あいりすペドフィリア   作:サッドライプ

45 / 74

~学園イベント・パトリシア~

「パトリシアは~、えらいっ!」
「わーいっ。もっともっとほめていいんですよ~」
「つおい。かわいい。さいきょうっ!!」
「えへへ~。ジェニファーさんこそ、あたまよくて、いろいろ知っててえらいっ!!そしてかわいいっ」
「ふふーん。つまりわれとパトリシアがいれば?」
「「ぱーふぇくとっ!!」」

「「あははははははっっ」」


「…………何、これ?」
「…………はぁ。転がってる酒瓶を見るに、答えは一つしかなかろう。
 散らかったのは我が片付けておくから、二人を見ているのだぞウィルよ」
「ちょっ――明らかに面倒な方を押し付けたわね!?シャロン、逃げるなシャロン!!」

「ウィルだ」「ウィルさんです」
「げ……」
「げ?」「げんきです?」
「にじり寄ってくるな酔っぱらい共!てかなんで下戸と幼女が酒盛りやってるのよ!?」
「「女王さまの命令でーすっ」」
「ギゼリックぅぅぅーーーーー!!!?」
「げんきです!」「げんきだな!」

「「えらい!!」」
「何がよ!?というか褒め上戸か二人とも!?」


※幼女に酒を飲ませるのは絶対にやめましょう。


 以上。ちなみにこの後延々ツッコミながらも二人が寝付くまで面倒見てあげるウィルさんまじツンデレ。
 それでは第七章、戦争編なので流血マシマシ、若干グロ注意です↓




無垢の光翼

 

 季節は廻った。

 

 パルヴィンでポリンが狐耳幼女と化して年末年始を過ごしたり、ハジャーズで悪徳魔術師を成敗したプリシラが報酬としてラウラの尻を揉み始めたり。

 花嫁衣裳を着て執り行うエルフィンの儀式でジェーンのトラウマ(※二話目参照)が炸裂して場を超重力に堕とした結果、セシルが絶対に幸せな結婚を見せてあげるんだと命を燃やす覚悟で生涯の愛―――ハイエルフィンの寿命を考えれば千年単位―――を誓い、世界樹の種子を宿した精霊がテンション爆上げではっちゃけてエルフィンの住まう大森林全域を花畑にしたりと、波乱に満ちた冒険に事欠かなかったアイリス達だが、いよいよ避け得ぬ大一番が近づいていた。

 

 

 ヴァルムバッハ公国公主ゼクト、グラーゼル帝国に挙兵。

 パルヴィン、ハジャーズ、ドワリンド、ヴァンダルス同盟ほか周辺諸国がこれに呼応し、強引な拡張政策により伸び切った戦線を各地で寸断していく。

 アイリス達も、この機に乗じて帝国の背後に暗躍する天使が蓄えた世界樹の種子を奪取すべくこれに参加するのだった。

 

 外交を全捨てして抵抗か死かの残虐非道な侵略を続けていた故に強固に敷かれた包囲網を足掛かりに、帝国版図への逆侵攻を企図する公国軍。

 この日に備えて工業大国ドワリンドより調達した最新の軍備と、アイリス達の活躍により次々と迎撃に現れた帝国軍の部隊を打ち破っていく。

 

 今回戦争への参加が想定されていたためアイリスは全員連れて来ている。

 リリィはペットの三つ首犬ベロスと一緒に冥界の市街地でお留守番だが、滅多にない総力戦の予感に少女達は各々気合を入れて戦場に臨んでいる。

 

 中でも目覚ましい活躍をするのは紫髪の女騎士アシュリーだった。

 

「『白銀の疾風』殿は燃えているな。頼もしい限りだ」

「……エリーゼ様の仇、ですものね」

「………うむ。あのような悲劇が二度と起きないよう、ここで帝国は徹底的に叩かねばならん」

 

 プリシラの采配で重装騎兵の突撃を的確に銃弾の雨で制され、そこをアシュリーを先頭とした斬り込み隊に白兵戦に持ち込まれて散り散りになる帝国軍。そんな前線を見守りながら後方でゼクトとユーがしんみりしたやり取りをする。

 ふと見知った面子が欠けているのに気づいた公主は、その行方を彼女に尋ねた。

 

「ジェニファー殿が見当たらないが、今回は付いてきていないのか?」

「ジェニファーさんなら、単独行動ですね。最近多いような……」

 

 特に人の多い市街地の探索などでは決まってふらっといなくなる最近の幼女の動向を思い返しながらも、不審げにするでもなくユーは流す。

 

 寄り道が多いのはアイリスの大半に見られる傾向だし、むしろ一行が寄り道している間に一人で情報収集をしていることも度々ある為だ。

 どこぞの縮んだ高校生探偵よろしく、子供だからこそできる聞き込みの方法があるということなのだろう。買い物中の噂好きのおばちゃんの話し相手になることから、人さらいのチンピラを釣って締め上げることまで。

 

 今回アイリス全員で合戦に赴くにあたり、クリスが近くに居ると幼女が迂闊に全力が出せないのもある。またパルヴィン攻防戦からこちら、帝国にとって『黒の剣巫』という名が持つ意味は大きい為、“札の切りどころ”は見極めたいとしてジェニファーのみ別行動の許可を冥王から取っていた。

 

 

 そうこうしている内に前線の趨勢は帝国軍の壊走でけりがつき、預かっていた指揮権を返しにプリシラがゼクトのところまで駆けてくる。

 

「ご苦労、プリシラ王女」

「いい兵達でした。指示通りに迅速に動いてくれて、この勝利は装備だけじゃなく兵士の皆さんの日頃の鍛錬の賜物です」

「その言葉は兵達に掛けてやってくれ。俺を通すよりお姫様から直接言われた方があいつらも喜ぶだろう」

「はい、そう思ってお姉様にもうお願いしてます」

「仕事が早いな。………もしかして引き抜こうとしている?」

「あははー。そんなまさか」

「まさかだよなー」

「「あはははは」」

 

「怖っ!プリシラさんもゼクトさんも目が笑ってないのやめて下さい!?」

 

 為政者同士のブラックジョークにユーが慄いているのを放置して、蒼髪の姫軍師はこの後の戦略について話題を変える。

 

「帝国軍の動きが鈍い。周辺諸国による包囲網が有効に機能している―――と考えるにはちょっと楽観が過ぎるかな」

「散発的な戦闘は様子見と考えるにはちょいと大判振舞だな。重装騎兵は金喰い虫だ、捨て駒に使うには優先度がおかしい。となると……」

「捨て駒ではなく文字通りの当て馬。公国軍の行路を限定して、具合のいい場所に誘導しようとしている?ここから皇都まで行軍するには……やっぱり、か。

 クリス、パトリシア。覚悟決めた方が良さそうだよ」

 

「―――覚悟なら、とうに決まっています」

「わたしは、聖樹教会と戦うことが正しいかはまだ分かりません。……でも、ジェーンさんに酷いことをしたことだけは、絶対に間違ってますから」

 

 地図を拡げたプリシラが眉を顰める。話の途中で近づいてきていた聖神官と修道女に極力感情を排した静かな声で語り掛けると、彼女達も真剣な顔で頷き返した。

 

 代々の皇帝が信心深く、熱心に援助をしていたこともありグラーゼル帝国と聖樹教会は蜜月の関係にある。反帝国同盟に参加するよう呼び掛けても黙殺されたこともあり、帝国との戦争において敵対は避けられないものというのは事前に予想はされていた。

 そして、散発的な帝国部隊との戦闘によりやや南東に膨らむ形となった公国軍の進路上にある盆地。そこは帝国に隣接する教皇領から街道の繋がる巡礼の道。

 

 そう。その道を通って、聖樹騎士団が帝国への反抗を挫きに現れるだろう。

 魔物が跋扈するこの世界において、聖地を護る聖樹教会は武装した一個の国としての側面を有し、その不利益となる異端を抹殺する武力は信心深い者達―――代々の帝国皇帝のような―――の寄進により最高級の軍備を揃えている。

 

 信仰に支えられた常軌を逸した鍛錬、聖別され銃や魔術を弾く加護が与えられた鎧。嘘か真か十倍の兵数で当たっても勝てないと噂される最強の部隊、それが聖樹騎士団。

 彼らは当たって欲しくはなかった予想通りに、公国軍とアイリスの前に立ちはだかる。

 

 

「我らが声は教皇様の御声であり、我らが剣は教皇様の剣である。

 うぬらの胸に信仰あらば、武器を捨てただちに自領に帰るべし。

―――さもなくば、教皇様の御名においてうぬらを聖樹教会より破門とする」

 

 

 聖印の刺繍された軍旗を天に掲げ、一糸乱れぬ隊列が規律の厳しさを物語る。

 煌びやかな装飾の施された武具も相まってそれだけで見る者を委縮させる雰囲気を纏っているのに加え、先頭で口上を述べる騎士団長の口から“破門”の二文字が出た瞬間に公国軍に動揺が拡がる。

 

 聖樹騎士団の恐ろしいのは単純な武力だけではない。

 最大主教の威光を背負い、人々の信仰を揺さぶることでそもそも敵対することに迷いを抱かせる。まして“破門”という伝家の宝刀は、その宗教を心の拠り所にする人間からすれば世界に居場所がなくなるかのような話なのだ。

 だからそれをちらつかせるだけでも、人間の兵士では彼らと“戦う”ことすら難しい。

 

 どれだけ勇猛な軍であっても、いやむしろそうであるからこそ信心深い者も居る。部隊の数人に一人が揺らいだだけでも作戦行動に支障が出て、しかもその動揺は軍団内で伝播して増幅するのだ。

 

 これが教会に然程興味が無い亜人達なら話は違うのだが―――あとは、邪教徒呼ばわりされても己の信仰を一切曲げる気がない者か、聖樹教会そのものに並々ならぬ憎悪を抱く者か、あるいはそのハイブリッドか。

 

(………冥王様、これはまさか)

 来るぞ……!!!

 

 

 いい加減これまでの付き合いでパターンを覚えた冥王とアイリス達が、全員揃って幼女の武力介入の気配を感じ取る。

 

 

「―――貴様らの声が教皇の声なら、貴様らの首も教皇の首でいいんだよな?」

 

【“ヨリ深キ淵ヘ(アビスシンカー)”―――“裂キ穿テ迅雷(ブリッツ)”!!】

 

 

 雲を突き抜け、音もなく―――重力と電磁力を纏い音速を超えているのだから当然である―――幼女が飛んで来る。

 口上を述べているところであったため敵味方合わせて数万人が環視していたが、その中で超音速幼女を視認できたのは指で数えられる程度の人数しかいなかったのに、視界外から迫る脅威に振り向きかけただけでも流石と称するべきか。

 

 だが、人間の範疇にある騎士団長には“その程度”が限界で―――紫紺の合体剣が深淵(憎悪)によって加護を薄布同然に斬り裂いて首を断つ。

 そして慣性すらも支配下に置き、不自然に軽い着地音で地に足を着けた黒衣の幼女の足元に、何が起こったのかも分からないまま生首となった騎士団長が転がってきた。

 

 一拍遅れて、首なしの煌びやかな鎧付きの胴体が崩れ落ちて、噴出した血が巡礼の大地に赤い水たまりを作る。

 

 敵味方共、突然の屠殺劇(スプラッタショー)に現状認識すら拒む愚図が大多数。

 武装した兵士達が所属問わず呆けた面を何万と曝すのは中々シュールな絵面だが、それをぐるりと一瞥した朱彩眼の幼女は口元を歪め―――生首をサッカーボールの要領で足裏で転がしてから爪先で浮かすと。

 

 

――――全力で明後日の方向に蹴り飛ばす。

 

 

 超人の脚力で天高く打ち上げられた生首は、皮肉にも加護が働いたままなのか原型を留めたまま青空に放物線を描いた。

 

 聖樹騎士団を、ひいては教会の権威を文字通り足蹴にするこの行いは、挑発であり宣戦布告であり、そして教会の権威など童女に足でオモチャにされる程度でしかないと示すパフォーマンスだ。それも、常人の考え得る範囲外で超高レベルでの。

 

 

「【破門宣告、ね………好きに喚けよ。冥界(あの世)でな】」

 

 

 漸く認識が追い付き憤激に染まる聖樹騎士団に対し、おちょくるようにぺろりと舌を出す黒髪銀メッシュの幼女。

 暴走した一部の教会騎士が矢や魔法を放ち―――聖樹騎士団側は十分な精神的プレッシャーを与えられないどころか長をいきなり処刑された状態で、なし崩し的に公国軍との戦闘に突入することとなるのだった。

 

 

 





 自分達は教皇の名分である!………と声高らかに宣言した次の瞬間幼女に頭を踏み踏み(意味深)される聖騎士団長。あっけなく斬首&首をオモチャにされる教皇(代理)の姿に数万の目撃者の聖樹教会への畏敬の念がどうなったかはお察し。

 えらく残酷な絵面ではありますが、思惑があってやってるのです(言い訳)。戦争に勝つ為に徹底してると言えば聞こえはいいのか。
 とはいえジェーンと融合している“潰獄”状態だとその憎悪はジェニファーの物でもあるし、あくまで完全に制御しているというだけで憎悪はしっかり燃え続けてるので、私怨が無いとは口が裂けても言えません。


…………「お前の頭サッカーボールにすんぞゴラァ!!」を実際にやったシーンとか初めて描いたわ(キ印)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。