転生者たちの現実   作:かや芝

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二人目 チート転生

「生まれ変わってもらおう」

 

 目が覚めたら真っ白な空間にいた。

壁も終わりも見えない空間。自分が立っているのを自覚することもできない。

 

 目の前にはやたらイケメンな若い男。この状況、まさか………!

 

「暇なんだ、楽しませろ。ちょうどよく死んだことだし。必要なもんがあるなら言え。くれてやる」

 

やっぱりか!

 

「きたきた、マジでテンプレ転生だ!よっっっしゃ、もうこれはチートでハーレムやるしかねぇだろ!」

「行先はこの世界だ」

 

 男が空中を指さすと、そこに半透明のウインドウが浮かびなのはとフェイトの決戦シーンの映像が流れ出した。

 なのはか!あれはアニメも全部見たし、SSもかなり読んだ。漫画はうろ覚えだが、まぁStrikerSまでに原作改変すれば思い通りになるだろ。

 

「何が必要なんだ」

「今考えるからちょっと待っててくれ!」

 

 やったね、二次創作で鍛えた俺に隙はねぇ。しかもなんか神が娯楽を求めてるタイプっぽいから、もらえるもんの制限もほとんどなさそうだぜ。

とりあえず、何が相手でも余裕でチートできるようにしておきたいな。

 

 何がいいか……。

まず万華鏡写輪眼の力は欲しいし、ハガレンの錬金術もいいな。それから一方通行(アクセラレータ)にゼロ魔の偏在、あとは…………。

 

「決まったぜ!欲しい能力は」

「言わずともよい。すでにお前の希望は叶えた」

「マジかよ、神様お得意の読心術ってか?ま、なんでもいいけどな」

「それでは行ってこい」

 

 そう神が言った瞬間、視界と思考が同時にホワイトアウトした。

 

 

 

 

 

「神、と名乗った覚えはないのだがな」

 

ポツリ、そんな声が白い空間に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 転生から9年。俺は希望通りの能力に容姿を持って、海鳴市にいた。

神に要求したのは、あらゆるチート能力に加えなのはたちと同じ年に翠屋の近くに生まれることだ。聖祥大付属小に通うようにするのもデフォで。

 

 あとはDevil May Cryのダンテの容姿。簡単に言えば銀髪のイケメンだ。

両親は父をアメリカ人、母を日本人にしてもらったので容姿に矛盾はない。最近のSSじゃ銀髪オッドアイのオリ主が、日本人なのにありえない容姿だと叩かれて痛い厨二として書かれていたが、そんなものハーフなら何の問題もない。

 

 俺がもらった能力は見た目通りダンテの身体能力と魔人化能力と、禁書目録(インデックス)一方通行(アクセラレータ)の能力、両手を合わせるだけの錬金術、視力の落ちない万華鏡写輪眼などなど。他にもかなりもらったが、主に使うのはこのくらいだ。

 それからもちろん魔力量は管理局基準じゃ計測不能レベルだし、魔力変換資質はないが電気、炎熱、凍結すべて特に苦労せず行える。稀少技能(レアスキル)もないが、他作品の能力があるからそれで十分だ。

 

 デバイスは今のところは演算補助特化のストレージデバイスをもらっておいた。形状は待機状態もバリアジャケット展開後も黒いチョーカーで、もちろんアクセラさんをイメージ。ちなみにスイッチを付けて、普段はoffにしている。間違ってなのはたちに使っちまったら大惨事だからな。

 インテリジェントデバイスもいいかな、と思ったが、それは管理局になのはたちと入ってからもらえばいい。それに能力を使うなら演算以外の機能は必要ない、というか邪魔だ。

 

 

 さて、前置きが長くなったが、今俺はなのはと一緒に下校中だ。

原作開始前、なのはが「いい子」にしていた時期に仲良くなり、今ではアリサとすずかを含めて親友という関係にこぎつけた。よく、転生者がニコポナデポにこだわりすぎて原作キャラにキモがられているが、そんなものは必要ない。

 なのはが一人ぼっちの時期に仲良くなれば警戒は解けるし、それならよほどのへまをしない限りアリサとすずかにも心を開いてもらえる。「なのは」の世界は恋愛があまり絡まない代わりにみんな仲良しになる、って話ばかりだから誰かと仲良くなっておけばおそらくほとんどのキャラと良好な関係が築けるはずだ。

 

 今は3年生になったばかり。希望していなかったがなのはたちと同じクラスになれたし、今現在なのはたちの周りをうろつく男もいない。どうやらここに他の転生者はいないらしい。

覚悟はしていたが、いないに越したことはない。

原作はまだ始まっていないようだが、時間の問題だ。おそらく2、3日中には念話が届くだろう。

 

 ユーノには悪いが、最初に人間の、それも男だってことをきっちり話してもらうぜ。なのはと一緒に風呂なんて絶対に許さない。

 

「……くん、透夜くんってば!聞いてるの!?」

「ん?…ああ、聞いてるよ。なのはの運動神経がちっともよくならないって話だろ?」

「にゃー!そんなこと一言も言ってないし私だってちょっとは運動神経あるもん!」

「………この間の体育で、」

「なのはが悪かったの。だからその先は言っちゃダメ!」

 

他愛ない会話。今ここでアニメの主人公を話してるんだ、と思うと現実味はないが最高の気分だ。

 

「ごめんごめん。それで、なんだって?」

「むぅ。やっぱり聞いてなかったの……。あのね、今日はちょっと用事があるから、帰った後は遊べないよって話」

「そうなの?寂しいなぁ、なのはに明日まで会えないなんて」

「にゃっ」

 

 そういったきり顔を俯けてしまった。

……ほらな、ニコポなんてなくてもこうしてオトすことなんて簡単なのさ。さすが物語の中の住人というか、ちょっと歯の浮くようなセリフを言えばすぐに顔を真っ赤にして照れる。

 

「えと、えと……それじゃあまた明日!」

 

 なのははそのまま走り去ってしまった。まぁ嫌われて、じゃないから大丈夫だ。

 

 それにしても暇になっちまったな……。

そうだ、まだはやての家を見つけてなかったな。よし、今日ははやてを探すことにしよう。

 図書館に行ってもいいが、面倒だし、何よりそろそろ夕方だ。はやても家に帰る時間だろう。多分、猫姉妹が隠蔽結界みたいなのを張ってるだろうからすぐわかると思うんだが。

 

…………………………。

 

見つけた。

俺は反応のあった方向へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 案の定、人の認識を曖昧にして納得させる認識阻害+はやての魔力と結界そのものの魔力を隠す隠蔽の効果を持った結界が張られていた。

俺の魔力と補助特化デバイスがなければ見つけるのは難しいだろう。

 

 家の中には明かりがついている。

読み通りはやてはもう帰っているらしい。……が、今日のところはこれで引き上げるとしよう。この状況で訪ねるのは不自然すぎるし、家が見つかっただけでも前進だ。接点はこれからいくらでも作れる。なんせまだ無印が始まってすらいないからな。

 

そう思い帰ろうと踵を返したところで、俺は異変を感じた。

 

「なんだ、身体が、うまく」

 

声が途切れる。手足が不自然にしびれて動かせない。

 

「とんでもない魔力を感じてやってきてみれば……」

「こんなのも対処できないとはな」

「デバイスを持っているところをみると一応魔導師のようだが」

 

 俺を挟むように一本道の前と後ろに仮面の男が二人立っていた。

ちくしょう……!猫姉妹来るの速すぎんだろ!しかもいきなり攻撃だと……!?

 

「な……に、しや…がった………」

「まだ意識があったか。それは私たち手製の毒だよ」

「毒、といっても効果は睡眠と麻痺程度だがな」

 

 意識に靄がかかる。ふらついて思わず膝をついた。

瞼が重くて目を開けていられない。

 

「心配……ひきわた…」

「素…をしら……クロ………」

 

 くそ………!こんなことならここに来る前からチョーカーのスイッチを入れておくんだった!

俺は歯噛みしながら意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

 目を開けると、白い天井が目に入った。

見渡しても保健室のような印象を受けるだけ、あとは見慣れない機械がたくさんあるくらいだ。病院か?

何が起きたんだ?ここはいったい………?

 

「目が覚めたようだな」

「!!」

 

 部屋に入ってきた黒い服の少年が声をかけてきた。それと同時に意識を失う前のことが思い出される。

状況も一瞬で読めた。

 

ちくしょう、あのクソ猫ども……よりにもよってKYなんかに引き渡しやがって……!

 

「四季透夜くん、だったな。まずは手荒な真似をしてしまったことを謝罪する。現段階で君が犯罪を犯しているわけでもないのに強制連行のような形になってしまった」

「……」

「だが、デバイスまで持っている君が管理外世界にいる、というのは確かに不自然なんだ。少し調べさせてもらったが、ご両親も魔法とはかかわりない人のようだし、事情を聴きたいんだ。かまわないかな?」

 

 このやろう……何がかまわないかな?だ。この状況で拒否権なんかねえだろ。

ご丁寧に両手足に拘束具なんてつけやがって。

 

 まぁダンテの身体能力があれば引きちぎれるし、デバイスは取り上げられてるみたいだがデバイスなしでも魔法は使える。いつでも逃げだせるんだがな。

 

「デバイスは、拾ったんだよ。近くの山で歩いてる時に。で、適当にかまってたら動いて、魔法が使えるってわかった。それから一人でちょくちょく練習してたんだよ」

「拾った?おかしな話だな……。どこのあたりか詳しく教えてくれるか?」

 

チッ。めんどくせぇな。逃げちまうか?

 

「ああ、ちなみにその拘束具は魔法を使えなくするからな。力でどうにかしようとすれば内側から麻酔針が飛び出すようになっている。妙なことはしないほうが身のためだぞ、こちらの心証的にもな」

「なんでそんなに厳重なんだよ。俺何もしてないだろ!」

「すまないな。だが君の魔力量が計測不能というとんでもない結果を出している以上、暴れでもされたらこちらにそれを止める術はないんだ。君のような子供が凶悪な犯罪者だと思っているわけではないが、もし武力行使に出られると周りへの被害が尋常じゃないんでね」

 

くそっ!どうなってやがる!こんなのは計算外だ!

 

「そうかよ。天下の管理局とやらもこんなガキを拘束してまで事情聴取とは、恐れ入ったね」

「………どうして管理局を知っている?まだ何も話していないはずだが」

 

!!!

この野郎、あえて自己紹介もせずカマかけやがったな!!

 

「魔法文化のない管理外世界に魔力をもった人間がいるのは別におかしなことじゃない。それがとてつもない魔力量なのも、稀にだが見られることだ。だがデバイスを持っている上に拾ったなどと言い、知らないはずの管理局のことまで知っている。どうも怪しすぎる。君は何かを隠していないか?」

 

 なんてやろうだ、コイツ。伊達にこの年で執務官やってねぇってことか。

尋問に手馴れてやがる。

 

「管理局のことはデバイスのデータを見たんだよ」

「ふむ、魔法の演算データしか入っていなかったが?

「っ消したんだよ!地球では必要のない情報よりも魔法のデータ入れたほうが有意義だからな!」

「そうか。それならあの不可解なスイッチはなんだ?調べさせてもらったが、どうも何かの力場を制御する術式のようだが、あの術式では何も起こらないぞ?」

「それは……俺のレアスキルの補助だからだよ。デバイスなしでも使えるが、あったほうが演算がスムーズだしな」

 

 ちくしょうちくしょうちくしょう!こいつ完全に俺の言うこと信用してねぇ!

明らかに疑ってかかってやがる。うぜぇ、この拘束具さえなければ……!

 

「なら、最終確認だが、君は魔法の練習をして何をするつもりだった?あの世界では使えないものだろう?管理局のことを知っているなら管理外世界での魔法の秘匿義務も知っているだろうし」

「ただ人にないものが使えるのがうれしくて練習していだけだ。魔法なんておとぎ話の中のもんだからな」

「そうか……、なら管理局と敵対する気も、法を侵すつもりもないんだな?」

「ああ」

「ならば拘束は解除しよう。悪かったな」

 

 そういうとKY――クロノは俺の拘束を順に外していった。

この野郎、マジで覚えてろよ。原作が始まったらその鼻っ柱たたき折ってやるからな。

 

「デバイスも返却するが、君は魔法教育をちゃんと受けたほうがいい。遅くとも明日にはこちらから君のご両親にに説明に行くよ」

 

 予想外すぎる。こんなの俺のシナリオにはなかった!

拙いな、このままだと無印に介入しづらくなっちまう。かといってここで反発するのも得策とは言えないし……。

 

「ん………。ああ、少し待っていてくれ。ここからは別の者が君につくから。僕は別の仕事があるのでこれで失礼するよ」

 

どうも念話で呼び出しを受けたらしい。急いだ様子で部屋を出て行った。

 

「くそ、もとはと言えばあの猫どもがふざけた真似をするからじゃねぇか……」

「私たちが猫だって、あんたはなんで知ってるんだろうねぇ?」

「!?」

 

 すぐ後ろから聞こえた声に慌てて振り返ると、今度は(・・・)猫耳女の姿の猫姉妹がにやにやと笑いながら立っていた。

 

「ねぇ?どういうことなのか、ちょっと聞きたいんだ・け・ど・なぁ?」

 

ガチャリ。呆然としている間に両手首にさっきと同じ枷をはめられてしまう。

 

「ここじゃなんだし、もっといい場所に案内するよ」

「お前っ……」

 

 浮かび上がる魔法陣。

それが発動し一瞬の強い光に視界が包まれた。

 

 

 

 

 

転移魔法陣(・・・・・)が発動した後、部屋には誰の影もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、海鳴市からある一家が消えた。

引っ越したのでもなく、事故や事件によって死亡したわけでもない。

文字通り、消失したのだ。

 

そして……………。

 

 数日が経ち、数週間が経ち。

さらに奇妙なことに、誰もいない家が未だそこにあるというのに、市の住民たちは誰もそれに疑問を覚えず、いつも通りの日常を過ごしている。

 そう………かつて四人組(・・・)であった子供たちが、今は三人(・・)であることを不思議に思わないように。

 




今回はBAD ENDで。

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