あいりすペドフィリア   作:サッドライプ

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 コラボキャラがメインで運用する場合露骨に課金前提の強化システムでちょっと笑った。
 アビリティとスキル四種類の解放にそれぞれSSR輝石が必要で、新属性の追加に2000蒼コイン粉末って………。

 や、まあそこまで気合入れなくても試練の出撃に入ってもらうくらいなら十分なんですけどね。




無垢の光翼5

 

「神聖魔術士隊、何をやっているのです!」

 

 幼女がゲリラ映像を展開し、大多数に向けて適当ぶっこいている間、非難の矛先になっている教皇はと言えば加速度的に都合の悪い流れになっているのを打開しようと部下に命令しようとしていた。

 口うるさいのは物理的に黙らせればいいのだ。今更それを躊躇うくらいなら映像に流れているような異端狩りを容認したりはしない。

 

―――というのを、戯言幼女が考えていない筈はないのだが。

 

 遠距離で打ち込まれる矢や魔法ならある程度までなら演説中のジェニファーに代わってナジャが防いでくれる手筈だし、その間に“教会のやり方”をその場で実演してくれるというなら糾弾の論理を組み替えるだけでいい。

 

「―――やめた方がいいと思いますが」

「クリス。やっぱりあの子を庇うのかしら?」

「いえ、忠告です。これだけの衆人環視の中で言葉に対して暴力で返す姿勢を見せるおつもりですか?

 それを誤魔化しきれる場面と相手だとでも?」

「……っ、攻撃は、合図があるまで待機」

 

 ジェニファーのよく回る舌を身をもって知っているクリスが忠告したことにより、状況を更に悪化させる手を打つのは未遂に留まっていたが。

 

 その礼という訳では、ないのだろうが。

 

「見よ!城壁に磔にされているのは上級神官クリスティン=ケトラ。

 聖樹教会の在り方に疑問を覚え、為すべきを為すべく出奔するも、此度の聖樹教会の野心溢れる参戦を止めるべく教皇に直訴した。戦禍の犠牲になる信徒を、僅かでも救う為に。

 だが、聖樹教会がそんな彼女に返した応えはアレだ!!沈思の聖女だの花の聖神官だのと持て囃しておきながら、都合が悪くなった途端に邪教の疑いを着せて“処分”しようとしている!人間を!さながら老いた家畜のように!!」

 

 

 嘘は言ってない、嘘は。だが。

 

 

 かわいそうな びしょうじょが ふたりに ふえた!!

 

 

………と、同時に教会は迂闊にクリスを実際に焼き殺すことが難しくなる。

 ジェニファーの“処分”という言葉を肯定するイメージが付いてしまう為だ。

 

 邪教幼女だっていつも顔面にグーパン入れそうになる相手とはいえ、ここまで仲間としてやって来たクリスの命がどうでもいい訳がない。

 そういう思惑も混ざっているのを察したクリスは、内心で感謝を抱く。

 

 こうして実際にまざまざと見せつけられた異端認定されたというだけの幼子に刻み付けられたトラウマの光景―――それによりジェーンが復讐鬼と化し幾人もの敬虔な信徒を殺戮したとしても、ジェニファーがこの映像を聖樹教会そのものを陥れる手段とするとしても、この惨劇を実際に記憶に刻み付けられた彼女達の怒りと嘆きは否定されるものではない。

 

 恨むな、とも許しなさい、とも言えない。言えるわけがない。教典に赦しこそが救いになるとおためごかしが書いていたところで、実際にそんな台詞をあの幼女に言う奴がいるとしたらそれはただの人でなしだ。

 だからこそ、教会の教えを捨てられないクリスを、それなのに仲間と見てくれる彼女“達”はどうしても悪く思えない。

 

 一方で―――だからこそ、クリスはジェニファーを止めようとは思わなかった。

 

 今のクリスを形作るのは大部分が聖樹教会の教えなのだ。心情的にどこか教会の肩を持ちたい自分がいる。

 けれど、あまりに身勝手ではないか。

 

 ジェニファーの目的は、ジェーンの復讐というだけではない。

 

――――人類抹殺を目論む天上人と天使を崇める聖樹教会は、ただでさえ転生が滞った世界で血塗られた侵略戦争を繰り広げる帝国に加担する聖樹教会は、ヒトという種の存続に有害だ。

 

―――お前達は、人間の未来に邪魔な存在だ。

 

 だから、今度はお前達が切り捨てられるべき番だ、と。

 

 “異教徒(ジェーン)”を、“意に従わない部下(クリス)”を、都合が悪い存在を『聖樹教会という大きな組織を守るために』切り捨てて来たように。

 『人類というより大きな括りを守るために』聖樹教会を切り捨てると。

 

 出奔しても、いままさに火刑に処されようとしていても、クリスは神官である自分を捨てることはない。何なら、今でも自分は教会の聖神官だという認識まである。

 だったら、散々他人を切り捨ててきた“自分たちが”いざ切り捨てられる番になってから、嫌だ止めましょうと喚くことほど惨めでみっともないことはないだろう。

 

 そうした“覚悟”を彼女もまた持っている――背負う覚悟はあるとか言っていたのだから――教皇に問いかけたのは、残された“先輩”への感傷か。

 

「教皇様はあの光景を見ても、何も感じないのですか」

「………“必要なこと”なのよ。それ以上でも、以下でもないわ」

 

 感覚が麻痺したのか、教皇の名に置いて行われた聖騎士の所業――即ち自分の罪と向き合うのが恐ろしいのか、自身の感情を封じ教皇としての振舞に徹しているのか、それはもう離れていた月日のせいで察することはできない。

 そんな相手にぶつけたのは、精一杯の遠回しな罵声だった。

 

「あれ以下なんてありませんよ。少なくとも私は知りません」

 

―――最低、と。

 

 

 

 

…………。

 

「ふふふ、あはははははッ!!

 認めましょうジェニファー=ドゥーエ。こと人間の弱さと悪意と欺瞞を見透かし弄ぶことにかけて、貴女はこの私よりも遥か高みに居る!!」

 

 深淵に堕ちた大魔女ナジャが大規模に、より多くの愚民へと届ける幼女の声は更なる煽動を企図して鋭さを更に増していく。

 

 

「聖典は語る、『信じる者は救われる』と。信じない者は救われなくていいのだ。何をされようが文句は言えないのだ。

―――磔にされた神官。聖樹教会が世界を手にした時、あれは数年後に誰の姿になる?

 諸君らか。その母か?妻か!?愛し子か!!?

 上級神官サマですらあの様だ、“信じない者”は聖樹教会が幾らでも都合のいいように決められるぞ?さながら自分が屠殺される順番を選べない豚のように。

 

 家畜に、神はいないのだからッ!!」

 

 

 倒置法と極端なイメージを繰り返し挟み、もはや常習同然に危機感を煽り倒す幼女。

 特に流されやすい者達の中では、最早聖樹教会の実体がどうであれ、頭から根っこまで腐った許せる要素が一片も無い外道集団というレッテルが固着しようとしていることだろう。

 

 人はなんだかんだ“正義”を求めるものだ。この場合の正義とは、悪を非難して自分がそれより優れているという感覚を得ることによる満足感を指すが。

 その“悪(サンドバッグ)”として都合の良い矛先が示されれば跳びつく愚か者は存外多いというのは、知る人はそれなりに実例付きで知っているだろう。具体例については何を挙げても危険なので敢えて触れないが……“いつも説教垂れているような連中が”、なんてのは格好の標的の一つだ。

 

 その辺りの心理をただの一テクニックとして当然のように話術に組み込む転生幼女の戯言の真価を、この幻想世界において高レベルに把握できるナジャというのも彼女の並外れた知性を示す証左なのだが、そんな彼女だからこそジェニファーの自覚していない部分にも気づいた。

 

「まったく、不思議ですね。あの光景だけでは説明が付きません。

―――虚栄も虚飾も無い剥き出しの悪意をどれだけ見て来たら、ああまで人間の心の醜さを見透かし揺することができるのか。そしてそれだけの悪意を目にしながら、どうして発狂もせずに人間の思考の真似事が出来るのか」

 

 

【悲報】まな板師匠、厨二幼女ごとネット社会に生きる全ての現代人を闇深扱いしてディスる【あなた達ほんとに正気ですか?】

 

 

「しかしそれ故に……敢えて言いましょう。高度な悪意の応酬に慣れ過ぎてしまったのか、“普通の民衆”を少々買い被っているのが貴女の唯一の減点です」

 

 

―――ジェニファーの戯言に関する致命的な部分がある。

 

 それは、ルクトラやパルヴィンでやらかしていた時と同じように、本人は今回のぺら回しですらも劇的な成果を期待していない、ということだ。

 せいぜい炎上して民衆の聖樹教会に対する信頼度が減り、見向きもされなくなるところまでいけば上々、程度の認識でやっている。

 

 人々の生活にまで根付いた信仰はそうそう消えないし、これで実際に聖樹教会そのものを切り捨てられるところまで期待はできないだろうと。今やっているのはせいぜい一石を投じるだけの行為で、“ちょっとした悪戯”にしかならないだろうと。

 

 そこにはふわっと結果をぶん投げる彼女のいい加減さとか無責任さとかの部分も確かにあるだろう。だがそれ以上に―――“彼”は無意識に自分の戯言を聞く相手の《情報取捨選択(リテラシー)》能力を“現代日本人”レベルで想定している。

 

 マスメディアのマの字すらないファンタジー世界の住人達に対してそれは無茶ぶりが過ぎることに気付く日は、記憶喪失が解けない限り絶対に来ない。それがこいつの戯言の致命的な――誰に対してとは言ってない――部分。

 

 つまり今回は過去最大級に、やり過ぎという言葉が生温い程に人を狂乱の渦に叩き込む。

 

 

「我は告発する。……そして戦う、世界の歪みを破壊する。

 これは正義の為の戦いではない。何故なら民衆の信心の拠り所を毀損することになるからだ。

 これは名誉の為の戦いではない。何故なら正しき教えを語る聖樹教会への反逆であるからだ。

 

 だがこれはっ、人が家畜ではなく…っ、人たる尊厳を守る為の戦いだ!!たとえ異端の謗(そし)りを受けようと、たった一人で世界を敵に回すことになろうとも―――」

 

 

 

【――――二度と、私のような子どもが生まれない世界が欲しいから】

 

 

 

 さも同情と同調が得やすい耳障りのいい動機を並べながらも、最後の最後に、戯言ではない本物の“可哀相な美少女”の言葉を挟み。

 名残惜しいながらも戯言の時間は終わりを告げる。

 

 効果は果たして劇的だった。

 

 怒号が天を突く。義憤、怨嗟、喝、さまざまな叫びは全て戦意を示し、しかしそれが伝わるのは全て、教皇に“水晶”を向けた銀髪幼女の背中から。

 大気が軋むほどに揺らせる戦意と感情の爆発に、心地よく浴びる小さな背を震わせて。

 

 黒衣の幼女は詠う。

 

 

「【我等、冥戒十三騎士が終の双騎、『黒の剣巫』が名の下に】」

 

「五臓六腑を穢れで充たし、冥府の闇を血に注ぐ者」

【而して万(ヨロズ)の命を階(キザハシ)に、創生の光を喰らう者】

 

「【哭き叫べ黎明。惑う勇往、永劫の帳。

―――深淵装魂(ソウルエンチャント・アビス)、“潰獄のパラノイア”】」

 

 

 やや光沢の鈍い銀の髪は深淵を蓄えて漆黒に染まり、一房だけを残すのみ。

 透き通る“水晶”の刃の輝きは、対になるべく虚空より抜き放たれた“黒”の禍々しさと相乗して紫紺の巨大剣を織り成していく。

 

 二人の名も無き“どこにでもいる悲劇のヒロイン”が融合した姿は、語られるべき生きた英雄譚。

 騎士の首を狩る黒髪の死神幼女。

 

「ひっ……そんな、『首狩り童女(ヴォーパルアリス)』ッ!!?」

「あっ、あっ、嫌だ、くび、くびが……!!」

 

 連合軍と対照的な、特に始まる前から怯えすら滲む教会騎士達。

 悪夢に見る程恐れた戦場の化け物が、復讐と大義名分という二重に『自分達が殺されるに相応しい理由』を用意して現れたのだからこの態度は決して大袈裟なものではない。

 

 まして今まで様々な恩恵に預かっていた彼等が慣れているのは、『自分達が絶対正義で』『躊躇いや怖れが滲む反逆の徒を』『優れた装備や実力で一方的に』叩き潰す戦い。

 数、そして防衛側の地の利という帝国・教会軍の強みが、攻城側の士気のみで圧倒されるほどの状態で開戦まで秒読みが迫る。

 

 口火を切ったのは、場の空気を掌握し自軍優位に持ち込んでみせた暗黒幼女の突撃だ。

 

 

 

 戯言の時間は終わり。ここからは―――、

 

「―――“正義の味方ごっこ”のお時間です。それでは、ご健闘を」

 

 

 天空の投影膜を消し、ナジャは自分の仕事は終わったとばかりにひらひらと手を振って姿を闇に霞ませるのだった。

 

 





 ああ、またはっちゃけ過ぎて煽動された被害者達の描写に行けなかった……。
 次こそは、幼女の闇深トラウマを映像で見せられたアイリス達の動きと、子供が酷い目に遭うことが許せない人格者のゼクト公のアツくなる(本人達が)描写を……。

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