あいりすペドフィリア   作:サッドライプ

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~聖装イベント・二心相戯れる恋の裁断者~

「ですの!」
「ですわ?」
「ですのですの!!」
「!ですわですわ♪」
「でーすーのー?」
「―――ですわ」
「です、の―――!?」
「ですわーっ!」

「……!!ですのですのですのですの!!」
「ですわですわですわですわですわ~~!!!」


「………。お姉さまとジェニファー、何やってるの?いや、楽しそうで何よりなんだけど」


「ですの?」「ですわ?」
「いや、ボクは謎言語で通じ合うテレパシーとか持ってないからね?」

「ですのっ☆」
「一瞬で退路を断たれた――!?じゃなくて、なんで前後からにじり寄ってくるの?なんでボクの周りぐるぐる回るの!?」
「ですわっ☆」

「で・す・の!で・す・の!!」
「悪ノリが過ぎるよ二人ともっ。ボクを巻き込まないで~~!」
「で・す・わ!で・す・わ!!」



 以上。プリシラなら口で抵抗しつつ割とあっさりオチる気もする。

 もうこのネタもかなり前のやつだけど、ジェミニンも封印するにはアレだしもう一回出番あってもいいかなー、とふと。

 ラブリーショコラ常設化記念に何かやろうかと思ったけど特にネタがない。
 うーん……とりあえず聖樹教会ディスってゼロノスボコってクリスいぢめよう。そんな感じで。





3月31日(前半)

 

 大義名分、というのは戦の後にこそ重要になるものである。

 

 為政者達の価値観にもよるが、なるほど戦争を起こす時に大義名分があるに越したことはない。それが誰の目にも立派であるほど猶のこと良し。―――だが、人を戦争に駆り立てるだけなら釣り合う利益さえ約束されればそれで充分とも言えるし、極論徴発した兵を敵前に整列させれば大義なぞ考える間もなく彼らは生きる為に戦う。

 

 先の反帝国同盟軍による逆侵略においては、報復・亡国の復興・侵略主義国家の脅威の撲滅という選り取り見取りな大義名分があり、そして領土拡大や祖国防衛という切実な利益と何より自分達が滅ぼされたくないという当然の生存本能があった。

 だが戦の後―――皇帝が討たれ崩壊した帝国領、教皇の起誓文により解体された教皇領、そこに住んでいた人間からしたら、同盟が掲げた大義名分は他人事のものでしかない。

 

 勿論敗者なのだから物を言う権利などありはしない。とはいえ新たにその敗者達を従えることになる支配者からすれば、彼らをも納得させるに足る大義名分があるならば大変助かるのも事実。

 

 

 あるではないか―――腐敗した聖樹教会が世界樹炎上とその後の異変、そして帝国の侵略戦争の黒幕だったのだ、だから世界のために奴らを打倒したのだ、という実にありがたい大義名分が。

 ついでに言えば、醜く反抗を続けていた聖地の行動とその失陥にタイミングを合わせるように、世界樹が黒く染まりそして新生した―――即ち、教会の悪の行動により状況が悪化し我々の正義の行動によって罪は雪がれたのだ、といういい感じのストーリーが。

 

 

 頭が信仰に蕩けてでもいない限り、真っ当に思考が回る為政者からすれば民衆のヘイトという泥を聖樹教会が被ってくれるのならこんなにおいしい話はないだろう。

 ましてや聖樹騎士団という自前の精強な武装組織を有していた―――モンスターが跋扈する世界においては致し方ない側面もあるとはいえ―――国際宗教団体など統治者にとっては目障りなケースが多い以上、それを弱体化させる絶好の機会をみすみす逃す手はない。

 ついでに元々自身が従えていた民の中に居る聖樹教会信者に対しても、教会と敵対した理由を納得させる大義名分はあればあるだけ良いわけだから。

 

 

 故に、ある幼女が敵勢力を陥れる為に適当ぶっこいた『聖樹教会こそ世界の歪み』という幻想(ウソ)は、戦争に勝った者達が自分達に都合のいいように喧伝する形で世界に拡散していく。

 

 

 それを受ける民衆達だが、実のところ……『ジェニファーの告発』という洗脳アジテーション映像を見ていなくても、教会の権威を失墜させるプロパガンダを頭ごなしに否定する者はそう多くない。

 人は優越感という名の『正義』を求めるものというのは以前述べたが、関連して常に『裁くべき悪』を求めたがる心理がある。戦火に見舞われる不安、あるいは実際に戦争の巻き添えになった怒り、情勢不安により当然税も重くなったし生活も苦しい、それらの不満に元凶があるとしたら?否、“元凶があって欲しい”。

 無意識に求めるそれは、形があってよく知っている相手である方が好ましい。不満をぶつける…“裁く”ことができるから。たとえばおとぎ話の元天上人なんてふわふわしたよく分からない存在よりも、自分達もよく知る相手が“元凶”だったのだ、と言われれば揺らいでしまうという具合に。その時信仰や信用や信頼が必ず歯止めになるとは限らず、むしろ裏返って理性の箍を外すことさえある。

 

 自分達が不幸なのはあいつのせいだ。裁きを。報復を。曝せ。

 魔女狩り、ギロチン、吊し上げ―――古今東西人間という群衆が抱く業は変わらない。高潔な創造神の息子が全人類に代わって磔になろうが、そんなもの腹の足しにもならなかったように。

 

 

 斯くして幻想は集団の共有認識として『事実』へと塗り替えられていくのであった。

 

 

………。

 

 そんな訳で。

 

 旧教皇領内ソルベンヌ、神官クリスと修道女パトリシアがかつて修行に励んだ修道院。

 聖地の各国共同統治の調整がようやく軌道に乗り、その合意締結に冥王やアイリス達も同席したついでに二人の要望で寄り道した時のことだった。

 

 二人が知る以前とは比べるまでもない程に、旧教皇領の人々の表情に活力がなくなっていた。無理もない、自分達は信仰篤い敬虔な信徒のつもりが一転、世界を混乱に陥れる首魁の一味にして畏れ多くも世界樹様を燃やし黒く染めた腐敗の一片として非難の対象になっているのだから。

 多感な時期を過ごした街でよく知る相手も多いだけに、つい気分を落ち込ませる聖樹教会組。だが、現状を理不尽と憤ることも難しい。

 

 戦争なのだ、負ければ失うものが大きいのは当然。まして帝国の側に立った聖樹教会は帝国が各地で働いた蛮行の責任を共に被る―――教会が帝国を支持したのは、教皇の名の下に帝国の所業を容認したということを意味するのだから―――以上、なんなら報復として同じことをされても文句は言えない。教皇にその“覚悟”があったのかは不明だが。

 都合がいいように事実と嘘をごちゃ混ぜにした悪評をばら撒かれてはいるが、あえて言ってしまうと『その程度で済ませてもらっている』というだけの話。

 

 民衆の処遇に関しても敗戦国にしてはそう悪くなく、他国より緩かった税制が見直された程度。駐屯兵も聖樹教会信者を侮蔑の籠った目で見ながらも、真面目に法に則った治安維持活動に終始している。

 

 激発するには名分の立たなさが先に来るが、その分だけ鬱屈する何かが降り積もる雪のように溜まっていく。そんな街でも精一杯気分を切り替えて旧交を温めたクリスとパトリシア。だが別れ際の修道院のマザーの言葉には考えさせられるものがあった。

 

「パトリシア、貴女はどう思いましたか?」

「『これからは教会関係者だと知られたらそれだけで生きにくい世界になる。今更私は教えを捨てられないけれど、若い貴女達は本当に大切なものを優先しなさい。

 教えの為に人があるのではなく、人がより善く生きる為に教えがあるのだから』。

………ふふ、二言目には戒律戒律って口癖だったマザーから出た言葉とは思えないです」

「そこは私にも意外でした。でも、あの方らしいといえばらしいのかも知れません」

 

 遠回しに『迫害される人生を送るくらいなら棄教してしまって構わない』と、シスター達に教会の規律を厳しく躾けてきた彼女がそう口にする日が来るなど予想だにしていなかった。

 だがその厳しさの裏には、様々な事情でシスターにならざるを得なかった少女達がせめてより善く生きれるようにと、そんな祈りが込められていたのだと分かる程度には大人になった二人。

 だからこそ育ての親とも言える女性の思いやりに即答で返した信念を、己で確かめるようにもう一度繰り返す。

 

 

「マザーのように聖樹教会の教えに救いと安らぎを得る人がこの地上に一人でも居る限りは、その方の祈りを肯定してあげられる聖職者でいたい。

 誰に望まれずとも、同じ教えを学んだ朋輩と道を違えようとも―――私は花の聖神官、クリスティン=ケトラです」

 

「そんなクリス先輩だから、一人で頑張らせるなんてできないです。

 大丈夫!どんな険しい道でも希望を捨てないで歩き続けること、私達はこれまでの旅でちゃんと学んできましたから!」

 

 

 己を曲げるつもりはない―――頑ななまでの信念を試すような、嘲笑うような、そんな時で場所だったのだ。

 

 雷雲すら焼き尽くす神聖な稲妻と共に『それ』が現れたのは。

 

 

 

 きぃん、と不愉快な耳鳴りが一瞬鼓膜を叩く。

 前兆らしい前兆はそれだけだった。

 

 天より招来する、光を吸い込む黒曜石の柱。大人数人の腕回りに等しい太さのそれは不気味なほどの静かさで接地し、無機質に大地へ標を穿つ。

 突き立った黒柱は不可視の波動を放ち、その悪意は周辺の市街を覆った。

 

 波動を浴びた者は思考や情動を打ち消され、生ける肉人形と化す……黒柱の正体は悍ましき精神兵器。

 躊躇いなくそんなものの投入を決断する勢力など二つとあるまい。

 

 深淵の影響の下に魂持つ生き物、その殲滅を志す天上人。手駒としていた聖樹教会の凋落により、新たなる侵略の手管は人間同士を潰し合わせる戦争の扇動からより直接的なものとなったらしい。

 侵略―――彼らに言わせれば『管理』なのだろうが。

 

 意識を奪われ瞳の光を失った者達が微動だにせず立ち尽くすさながら蝋人形の街。原初の神より地上の管理を任されたという彼らの理想が、冥王ハデスを除いてこんな光景だと言うのならば、たとえ正しいとされる摂理であっても魂持つ者はその尊厳を懸けて反逆するだろう。

 

 世界中に散らばった旧世界樹の力の残滓―――種子を持つ者(シーダー)であるアイリス達はその加護で精神干渉に耐えながら、黒柱を破壊すべくその周囲を防衛する下級天使達との交戦に入る。

 

「《深淵》も持たない下級天使なんて、今更どれだけ居たって!!」

「おいたが過ぎます―――沈みなさい!」

「まとめて薙ぎ払ってあげましょう」

 

 深淵に目覚め暗黒の力で強化された鉄槌を振るう転生天使に、魔導の使い手としては地上でも五指に入るハイエルフィンの女王と元魔術塔の首魁。非シーダーでありながら古参のアイリス達を凌ぐ実力者達の活躍もあり、危うげなく優勢を保っていた。

 

 その男が指を向ける程度の動作で放つたった一度の雷撃で、壊滅状態に陥るまでは。

 

 

「醜い抗いだ。まさに消去されるノイズに相応しい」

 

 ゼロノス―――!!

 

 

 直撃を食らったリディアが全身至る所を黒焦げに炭化させられた見るも悲惨な状態で倒れ伏し、巻き添えとなったアナスチガルが自身のダメージを押して治癒にあたっている。

 二人を庇うナジャも防御に全魔力を振り絞ったのかそれ以上の魔術行使に精彩を欠き、―――離れたところではショックで意識を手放した隙に黒柱の波動に屈したのか、クリスとパトリシアが意思の無い表情で立ち尽くしていた。

 

 それを冷たい視線で一瞥だけして、慮る価値もないとばかりにそれきり無関心に背を向ける赤銅髪の美丈夫。精緻な彫刻そのものの黄金の肉体に豪奢な装束を纏うは、聖樹教会が崇める天上人の序列最上位。

 愛する少女達を神話の奇蹟で蹂躙した旧知の相手を、冥王ハデスは睨みつけて声を荒げる。

 

―――天庭に《深淵》を噴出させない。その条件で地上から手を引くと言ったんじゃないのかお前達は。

「私のこの行動は、私を目覚めさせた世界樹の意思だ。世界樹の精霊が反抗的なのは貴様の元に居るからだろう。それにあの忌まわしい闇精霊か。

 いずれ我が手中にて相応しい在り方に帰ってもらうだけのこと」

―――約定破りに幼女誘拐に調教宣言か。くたばれロリコン野郎。

 

「冥王様、リリィが危ない―――!」

 大丈夫だ。リリィはジェニファーが付いて冥界に居る。

 

「他の心配をしている場合か?」

 

「――――冥王様ッッ!!?」

 

 ゼロノスが戯れに放つ裁きの雷が冥王の肉体を蝕む。

 妹分を心配してしがみ付いてきていたユーを咄嗟に突き飛ばしはしたが、元天上人の不死性を嘲るように激痛を継続的に送り込んでくる。その上で。

 

 

「私に従えとは言わない、むしろ徹底して抗え。万策尽き、絶望の淵に落ちたお前の前で全ての魂を消し去ろうではないか。

 簡単にお前を殺してやるほど、私は慈悲に溢れてはいないぞ?―――そうだな、まずは貴様が心を砕く手駒に貴様を痛めつけさせてみるか」

 

 

 雷の放出を止め、代わりにゼロノスが指を鳴らしたのを合図に……茫洋としていたパトリシアが顔を上げた。そしてゆっくりと歩み寄ってくる。その表情に、彼女生来の溌剌さも爛漫さも欠片も見当たらない。

 

「まさか――!やめて、そんなひどいこと……!!」

 

 今のパトリシアは人形も同然で、それを操り『痛めつけさせ』るなんてことをするならば。

 直接的な肉体の苦痛は勿論、二人の心にどれほどの悲しみを植え付けることになるだろう。愛する人を傷つけた心の痛みがどれほどになるか。

 

 思い当たって顔を青くしたユーが呻くが、当然ながらゼロノスに微塵の躊躇もない、呵責もない。

 そして膝を突いた冥王は、俯いたままの顔を上げることなく。

 

 ああ、本当に―――。

 

 

 

「私のオトコとツレを嗤ったのは、あなたですか?」

 

―――俺の騎士は頼りになる。

 

 

 

 夢遊病患者のような足取りだったパトリシアの姿が突如として消える。一瞬その聖装が武闘家シスターの戦闘服から“擦り切れた黒革”の装束へと変わっていたように見えたが、それも残像に霞むだけ。

 

 瞬きを一つ。辺り一面に劈く轟音。音のした方を見上げれば、黒柱の表面くまなく埋め尽くすように、鉄の砲弾でもぶち込んだような幾十の歪みと亀裂が錯綜し、そして止めに柱自体が半ばにて“へし折られて”いる。それが刹那の内に起こったのだから圧縮された音の波がどれほどかは推して知るべし。

 

 瞬きをもう一つ。今度は生き残っていた全ての下級天使の無機質なボディが一体一体全て同じ衝撃を喰らい、スクラップとなりながら各々明後日の方向に吹き飛ばされる。火花を散らしながらピンボールと化す残骸達の間を縫う黒い影を、誰もその目に留める事はできない。

 

 瞬きを更に一つ。ゼロノスの眼前に迫る上段蹴りの靴裏が天上人の障壁に突き刺さり、空間を波打たせて止まっていた。咄嗟に放たれた雷より素早く飛び退ったところで、“時”は動き出して破壊された黒柱や下級天使達の崩壊が折り重なって現出する。

 

 それを為した者は、明確に殺意という感情を瞳に宿しゼロノスと対峙していた。

 

「時の加速……?人間の分際で過ぎた力を。何だ貴様は?」

 

 それは天上人に対抗するというまさにこの時の為に託された力。試練に打ち克ったことで受け継がれ融け込んでいた祝福であり呪い。ここに“闇の蕾(ダークアイリス)”の祈りは鮮烈に芽吹く。

 

 その引き金を引いたのは他でもない、黒柱に表層の意識を封じられたことだ。

 主人格が機能を停止すれば、代わりに目覚めてしまう闇の住人達が居る。

 

 

「冥戒十三騎士が三の武侠、『藍の閃傑』パトリシア=ヘルシスター。

 私も嗤ってもらおうか―――地獄の底で!!」

 

 

 闇の住人“達”。そう、誰もが順当に強力で凶悪で狂暴なパトリシアの偽物に目が吸い寄せられるから。

 ゼロノスは当然としても、冥王達の誰も咄嗟に思い当たることはなかった。

 この場に呪いを受けた者はもう一人居ることに。よりによって厨二幼女の歪んだ親愛表現と悪ふざけの極致にある冒涜的なパチモノの存在に。

 

 

 

「幼馴染でBSS(ぼくが先に好きだったのに)した非モテ童貞の臭いがします……♪」

 

 

 

 ネズミを見つけた猫のような瞳で愉しそうに聖典の崇拝対象を見つめる聖神官に、誰も注意を払えていなかった―――。

 

 

 






 はいこの話が最後までシリアス続けられると思ってた人手を挙げてー。

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