「魔法のチカラ……錬金術、ソウカお前ガ――」
「おしゃべりしている場合じゃないよね!」
アルケミストは半魚人型の怪人の懐に飛び込み、斜め上に蹴り上げる。
もっとも、それが決まるとは思っておらずたいした力をこめずに牽制目的で放ったのだが……
「ごうぅ!?」
「あら、弱い……」
「――まだ、マダ魔だ……魔力確認」
空気が変わる。怪人の周囲に濃密な魔力が漂い始めてきた。
半魚人の姿も少し変化する。半魚人ではあるが、曖昧な見た目から一つの魚へと変わる。
それは、太古よりその姿を殆ど変えることなく生きている魚に似ていた。
「シーラカンス・ホムンクルスか。今までの姿は完全じゃないと」
「――ああ、これで漸く邪魔者を排除できるぜ」
錬金術により生まれし怪人、ホムンクルス。その製造には『あるもの』を核として製造されるが、成長段階があり、シーラカンス・ホムンクルスであれば前段階の曖昧な魚の姿として生まれるというものだ。
それが、魔力などのチカラを吸収することで第一段階へと変貌。
その後は人の感情エネルギーを吸収してさらに段階を上げていく。
「おかげで第一段階、さあぶっ殺してやるぜ」
「……はぁ、やっちまった…………仕方ねぇ。出血大サービスだ」
《コネクト》
空中に展開される魔法陣。そこに手を突っ込み、中から剣のようなものを取り出す。
銀色をベースに、青色の配色。刃の部分も青色だ。ドライバーについているような手のようなタッチ式認証装置もある。
「アルケミックウエポン。まあ小手調べといきますか」
「ぬかせ! 魔法使い!!」
「だから、錬金術師だってば」
シーラカンス・ホムンクルスは口から何発も水弾を放つ。だが、アルケミックウエポンを銃に変形させたアルケミストによってすべて打ち抜かれた。
剣先を折りたためることで現れた銃口から放たれるのは銀の魔弾。少量の魔力で強力な効果を発揮する使い勝手のいい武器である。
「魔力や魔法を使っておいて錬金術師だと? 笑わせるなッ」
「まあベースは魔法だけどな。だけど俺は錬金術師。さあ、今日は大盤振る舞いだ。戦いの感覚を取り戻したいし、な!」
取り出したのは指輪と銀色のメダル。右手に指輪をはめ、メダルも指に挟んでスタンバイ。
そのメダルを見た瞬間、ホムンクルスは動揺した。何故、そのメダルがここにあるのか。そのメダルを何故、敵である彼が持っているのか。
「セルメダル……何故、何故お前が!?」
「出所ぐらい分かりそうなものだけど? あと、さっきから言っているだろ……俺は錬金術師だって」
800年以上昔の錬金術師が生み出した欲望のメダル。オーメダル。そのうちの一つ。銀色のセルメダル。
人の欲望を使うことで無限に増殖させることも可能なメダルであるが、現在で製法を知る者はある一人を除いていないのに。いや、錬金術師というのはそういうことなのか。ある一人と繋がりがあるということなのか。
ホムンクルスである自分の主である彼と同じ、生み出すもの。錬金術師。その力が今、解放される。
「いくぜ」
《アルケミーオブマジック タッチGO! プリーズ クラウ・ソラス!》
はさんであったメダルを握り、右手をまるで剣を振るうかのように動かす。当然、そこには何もなかった。いや、何もなかったはずなのだ。
しかし、ホムンクルスはその身を切り裂かれ、焼けたような切り傷が一筋生まれる。
「ガァアア!?」
「セルメダルをエネルギー体の剣へと練成する、まあクラウ・ソラスで分かる人も少ないだろうけど……難点は使い捨てって所だな。威力は高いから硬い装甲も焼き斬れるし使い勝手はいいんだけどなぁ」
「グッ――だが、回復力が高いやつには効かないと付け加えてもらおうか!!」
「ガハッ!?」
確かに切り裂いた、だが、たいしたダメージを受けた様子も無く、ホムンクルスはアルケミストをその拳で殴り飛ばした。
シーラカンス・ホムンクルスの一撃は、とても重く、アルケミストは数10メートルも飛んでいった。
ここがIS学園のアリーナでよかった。あのパワーを考えると最初の水弾は小手調べ。相手も手加減していたということだ。
「お互い、相手をなめてかかっていたわけか。よし、ならこっからは本気だ」
アルケミックウエポンを再び剣の形へと変形させる。そして、手の形の認証装置の近くにあったスロットにセルメダルを一枚投入する。
そして、認証装置を起動させ、左手の指輪を準備する。
その間にホムンクルスは水を口の中にためてエネルギーをチャージしていた。
《キャモナ スラッシュ スキャニングタッチ! フロスト! エンチャント!!》
「喰らえェ! 俺の水弾をはじけると思うなよ!!」
「ああ、弾けないだろうね――」
刀身が輝き、そこに冷気が集まる。
自分に向かってくる水弾に向かってその剣を振り下ろせば――
「――だって、凍らせるから」
「なんだと!?」
――アルケミストは氷の属性の魔力を持つ。ほかの属性への資質は持たないが、その分氷の属性はとてつもなく強力だ。
水の属性の敵では、少なくともアルケミストの2倍の魔力が無ければ勝つ見込みはない。
「メダルを一枚だけチャージすればエンチャント。しばらくの間は属性を帯びる!」
懐に再び飛び込む。今度は何度もその剣で敵を切りつける。
右肩から腹にかけて斜めに切り、剣先を返し足を切る。今度は切り上げて左腕だ。
そういった、連続切りをすること形10回。その剣で切りつけられた部分は凍り、ホムンクルスの動きを止める。
「グッ、放せ……俺は、俺は目的を果たすまではッ」
「残念……俺の目的は織斑一夏、ならびにその周辺の人物の護衛だ。どうせその体本体じゃないんだろ。お前らはまず、仮の肉体を送り込み、少しずつ意識をダウンロードして完全体になる。まあ、今の段階じゃお前は分かっていないだろうけど、ある程度の情報は本体へと還元されるからな」
できる限り、手札は温存するべきかとも思うが、出し惜しみしても意味がない。
できるだけ速く敵の親玉を誘い出して、一気にけりをつける。自分だってIS学園に長いこと留まれないのだ。
そして、アルケミストはドライバーに手をあて、魔法発動モードへと移行する。
右指にはめられたのは、足のようなデザインを施された指輪。
「ってことで、一気に決めるぞ」
《アルケミーオブマジック タッチGO! グッド! キックストライク!!》
右足に充填される魔力。その属性は当然、氷だ。
氷点下を超えて、加速的に冷却され、その冷気だけで途轍もない破壊力を秘めていた。
そして、左手の指先には一枚のセルメダルが乗せられていた。それを指で弾き、同時にアルケミストは飛び上がる。
「コレで、ラストだ!」
氷の魔力が充填された蹴りがまず、メダルへと当たる。いや、足の裏に彫られていた魔法陣にぶつかり、メダルがその形を変えた。
右足はまるで、獣のように変化していく。冷気も増大し、凶悪なまでの輝きを放つ。
《ファイナル!!》
「ぶっ飛べ!!」
◇◇◇
『ですから言ったんです。ガイアなら行けると』
「だからゴメンって……事後処理任せっぱなしだし、はぁ…………ここの教職員優秀すぎるよ」
『それがIS学園ですよ』
「わかってる……コインは食堂にいけるとして、ガイアもつれてこれるとして問題はお前だよなぁ」
『まあ、カモフラージュは考えておきます。理論上はあのIS開発者でさえ私を感知できないはずですから』
「そうだけど、マッドは怖いから」
その日の夜、キャノンはコスモと通信をしていた。
流石に油断しすぎていたため大目玉である。
「で、おまえらはどうするんだ?」
『コインには食堂で働くということで潜入してもらいます。あの子、料理は得意ですから』
「なるほど、名前は? さすがにコードネームは怪しまれる」
『あの子の場合は本名でも大丈夫でしょう。別に、知られても影響は出ないかと……一応、対策はしておきます』
「ならいい。なら、ガイアは俺の近くへ。お前は引き続きそっちでオペレートを頼む」
『了解しました。早速準備に取り掛かります』
錬金術師とその仲間達の暗躍はこうして始まった。
舞台はIS学園、世界で一人の男性IS操縦者を中心に、人ならざるものホムンクルス、今はまだ姿を見せない亡国機業と呼ばれる裏組織が動き出す。
そして、ガイアメモリやゾディアーツスイッチに投資していたとされる財団Xや、ショッカーの派生組織。彼らもまた、己の目的のため、やってくる。
各国も、代表候補生やIS研究者などを送りつけてくるだろう。
そして、一人の少年を巡る戦いの渦に、新たな一団が加わった。
彼らの目的、素性、その殆どが未だ不明だが、分かっていることが一つある。
「あ、織斑一夏が固有スキル、ラッキースケベを発動させたから救助しにいってくる。このままだと、天災の妹に切り殺されちまう」
『彼、ホムンクルスとか亡国機業に殺される前に、女性に殺されるんじゃないですか?』
「……ありえるけど、それだと俺が困るんだけど」
わりと情けないことで忙しくなりそいうということだけだ。
投下は以上となります。時間と人気があれば続ける。