Disruptor   作:てんぞー

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Job - 4

 砦の人達を皆殺しにして村に戻り、それを村へと報告して終わる。本来であれば証拠なんてものが必要になってくる。この場合だと目撃者の類になる。だが白い傷跡はそのネームバリューがある為、特に証拠がなくても村の人々は仕事は果たされた、と信じてくれた……こんな村でも名声が轟くレベルで白い傷跡という傭兵は実績を積み重ねてきた、という事だ。それで報酬を受け取ると宿屋でパンケーキを注文して、蜂蜜をたっぷりかけて二人で頂いた。仕事の後はこうやってちょっとしたご褒美を自分にあげるのが良いらしい。

 

 実際、食事制限を行っているので余り甘い菓子とかは食べない。なのでご褒美として三段重ねのパンケーキを師匠と一緒に食べられるのは美味しく、楽しく、嬉しかった。蜂蜜も蜂蜜でちょっとした高級品なので更に嬉しいという事実もある。そんなでパンケーキというご褒美を終わらせるとキャラバンへと戻り、本日の社会見学は終了した。

 

「シドお帰りー。大丈夫だった?」

 

「マリーさんいるのに傷つくわけねぇじゃん。白い傷跡と言えば最上位プレイヤーだぞ」

 

「それはそうだけどさあ、やっぱ少しは心配するでしょ」

 

 キャラバンに戻るとヴィルフリッドとトッドが待っていてくれた。ただいま、と挨拶しながら軽く頭を横に振る。

 

「いや、無傷だし大丈夫だよ。師匠も滅茶苦茶綺麗で凄かったし。動きが全部連続していて……と言うのかな? 一切淀みや間違えがなく、次から次へと繋げるように動いてて。なんというか、もう、この人がいるなら絶対安心だなあ……って感じで背中を見てたよ」

 

 その言葉にトッドはそうだろうそうだろうと頷いた。

 

「マリーさんはマジで強いからな。正直俺は全部教えてもらえる兄弟が羨ましいぐらいだぜ」

 

「トッドは魔力がいっぱいあるからねー。マリーさんと同じ方向性にしようと思うと折角豊富にある魔力が台無しになるから同じ成長ルートが辿れないんだよね。だから基本的にマリーさんの成長ルートってマリーさん専用というか……魔力のない人専用の成長なんだよね。似たような事が出来ても僕らに完全な模倣や継承は無理なんだよね」

 

 師匠の戦い方を見れば解る。どうすれば魔力がないという穴を埋めるのか、どうすれば魔力がなくても魔力のある人間に対抗できるのか、それを考えて考えて考えて、そして突き詰めた戦闘ビルドになっている。それを魔力のある人間が模倣してもただの劣化ビルドにしかならないだろう。魔力があるなら出来る事はもっと豊富にある。ならそれを育てた方が遥かに強くなる。魔力がないというのはハンディキャップであり、常に他人に劣っている事を自覚した上で努力しなくてはならないのだ。

 

「だから兄弟には期待してるぜ、しっかりとマリーさんの技術を継承してくれよ」

 

 サムズアップでガンガンと師を推してくるトッドに妙な迫力を感じて首を傾げていると、ヴィルフリッドが苦笑しながら補足してくれる。

 

「あはは……トッドってマリーさんに小さい頃面倒見て貰ってたんだよね。僕たち一族って割とあっちこっち血の繋がりがあるしね? だからマリーさんとトッドにも血の繋がりがあって、小さい頃面倒貰っていたから実質的に姉や母みたいな人だから」

 

「うーん、師匠みたいな人が親代わりか……なんか、羨ましいな」

 

 優しくて、綺麗で、強くて、それでいてちゃんと叱ってくれる大人だ。ああいう人が自分の傍にいたら自分も歪まずに育つ事が出来たんだろうか? いや、きっと自分がダメダメだったから何をしても間違えていたと思う。だからちょっと羨ましいな、と零すとトッドが笑いながら肩を組んできた。

 

「何言ってるんだ兄弟。お前はエレミアに継承者として迎えられたんだぜ? お前ももう既に俺らの家族なんだから、俺とは兄弟であの人とも親子で姉弟みたいなもんだ。遠慮するんじゃねぇよ。長い付き合いになるんだしよ」

 

「まあ、トッドみたいな気楽さはいきなり無理かもしれないけど。僕たちはこれから10年も20年も、死ななければ30年40年も先の付き合いになるんだしね。実質的に家族だよ」

 

「家族……」

 

 果たして、未来の自分の家族を見捨てて逃げたような俺にそれを再び手にするだけの価値はあるんだろうか? 俺の様な屑にそれだけの意味があるのだろうか? 俺は自分にそこまでの価値を見出せない。だけど俺を信じてくれる人がいる以上、俺は俺の価値を証明しなくちゃならない。師匠と、そして家族と呼んでくれる人たちの期待になるべく応えたい。そう想いながら頷いた。

 

「ありがとう……直ぐには無理だろうとおもうけど。何時かは家族って呼べるようになりたいな」

 

「よーしよしよし! お兄さんが存分に甘やかしてやろう!」

 

「同い年が何を言ってるんだよ……まあ、確かにシドってなんか世話を焼きたくなる無防備さあるけどさ」

 

「俺、そんなに無防備……?」

 

 その言葉にトッドとヴィルフリッドが視線を合わせ、同時にこっちを見て頷いた。畜生、俺ってそんなに無防備なのか……。ちょっとそこまで隙があるとは思わなかったのでショックだ。自分の意識をもうちょっと変えてみるべきなのだろうか? 普段気にしてない事を気にかける様な感じで。

 

「いや、そういう所じゃないよ。シドって結構良い所の出でしょ? 言動とか身振りとか擦れてる部分はあるけど根本的な所作とかに品の良さがあるんだよね。解る人はシドが結構良い所の生まれだって解るんじゃないかな。後髪の色で生まれも大体特定できるかなあー」

 

「まあ、俺達は兄弟が聖王の隠し子って話知ってるしな。そう考えると納得っちゃあ納得なんだけどな。それはそれとしてその手の根本的な部分は意識しながら直さないと永遠に直らないぜ」

 

「マジで……?」

 

「うん、食べる時とか凄い品が良いよ。音を立てないとかちゃんと切って食べるとか汁を跳ねないとか……見てれば一瞬で”あ、ちゃんと教育受けてる人だ”ってのが見えるよ。シドってそこらへん意識したことないでしょ? 仕事をし始めるとそういう所も同業者には意識されるから考えておいた方がいいよ。あぁ、でもマリーさんが何も言わないって事は直さなくても良いのかな?」

 

「まあ、直した所でどーしたって話でもあるしなー。品が良いのって名声稼いで上の方の仕事を受けるようになったらウケが良くなるしな。品が悪かったりして良い事って何もねーし。だから俺は兄弟がそのままで良いとは思うぜ? ただ、まあ、髪色だけでも変えておいた方が良いとは思うけどなー」

 

「まあ、それはそうかな。シドがどういう風になりたいのかは解らないけど、エレミアとして完全に身分を隠したいと思ったら髪を染めたらいいよ。髪の毛が新しく生えても永久に染めたままに出来る方法とかあるし」

 

「流石にそこら辺は判断がつかないかなあ……まだなんか色々と良く解らない事が多いし」

 

 それはまあ、そっか、とヴィルフリッドが言う。それにトッドが笑った。

 

「ま、俺達もまだまだ子供だしな! やりたい事なんてもうちょっと大きくなってから考えりゃあ良いさ! まあ、エレミアの子供なんて子供らしくないってよく文句を言われるけどな!」

 

「僕らは早熟だしねー。だからシドは可愛がられるんだろうけどさ。嫌いな食べ物を目の前にした時の表情見てるとなんだアレ可愛いって感じの視線向けられるよね」

 

「ノーコメントで」

 

 このキャラバンにいる若手は俺、ヴィルフリッド、トッド、そしてイリスだけだ。ユーリは見た目が幼いように見えてアレで年上らしい。そして俺を除いた皆はどうやら、見た目よりも精神年齢だったり経験が豊富らしい。その為、見た目相応の子供と言うのはこのキャラバンにおいては俺1人という事らしいのだ。そのせいか、キャラバンの年長者たちはこぞって頭を撫でたりしてくる。いや、別に嫌だって訳じゃないんだが。

 

 そう思っているとぽん、と頭の上に感触を感じた。

 

「よう、シド。マリーとの仕事はどうだった」

 

「あ、ジャバウォックさん」

 

 頭を撫でられていると気づいて振り返ればこの隊のリーダーである眼帯のエレミア、ジャバウォックの姿があった。オーソドックスな鉄腕格闘スタイルのジャバウォックは眼帯を装着している為ハンディキャップに見えるが、それは単純に性能のよすぎる目を封じる為の手段らしい。マリーア師匠同様固有の二つ名を持つ業界の有名人らしく、実力も同レベルの人だ。ガタイの良さと眼帯から強面のイメージが強いが、話してみると実際はかなり気の良いおっさんだというのが解る。

 

 無論、ジャバウォックは偽名だ。

 

 この業界、有名になれば成程本名というものは使わなくなるらしい。二つ名、或いは傭兵用の名前で売り込んだりするものになる。

 

 そんなジャバウォック隊長の通り名は”黒い悪夢”だったりする。

 

 ちなみにエレミアは全体を通して”黒の傭兵(エレミア)”という通り名があり、それ自体がブランドの様になっている。エレミア出身の傭兵は大抵、自分がモチーフにしている色をベースに名がつけられることが多い。ジャバウォックが黒で、マリーア師匠が白なのはそういう都合がある。ただし、彼らレベルの実力者じゃないとこのレベルの名はつかず、”黒の傭兵”で通されてしまう。

 

 つまりエレミア出身でもないフォゥが”赤い海”とかいう名前を傭兵でもないのに付けられていたのは明らかな異常である。あの人マジで過去に何をやらかしてたんだ。

 

 なお、ベルカの騎士は自然やエレメントをモチーフに二つ名が付くので、その文化が教養のない傭兵とかに広まった結果でもある……という話らしい。

 

 確かに蒼天とかよりも青のって言った方が解りやすいのかもしれない。

 

「非常に勉強になりました」

 

「アレはお前に期待してるからな……あまり期待が重すぎる様なら俺に一言言っておけ、お前はエレミア出身じゃないから知らず知らずこっちのペースに飲まれて無理をしている場合もあるからな……」

 

「あ、いえ。今のところは決して無理をする事もなく優しさに甘えさせてもらってます」

 

「そうか? まあ、そうか……。なら良い。励めよ」

 

 また頭をワシワシと撫でられるとジャバウォックが去って行く。その背中姿を軽く眺めてから視線をヴィルフリッドとトッドに戻す。

 

「なんか色んな人に期待されてる気がするなあ……」

 

「ま、師が師だからしょうがないでしょ」

 

「マリーさんは子供作れない体だからな。技能継承も絶望的だったって話だから、一族を通して待望の継承者なんだよ、兄弟は」

 

「え?」

 

 そんな話、始めて聞いた。驚きに目を丸くしているとしまった、とトッドが顔を顰めた。

 

「今のなし、言った事忘れてくれ」

 

「馬鹿」

 

「いや、ほんと今のは口が滑った」

 

 トッドがうわあ、とうめき声を上げながら両手で顔を覆った。それをヴィルフリッドが横から拳を叩き込んで突いているが、トッドはその扱いを甘んじて受け入れていた。だが驚かされた。師匠は子供が出来ない体質か何かで、継承が絶望的だった。

 

「だから俺にこんなに親身に……」

 

「それもあるけどあの人に気に入られてるってのも事実だから! マジで! ほんと今の余計な事言ったの忘れてくれ。本人の前で言って良い話じゃないから」

 

「あ、うん。まあ、忘れるのは無理だけどなるべく考えないようにしておくよ」

 

「ほんとこの馬鹿がごめん。だけどマリーさんがシドを気に入っているのも事実だよ。たぶんフィーリング的に何か感じるものがあったんだと思うし、シドに向けられる親愛が本物だと思って良いと思うよ」

 

「そこはまあ、疑ってない」

 

 ただ、師匠が子供を産めないという話。

 

 それはどうしても、オリヴィエの存在を思い出してしまう。彼女もまた、魔導実験によって胎を傷つけられた影響で子供を産む事が出来ない体となってしまった。そのせいでオリヴィエは王族でありながら王女としての価値を喪失してしまった。同じように胎を喪失しているのか、それとも体質か。それにしても子供を産めないというハンディキャップはエレミアにおいて相当重いだろう。それこそ強さを継承して行く一族なのだから。

 

 ……あまり、深い事を考えないようにしよう。

 

 師匠が何も言わない。なら俺も何も考えない。多分、今はそれで良い。お互い楽しくやれているし、下手に突く必要はないだろう。

 

「まあ、師匠が何時か口にするまで待つよ」

 

「それが良いよ」

 

「ほんとごめんな。今度なんか奢るから赦して」

 

「そこまでする必要は……いや、まあ、解ったよ。この話はこれで終わり!」

 

「良し!」

 

「じゃあ話も終わった所だし何しよっかー」

 

 トッドの謝罪を素直に受け入れる事にして苦笑していると、とぼとぼと歩いているユーリの姿が目に入った。3人でユーリの姿を見つけ、視線を合わせると、暇つぶしに良さそうな気配を感じ取る。

 

「確保―――!」

 

「え!?」

 

 ヴィルフリッドの号令の下、一斉にとびかかった。




 子供組は割と楽しくやっている。ただしエレミアは性質上早熟なのでシドのが精神年齢が1段低い形になる。良く考えるとエリオやキャロとほぼ同年代だからね、今の年齢。Sts本編でのエリキャロと比べると現在の糞雑魚加減が良く解る。

 寧ろあの年齢であそこまでインフレするなのは本編環境が恐ろしい訳だが。

 エレミアの人々は身内には駄々甘。
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