八雲の藍   作:肉まんが死んで僕が生まれた

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八雲の藍

 マブシイナァ、マブシイナァ。キレイダナァ。

 

 ナンデ、ワレハアアジャナイ。ナンデワレハニゴッテイル……

 

 

 ──憎しみは何も生ねぇんだぜ──

 シャガクシャ、なぜ憎まない? 貴様は全てを憎悪しただろう? なぜ、ナゼ、何故!!!!! 

 

 ──俺たちは、太陽と共に戦っている──

 槍の持ち主よ、なぜだ、お前はそんなにも眩しい? 憎め、ニクメ、我を憎め!!!!! 

 

 憐れむな、我を。違う、チガウ!!! 我は滅びぬ、貴様らは知らぬのか? 我は不滅の存在だ!!! 撃ち倒される事など、ありえぬ……ありえぬ筈だ!!! 

 

 体が崩壊する、陽に蝕まれる。やめよ、やめよ!!! 

 

 我が、我が何をした? ふざけるな!!! 憎しみは消えぬ、この世から無くならぬ。

 

 ……違うのか? 我は何故、何を。どうして願うか? 

 

 誰か名付けよ、我が名を、断末魔の叫びからでも、哀惜の慟哭からでもなく、静かなる言葉で誰か、我が名を呼んでくれ、我が名は◼️◼️にあらじ、我が、呼ばれたき名は……。

 

「藍、八雲藍。あなた名は八雲の藍よ、私の式になりなさい」

 

「人に対しての妬み、嫉み。陽を恐怖する、遥か未来から来た、この世の全ての邪悪さん。あなたが欲しい、あなたが必要なの」

 

「幻想郷は全てを受け入れるわ……それはそれは悲しく美しく、残酷なほどに」

 

「そんな私の理想には……全てが欲しいの、人も妖も、神すらも、恐怖し、恐怖される程のあなたが」

 

 

 これは遠い遠い世界の話。二体で一体の(最強)に撃ち倒され、世界から消えていった最恐最悪の妖(◼️◼️の◼️)が、遥か昔の日本にて境界の賢者(八雲紫)と出会う物語。

 

 これは◼️◼️の◼️の物語では無い、妖怪達の理想郷、神々が恋した幻想郷の賢者、八雲紫に使える一体の式神の……。

 

 八雲藍の物語だ。

 

 

 

 

「紫様〜〜どこですか紫様〜〜」

 

 屋敷の中に声が響く、どうやら誰かが探しているようだ。

 

「……はぁ、また連絡もなしにお出かけなさって」

 

 溜息をつき項垂れる、中華服の様な服装で独特な形の帽子を被った女性。美しい容姿をしているがそれ以上に、金の毛並みと九つの尾、頭からの狐の耳が目を惹くだろう。

 

「西洋の蝙蝠の所か……あの決闘(ルール)を広げる為には確かに必要な事なのでしょうが……我ガイレバ全テ事足リルノ二…………ごほん、橙! 橙!! 来なさい!!!」

 

 女性が名を呼べば突如空間から隙間が現れ、尾が二つに別れた猫が現れた。

 

「お呼びでしょうか、藍様」

 

「橙、今から私は紫様を迎えに行きます、留守の間この屋敷を頼みますよ」

 

「はい!!」

 

 藍に命じられた橙が、ドロン、と煙を出したかと思えば二つの尾と猫耳を持った少女の姿に変わった。

 

「いってらっしいませ」

 

「ああ、すぐに戻る」

 

 藍が手を前に出せば空間に隙間が現れる、藍はその先に踏み込み完全に通り過ぎるとその隙間は閉ざされた、屋敷に残されたのは橙と呼ばれる猫の少女ただ一人、その小さな体を震わせていた。

 

「ああぁ!! 藍様ぁ……今日も凛々しくてございますぅ!」

 

 

 

 所は変わり、幻想郷の太陽の光に照らされ光る湖の近くのとある真紅の屋敷。八雲藍はその入り口に現れた。

 

「って、わぁ!? ら、藍さんですか!? 急に出てきましたね」

 

 それに対し、屋敷の門番である中華服を纏った妖怪が驚く。

 

「ああ、すまない。今、この屋敷に紫様がいらしているので、迎えに来た。入らせて貰うぞ」

 

「あ、はいどうぞ」

 

 門を潜り屋敷に足を踏み入る藍、屋敷の中は外見以上に広く、空間が歪んでいる。これにはとあるメイドが関わっているのだが、今は置いておこう。

 

 藍は無造作に進んでいき、とある扉の前に立つ。ノックをし、声をかける。

 

「紫様、お迎えに上がりました」

 

 そして時は少し遡る。

 

 

 それは紫が外出した直後だ。

 

「御機嫌よう、スカーレット卿」

 

 屋敷、紅魔館の玉座にて突如隙間が現れその中から出てきたのが八雲紫である。その名の通りに紫色のドレスに身を包み、金色の髪をたなびかせながら現れた。

 

「ふん、吸血鬼の生態も知らずに来るか。まぁ良い、話はなんだ、妖怪の賢者よ」

 

 迎えるのは水色の髪に淡いピンク色のドレスを着た幼い少女だ。彼女こそがこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットその人である。

 

「準備が万全ですわね、流石は運命を見る目を持つ吸血鬼ですわ」

 

 紫の目の前には紅茶にクッキーといったものが机の上に置いてあった、どれも出来立てで熱を放っている。

 

「優秀な使用人がいるだけだ、それより話はなんだ」

 

「先の異変……、貴女方西洋の化物達がこの幻想郷に攻め入って来た、その賠償についてです」

 

「フン、先走った有象無象共の事か? ……まぁ私がここに来たことに便乗したのだから責任程度負おうか、で、何が欲しい? 金か、血か……まぁなんでも言え、私が気を損なわない程度だったら答えてやろう」

 

「決闘……この幻想郷に置いて妖怪が安易に人を喰らうことの出来ないようにルールを作ります、貴女には、いえ貴女達にはその先駆けとなって頂きたい」

 

「決……闘?」

 

 

 

「ク、ハハハハハハハハ!!! 何とも、何とも幼い考えだ! 正気か賢者よ! 我ら化物が人を慮るのか? …………八雲紫、それは()()()()()()()()()()?」

 

「ええ、人を喰らい蹂躙するだけで在れば遠くない未来、私達はただ滅びるだけ。ならば人には武器を、技を与えましょう。人も妖も居てこそ私の幻想郷です……受けてくれるのならば先の異変に着いてはそれでお終いとします」

 

「……まぁ良い、笑わせて貰った礼だ受けよう。それにしても妖怪の賢者よ。力に見合わず難儀な生き方をするものだ」

 

「あら、好きでしている事ですわ。それに、優秀な部下も居ますもの」

 

 話の終わりと共に部屋の扉から、コココッとノックの音。そして迎えに来たという第三者の声。

 

「成る程、貴様の式か賢者よ。まぁ、まて。折角来た客人を持てなさないのは紅魔の名折れ……咲夜、持て成せ。盛大にな」

 

 

 視点は戻り、八雲藍に。

 

 扉をノックし、声をかけた後。扉が一気に遠くになる。

 

「……これは」

 

 視線を下げ、顔を伏しながら辺りを伺う。この屋敷は確かに空間が歪んでいたが、突然私の周囲の空間が広がりを見せた。

 

 そして突如飛来するナイフ、眼前に迫ったそれを藍は何をするまでも無く睨みつける。ナイフは空中に静止し、そのまま地面へ落ちる。

 

「これが貴様の能力か……人間」

 

「はい、その通りでございます、お客様」

 

 銀髪のメイド服を着た女性が突然藍の目の前に現れる。

 

「我が主人からお客様をもてなせ、と」

 

「……下らん事だ、身の程を弁えよ人間」

 

 藍が殺気と共に妖力を放つ。伏した顔から睨みつける様にメイドを見やる。次の瞬間、銀色の壁が藍に迫る。

 

 藍は尾の一振りでそれを打ち払う。壁の正体は隙間がないほどのナイフの投擲だ。打ち払った先にメイドはおらず、藍がどこにいるか辺りを見渡す。

 

 そしてまたもナイフが現れる、それも四方八方から突然に。藍は冷めた目をしながら尾を捻り上げ、鞭の様にしならせその全てをはたき落とす。

 

「……芸がない、あの程度の主人にはこの程度の従者か」

 

「それは、これをお召しになってから言って頂きたいものです」

 

 メイドは紅く染まった瞳で藍の前に現れる、そして手に持った大量のナイフを目にも留まらぬ速さで藍に振るう。その数一秒間に千回、否それ以上の超高速の斬撃をメイドは藍に向けて繰り出した。

 

 メイドは距離を置き、藍を見る。今の全ての攻撃に手応えがあった。が無傷の藍を見てその背筋を凍らす。

 

「恐怖したな、人間」

 

 凶悪な笑みを浮かべ無傷でその場に立つ藍。その後笑みを消した彼女は飽きたと言わんばかりに、虚空に手を向け何かを握りこむ様な動作をする。

 

「空間と、それに時か、人には過ぎた力であるが、所詮は人か。抜けさせて貰うぞ」

 

 そのまま、空間を力技で引き裂く藍。掴んだ腕を振るう事で辺りの歪んだ空間を壊したのだ。空間を壊したその先には……。

 

「お迎えに上がりました、紫様」

 

 八雲紫が待っていたのだ。

 

「あら、早かったじゃない藍。ではスカーレット卿、楽しみしておりますわ」

 

 紫は指を一鳴らしし、隙間を開く。先に紫が、後に続く様に藍が、隙間が閉じ残るレミリア。

 

「…………ふむ、咲夜」

 

「ここに」

 

 残されたレミリアは従者を呼ぶ。

 

「真面目なお前のことだ、大方八雲の従者との差に自身を卑下してると思うから言うが……気にするな。()()()()()()、人であれ妖であれ糧にする化物の中の化物だ、アレを打ち倒すには少なくとも……そう少なくとも人と妖が一丸となって挑まなければならないだろう、それでも勝てる可能性は殆ど見えんがな」

 

 溜息を一つ、従者に向けるレミリア。

 

「パチュリーを呼べ、策を立てる」

 

「了解しました」

 

 姿を消す咲夜、それを見た後一人になったレミリアは愚痴を溢す。

 

「まったく……ロンドンより余程の魔境だなここは」

 

 レミリアは片目のみを開き、自身の能力を発動させる。光を放ち様々な色に変わる瞳は遂に定まり一色の、紅色に染まる。

 

「だが……()()()()()()()()()、争いに来た訳でも無いが軽んじられるのも癪に障る。そもそもの私の目的を達成させるには……見えるには見えるが少し()()な、巫女とやらもなかなか強いが、ふむ……」

 

 

 

 

 

「よろしかったのですか? 紫様」

 

 屋敷に戻った二人、藍は紫に話しかける。

 

「あら、何がかしら?」

 

 それに対し紫はとぼけた様子で返事を返す。

 

「確かにあの吸血鬼はこの幻想郷でも上位に入る妖でしょう、それがあの決闘をするのなら大多数の妖が従うでしょうし、他の上位の妖を他に影響を受けるでしょう」

 

 ですが、と藍は言葉を繋ぐ。

 

「あの吸血鬼は何かを隠している。霊夢でも万が一と言える事態が有ると愚考します」

 

 静々と、紫の後を歩く藍。それに対し紫は振り向き()()()()()()

 

「ゆ、ゆかりさま?!」

 

「変に気にし過ぎよ、藍。あの子も修行はサボり気味だけど才能だけは一丁前に有るんだから、それに博麗の名前は伊達じゃ無い……知っているでしょ?」

 

「…………え、あ、はい。と、とりあえずお離れを……」

 

「だーめ! いやー久々に触れるけどモフッモフね。ここね? ここがいいのね?」

 

「や、やめて下さい、ゆかりさま〜?!」

 

 そんな乳繰り合いを眺める人物が一人、留守番を任された橙である。

 

「…………………………」

 

 瞳孔は鋭く開き、爪は鋭く伸びる。その姿はまさしく化け猫である。

 

「……………………いい」

 

 ポタポタと忠誠心を垂らしながら二人を見つめる橙。

 

「尊い、尊過ぎて……消えそう」

 

 何はともあれ過ぎていく、そんな幻想郷の数ある一幕なのであった。




最後のが書きたかった、多分続かない。
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