総武高校入学式の日…俺が事故で入院した日から遡ること、1カ月。
これは小町の誕生会と、俺の高校合格祝いを巡る顛末。
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今日は、2月22日…総武高の受験日まであと10日と迫っている。ついでにネコの日らしい。
「ただいまーっと」
「あーお兄ちゃん、おかえりー。ほら、カーくんもおかえりーって」
学校から帰宅しリビングに入ると、小町が「にゃんにゃんにゃーん♪」とか言いながら、膝の上に乗せたカマクラの前足を手に取ってこちらにフリフリしてきた。小町は既に部屋着に着替え、のんびりしていたようだ。カマクラも気持ちよさそうにフスフスと鼻を鳴らしている。2人とも、ご機嫌だな。
「今日はカーくんの日だもんねー。いっぱいモフモフしてあげるからねー。うりうりー」
「あー、今日はネコの日か。よかったなカマクラ。記念に撮ってやろう」
その姿を見た俺はいそいそとスマホを取り出し、撮影を開始した。…もちろん小町しか撮っていない。俺は悪くない。小町がかわいすぎるのが悪い。
一通りのアングルで盗さ…撮影しまくった後、小町にバレないように努めて平静を装いながらお宝画像をチェックしていると、カマクラをモフる手を止めた小町が話しかけてきた。…ビックリして危うくスマホを落としそうになりました。いや別に変な画像は撮ってないけど、こっそり撮っていたのは事実なわけで…見つかったら、妹に冷たい目で「…変態。」と罵られてしまうかもしれないですね。あらやだ…いいかも。
「ねーねーお兄ちゃん。お兄ちゃんの高校の合格発表って、3月5日だったよね?」
「おおぅ…あ、ああ、そーだな。別にお兄ちゃんが所有する高校じゃないけどな」
「なにビックリしてんのさ…ちょっとキモかった。あと所有とかそういうのいいから」
おぅふ…これはこれで…。いや俺は断じて変態ではない。……たぶん。
「はい、すいません。…で?俺の合格発表がどした?」
「……あのさ、お兄ちゃん。今年の小町の誕生会、3月7日なんだけど…そこでお兄ちゃんの合格祝い、一緒にやってみない?」
「…は?一緒に?なんで?それに俺、まだ試験受けてもねーのに気が早いんじゃねえの?」
…この子、にゃに言っちゃってんのかニャ?一緒に?俺が?小町の誕生会に?女子が集う中に?
「つべこべ言わない!お兄ちゃんは合格するからいいの!…あ、いまの小町的にポイント高い!」
「そうね、高いね」
「わーテキトーだなー。お母さんの準備もあるから一応、早めにと思って」
「あー…確かに母さん、祝いの料理作る食材準備するのに、すげぇ時間かけるもんな」
一度母さんにツッコんだら「普段やんないんだから、お祝いの時くらいマジになるわよ!」とキレられた。なんか、すみません…。
「そうだよ!で、一緒にやるの?やるよね?けってーい!」
「ちょ、やらねえっての!なんでそうなる?」
…おかしい。いくらワガママ小町でも強引過ぎる。
「えーいいじゃんやろうよー。ダブルお祝いだよ?やろうよーねーねー」
ソファに座る俺にずいずいと接近してきていた小町が、今は隣でねーねー言いながら俺の左肩をゆさゆさと揺らしてくる。えーいやめなさいかわいい鬱陶しいかわいい照れ臭い。どうせならねーねーじゃなくてにゃーにゃーにしなさい。ネコの日だし。ちなみにネコミミ装着推奨。…カマクラ、隣でにゃーにゃー言ってるけど小町の援護か?かわいいなおい。
「やらねぇよ…小町も分かってるだろ?俺がそういうの苦手だって。それに、やるって言っといて落ちたらカッコ悪すぎるだろ。もし合格祝いやってくれるのなら、俺が合格してから考えてくれればいいから。な?」
「…それじゃ理由が無くなっちゃうから言ってんじゃん…」
そのまま俺の左隣にちょこんと座った小町が、ぽしょりと呟いた。
「ん?なんて?」
「もー!なんでもない!お兄ちゃんのアホ!オタンコナス!…えっと…その…アンポンタン!」
「珍しいチョイスだな…」
俺のことを罵倒しながらも、小町が俺のすぐ左隣から離れる様子は無い。普段なら俺と距離を取るところだろうけど…小町を追ってきたカマクラが膝の上に乗っているから、気を遣って動けないようだ。怒っても優しいとか、やっぱ天使だなー。
「…なにニヤニヤしてんのキモい」
「うっ」
…ヤバい。今のはかなり…いやそうじゃなくて!これ以上はマジで怒らせてしまう。
「いや、スマンって。俺もビックリしたんだよ。小町、そんなこと今まで一回も言ったことなかったろ?俺もああいう場は苦手だし、いきなりそんなこと言われたら戸惑うって」
すぐに怒った表情を引っ込め、シュンと俯く小町。うーん…いきなりそうなっちゃいますか…。もう一回くらい、ガーッと来ると思ったんだけど。やっぱなんか違うな。
「……うん。確かに小町も急すぎたかも。…ごめんなさい」
「いや、謝んなくてもいいぞ。気にしてないから」
「え、それじゃあ…」
「や、それはムリ」
「ぶー!ケチー!」
今度はぶーぶー言い出した。うーん…小町にしちゃ、やり方がバカ正直というか…あまりにも正攻法で俺の許可を取りに来てるというか…いつもならもっと搦め手から攻めてくるんだけど。母さんとかオヤジ使ったりして。さすがに俺が本当に嫌がるようなことで、そういう手は使わないか…。
横で俺に文句を言ってる小町を無視して、TVを観る体勢を決め込む。小町のこれ、長いんだよなあ…ヘタレだのごみいちゃんだの、ヘタレだの…。ボキャブラリーが貧困すぎて同じことばっかり言うのがかわいいから相手してもいいんだけど、今度ニヤニヤしたら完全に怒らせてしまうだろうし…逃げるとそれはそれで怒るし…近くにいて適当に相槌打ってるのが、いちばんダメージが少ないんだよな…。
しばらくTVを観ていたら小町は俺に文句を言い尽くしたのか、静かになっていた。観ていた番組も終わったし、頃合いかな。さて部屋に戻る前に、小町に何か飲み物でも取ってきてやりますかね。
「小町、なんか飲む……」
声を掛けながら隣を見ると…TVを観ているとばかり思っていた小町は、丸くなって眠るカマクラを膝の上に乗せたままじっと俯いていた。横顔が髪で覆い隠されていて、あまり表情が見えない。どうやら、あまり良い状況とは言えないようだ…。
「……どした?体調悪いのか?」
俯いたまま、小さく首を振る小町。…まるで小さい頃に戻ったようだ。これは…あれだな。言いたいことはあるんだけど、待っててもなかなか言ってくれないやつだな…。
俺はぽん、と小町の頭に手を乗せ、できるだけ優しく話す。
「言いたいことあんだろ?いいから言ってみ?」
…まあ、今さら一つしか無いだろうけど。それでも、聞かないとな。
「……お兄ちゃん。やっぱり…ダメなの?」
「…ん?」
小町は俯いたまま、小さな声で言葉を紡いでいく。
「どうしても、ダメ?…お兄ちゃんがそういうのすごく苦手なのは充分分かってる。イヤなこと頼んでごめんね?…でも、それでも…今回だけでいいから…今回だけは、一緒に……」
「………。」
……分からない。俺の合格祝いは、小町にとってそれほどまでに大切なことなのか?確かに俺が受かれば、いいタイミングで祝い事が重なる。こんなことは今までにも無かった。俺がこんなのでなければ、小町の誕生会で友人たちと一緒に小町を祝い、俺の高校合格もついでに祝ってもらうことも何ら不思議なことではないのかもしれない。けれど…俺はそういう場に出ることを極端に苦手としている。毛嫌いしていると言っていい。それを承知のうえで、俺に本気で嫌がられてまで…?
それに小町の友人たちにとって、俺はほぼ他人…お互い、顔を見知っている程度の存在でしかない。俺にとって、祝ってもらう謂れが無いのだ。なのに突然、うちの兄の高校合格を一緒に祝ってくれだなんて言われたら、向こうだって困るんじゃないのか?…小町の友人たちなら、そんなこと考えないのかも知れないけど…。人付き合いをしない俺には、そのへんは分からないことだらけだ…。
…ダメだ。考えても全く思い当たる理由が無い。小町も言いたくないのか、俺が納得出来る理由を話してくれる気は無いらしい。想いが軽ければ、口も自ずと軽くなる。言わないということは、それだけ想いが強いということなんだろな……。
小町は俯いたまま。相変わらず、今の位置関係だと髪に隠れて表情がよく見えない。
かわりに気付いてしまった。膝の上で眠るカマクラの背中に乗せた、小さな…少し震える両手に。
……これは俺の負けだな。我ながらチョロいとは思うけど。
「…あー、小町。その、だな……今回だけな」
刹那、俯いていた小町の顔が勢いよく跳ね上がった。膝の上で寝ていたカマクラが飛び起きるようにして逃げて行ったが、小町はそれに気付く様子も無い。少し赤くなっているが、キラキラした目で俺のことを見つめている。感極まったのか、言葉も出ないようだ。
…ちょっと小町ちゃん?そこまで嬉しいことなの?てかそんな目で見られたらお兄ちゃん、浄化されちゃうから!とてもじゃないけど目を合わせられん!見ないで!光になるうううぅ!
「…こ、小町?」
「……ほんとに…?ほんとにいいの?」
「お、おう」
「ほんとのほんとに?イヤなんじゃないの?それでもいいの?」
「だから良いって。そんなに気にすんな。…な?」
俺はもう一度、隣に座る小町の頭の上に、ぽん、と右手を乗せた…その瞬間、俺は横からの衝撃を受けてソファに倒れ込んでしまった。ちょっと小町ちゃん?今日、マジで色々とおかしくない?
「ありがと!お兄ちゃん!」
「うおっ!ちょ、小町、くっつくなって!」
「えへへーいいじゃん!うれしいくせにー!」
……結局何故かは分からんままだけど…まあ、いいか。こんなに喜んでくれるなら。なら俺は、何としても合格できるように…精一杯頑張るとしますかね。
― ― ― ― ―
あれから10日が経った。俺の第一志望校である総武高校の受験も終わり、その合格発表を2日後に控えた3月3日の夜。今日は小町の13歳の誕生日だった。
今日ばかりは早めに仕事を切り上げてきた両親も揃い、久しぶりに家族全員が揃った夕食となった。母さんが作ったいつもより少し豪華な料理と、オヤジが買ってきた高そうなケーキを頬張る小町を見ていると、こっちまで幸せな気分になってくるのを感じた。
夕食後。友人たちを招いた誕生会が週末の7日に開催されるため、学校では祝福の言葉と、ちょっとしたプレゼントを貰った程度らしかったが…数えきれないほどの小物類やメッセージカードををテーブルに広げながら、これは誰から、こっちはあの子からと、ひとつひとつ説明しながら話す小町は、本当に楽しそうだった。
今はそれも終わり、俺は自室で寛いでいる。ベッドの上に寝転がりながら本を読んでいるのだが…
……緊張してきた。まだあと2日あるが、明後日は俺の合格発表の日だ。そこで俺が合格しなければ、7日に開かれる小町の誕生会に、俺も合格祝いの主役として出席するという…小町との約束も破ることになってしまう。自己採点では結構いい線行ってると思うんだけど……
…すべり止めで受かった高校、家からメチャクチャ遠いんだよな。総武より遥かに遠い。うちの中学からは誰も受けなさそうで、レベルもそこそこの高校が他に無かったから仕方ないんだけど、もしあんなところに通うことになったら…。
小町、俺が総武に落ちても、すべり止めの高校の合格祝いするから予定通り出席してくれ、とか言いそうだけど、そんなの絶対ムリだぞ…
…ってダメだ。きっと大丈夫なはずだ。小町にもさっき言われただろ。お兄ちゃんなら絶対大丈夫だよ、って。何の保証も無い、たったそれだけの言葉だったけど…俺の合格を微塵も疑っていないことが伝わってきて、本当に嬉しかった。
てかそもそも、小町はすべり止めの高校の合格祝いのことなんて一度も口にしたこと無いじゃねえか。冗談でも言われたことがない。やるならとっくに俺に伝えてるはずだろ。勝手に想像して、決めつけようとして…どうしようもないバカ兄だわ。
結局、どうして小町があそこまで俺の高校合格祝いに執着しているのかは未だ分かっていない。あの時の小町は、明らかにいつもと違っていた。あの、悲しそうに俯いて座る姿…あれはまるで、小さい頃に小町が家出したときの、あの雪の日の公園のブランコに座っていた…あの時の小町のような…。
俺は文字列を目で追っていただけだった本を閉じ、電気を消して布団の中に潜り込んだ。まあ、当日になったら分かることだよな。……たぶん。
「おーいお兄ちゃーん!遅刻するよー!小町もヤバいからもう行くからー!鍵よろしくねー!」
遠くで小町らしき声がする。玄関のドアが閉まるような音が…ん?いま何時だ?
手探りで枕元のスマホを手に取り、画面をタップする。3月4日、8時3分……瞬間、意識が覚醒した。昨日、寝るの遅くなったんだった!
「やっべ!遅刻ギリギリじゃねえか!」
飯は…ムリだな。小町の作った朝メシが…
ジャージを脱ぎ捨て、制服に着替える。この間僅か12秒。なかなかのタイムだ。
鞄の中に適当に教科書を突っ込み、ついでに財布とスマホも突っ込んで…準備完了。
部屋を出て階下へ駆け下り、洗面所へ。一応、寝癖もチェックしておく。ヒキガエルのくせに寝癖ついてるプークスクスとか。…ほっとけ。でも余計な攻撃材料を与えてしまった結果、目立ちたくないからなあ…。目はどうしようもないけど…よし、OKだ。
テーブルの上に転がっていたガムの容器から1個取り出し、口の中に放り込む。歯を磨きたいのは山々なんだが…。テーブルの上にあった味噌汁用のお椀を棚に戻し、サラダにラップをかけ冷蔵庫に入れる…帰ったら食うからお許しを、小町様。ダッシュで玄関へ。鍵をかけて…と。
「…いってきます」
誰にも聞こえない。言う意味も無い。けれど、これと「ただいま」だけは言うようにしている。小町に言われたからな。それを言わなくなったら、誰か家に居てもそのうち言わなくなっちゃうから、と。
「さて…行くか」
学校に向かって歩き出す。学校までは急いで15分弱。何とか間に合いそうだな…今日もいい天気だ。雨だったら遅刻確定だったな。
学校に近付くにつれ生徒の数が多くなってきた。そろそろ校門だ。学校モードに切り替えだな…
俺は表情を消し、下を向いて誰とも視線が合わないようにしながら早足で校門を通過する。そこに立って挨拶をしていた、生徒指導の見知った教師も俺には何も言わない。パッシブスキル・ステルスヒッキーは今日も発動してるようだ。…これはただ避けられてるだけだろうけど。あんたにゃ都合悪い存在ですもんね、俺。
教室の前に来ると、ボロボロの机と椅子が一組、廊下に置いてあった…いや、捨ててあった。いつもの光景だ。奴ら、俺へのいじめが教師にバレないようにはしてるんだけど…これは習慣みたいになってんのな。よく分からん…。
俺はそれが自分のものであることを確かめると、それらを持って教室に入った。最前列、いちばん廊下側。そこが俺の机の位置だ。選択権など無い。気付いたら勝手に決まっていた。ドアからいちばん近いから、持ち運びもラクでいいんだけど…それって、向こうも廊下に出すのがラクってことなんだよなあ…はぁ。
俺は慣れた動作で机と椅子を元に戻すと、すぐに座って机に突っ伏した。俺が教室に入ってここまでの、1分にも満たない時間…この間は決まって朝の教室の喧騒が途絶える。ここまでがいつものルーティン。その後思い出したかのように、教室に朝の喧騒が戻ってきた。
俺はそれを確認し、俺への直接的な行動が無いことに少しだけ安堵すると、ゆっくりと目を閉じた。
そして昨日同様、今日も何事も無く放課後になった。ボッチの一日なんて何の変化も無い。最近は平和過ぎるくらいだ。ほんとありがたいわ。学校来て寝て起きて授業受けて、昼は誰も居ないところでメシ食って寝て…以下略。…さて。さっさと帰るか。
帰りの挨拶が終わると同時に俺は鞄を引っ掴み、教室の外に出た。いちばん早く教室から出られるのが、この席の大きなメリットだ。まあ、だからすぐ逃げられる、っていう単純な話でもないんだけどな…俺を引き留める方法なんて幾らでもあるし。「逃げんなよ」これだけで詰みだ。
だが、最近は受験があったり、卒業を間近に控えていることもあってか、俺に対して直接的な危害を加えようとは考えていないようだ。進路が決まったなら、それを台無しにしてしまうような行為は避けるだろうからな。まさか、奴らの狡猾で慎重なところが、俺に利するときが来るなんてなあ……。
昇降口で袋から靴を出し、それに履き替える。特に隠されたり汚されたりはしないけど、上履きも下履きも、持ち歩かないと画鋲が入ってたりゴミ入れられたりするんだよなあ…まったく、めんどく……
「ようヒキタニぃ、ちょっとツラ貸せよー」
不意に背中から声が聞こえた。
罪人を甚振る悪徳獄吏のような…ねっとりとした悪意に塗れた声。
息が止まる。一瞬で身体が硬直して、イヤな汗が噴き出す不快な感覚が押し寄せてくる。
「俺ら全員受験も終わったことだし、久しぶりにお前と遊ぼうと思って急いで来たんだよ。お前も受験終わってんだろ?遊ぼうぜ」
周囲を他の生徒たちが通りすぎていく。まるで、俺たちのことが見えていないかのように。
「おーい、聞いてんの?遊ぼうぜって言ってんだけど?」
……俺は何を思い上がっていたのだろう。俺に平和な学校生活なんて、あるわけがないのに。
「……はい」
俺は俯いたまま振り返り、一言、返事をする。
…いや、まだ暴行を受けると決まったわけじゃない。嫌がらせとか、最悪、金を奪われる程度で……
「いいもん作ったんだよ。卒業記念スタンプ。お前に捺してやろうと思ってさ」
奴らのうちの一人が、ポケットから何かを取り出した。
それを見た瞬間、自分の顔から血の気が引いていくのが分かった。
…落ち着け……顔に出すな……
「さ、いつものとこ行こうぜ。久々だからテンション上がっちまってさー、こんなもんができちゃったんだよなあ。楽しみだわー」
「ウッソお前、なかなかエグイもの作るなー。これ、どっちかっていうとBCG注射じゃね?太さも長さも全然違うけどw」
俺はふらふらと、体育館裏に向かう奴らの後に続く。奴の手には、卒業記念スタンプなんて言うにはあまりにも似つかわしくない…禍々しい形状のものが握られている。
……それは、何本ものミシン針が貫通した何かだった。