「全艦警戒を厳にせよ。間もなく封鎖艦隊との合流地点だ」
ヤマトの【
キイにとっては自分のミスは自分でなんとかしろと言いたいが、居候の身では文句のつけようがないので、渋々要請を承諾し、オーストラリアへ向かっていた。
しかし、今回の再編成で、哨戒艦隊の一部を麾下に加えて貰っており、久しぶりの艦隊指揮にどこか興奮していた。
以下がキイ麾下の艦艇である。
戦艦 キイ
軽巡洋艦 キタカミ
駆逐艦 カミカゼ アサカゼ ハルカゼ マツカゼ ハタカゼ
潜水艦 イ201
キタカミを除きどれも高速艦で編成されており、これは敵を発見したら早急に現場に向かい攻撃する哨戒艦隊の志向を受け継いだものであり、またキイは知る由もなかったが、イ201に至っては改造されたイ401と張り合える水中速力を誇っていた。
戦力は十分、装備も充実、補給も万全、おまけにまともな連携を取れない駆逐艦らにはハッキングにより盗み取った各国海軍の運用思想や戦術、保有兵器の性能解析など現代型の艦隊行動を叩き込み、指示が無くても自分で判断し、行動出来るよう訓練させ万全に万全を期した。
そしてその成果が発揮される場が遂に訪れたのだ。
あれから約30分、合流地点へ封鎖艦隊の旗艦がやって来た。
「オーストラリア封鎖の増援にやって来たキイである。これより貴艦の指揮下に入る」
封鎖艦隊の旗艦は重巡洋艦キャンベラ。キイと比べると大人と小人どころか巨人と小人レベルに大きさが違うが、これでもオーストラリア封鎖艦隊の中では最も大きく、そもそも戦艦と比べる事が酷と言うものか。
ジッ···ジッ···ジジ···
キャンベラとの概念伝達中、カミカゼから横槍が入る。
「どうした?今キャンベラと···あぁ、了解した」
会話(?)を妨害され、憤るキイだったが即座にカミカゼの言わんとすることを理解する。
「全艦対空戦闘用意!輪形陣を組めっ!潜水艦は海中警戒を厳に!」
矢継ぎ早に指示を出し、次いでキャンベラにも声を掛ける。
「すまないが我が艦隊の初陣に手を出さないでくれるか?無論封鎖などについては貴艦に従おう」
キャンベラは了承すると艦隊から離れて行く。
「敵機を解析····解析完了。敵機は無人攻撃機QB55の編隊。数は90。爆弾搭載量は最大6t。対艦ミサイルを4発まで搭載可能。最高速度は860km。固定武装は無し。ウォガ空軍基地所属第32戦闘爆撃隊と第34戦闘爆撃隊の混成編成」
水平線から姿を表した機体をキタカミが即座に解析して解析結果を送ってくる。
「さて諸君、本来なら奴らの攻撃を回避するどころか迎撃する必要すら無い訳だが今回からしっかり迎撃して避けてもらうぞ。自らに驕れることのない行動心せよ」
訓示を終えると同時に先頭艦のキタカミが敵の攻撃を感知する。
「対空戦闘開始!撃ち方始め!」
∼∼オーストラリア政府∼∼
「国防大臣!どうなっているのかね!」
モリソン首相は憤っていた。
陸軍が主導して立案された【大戦艦撃沈計画】
数日前に観測された霧の大戦艦の撃沈計画。
軍機のため、詳細には書かれてないが、空軍による航空攻撃、海軍による残存艦艇による飽和攻撃、陸軍による長距離砲による砲撃支援の連携によるクライン•フィールドを中和、本体を攻撃するという計画で、軍部の乾坤一擲の大勝負であった。
しかし、現在無人観測機から送られてくる映像はひたすら攻撃機が落とされるばかりで、目標の戦艦に着弾したミサイルは数えるばかりだった。ついでに陸海空軍の連携など無かった。
「君に絶対の自信があると聞いたから攻撃を許可したのだ!結果を出して貰いたい!」
「お言葉ですが通常兵器での攻撃では限界があります。そこでこの攻撃計画にご裁可を頂きたい」
大臣が渡した書類は怒り狂っていた首相の態度を一気に冷めさせた。
「·····これで倒せると信じているのか?」
「ここで我らが手を引いても霧が手を引くとも限りません。ここまで来たらとことんやるしか無いのです」
∼∼現在∼∼
「方位2-1-0から敵機接近!数5!ハルカゼ応戦せよ!」
キイ艦隊は無人攻撃隊第一波を退け、現在第三波の攻撃を受けていた。
早朝から攻撃を受け続け、既に太陽は上がりきっていた。
さらに航空機に連動して潜水艦からも攻撃を受けており、これをイ201が反撃撃沈、キイ艦隊初の艦船撃沈戦果となった。
そうこうしているとハルカゼの迎撃をかいくぐった無人機からミサイルが発射される。
そしてそのミサイルをキイの濃密な対空砲火が絡め取り、次いで離脱しようとする無人機を撃墜する。
しかし、艦隊全体では撃墜数は伸びておらず、一次攻撃隊90機に対し、撃墜数は60機、二次攻撃隊100機に対し、撃墜数は50機三次攻撃隊に至っては80機の内僅か20機しか撃墜出来なかった。
紀伊の設計思想では航空機の攻撃を耐える、もしくは搭載した火器で撃退しつつ、敵戦艦と撃ち合うとなっているし、神風型は元々旧式で充分な数の対空砲を搭載出来なかったから、これでも目を見張る様な撃墜数ではあるが、キイは不満に思えてしょうがなかった。
しかしまずは眼前の敵である。
このまま攻撃を受け続ければ貧弱な人類の兵器でもいずれクライン•フィールドは飽和されるし、何より煩くて邪魔だ。ならばこのまま受け身を取り続けるよりこちらから仕掛ける方がいいだろう。
キイはそう判断すると敵攻撃隊が引き上げると同時に艦隊を一気に陸地に近づける。
「敵無人機の拠点であるヴォガ基地を攻撃する。各艦、侵食魚雷を用意」
やがて水平線の向こうから徐々にオーストラリア大陸が見え始める。と、同時に次々に砲弾が飛来し、艦隊周辺の海面を賑わせる。
「各艦へ通達。目標敵砲台。的は小さいぞ外すなよ」
「敵艦隊の射程圏内への侵入を確認。これより作戦を開始する」
スマホが壊れたせいで、ハーメルンのパス忘れて投稿できませんでした☆