あいりすペドフィリア   作:サッドライプ

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~最終章エピローグ~

「と、いうわけで」

「どうも皆さんごきげんよう。世界樹の精霊(光)のリリィです」
「ごきげんよう。世界樹の精霊(闇)のジェニファー……だそうだ」
「はいどうもごきげんよう。世界樹の精霊(笑)のユーです。………ってちょっと待てぃ!?」

「いきなりジェニファーさんが世界樹の精霊と言われても、という方もいらっしゃると思います。
 先日はゆっくり説明する時間もありませんでしたから」
「我にいたっては起きたら既にその扱いだったのだがな」

「あのー、リリィさん?そっちも重要ですけど、私の肩書は――」
「それでは順を追って振り返ってみましょう。まずは深淵の園でアシュリーさんが無事ジェニファーさんに勝ったところから」
「―――あ、スルーですかそうですか」

「あの後深淵の園の最深部から冥界に帰る必要があった訳ですが、脱出方法を知っているであろう主のジェニファーさんは気絶した状態でした。かと言って起こしたら起こしたで、やっぱり帰りたくないと駄々を捏ねないとも限らないので問答無用で一度冥界に拉致した方が確実です」
「意外に毒舌だな世界樹の精霊(光)。どこで覚えた?」
「元凶筆頭がなんか言ってますよー」
「??何かお気を悪くするところがありましたか…っ?」
「しかも天然か」

「そうなると脱出手段は一つ。世界樹の苗木だったわたしがあの場所に根を張り新たな世界樹として生長することで、わたしを通して冥界に帰還する路を作ることでした」
「そう言われると新たなる世界樹、なんか私的な理由で誕生したみたいに聞こえますねー」
「そこは脚色次第だろう。『悪の魔王を倒した冥王率いるアイリス達。一方通行の討伐路になることは覚悟していた一行だが、なんとその時魔王に封印されていた新たな世界樹の種が芽吹き成長し始めた!彼等は無事新世界樹を通って冥界に帰還したのである』。
 うむ、神話っぽいご都合主義な奇跡だな」
「自身を魔王って言っちゃってるのも大分アレですけど、脚色もどうなんですか?ジェニファーさん巫女さんじゃなかったんでしたっけ?」
「???神話なんて端からそんなものだろう?」
「ええー……」

「こほん。元々わたしが新たな世界樹になることは役目でしたし、数日もあればこうして意識を分離してリリィとして冥界の皆さんの下に帰って来れる話だったのでそれ自体は問題なかったのです。
 ですが、深淵に適応した世界樹というのも当然ながら初めての試み。しかも一度失敗した存在が考えたものというジェニファーさんの指摘と危惧はごもっともです」
「世界樹にそんな辛辣なダメ出ししようと思うの、ジェニファーさんくらいですけどねー」
「しかし深淵に関しては、旧世界樹による吸い上げと蓄積、そして『ダークアイリス』によるその制御というシステムが出来たばかりですがありました。なので、そのシステムも一緒に新世界樹にくっつけることにしたんです。これなら深淵の氾濫や暴走のリスクもより少なくなります!」
「えーと……ジェニファーさんがやろうとしていたことを、そのまま貯水池みたいなものとして利用した、ってことですか?」
「その理解でいいだろう。だが、それはつまり――」
「はい。外付けの機構なので、旧世界樹で深淵の量を調節する管理役となる存在が別に必要です。適任は、一人しかいないですよね?」
「それで世界樹の精霊(闇)―――あるいは旧世界樹の精霊、か」

「……勝手に決めてしまって、ごめんなさい。でも、『ですのお姉ちゃん』と一緒に世界樹の精霊をできるなら、ひとりでやるより不安じゃないって思ったら……ぁぅっ!?」
「そんな顔をするな。我にとっては当初の予定からやることがむしろ減ったに過ぎん」
「………(ぱああぁぁっっっ)!!!」
「リリィすっごい嬉しそうな顔ですね、ふふっ」


【………(むーっ)】
(いや、そこで拗ねるな半身)



「あ、ちなみに天上人さん達には、『わたしが支える世界にひどいことしようとするなら、ジェニファーさんと協力して何千年後と言わずに明日にでも天庭に深淵を垂れ流します』って伝えました。そうしたらなんと『これからは地上と冥界に手出しはしない。しないから』って言ってくれました!
 うふふ、脅(はな)せば下座(わか)るってこのことなんですねっ」

「おい、この世界樹の精霊(光)、無邪気に過激だぞ」
「誰の影響だと思ってんですか世界樹の精霊(闇)さん?」



※と、いうわけで。諸々の後始末について、可愛いマスコットと普通のマスコットと邪悪なマスコットが教室で語った感じ。
※ジェニファー(とジェーン)、正式に人間辞めました(実際は最終章の時点で既に、ですが)。厨二設定の更新と共に永遠の幼女に。
※気づいたらリリィがほんのり黒くなってた。何故だ……。

※以下は家出幼女の謝罪(?)行脚です。クエスチョンマークが付くのは、うん。ジェニファーだし……。



あいりすペドフィリア!

 

~冥王様にごめんなさい~

 

 お帰り、ジェニファー。

「主上。命令に背き勝手をしたことは申し開きの仕様もない。

 これより主上の騎士は名乗らない。ただの下僕として、好きに使い捨てて欲しい」

 それはちょっと困るなあ。

「これはけじめだ。主上の寛大さは承知しているが―――」

 

 

 でも、さ。ジェニファーは俺の“意思”を裏切ったことは一度もないだろう?

 

「―――!」

 

 

『人々が地上からいなくなるのは、寂しいからね』

『必ず天使達の企みは打ち破る』

 

 聖樹教会のこととか、深淵のこととか、天上人のこととか。

 色々と無茶してたよね。でも俺が不用意なこと言わなければ、もうちょっと違う道を選んでくれてたんじゃないかって責任は感じてる。

「っ……そんなことッ」

 

 君なりに自分ができることを精一杯やってただけだろ?だから誰がなんと言おうと変わらない。

―――ジェニファーは俺の騎士だ。いつまでも離すつもりなんてない。

 

「………。全ては我が我の意思で行ったことだ。主上の言葉に責任を擦り付けるつもりなどない。

 でもありがとう、冥王様――――」

 

 

 

~フランチェスカにごめんなさい~

 

「…………」

「……その」

「…………」

「……、フラン―――」

「―――ああもうっ!」

 

 ぎゅっ。

 

「え―――?」

 

「帰ってきてくれてよかった……っ!本当に、心配させないでよ。時々あなた、自分がいついなくなってもいいみたいな顔するから、自分は一人でも生きていけるって顔するから……二度と会えないかと思ったじゃないッ!!」

 

「そんな顔……?」

「してたのっ!ねえ、そんなに私達と一緒に居るのが怖かった?」

「――――」

 

 

「あなたは、ここに居ていいんだよ?幸せになっていいんだよ?」

 

「ぁ――――」

 

 

「………もう。私もだめねー。ほっぺぐにーじゃ済まさない、引っぱたいてやろうかって思ってたのに」

「いや。効いたさ……そんなのより、ずっとな」

 

 

 

~セシルにごめんなさい(副題:迫りつつあるアナちゃん先生の呪い)~

 

「ごめんなさい」

「はいっ、許します!」

 

「……いや、助かるがいいのか?それで」

「私、ジェニファー様よりお姉さんなので!お姉さんなので!!」

「二回言わなくても言いたいことは分かるが」

 

「そう言えば私ひとりっ子なので、弟か妹が欲しいって思ってたんです。

……最近これを口にすると、何故かひどい悪寒がするのですが」

「ぉぉう……何故か急に我もこう、非常にいたたまれないというか痛々しいというかそんな気持ちに………」

 

「それはともかく、ルージェニア様を見て時々うらやましいなあって思うことがありまして!だからジェニファー様、おねえちゃんにぎゅぅって抱き着いてもいいんですよ?」

「…………、ふむ」

 

 

「……あの、なんで頭をなでなでするんですか?それはお姉ちゃんの仕事じゃ―――ジェニファー様?ジェニファー様!?」

 

 

 

~ポリンにごめんなさい?(副題:ダークアイリスさんが転んだ)~

 

「うんうん、ちゃんと幼女に戻ってるわねジェニファー」

「汝だけ問題にしている箇所がおかしくないか?」

「どこが?世界樹の精霊になって、貴女はずっと幼女のままで居続けなくちゃいけない。

 大変よね?大変でしょ?それを考えると、私が寛大なのはどこか変かしら?」

「………まあ、汝がそれでいいのならいいんだが」

「私はいいから、早く次行きなさいな。じゃあね」

 

「………」たゆん♪

 

「―――ッ!!?」

「急に振り返って、どうしたんだ?」ぺったん♪

 

「何故だか急に背後から巨乳のオーラが……いいえっ、なんでもないわ。今度こそじゃあね」

 

「………」たゆんたゆん♪

 

「――――ッッッ!!?」

「だから何故急に振り返る」ぺったんこ♪

 

 

 

~クリスにごめんなさい??(副題:ここまでやるのはクリスにだけ、っていう意味では…)~

 

「ジェニファーさん、私の言いたいことは分かっていますね?」

「………むう」

「あなたが人をおちょくるのは親愛表現だというのは理解できているつもりです。

 ただし物には限度というものがあります。私は心配しているんですよ?あなたがいつかやり過ぎて、相手が許してくれるラインを超えてしまったら、あなたは大好きな人と仲違いしてしまうかも知れないんですよ?」

「それは、まあ」

「分かったら反省すること。さあ、まずは謝罪の気持ちを表して」

 

 

「―――つまり、償いとして我はラブリーショコラの聖装を着ればいいのか?」

「どーしてそうなるんですかっ!!?」

 

「や、そろそろクリスいこーるラブリーショコラというのもワンパターンかと思って」

「そんな等号はありませんっ!!」

 

 

 

~アシュリーにごめんなさい!!~

 

「アシュリー先輩、その―――」

「よしジェニファー、サボってた分鍛錬はびしばし行くぞ。まずは校庭百周だ!!」

「え、ええ?」

「ほらぼさっとしない!駆け足!!」

「おう、体育会系………」

 

 

「―――今更お前に謝られることなんて何もないさ。言いたいこともあの戦いで全部言ったよ、私はな」

 

 

「何かっ、言ったか!?あとこのタイヤ何処から持ってきたアシュリー先輩!?」

「まだまだ余裕ありそうだな!よしもう一個増やす。世界樹再生のためではないとはいえ、その力を悪用されないように種子回収の旅はまだまだ続くから、怠けてる暇はないぞ。

 昨日よりも強く、今日よりももっと強く。一に鍛錬二に鍛錬っ!!」

 

 

 

――――戯言は続く。

 

 混沌と調和が織り為す秘跡(ミスティリア)に紛れ込んだ愛らしくも哀らしい異物が踊った喜劇は、既に語られた物語。

 

 そして尚踊り続ける道を進んだ物語。

 終わらぬまま続いていく創話の中であるならば、その舞台に立つ者も、それを紡ぐ者も、またそれを見る者も例外はない。

 

 そう、誰しもがきっと―――。

 

 

 





―――あいりすペドフィリア!


 完!!ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!!


 作者はヴァレリアにごめんなさいしてきます!!!


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