問題児たちと血を受け継ぐ者が異世界から来るそうですよ?(リメイク版)   作:ほにゃー

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第2話 箱庭の説明と初ゲームだそうですよ?

「あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないのデス」

 

黒ウサギは涙目になりながらorzの形になって落ち込んでいる。

 

「いいから、さっさと説明しろ。」

 

取りあえず、話だけ聞くことになり修也たちは黒ウサギの前の岸辺に座る。

 

黒ウサギは気を取り直したのか咳払いをし、両手を広げた。

 

「それではいいですか、皆様。定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います!ようこそ“箱庭の世界”へ!我々は皆様にギフトを与えられたものたちだが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召還いたしました!」

 

「ギフトゲーム?」

 

「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は、普通の人間ではございません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に造られたステージなのでございますよ!」

 

黒ウサギの説明に飛鳥が手を上げて質問する。

 

「まず初歩的な質問からしていい? 貴女の言う“我々”とは貴女を含めた誰かなの?」

 

「YES!異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって、数多とある“コミュニティ”に必ず属していただきます♪」

 

「嫌だね」

 

十六夜が無情にも断る。

 

「属していただきます!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの“主催者(ホスト)”が提示した商品をゲットできると言うとってもシンプルな構造となっております」

 

また、十六夜に切れて説明を始める黒ウサギ。

 

「主催者って誰?」

 

耀が控えめに手を上げ聞く。

 

「様々ですね。修羅神仏が人を試すための試練と称して行われたり、コミュニティの力を誇示するために独自に開催するグループもあります。前者は自由参加ですが、“主催者”が修羅神仏のため、凶悪かつ難解で中には命を落とす物もありますが、その分見返りは大きいです。場合によっては新しい“恩恵(ギフト)”を手に入れることもできます。後者は、参加にチップが必要です。参加者が敗退すれば“主催者”のコミュニティに寄贈されます。」

 

「後者は俗物ね。チップには何を?」

 

「様々です。金品・土地・利権・名誉・人間……そして、ギフトも賭けることができます。新たな才能を他人から奪えればより高度なギフトゲームを挑む事も可能です。ただし、ギフトを賭けた場合、負ければご自身の才能も失われるのであしからず」

 

そういう黒ウサギの顔には黒い影があった。

 

「そう。なら最後にもう一つ。ゲームそのものはどうやって始めるの?」

 

「コミュニティ同士のゲームを除けば、期日内に登録すればOK!商店街でも商店が小規模のゲームを行っているのでよかったら参加してください」

 

「……つまりギフトゲームとはこの世界の法そのもの、と考えてもいいのかしら?」

 

お?と驚く黒ウサギ。

 

「ふふん? 中々鋭いですね。しかしそれは八割正解二割間違いです。我々の世界でも強盗や窃盗は禁止ですし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪などもってのほか!そんな不逞の輩は悉く処罰します。しかし!先ほどそちらの方がおっしゃった様に、ギフトゲームの本質は勝者が得をするもの!例えば店頭に置かれている商品も、店側が提示したゲームをクリアすればただで入手することも可能だと言うことですね」

 

「そう。中々野蛮ね」

 

「ごもっとも。しかし“主催者”全て自己責任でゲームを開催しております。つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めからゲームに参加しなければいいだけの話でございます。ですが、話を聞いただけでは分からないでしょうし、ここは一つ簡単なゲームをしませんか?」

 

そう言うと、黒ウサギは一束のトランプを取り出す。

 

「最初にも言いましたが、この世界にはコミュニティというものが存在します」

 

そういいながら黒ウサギはトランプを取り出し、シャッフルしながら説明を続ける。

 

「この世界の住人は必ずどこかのコミュニティに所属しなければなりません。いえ、所属しなければ生きていくことさえ困難と言っても過言ではないのです!」

 

そう言い指を鳴らすと、どこからともなくカードテーブルが現れる。

 

「みなさんを黒ウサギの所属するコミュニティに入れてさしあげても構わないのですが、ギフトゲームに勝てないような人材では困るのです。ええ、まったく本当に困るのです、むしろお荷物・邪魔者・足手まといなのです!まぁ、自信がないのであれば、断って下さっても結構ですよ?」

 

あからさまな挑発に、十六夜、飛鳥、耀の三人は眼を細める。

 

そんな中、修也は黒ウサギの表情に僅かばかりの動揺があるのが見え、訝しげに黒ウサギを見る。

 

事実、それは当たっていた。

 

黒ウサギはとある理由で、修也たちを自身のコミュニティに所属させねばならなかった。

 

この挑発に乗ってゲームに乗ってくれれば良し。

 

更に乗ってくれれば、どのような手段でこのゲームを乗り切るのか、実力も見れるので良し。

 

だが、もし激怒でもされて帰られたりしたり、他のコミュニティに行くとでも言われたら黒ウサギは是が非でも止めないといけない。

 

これは一つの賭けだった。

 

「随分と素敵な挑発だな。いいぜ、乗ってやるよ」

 

十六夜がそう言ったのを皮切りに、飛鳥と耀もゲームに乗った。

 

修也も、気になることではあったが、敢えてゲームに参加することにした。

 

「それで、ルールは?」

 

「ルールは簡単。この52枚のトランプから絵札を選んで引いてもらうだけです。ただし、引けるカードは一人一枚で、チャンスは一回」

 

「方法はどんなことをしてもいいの?」

 

「ルールに抵触しなければ。ちなみに黒ウサギは審判権限(ジャッジマスター)という特権を持っていますので、ルール違反は無理ですよ?ウサギの目と耳は箱庭の中枢と繋がっているのです」

 

「チップは?お前の言う恩恵(ギフト)ってのを賭けるのか?」

 

「今回皆様は箱庭に来てばかりなので、チップは免除します。強いていえば、あなた方のプライドを賭けると言ったところでしょうか」

 

「私達が勝ったら?」

 

「そうですね。その時は、神仏の眷属であるこの黒ウサギが、なんでも一つあなた方の言うことを聞きましょう」

 

「ほぉ、なんでもか?」

 

軽薄そうに笑う十六夜の視線が黒ウサギの豊満な胸部へと向けられる。

 

それに気づいた黒ウサギは慌てて胸を庇う。

 

「で、ですが性的なことは無しですよ!」

 

釘をさす黒ウサギ、そして、十六夜に白い目を向ける飛鳥と耀。

 

「冗談だよ。さっさと始めようぜ」

 

「それでは、ゲーム成立ですね!」

 

そう言うや否や、虚空から羊皮紙が現れる。

 

「それは?」

 

契約書類(ギアスロール)です。いわば、ゲームに関する契約の書。そこにゲームのルールや勝利条件、敗北条件などが記載されています」

 

『ギフトゲーム名:スカウティング

・プレイヤー一覧 逆廻 十六夜

         久遠 飛鳥

         春日 部耀

         月三波・C・修也

 

・クリア条件 テーブルに並べられたカードの中から絵札のカードを選ぶ。

・クリア方法 選べるカードは一人につき一枚まで。

・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 

上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。

 

                            “サウザンドアイズ”印』

 

契約書類(ギアスロール)を読み、修也は自身の名前の所にミドルネームのCがあることに気づき、見られない様に指で隠しつつ、他の三人にも見せる。

 

「OK、わかった。だがその前にそのカードを調べさせてもらおうか」

 

十六夜と飛鳥、耀の三人も内容を確認しOKを出す。

 

「構いませんよ?」

 

そう言って黒ウサギはトランプを渡してくる。

 

十六夜はカードを一枚一枚確認し、次に回す。

 

飛鳥はカードを確認するふりをして、一枚の絵札の裏に爪で後を付ける。

 

耀も同様にカードを確認するふりをして、一枚の絵札に三毛猫の唾液を擦り付ける。

 

最後に、修也は絵札の一枚に自身の血を軽く擦り付ける。

 

「では、ゲーム開始でーす!」

 

ハイテンションな黒ウサギをスルーし、飛鳥が他の三人の方に顔を向ける。

 

「誰から行く?」

 

「なら、俺から行かしてもらうぜ」

 

十六夜が名乗りを上げ、前に出る。

 

「さっきは素敵な挑発ありがとよ。これは、そのお礼だ!」

 

そう叫び、十六夜は一枚のカードに手を叩きつける。

 

その衝撃で、他のカードが跳ね上がり、バラバラとテーブル上に落ちる。

 

中にはカードが捲れて表が見えてるものもある。

 

無論、その中にも絵札が何枚がある。

 

「じゃあ、私コレ」

 

「私はこれ」

 

「なら、俺はこいつ」

 

ソレに便乗して、修也たちは絵札を手に取る。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!今のは「ルールには抵触してないぜ? 並べられたカードから絵札を選べ、一人一回一枚まで。違うか?」

 

黒ウサギの待ったに十六夜は反論する。

 

「うっ、箱庭の中枢から有効であるとの判定が出ました………飛鳥さんと耀さん、修也さんの三人はクリアです。ですが、十六夜さんはまだです!」

 

「安心しろって。俺もクリアだよ」

 

そう言って、十六夜が触れていたカードをめくると、そこには♣のK(キング)があった。

 

「ど、どうして………!」

 

「全部覚えた。カードの並びをな。ちなみに、こいつが♦の9、隣が♣の2、そして♠のJ(ジャック)だ」

 

十六夜の言う通り、順に捲られたカードの数字とマークは当たっていた。

 

「貴方、やるわね。お陰でこっちの考えていた手が無駄になったわ」

 

「うん」

 

「そいつは悪かったな」

 

「ま、いいじゃねぇか。お陰で全員クリアなんだしよ」

 

四人で笑いあっている中、黒ウサギは落ち込んでいた。

 

「さて、それで勝負は俺達の勝ちだ。早速、言うこと聞いてもらうぜ、黒ウサギ」

 

「せ、性的なことはダメですからね!」

 

「それもそそられるが、今はいい。俺が聞きたいのはただ一つ」

 

十六夜が目を細めて、修也たち三人を見まわし、天幕に覆われた都市を見上げる。

 

そして、何もかも見下すような視線で一言

 

「この世界は…面白いか?」

 

十六夜の目は至極真面目だった。

 

『家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨てて箱庭に来い』

 

手紙にはそう書いてあった。

 

修也たちは全てを捨てて箱庭に来た。

 

それに見合うだけの催し物はあるのか?

 

それは、ここにいる四人には重要なことだった。

 

十六夜の質問に黒ウサギはニッコリ笑いながら宣言する。

 

「YES。『ギフトゲーム』は人を超えたものたちだけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証いたします♪」

 


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