠を出発してすぐのところで本人の口から聞かされた。

 要は種子を宿して魔力が桁違いに増大したラディスが、天狗になったまま師匠と喧嘩別れして飛び出してきたというのが魔術塔を離れた経緯。

 アイリスに加わり様々な冒険を繰り広げ、戦争まで経験したことで利発さと落ち着きを取り戻した彼女からすれば、去り際に師匠に向かって「こんな所に籠ってたって何も見つからない」「あんたも自分の研鑽に集中しないとすぐに周りの進歩に置いてきぼりになるんじゃないの」など散々捨て台詞を吐いたことが、完全な黒歴史になっているとのこと。

 

「しょうがないじゃん。一応まだ《塔》にはあたしの籍も残ってるかも知れないし。

 変人ばっかで危険地帯もいっぱいなあの場所で、あたしが案内しなくてどうすんのって感じだし」

「籍が残っていれば、な。破門されてなければいいのー」

「うぐ……そん時は別行動取らせて。一緒にいるめーおー達の印象まで悪くなったら色々やりづらいでしょ」

 印象なんて今更。今をときめく邪神ですがなにか?

「―――あんがと」

 

 シャロンの指摘に更に憂鬱そうに背を丸くするラディスの頭を撫で、冥王がおどける。

 それだけで気分が大分軽くなったのか、魔術師の少女は頬を少し赤らめつつ、背筋を伸ばして普通に歩き出した。

 

 一方。邪神、黒歴史と言えばな巫女幼女。

 遠目に見え始めた天高い構造物から、あるものを思い浮かべていた。

 

「『塔』、か。―――思い出すよな、やはり」

「そうですね―――忘れたくても、忘れられないんですよ。きっと」

 

 字面と表情だけ見ればすごくシリアスなやり取りをユーと交わす。

 二人の視線の向かう先を見れば、何を意図しているかは瞭然だったが。

 

 

「何のお話なのでしょうか。わたくしには全く心当たりがありませんー」

 

 

「まだ何も言ってないぞラブリーショコ………間違えた、クリス」

「言い間違いの割にはほぼ最後まで口に出してるじゃないですか!?」

「間違えた、ラブリーショコラ」

「間違ってません!?」

「間違ってないんですか?」

「そう。間違いなんかじゃなかったんだ、―――ラブリーショコラは!」

「そういう意味じゃなくて……もぉ、もお~~~っ!!」

「あ、壊れた」

 

 そして、二人して上級神官様をからかって遊んでいた。

 ちょっと前に聖樹教会について衝撃的な疑惑が発覚したばかりでショックを受けていたが、正直せっかくアシュリーが元気になったのに今度はクリスに暗い雰囲気を撒き散らされたら堪ったもんじゃないと、このところアイリス達総懸かりでクリスに対しこの調子だった。

 

 重度の恋愛脳のくせに禁欲を口にし、自分の恋心すら素直に認められない生真面目ちゃんなので彼女をからかう方法は結構無数に存在する。

 おかげで落ち込んでいる暇もない。それはいいし皆の暖かい気持ちは大変ありがたいのだが、どうにも面白半分なふしもあるため釈然としない。特にどこぞの幼女とかは。

 

 とはいえ、まだアイリスが三人しか居らず、アシュリーが微妙な距離感のジェニファーとクリスの間を頑張って取り持っていた当初のぎこちなさはどこへやら。大所帯になってすら全員が互いを気遣い合える関係になっている。

 《芽吹きを待つ者(アイリス)》達の間に、着実に絆は紡がれつつある証左ではあった。

 

 

………そして。

 

 辿り着いた魔術塔では、幸いラディスはまだ在籍扱いだった。

 パルヴィンで渡された感状により身分を保証された冥王達も入領をスムーズに許可され、さらには問題の世界樹の種子もラディスの師匠である魔術師ナジャの研究室にあると来て、とんとん拍子に話が進んだ感があった。

 

 気になった点はといえば、ナジャはここ数か月ふらっと出掛けたきりこの塔に帰って来ていないという話を聞いたことだったが、種子の回収に交渉の手間が省けると言えなくもない。

 泥棒行為に気は引けるが、そこは弟子のラディスが次に師匠と会った時にそのこともついでに謝るということで、彼女が種子の保管されていると思しき金庫に近づいたその時だった。

 

 部屋の中を眩い閃光が照らし、その場の全員の視界を塞いでおいて。

 棚に整頓された魔導具の影から何かが飛び出し、ラディスの首筋目掛けて迫り―――、

 

「―――ふっ!!」

 

 ジェニファーが目を瞑ったまま黒外套に仕込んだ刃を抜いて斬り落とす。

 ちりん、と涼やかな音を立てて、その環状の物体は二つに分かたれ床に転がった。

 

「あっちゃー……。ナジャが行方不明って聞いて動揺してた。警戒してもし足りない場所だってのに。悪いねジェニファー」

「魔術師の工房なら、罠くらいはあるだろう。………しかし流石は王家の下賜品。切れ味が凄まじい」

 

 割とびっくり人間の神業のようにも思えるが、アシュリーやコトなども見もせずに飛来した矢や銃弾を叩き落とすくらいはやってのける。逆に言えば彼女達レベルの直感や経験が必要という話だが、もともと視界を制限しての戦いが多いのもあって眼帯幼女にとっても然程難しいことではなかった。

 矢や銃弾よりは遅い飛来物を迎撃した“程度”の所業など誇ることもなく当然と流し、ジェニファーは左の紅眼で刃紋に沿って青白い光を放つ懐剣を感心したように改めていた。

 

 金属質な物体を見事に両断し、刃こぼれ一つ見当たらない。

 普段遣いの大刀とは取り回しが全く異なるが、戦功の報いとしてパルヴィンからジェニファー個人に贈られた王家の家紋入りの懐剣は、実用性もかなりのものであるらしい。

 

 助けられたラディスがばつが悪そうにそんな短刀使いにジョブチェンジした銀髪幼女と話していると、かちりと音を立てて金庫の扉が開く。

 入れ方がまずかったのか、開いた金庫の中から一冊のノートが滑り落ちる。魔術的な仕掛けが施されていたのか、落ちた拍子に開いたページから、空中に像が投影された。映っていたのは先端が二股に分かれたとんがり帽子を被った黒髪のドワリン。

 

「まな板!?」

(((まな板……)))

 

 その映像を見たラディスの第一声がそれであり、おかげでその場にいたアイリス達の視線が彼女の胸部に向かう。第一印象が固定された瞬間だった。

 映像故にそんな恥辱を受けたとはつゆ知らぬナジャは、優しく微笑みながらラディスへのメッセージを言葉に綴っていた。

 

 

『これを見ているということは、今のあなたは一人ではなく、協力し合える仲間を旅の中で見つけられたということなのでしょう。

 魔術師の使命は世界の真理を探究すること。研究に身を捧げる私たちの元には、時に真理らしきものが飛来することがあります。それは蜂蜜のように甘く、奇蹟のように光り輝いているかもしれません。

―――でもね、ラディス。ご注意なさい。

 孤独の中で見つけた真理は我執にすぎません。人々との関わりの中で己の道を究め、いつの日か本当の真理に到達してください。

 願わくば、あなたが孤独という病に冒されませんよう』

 

 

「「「…………。???」」」

「………、あ」

 

 その場の全員が頭の上にはてなを浮かべながら、映像の再生が終わっても何も喋れずにいた。

 

 何か良いことを言っているような気もするのだが、如何せん微妙に文脈が繋がらない。

 ミステリー小説を途中から読み始めたかのような、いまいち咀嚼しきれない違和感に襲われる一行の中で。

 

 一人だけ、『やらかした』という表情で額から汗を流し、ぷるぷる震えている馬鹿が居た。

 

 映像の再生中に見つけた周辺の地図と、飛来物の残骸―――というか証拠物品を懐剣というか凶器と一緒に外套の下にしまい、その馬鹿は金庫から種子を取り出すととても可愛らしい笑顔で振り返って仲間達に言った。

 

「無事種子も回収できたし、さーかえろー!ね?ねっ!!」

 ジェニファー、説明。

「……イエス、マイロード」

 

 誤魔化されてくれる冥王達ではなかったが。

 『ああ、こいつまたなんかやったんだ』という呆れの視線を受けながら幼女が地図と残骸を机に拡げ、脳に浮かんだ推測を語る。

 

「おそらく、だが。この環は首枷で、出ていったくせに種子に釣られてのこのこ戻ってきた弟子にお灸を据えるためのものだったんではないかと」

「………まな板ならやりそう。それで?」

「首輪を外す条件としてこの地図の赤い印で示されたこの三か所に向かい、そこで試練のようなものをクリアできれば晴れて首枷は外れ、金庫も開く。そういう手筈だったんではないかと」

「ふむふむ。厳しい中にも優しさを見せる、立派なお師匠様なのですね」

 

 

「首枷が外れることと金庫が開くことが連動していたせいで、我がラディスに嵌められる前のこれを破壊したことでも試練を突破した扱いになり、今の映像が流れたんではないかと」

「……。つまり、ラディスの師匠の目論見は台無しと、そういうことかの?」

「――――そうとも言える」

「いやいやいやいや!?流石に、これはちょっと……」

 

 

 手間が省けたと言うには、あの映像に映っていた弟子の成長を確信する師匠の愛情に満ちた笑顔が非常に心に痛い。

 ジェニファーは仲間を襲う攻撃を防いだだけで別に悪いことをした訳でもないのだが、それでもあえて彼女の行為を形容するとすれば、『やらかした』としか言い様がないのだろう。

 

―――とりあえず、なんか見落としてるかも知れないし、この地図の場所にも向かってみようか。

 

 いたたまれなさに沈黙する一同の中で、冥王が切り出したその提案に反対する者は一人もおらず。

 

 

 このあとめちゃくちゃドラゴン退治した。

 

 

 





 おそらくこれが一番早いと思います(敗因:まな板師匠のフラグ管理の雑さ)
 なお、ここでジェニファーを操作している場合、『ナジャの投影魔導機』を回収するのを忘れないようにしましょう。『冥き茨の簒奪者』ルート解放のキーアイテムです。


……ぶっちゃけ第四章っておつかいクエストでモンスター退治三連荘な流れなんで正直話膨らませても仕方ないというか。
 なんならラディスの身代わりになって厨二幼女に首枷が嵌まるという展開も考えたけど、ちょっと絵面がまず過ぎるので没。

 という訳で巻き進行でした。
 いや、ラディスの「あたしはめーおーと行かなきゃならないの!」のセリフは結構好きなんですけどね。


 そしてコトちゃんにやっとまともなイベSSRが来たぜひゃっはー!!
 撃ったら寝る萌技とか初代人気投票一位の御褒美が恒常SSRと属性被りのSRだったとか、ソシャゲ序盤の調整不足は常とはいえかなり扱い悪かったからなー……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。