Disruptor   作:てんぞー

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Traveling - 6

 もはや砲撃がマシンガンの様に連続で射出されている。

 

 それがオリオンと言う弓士が行う連続射撃の成果だった。一撃一撃がショートバスターに匹敵する矢を、技術力と筋力と魔力の合わせ技によって成立させている。デバイスの圧縮空間に格納させている数千を超える矢の数々を惜しげもなく抜いては一瞬で射る。構え、射る。そのモーションに一切の淀みがない。何百、何千、何万、何億回と繰り返されてきたモーションは呼吸するよりも自然と出てくる。それを見ていて思った。

 

 これなんだろう、師匠が到達させたいのは。

 

 基本と基礎を固めれば全てが必殺になる。この境地を目指したい。そんな事を考えた瞬間、砕かれる船体が急速修復され始める。汽笛と亡者の遠吠えが赤い夜空に響く。殺意とも呼ぶべき悪寒が前方、艦隊の方から迫ってくる。それと同時に水面下、赤く染まっている海から何かが悠々と泳ぎながら迫ってくるように感じられて、視線を海へと向けた。

 

 何か、巨大な影が泳いでいる……。

 

「海の酸性が急上昇していますね……直ぐには溶けませんけど落ちたら相当苦しみますよ」

 

「まだ濃度は上がりそうだな」

 

「津波とかきたら嫌だなあ……とか言っている間に来たわ」

 

「ほいさ」

 

 津波が発生して―――一瞬で連射によって粉砕された。だがその奥から津波に合わせるように船団から大砲による砲撃が放たれる。正確に此方を狙い撃つ砲撃は津波を割って生まれた隙間にねじ込む様に放たれる。

 

 が、その全てが空で迎撃される。当然のように矢を放ち終わったオリオンが新たな矢を手に構え直していた。

 

「はい、残念無念お疲れ様ー。俺の矢を止めたいのなら収束砲撃持ってきな、っと!」

 

 ノータイムの速射からの連射。ただそれだけ。だが一撃一撃が船体を抉り、削り、砕き、そして破壊するだけの威力を秘めている。ショートバスターをノータイムで連続射撃していると考えれば狂ったような火力が今、1人の男の手によって発生させられているのが解る。しかも一射一射に込められている魔力はそう多くはない。ほとんど弓射の極意と奥義、それだけでこれだけの破壊を成しているのだ。

 

 禁忌兵器相手に弓一本で挑む姿勢は、伊達じゃない。対空迎撃と牽制を兼ねた連続射撃はそれこそオリオンが疲れるまで続く。揺れ、接近する為にエンジンをフルで稼働させながら動く環境、その状態を一切受け付けずに攻撃を行えるのはこの男ぐらいだろう。最高速を出しながら一気に接敵するボートの上で、師匠たちが乗り込む為の準備に入る。

 

「海の中の……」

 

「ああ、それは浮上してくるまで放置。上がってこない限りは下手に相手しないのが一番楽だからな」

 

「という訳でシドを頼んだわよ?」

 

「早く帰ってこないと私が襲っちゃうかもしれないから気を付けるのよー? それはそれとして目を付けておくわね」

 

 師匠の言葉に応えつつ光の鳥をオズが生み出し、空へと放った。その後に出現するのはホロウィンドウだ。現代では良く見慣れたものだが、この時代のベルカでは全くと言っていい程見かけないものだ。オズは鳥の視界をホロウィンドウで共有させると、空に放った鳥たちで戦場の視界を確保する。

 

「ホロウィンドウ、便利な道具よねー。イリスちゃんから術式を学んでおいて良かったわ。これ、数世代先の技術っぽいけど根幹が魔法式だから運用するのは難しくなくて助かるわ」

 

 ズガン、ズガンと音が響く。先頭を行く船に接近しながら銛を矢としてオリオンが叩き込み、足場を作る。それに向かって跳躍し、師匠たちが一気に敵の船団に乗り込む。鳥の目を借りたホロウィンドウを使って戦況が確認できる為、師匠たちの動きが見える。一瞬で銛を足場に船体に食いつくと、側面を蹴り上げて一気に甲板へと昇り切り―――甲板の上で待ち構えていた幽霊戦団をタイラントが開幕一撃で薙ぎ払った。バトルアックスに込められた破壊力が甲板上の全てを薙ぎ払いながら更地にし、そこにあった姿を消し飛ばしている。

 

 それによって得られた空白、一瞬のうちに師匠とジャバウォックが散開し、別の船へと飛び移った。三つのルートに分かれて一番奥のボス幽霊船を目指す師匠は傷跡を抜いて直線状にある存在全てを塩に変えて轢き殺している。ジャバウォックはエレミア特有の”消滅する力”を薄く全身に纏う事で攻撃と防御を同時に行って干渉遮断をし突破している。

 

 タイラントは純粋な筋力と身体能力のスペックで船団の壁や敵を突進して粉砕している。過去の俺と同じタイプの超パワータイプの戦士だ。1人だけ物理的に全て解決しているので一番見ごたえはある。

 

 ただ面白いのは師匠が一切武器を切り替えようとしない所だ。敵に合わせて武器を切り替える師匠だったが、この状況では武器を切り替える必要がないのだろうか? いや、違うな……と見ていて理解した。一番突破力のある武器がアレなのだろう。つまりアレで薙ぎ払って進むのがこの場面では一番適切なのか。ただ師匠、塩化の力そのものはなるべく頼らないようにして戦っているのが基本スタイルだ。だというのにそれを使って突破しているという事は、実は割と厄介な相手なのだろうか?

 

「さてな。まあ、でもこの手のエネミーってのは浸食系統やら干渉能力持ちだからな。接触しているだけで手遅れってタイプもある。だから全員なるべく浸食されないようにしてるんだろうな」

 

 考え事がバレたのか、オリオンが射撃で砲撃を迎撃し、同時に三人へと向けられた砲撃を曲射で迎撃する事でクリアリングを行いつつ疑問に答える。

 

「……口に出てました?」

 

「いんや、気配で察せる。それに疑問も解るさ。大抵の禁忌兵器ってのは触れたらアウトな部類ばかりだから接近戦挑む場合はそこそこ注意する必要があるぜ。おーい、ユーリ」

 

「あ、魄翼展開済みです、船の方を保護してますけど」

 

「オーケイオーケイ、それで良いぜ。足を潰されたら詰みだからな」

 

 振り返ると何時の間にか紅の魄翼を展開したユーリがそれを変形させ、船を守るように展開している。何時の間に、と思う反面ユーリもまたこのトップのグループについて行けるだけの能力をもっているんだと自覚させられる。あのどことないユーリでさえそうなのだ。自分が進もうとする道の遠さを見せられるも、それを悩んでいるだけの暇はない。今は少しでも自分がここに居られる幸運を噛みしめて、必死に皆の戦いを目に焼き付けないとならない。

 

「あらー、やっぱり良い目をするわね。お姉さんもえっちでエロくてセックスシンボルなだけじゃないって事を証明しないとねぇ」

 

「全部同じ意味だろ馬鹿」

 

 笑いながら船が風を切る。水面が揺らげば急激に海流が変動し、幽霊船隊へと向かって船を引きこむ様に何かが捻じ曲げてくる。師匠達が船に乗っている間は大人しかった水面下の影が活発化する。それまでは控えていた巨大な魚が海流を操りながら浮上し始める。海流にとらわれる船に操舵を必死に繰る船長が叫び声を送る。

 

「おぉ、ぐ、このままだとあっちの幽霊船に叩きつけられてバラバラにされるぞ!」

 

「海中は矢が届かなくて嫌なんだわなあ、これが。任せたぞオズ」

 

「はいはい、お任せを。銀十字、とりあえず10展開ね」

 

 銀十字に蹴りを入れると、その中から杖型ストレージデバイスが10個展開された。オーケストラに従う劇団員の様に、展開された杖型デバイスは一瞬でオズとのリンクを形成する。それぞれのデバイスの操作にそれぞれマルチタスクを与える事でコントロールしつつ、10個のデバイスにメインデバイスとなる銀十字で1つの魔法を10分割行使を開始する。それによって本来であれば長時間必要とする魔法を10分の1にまで展開・詠唱時間をカットしている。

 

「ユーリちゃーん、魔力ちょーだい」

 

「いいですともー」

 

 そして魔力は、ユーリと言う極上の無限炉心から提供される。無限に提供される魔力が銀十字へと送られる事によって、オズと言う名前の痴女は史上最強、最上級の魔法をノーコストで高速で放つ事を可能とする極悪な魔女と化す。

 

「ヴェル・トールハンマー」

 

 展開された杖型デバイスが10、全てがオーバーロードによって焼ききれた。それと引き換えに発生したのは荷電粒子の鉄槌だ。夜空を雷の色に上塗りして放たれた雷神の怒りは文字通り雷速によって放たれた。形のある生物には回避する事の出来ない攻撃は海中に隠れる魚群を捉え、海面を蒸発させながら一瞬で貫通するように到達した。たっぷりと20秒間照射され続ける魔法を放ち終わってから壊れた杖型デバイスを捨て去り、

 

 ()()()3()0()()()()()()()()()()()

 

「今ので死なないのは中々やるわね。じゃあ凍らせてみたらどうするかしらねえ……?」

 

 宣告通り今度は赤い海が凍り付いた。ユーリという最強のバッテリー、そしてエレミアの職人という使い捨て出来る最高級デバイスを作れる職人―――それと細かく精度の高いパーツを作れるイリスと言うオマケが存在して初めて成立する、術式と魔力のオーバーフローによる超高火力魔法の超高速発動。1回の発動でそれこそ数百万という金額が蒸発している。これに個人で展開するのなら更にカートリッジ数百個消費する為に数百万が更に吹っ飛ぶ。

 

 だがそれを一切躊躇する事無く、破産する事すら楽しむ様に笑って海を睨み、船団を睨み、そして空を見上げた。

 

「楽しくなってきたわね―――!」

 

「子供の前だから余りハメを外すなよオズ!」

 

「はーい、じゃあ次は火の鳥よー」

 

 凍り付いた海、酸の影響で少しずつ溶けて行く海の上を赤い鳥が駆け抜けて行く。だがそれは一羽ではない。二羽でも十羽でもない。

 

 数百という悍ましい数の火の鳥が出現する。ユーリの魔力というリソースを一切の惜しみなく運用するオズは完全にその量のコントロールを得ていた。それによって発現する魔法は自分の限界を超え、それでも一切のバックファイアを自分に発生させずにデバイスへと負担を受け流していた。完全なる魔力コントロール、それこそ魔女の名に相応しい超級の才能だった。輝かしくも華々しい、ミッド式の華とでも呼ぶべき、

 

 完全なるマジックガンナーだった。或いはオズ風に言わせればウィッチガンナー。

 

 独特で固有の魔女式の広域魔法が戦場を揺らす。師匠やジャバウォックたちが抜けて行った後の船団に衝突し、その姿を縫い留めながら破壊して行く。迎撃に手を回していたオリオンがオズの活躍によってフリーになる。

 

「良し、圧力が減ったな。海面が凍ったおかげで渦潮にも飲まれなくなったし」

 

 ズガンズガン、と射撃音が響く。魔法を受けて脆くなり、再生途中だった姿を阻害するように粉砕しつつ、オズの魔法との合わせ技で完全に崩しに行く。オズが圧倒的殲滅力を誇る中、オリオンはクイックキャストされる殲滅魔法よりも早く、繊細に目標を穿つ。

 

「お? まだ海の中に魚がいるみたいだな」

 

「うーん、私のフェロモンに釣られちゃったかなー?」

 

 ヴェル・トールハンマーが空から5個降り注いだ。ユーリもユーリでポーズを決めながら魔力を注いでいる辺り、本当に彼らにとってこのレベルはまだ小物と呼べるレベルの相手なのだろう。視線を目の前の戦闘からホロウィンドウへと向ければ今度は師匠達が一番奥の幽霊船へと到達している姿が見れた。

 

 大剣の代わりにハチェットを握った師匠が正面から接近してくる骸骨を接近から一瞬で塩に変えて始末する。それに合わせて横から滑り込んできたジャバウォックがマストをへし折るように殴り飛ばし、甲板の障害物をタイラントが薙ぎ倒す。

 

 圧倒的な力で蹂躙する。

 

 どうしようもない暴力で圧殺する。

 

 禁忌兵器という人を凌辱する兵器を、それを超える力で凌辱する。それがここに成立していたのだ。理が乱れる。歪む。壊れる。人を亡ぼすはずの概念が逆に食われて滅ぼされている。そんなの、道理が通らない。そんな事はあってはならない事なのだろう。

 

 だがそんな事知っちゃいない。

 

 目の前に揃っている人たちは誰もが世界最強、世界最高クラスの人たち。何らかの領域や領分においてトップの才能と実力を誇り、それでもなお死ぬかもしれない戦場へと自分から踏み込んで行く愚か者の極地。たった1つの平和を守る為に自分から地獄の中の地獄へと向かって歩んで行く集団。

 

 それが正義の味方だった。

 

 誰かの為ではない。平和の為でもない。自分の為、自分の目的の為に平和を守りに行く。そんな狂った思想の連中ばかり。

 

 だけど地獄の中でも笑いながら道筋を示す彼らの姿は、どうしようもなく美しく輝いていた。

 

 あんな風になりたい。心の底からそう思えるぐらいに。

 

 皆、格好良かった。




 眼帯消滅野郎、問答無用塩化女、リアル弓砲撃男、初期シド完全上位互換、魔法痴女。幽霊船団に不幸があったとしたら徘徊している野良英雄の集団にエンカウントしてしまった事だろうね……。この集団、歴史とかループに関係なく徘徊しているので唐突にシナリオボスを粉砕して去って行ったりする。

 時間さえあれば船団数を増やして大量の肉壁と大津波で沿岸部を侵食して陸地を溶ける海で上書きできたのにね……可哀そうな禁忌兵器であった。
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