そして1週間はあまりにもあっさりと過ぎ去った。
出立の日、門の外でマリーア達の事を待つ事になった。というのもマリーア側は馬車の準備等でそこそこの大所帯であり、合流するのに宿の方へ向かって待ったりしていると結構邪魔になるからだ。なので先に街の外で待って、そこで合流しちゃった方が良いだろうと言う話になった。何時も通り朝の諸々を終える俺とイリスの私物がそれぞれに収まった鞄二つをフォゥが運んでくれた。そうやって一緒に門の外までやってくると、既にそこに集まっている人たちの姿があった。つまりこの短い数か月の間世話になった、聖王を含めた人たちの姿だ。無論、工房の親方とその弟子の姿もあり、イリスがちょっとだけ驚いた様子を見せていた。
「ああ見えてドヴェルグはちゃんと常識も解っているぞ―――解っているからって適応してくるわけじゃないけどな」
「ダメな奴じゃん」
「そうだぞ」
親方は本当にさあ、と思いながらも外で待ってくれている聖王へと駆け寄ろうとすると、聖王が門番をしている騎士と話している姿が見れた。今日の聖王は眼鏡にローポニーという恰好をしている……それに何か、布袋を背負っている。基本、素材が良いせいか何を着ても似合うのがずるいとかイリスが言ってたのを思い出す。歩み寄ると聖王と騎士の会話が聞こえてくる。
「陛下、本当に終わったら戻るんですよね? 本当ですよね?」
「私がこの手の事で嘘をつく事はないだろう? それに仕事だって昨夜終わらせて来たし、私が外にいる事に何も問題はないであろう」
「ちょっとは宮中の噂に耳を傾けてくださいよ! 外で愛人を作ったとか言われてるんですよ!? ソロモン様が変に煽ってくるから尾ひれがつき始めてるし……宰相が胃薬を飲みながら駆け回ってましたよ?」
「その件に関しては理解しているし、申し訳ないとは思うが今月からはだいぶ落ち着く筈だ。と……来たかシド」
近づいてきたのを察した聖王が笑みを向けてくる。
「ジッジ家庭蔑ろにしてるの? 家族は仲良くしてないとダメだよ。些細なコミュニケーションエラーで感情って爆発して事件に発展するよ」
「中々重い言葉が出てきたな。だが安心すると良い。このジッジは最強無敵の超人だからな、家庭の問題を解決しながら公務をクリアして自由時間を作る事等容易い。だが最近自由時間を増やしたいから、何とか分身出来ないか手段を探してる」
「絶対に止めてくださいよ……」
騎士が絶望した表情を浮かべながらとぼとぼと去って行くのを見送る。聖王が破天荒なのは今更だが、公私ともに一切の隙が見当たらないタイプだろうし、これぐらいのおふざけは全然問題なさそうなのがまた超人っぽさを加速させている。それはそれとして見送りに来てくれるのは嬉しい事だった。視線をずらせばオーバーオール姿の親方が珍しく服を着ているのが見えた。あの人、人類と同じ姿出来たんだすげぇ……と言う気持ちがある。
「お前に教えられたのは僅かな期間だけだが基本技術をまとめた本をここに用意しておいた。擦り切れるぐらいまで読んでちゃんと練習しろよ。お前の頭の良さとその自由に整形を行えるフォーミュラ技術は希望の塊だ。俺の方でもナノサイズの極小機械を作成できねぇかいない間に試してみるからよ、お前も温い事するんじゃねぇぞ? また会うまでにちゃんと研鑽を重ねて来い。技術ってのは広げて試して変質させて還元させるもんだからな! だから俺の技術書、ちゃんと利用しろよ」
「え、あ、あ、うん。ありがとう……」
親方が予想外に真っ当な事を言っているのを受けてイリスが驚いている。その様子を聖王とフォゥと一緒に見ていた。
「な? 常識はあるんだよ。解ってて奇行に走るってだけで」
「おい、ソッチの小僧もこっち来い来い」
「え?」
背中を軽く叩かれる様に押し出され、親方の方へと向かって数歩、よろめく様に歩き出す。振り返ればフォゥと聖王が微笑を浮かべながら送り出してくれている姿が見える。視線を親方の方へと向ければ、腰に手を当てながら良いか、と言葉を置く。
「技術ってのはなあ! 使う奴がいて、消費者が存在して初めて成長するもんなんだよ! オメーも嬢ちゃんにガンガン注文飛ばしたら、満足することなく使い込んでしっかりと文句を付けろよ。なあなあで済ませる関係性程無駄なもんはねぇ! お前が文句を付ける度に嬢ちゃんが新しい技術を模索する、そして成長してお前の力に還元される! これが工房と依頼人の正しい関係だ。だからじゃんじゃんバリバリ作って殺せよ!!」
「最後の一言で台無しだよ!!」
「最後の言葉さえなければねぇ……」
「あぁ!? 武器なんてものは殺す為の道具だろうが! それをよぉ、守る為とか色々言うのは間違いなんだよ。それが解ってねぇ奴が多すぎる。忘れるなよ、武器は殺す為にあるんだからな。それをどう応用するかは個人の自由ってな! おい、弟子」
「はい、親方! シド君、此方親方からの選別です!」
話を終えた所で親方が首をクイっと動かすと、それを待っていた弟子の方が親方の後ろから包みを持ってきた。少し大きめの包みを取り出すと、それを解いて中身を見せてくれる。
中に入っていたのは二本の武器だった。
どちらもサイズは均等に揃えられており、今の俺からすると少々大きく感じられる。少なくとも片手では持ち上げるのに苦労しそうなサイズが二つだ。片方が先端が叩きつけるのに適した小型のハンマーの形状していて、もう片方は刃に凹凸のついた片手剣だった。小槌とソードブレイカーという武器種が、包みの中から現れた。
「マリーアの奴に師事するってのに、自分の武器の一つも持ってねぇってのは恥ずかしいからな。俺からの選別だ。お前の成長、方向性、将来的な筋力を予測して
弟子の方から小槌とソードブレイカーを受け取る。ずしり、と来る鋼の重みは両手で抱えないと難しいもので、未発達の体では到底支えられるものではない。これをこの親方は将来的に、片手で握れる事を想定している。
「バランスを整える為に長さ、そして重量を揃えてある。その上で複雑な機構やギミックってのは一切搭載していない。マリーアの弟子やるってなら複雑なギミックウェポンを渡すだけ無駄だろうからな。その上で攻撃と防御を切り替えられる、使いやすさの槌と剣って組み合わせだ。今は解らんだろうが重心も軽く調整してあるから、二刀流運用するもしないも振り回されない様になってる。握り心地に関して言えば測れてねぇからな、ソッチはお前の専属にでもやって貰え。ただ使用した金属の性質上、一定以上の衝撃と速度が加わる事で発雷する。今のお前の力じゃ逆立ちしても無駄だけどな!」
「つまり親方は将来的には扱えるようになる武器をプレゼントして、使いこなせるような男になれ、って激励を送っているんですよ! いやあ、親方も夢に向かって邁進している子供ってのが大好きでして、この1週間はずっと何を選別に渡すか迷って―――」
「ふんっ!!」
弟子の口に金属製のボールギャグが装着された。そのままどこからともなく取り出したパイルバンカーで弟子を追いかけ始める小人の穴倉工房の2人組を呆然と眺めてしまう。そして改めて手の中にあるプレゼント見て、頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「おう、出世払いしろよ。ルートヴィッヒから代金は受け取らねぇから。ま、マリーアの弟子になるってんならその内払えるようになるだろ」
それだけ言うと、親方はバリカンで弟子の髪を刈り始めた。ガチの悲鳴を漏らし始める弟子と師匠の関係から目を逸らして、もう一度手の中にある物を眺める。昔は自分の手の中に握る武器は何でも壊してしまった。だが今はそんな事もなく、強く握った所でまともに振るう事さえも出来ないだろう。その不自由さが今はちょっと、嬉しかった。
ただ、
「こんなに貰っちゃって良いのかな……」
「その……私達にこれだけ良くして貰って良いか困るわよね」
「気にするな……つっても気にするか」
フォゥからの声に振り返る。
「ま、実際お前らを見つけたのが俺だって幸運はあるぞ。そして誰だってこんな運があるって訳じゃない。場所を変えれば飢えているガキはいるし、それが救われない事だって腐る程ある。その中でもお前らは運良く良縁が結べたって事だ……中々ある事じゃない。だったら運の悪かった連中に遠慮しなくちゃいけないのか?」
「それは……」
「困るよな?」
聖王が頷いて頭を横に振った。
「あぁ、そうだな。誰もが幸福になれる訳じゃない。誰もが幸せに、誰もが安心を。そう目指しても絶対に取りこぼす物が出てくる。それが政治の真実だ。搾取される誰かがいてこそ国家は成立するという現実を、為政者は覚えておかなければならない。誰かの犠牲があって成り立つ現実を、常にどうにかしなければならない。それがどうにもならない、と解っていてもだ。だからこそ我々は誰かに施し、与える事の出来る心を忘れてはいけないし、与えられたらそれを受け入れる寛容さも失ってはならない」
寛容さ、そう呟くと頭を撫でられた。
「簡単な話だ―――お前が大きくなった時、俺がお前にそうしたように、お前が誰かに手を伸ばす。無理をしない範囲でな。それを皆が少しずつ出来るようになれば、世の中は少しずつ良くなって行く。余裕の出来た奴から少しだけ他人に優しくなれば、それだけ幸福ってのは広がるもんさ。だからお前も、優しくされたのなら誰かにやさしく出来る人間に育てよ?」
イリス共々フォゥに撫でられながら頷くと、聖王がふっ、と息を吐いた。
「さて、ドヴェルグに先を越されたが……私達からも旅立ちの選別を用意してある」
「俺からはイリス宛だ。たぶんお前がシドの面倒を見続ける事になるだろうからな……と言う訳でこいつだ」
イリスは何やらフォゥから本を受け取っていた。その間に聖王は背負っていた長居い包みを降ろしてくる。手渡そうとする者が両手で抱えないと持ち上げられないものだと悟り、一旦小槌とソードブレイカーの入った布の包みを地面に降ろしてから、聖王が膝をついて差し出してくる長い包みを両手で支えた。下から持ち上げる様に手を伸ばすが、物凄い重量が手にかかってくる。それこそ一切遠慮のない、えぐい重量だ。長さは恐らく2メートル近い。
布の下から出てきたのは……両手剣だった。
「名剣オートクレール。全長180㎝、作りは少々古いがメンテナンスは欠かしていない。戦場で振るう者に力を与える剣だったが……デバイスの台頭と強化魔法の出現により、残念ながら使われる事はなくなってしまった。本格的に使うのであれば手直しをする必要がある故、使うならリビルドをイリスに頼むと良い。使いこなせるようになる頃には彼女にもそれだけの技術力がついているだろう……まあ、考えがドヴェルグと被ってしまった事には少々驚いたが」
笑みを零す聖王の姿に頭を横にぶんぶんと振るう。それから大きく頷く。
「その、今まで本当に良くしてくれてありがとうございました。俺、何も出来てないから……本当に、なんて言えば良いのか解らないけど、俺……」
「良いのだ、我が血を引く子孫よ。私の可愛らしい孫よ。私は聖王だ。例え、愛娘の命が消費されると解っていてもそれに手を出す事は出来ない。それが国にとって最も確かな未来へと繋がるからだ。私は国の王という形があって初めて成立する男だ。故に国民を裏切る事は出来ない」
穏やかに、しかしどことなく悲し気に聖王はそう告げる。
「だから君が私の代わりにヴィヴィを救ってくれると決めた時、私はそれを心から喜んだのだ。今は勢いかもしれない、まだ先が見えていないのかもしれない。だが運命の外側から来た私の子孫よ……君がそうだと望み、挑み、道を間違えないのなら……きっと、未来は君に微笑んでくれるだろう。私はその結末を心の底から待っている。応援しているよ、シド―――娘の未来を頼む」
想像以上の重さを剣に感じる。両手で抱える以上に、聖王からこの剣を受け取るのは重みがあった。言い換えれば聖王からの未来への挑戦状とでも言うべき重みがある。この剣が或いは、象徴なのかもしれない。オリヴィエの未来を変えるという意味の。両手で受け取った今はその重みに耐えきれず、支え切れない。だから鞘先の方を地面に押し付け、倒れないように支える。
「いずれ使いこなせる時がくるだろう……その時にはその姿を見せてくれ―――あぁ、ドヴェルグと発想が同じだった事は不服だが」
「どんだけ不服なのジッジ」
「あれと同じ発想に至るとは思われたくなかろう??」
「解るけど」
聖王のその言葉にくすり、と笑っていると馬の嘶きが聞こえた。道を開ける様に武器を持ち上げて端の方へ寄ると、馬車の列が門を抜けてやって来る。先頭を進む馬車の横にぶら下がっているのは、これから師事するマリーアの姿だ。先日同様真っ白な姿をする師匠は馬車から降りてくると、一直線に近づいて来た。
「シド君イリスちゃん元気ー? はい、ぎゅー!」
「ぐえー」
「きつい、きついってば!!」
素早く近づいいて来たマリーアはそのまま掬い取るように腕を広げて自分とイリスを抱き寄せると、そのまま強く抱きしめてくる。
「ん-、やっぱ子供は他所の子に限るわねー! エレミアの子って変に経験継承してるから、逃げたり避けたりクソガキだったりで全く可愛げがないのよ! それに比べたらシド君とイリスちゃんの反応の可愛さと言ったらもう!」
「気持ちは解らなくもないが、それはそれとして子供達を解放してやれ」
「えー。だってルートヴィッヒだって息子たちが可愛くないって嘆いているじゃない」
「仕方がなかろう。全員才気に溢れて直ぐに学んでしまうから、全く手がかからず勝手に自立してしまうのだ……はあ……」
聖王の様子を見て、フォゥがこっそりと話を零してくる。
「聖王家の連中、才能の塊みたいなもんだからな。全員頭が良いんだわ。手がかからないし勝手に学ぶし勝手に育つ。その上で王族の矜持を持ち合わせるパーフェクトエリート一族だぞ」
まあ、確かにそうなると手のかかる子供というのが恋しいのかもしれない―――うん? それってつまり出来の悪い子供だと俺達見られてない? と、首を傾げていると馬車の方から更に降りてくる姿が見えた。
「おい、マリー。そのガキどもが新しく乗る奴か?」
「あ、そうよ。どっちも可愛いでしょー」
「可愛いってお前よお」
呆れた様子で眼帯を装着した男が降りて来た。短く、そして乱雑な黒髪に黒いジャケットを装着した文字通り全身黒の男―――”黒のエレミア”だ。正しく本来の姿。現代でも見覚えのある黒一色の姿は安心感さえ覚える。黒いエレミアはほーん、と声を零しながら俺とイリスをそれぞれ交互に眺め、納得するように頷いた。
「ま、良いさ。お前らもさっさと乗り込め。おい、赤! それがガキどもの荷物か? 荷物は3番目の馬車だ。ガキ共は纏めて2番目な。それ、運べないだろ? 俺が積み込んでおくけどいいな?」
「あ、はい。お願いします」
「良し」
乱暴に頭を撫でられると小槌とソードブレイカー、そしてオートクレールが持っていかれた。自分で運びたいという気持ちはあるものの、今はまだそれを持ち歩けるような力が自分にはないので、頭を下げて頼んだ。眼帯のエレミアは片手で武器を全部を抱えると馬車へと持ってゆく。その間に振り返り、改めて頭を下げる。
「今までお世話になりました!」
「ありがとうございました、この恩は忘れません」
イリスも言葉遣いを改めながら頭を下げる。その先、保護者達が優しく微笑んでいる。
「出世払いでな」
「稼いで来たら少し入れればそれで良いさ」
「良き旅を。一生に残る思い出を」
ふと、泣きそうな気持が溢れだしてくるのを感じる。だけどこのまま泣いたら相当恰好悪いので、頭を上げたらそのまま急いで逃げるように馬車の方へと向かって行く。通り過ぎる時に横からマリーアのあらあら、という声も聞こえてくるが無視した。そのまま駆け込む様に2番目の馬車へと乗り込む。遅れてイリスも駆け足で馬車に乗り込んでくる。
馬車の中は外から見るよりも妙に広くなっており、何らかの技術によって外見よりも拡張されているのが伝わる。奥の方に大人が、そしてて前には自分たちに年齢と背丈の近そうな者達がいるのが見えた。イリスと一緒に乗り込むのが見えると、黒髪の少年があ、と声を零した。いや……その声は男と言うにはちょっと高い。中性的だけど女の子の様だった。
「君! 君でしょ? マリーさんが新しく弟子にするって連れて来た子! 僕はリッド、ヴィルフリッド・エレミア! 宜しくね!」
手を握られるといきなりぶんぶんと手を上下に振られる。その勢いに自分もイリスも飲まれて、返答に一瞬詰まってしまうと、奥から今度は男の子がやって来た。
「おいおい、威嚇すんなよリッド……新入りが困ってるじゃんかよ。悪いな、お前ら。リッドの奴なんというか犬っぽくてさ」
「トッド程犬臭くないよ」
「なんで俺が犬臭いって話をした?」
「洗ってない犬の臭いだよ」
「今ストレートに罵倒しやがったなこの男女」
「うん」
目の前で少年と少女が拳を握り合いながら組み合い始めた。両手を握りながら睨み合う様にぐぬぬぬ、と声を零して睨み合う姿を呆然と眺めている。
「……なに、こいつら」
「解んない……けど、エレミアは傭兵しながら新人を育成するらしいから」
たぶんそう、なんじゃないかな。次代の中でも期待されているエレミア。つまり才能があってしっかりと育成しようと意識されている人たちだ。期待され、そしてそれに応えるだけの能力を持っている者達。目の間でじゃれ合っている様に見えるが、それでもその中身は自分なんかよりも遥かに強く、現時点では欠片も勝ち目が見えない程の隔絶した差がある。
ただ、目の前でこう、いきなり取っ組み合い始めるとちょっとリアクションに困る。どうしたもんかなー、と思っていると、
「もー、リッドもトッドも余り馬車の中で暴れすぎるとノートさんやマリーさんに怒られますよ。勿論私も怒ります」
「うへー、それは勘弁。ユーリはともかく隊長やマリーさん怒らせると怖いし」
「ユーリはともかく二人は怖いからねー」
「……私も、怒ると怖いんですよ?」
目の前で暴れる2人を仲裁するように奥の方から、少女がやって来た。その背丈も年齢も、自分より若く見える。片手に本を抱える少女は幼く見えるが……内包する魔力が俺でも感じられるレベルでバグっている様な密度をしていた。静かに戦慄しながらもどうしようか、と反応に悩んでイリスの方を盗み見ると、
イリスが、蒼白な表情を浮かべていた。
「……ユー、リ?」
ぽつり、と名前を零す様に。そんな風に呟いたイリスの言葉を少女―――ユーリは拾った。
「はい、ユーリ・エーベルヴァインです。えーと、どこかで会いましたでしょうか……?」
「いいえ―――初対面よ。えぇ、初対面よ。本当に」
そんな言葉をなんとかイリスが捻りだして、
俺達の旅は、
傭兵として自分の力と、誰かの死と向き合う、
そんな旅が始まった。
巻き込まれただけではない。彼女にも試練はある。存在する意味も意義があれば試される必要もある。つまり苦しめ。
幕間を挟み旅は始まる。今章はここまで。
Sionさんから白いお師匠の絵を貰いました! ヤッター! 白師匠可愛いー!
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