円卓の神機使い   作:倉崎あるちゅ

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 お待たせしました。
 評価10をもらって更新しないは失礼なので仕上げました。

 ありがとうございます、ほんとうに。


二話 特殊機構

 

 

 メディカルチェックが終わった次の日。

 俺達新人は雨宮ツバキ教官の下、訓練場で神機、各種兵装の扱いの練習をしていた。

 スタングレネードは緊急時に使えば撤退にも使えるし隙を作ってアラガミに攻撃することもできると教えてもらい、他にもトラップや信号弾などのやり方も教わった。

 そして今、俺とユウ、コウタの三人はそれぞれ別の訓練所に移動してダミーアラガミと呼ばれる、アラガミによく似た人形相手に神機を使った戦闘訓練をしている。

 

『基本の動きはさっきツバキさんに教わったよね。じゃあ、この時間は君の神機について話そうか』

 

 訓練場の上のガラス張りの部屋から、リッカさんがこちらを見てそう言う。俺の手にはそのリッカさんとサカキ博士が組んだ白銀の神機が握られている。

 

『その神機には複雑な特殊機構が組まれている。例えば、ロングブレードからショートブレードに、ロングブレードからバスターブレードに変形できるんだ。やってみなよ』

 

 そう言われ、俺は事前に説明を受けた通りに神機の柄頭を押した。すると、白銀の両刃のロングブレードが縮んでショートブレードの長さになった。

 どうやら柄頭はスイッチの役割を担うようだ。

 

『できた? じゃあ次はロングブレードに戻してみようか』

 

 指示通りに戻すと、ガシュッと音を立てて刀身が伸びた。その刀身はガツン、と床に当たってしまった。

 

「いっ!?」

 

 手に振動が伝わり、俺は振動に悶える。

 

『あぁ、言い忘れてたけど戻す時は地面に気をつけてね。戦場だと突き刺さって動けなくなるかも』

「もう少し早く言ってくれないかなリッカさん!?」

 

 既に床に当たって悶絶してるんですけど!

 俺の叫びを聴いたリッカさんはごめんごめん、と軽く謝った。

 

『状況に応じて刀身を使い分けてね。ちなみに、その刀身の名前は〝アーサー〟って言うんだ』

 

 〝アーサー〟……なんか、大昔に描かれた物語の人物だったっけ。

 

『それじゃあ次は銃身。銃身も特別でね。カテゴリーはスナイパーだけど、アサルトみたいに連射もできるし、オラクルリザーブも少しだけど使えるよ』

 

 神機をガンフォームに切り替えて、白銀の細身の銃身を眺める。

 リッカさんは難しいことを言っていたが、要は何でもできる銃身、ということだろう。

 通常の神機はスナイパー、アサルト、ブラストの三種類から選ばれる。スナイパーは遠くのアラガミを射抜き、アサルトは連射で圧倒し、ブラストは大火力で沈める。

 最近ではショットガンという新たな種類も開発中らしいが、それは別の人が試験中のようだ。

 

『バレットも簡単にエディットしておいたから、試しに使ってみて』

 

 そう言われ、俺は神機を弄ってレーザーのようなアイコンのバレットを選択した。スタングレネードが入っているバックパックとは逆のバックパックから、耳にかける片目のスコープを取り出し、訓練場の遠い擬似アラガミに狙いをつける。

 柄につけられたトリガー引くと、ダンッ! という銃声が鳴り、擬似アラガミの脚に当たった。

 

「お、おお……」

 

 さっき使った拳銃よりこっちの方が爽快感が……。

 

『初めてで当たるなんてね。酷い人は明後日の方向に飛んでたから筋がいいかも』

 

 それは嬉しい。次は連続で撃ってみよう。

 狙いをつけて、トリガーを長押しすると、ドドドドドド、とマズルフラッシュを瞬かせて銃弾が発射された。

 何発出したかわからないが、大半は擬似アラガミに当たったみたいだ。

 この結果が良いのか悪いのかリッカさんに聞こうとするが、彼女はあーだこーだとブツブツ呟いている。

 いいや、ブラストに切り替えてみるか。

 カチリと切り替え、弾数表示の下に×0、とゲージが映し出された。

 

『ブラストの試し撃ちはまた今度にしよう。計算だと威力が凄まじくてね。実地でやるといいかな』

 

 リッカさんにそう言われ、俺は頷いた。

 次は擬似アラガミを相手に、刀身の変形機構を使って倒す、という指示が来た。

 近くの擬似アラガミが動き、雄叫びを上げて走ってくる。

 

「っ」

 

 形はオウガテイルと呼ばれる鬼のような顔をした二足歩行のアラガミ。

 怖くはない。

 本物のアラガミに比べたら、擬似アラガミは玩具みたいなものだ。

 俺も擬似アラガミに向かって走り、刀身をショートに切り替えて目の前のオウガテイル型の擬似アラガミを切り刻む。

 右下から斬り上げて、手首を返し、左下から再び斬り上げる。慣性を利用してそのまま右回りし、右へ思い切り横薙ぎにショートブレードを振るった。

 

 ガゥアァ!!

 

 擬似アラガミは吹き飛び、悲鳴のような叫びを上げて沈黙した。

 

『うわ、ショートブレードでもここまでの威力かぁ。最後の一撃はロングかバスターにしたら凄そうだね』

 

 リッカさんがそんな感想をもらす。

 確かに最後は切り替えても良かったかもしれない。慣性を活かし、ロングかバスターで重い一撃を叩き込めるはずだ。

 ガシャリと白銀の神機を構えて、擬似アラガミが二体に増えるのを確認した。

 

「よし、行くぞ……!」

 

 意気込み、俺は訓練場の床を蹴る。

 刀身はロングブレード。

 擬似アラガミの眼前で踏み込み、袈裟斬りをする。

 しかし威力が足りなかったかのか、擬似アラガミは鬼のような顔をこちらに向けてくる。大きく口を開き、刺々しい牙が迫る。

 俺は神機の重さを使ってその場で回転し、刀身をロングからバスターに切り替えた。

 カシャン、カシャン、と刀身が伸び、幅が広くなった。

 

「う、おぉ!」

 

 神機に付けられているシールドを展開し、擬似アラガミの攻撃を防ぐ。衝撃が襲うがそれを我慢してバスターブレードと化した刀身でスイングした。パリングアッパーと言われるものだ。

 通常、バスターブレードは叩き潰すことを目的とされているが、俺の刀身はロングブレードがデフォルトなため、切断能力に特化している。

 

 つまり、

 

『うっそ……』

 

 擬似アラガミは真っ二つに切り裂かれた。

 ここまでの性能は予想していなかったのか、リッカさんは唖然としている。

 正直、俺もこんなにあっさり斬れるとは思わなかった。

 

 ガアァァ!

 

 だが、感慨に耽っている場合じゃない。

 二体目の擬似アラガミが、本物のオウガテイルさながらの跳躍をして襲いかかってきた。

 脚を広げ、バスターブレードにしたまま振りかぶる。

 

「はあぁぁぁぁ……!!」

 

 バチ、バチ、と電気が奔るような音が神機から聴こえてくる。

 

『あ、待って! それは──!!』

 

 ジリジリジリジリジリ、と放電するかのようにオラクルが溜められ、俺は神機を擬似アラガミに向けて振り下ろした。

 

 

 

「それで、言い分を聞こうか高神シドウ」

「はい……」

 

 今、俺は訓練場にて雨宮教官に怒られていた。

 バスターブレード特有の技──チャージクラッシュの射線上には大穴が開いている。

 

「ほほぉ、これは興味深い。あの機構にはこんなに威力があったのか!」

 

 俺が怒られているというのに、隣では大穴を興味深々とサカキ博士が見て大声を上げている。

 

「本当にすみませんでした……」

 

 深々と俺は頭を下げた。

 雨宮教官ははぁ、と大きな溜息をつく。

 

「事前に言っていなかったサカキ博士にも責任はある。よって、この件は不問にしよう」

「っ! ありがとうございます! 雨宮教官!」

 

 良かった。そんなに怒られなくてよかった! 正直言って雨宮教官怒ったら凄い怖いと思うから怒られたくなかったんだよね!

 

「サカキ博士、このことは支部長に報告させてもらいます」

「ははは、大丈夫だよ。ヨハンもこうなることは予測してたはずさ。シドウくんの適合率の高さは彼も知っているからね」

 

 愉快そうに笑って、サカキ博士はさて、と俺の方を向いた。

 

「君の神機は少し調整しておこう。いささか威力がありすぎるからね。最悪、部隊の仲間に危険が出るかもしれない」

「まっ、安心してよ。わたしと博士で実戦までには調整を終わらせておくからさ」

 

 しばらくはモックアップね、とリッカさんに言われ、今日の訓練は終わりを告げた。

 

 

 

 

 ✕ ✕ ✕

 

 

 

 

 ひと通りの訓練を終えて、神機使いとしての動きを見つけるのに一週間ほど経った。

 今日はユウと一緒に実戦をすることになった。残念ながらコウタがいない。少し寂しい気がする。

 アナグラのロビーで、俺たちの上官が来るということでユウと待たされ、他愛ない話をしていた。やれ上官はどういう人なんだろ、やれ雨宮教官と同じくらい怖いのか、など。

 主にユウから話が振られるので俺は相槌を打つだけだ。

 ふと、ロビーの二階から誰かが降りてきた。

 

「あ、リンドウさん。支部長が見かけたら、顔を見せに来いと言っていましたよ」

 

 受付のヒバリさんが降りてきた人物にそう言うと、その人は軽く手を挙げる。

 

「オーケー、見かけなかったことにしといてくれ」

「あはは……はい」

 

 片目が目にかかるほどに伸びた黒髪二十代後半ほどの男性だ。

 その人はこちらに歩いてきて、目の前で立ち止まった。

 おそらく俺たちの上官になる人だろう。

 

「よう、新入り共」

 

 そう気さくに話しかけられ、少し緊張して固まっていた体が弛緩した。

 

「俺は雨宮(あまみや)リンドウ。形式上、お前たちの上官にあたる」

「高神シドウです」

「神薙ユウです!」

 

 俺とユウは自己紹介をすると目の前の上官は、おう、よろしくな、と言ってくれる。

 

「いろいろとかたっくるしいことを言わないといけないんだが……ま、面倒臭い話は省略する」

 

 そんなんでいいのか。

 

「とりあえず、とっとと背中を預けられるぐらいに育ってくれ。な?」

 

 肩を竦めて、飄々とした態度をする。

 俺とユウは互いに目を合わせ、目の前上官を見やって笑う。

 

「「はい!」」

 

 俺たちの態度が気に入ったのか、上官はニヤリと笑って俺たちの肩にバンッと手を置いた。

 

「よし、俺のことは好きに呼んでくれ。あんまり硬いのは好きじゃなくてなぁ」

「じゃあ、リンドウさんで」

「うん! リンドウさんよろしくお願いします!」

「おう」

 

 三人でそんな会話をしていると、リンドウさんの後ろから人がやってきた。

 

「あ、もしかして新人さん?」

 

 やってきた人はジーナさんより露出が激しかった。それに彼女より胸のふくらみがあり、正直目に毒だ。というよりこの人とジーナさんと比べるのも可哀想か。

 

「高神シドウです」

「神薙ユウです!」

(たちばな)サクヤよ。よろしくね、二人とも」

 

 ふわりとショートの黒髪が揺れた。

 

「あー、サクヤくん。今厳しい規律を叩き込んでるんだから、あっちに行ってなさい」

「ふふっ、了解です。上官殿」

 

 ボリボリと頭を搔いて、リンドウさんは面倒くさそうに言うと、橘さんは俺たち二人に手を振って去っていった。

 

「よし、早速お前たちには実戦に出てもらう。お前たちの初陣には俺が同行する」

「了解です」

「はい」

 

 異口同音に返事をすると、リンドウさんは行くぞ、と神機保管庫に続く、エレベーターに向かって歩いていく。

 俺とユウはリンドウさんの大きな背中を追った。

 

 

 ヘリに乗って、やってきた場所は廃都市だった。

 ビルはアラガミに喰われたのか、部分的にごっそりと消えている。

 

「ここも荒れちまったな……」

 

 リンドウさんが紅い神機を担いで呟いた。

 

「やっぱりシドウの神機って、あたしのよりかっこよくない?」

「しつこいってユウ」

 

 俺はと言うと、神機を担いでリンドウさんの下へ向かう最中ずっと同じようなことを言われ続けていた。

 正直うざい。コウタがいてくれれば……。

 

「ははっ。ユウ、そのうちお前も神機を新調する時が来る。それまでの辛抱だ」

「えー」

 

 不貞腐れるユウにリンドウさんが窘める。

 実戦なんだからもう少し緊張感を持てよ、年上。死ぬかもしれないんだぞ。

 

「さて、切り替えていくぞ。命令は三つだ」

 

 そう言うリンドウさんの顔が真剣味を増し、指を三本立てた。

 

「死ぬな。死にそうになったら逃げろ。そんで隠れろ。隙ができたら、不意を突いてぶっ殺せ」

「「はい!」」

 

 単純でわかりやす……い……あれ?

 

「それ四つじゃ?」

「おっと、そうだな」

 

 悪い悪い、と彼は笑って言う。

 もしかして、緊張してた俺を気遣ってくれた……?

 

「さーって、おっ始めるか!」

「「了解!」」

 

 廃都市から離れていた場所から、俺たちは一気に都市内に進軍する。

 オラクル因子で強化された俺たち神機使いは一般人では出せない脚力を誇る。それを存分に活かし、都市を疾駆していく。

 

『討伐対象はオウガテイルだ。複数いるから、お前ら気を抜くなよ』

 

 ザザッ、という無線特有のノイズを含ませながら、少し離れたところで走るリンドウさんがそう言った。

 

『私もサポートしますから、安心してくださいね』

 

 無線からヒバリさんの声が聴こえる。

 任務の際は、こうしてオペレーターがアラガミの位置を報告してくれるそうだ。

 アラガミはオラクル細胞で構成されているため、その反応で位置を特定している。

 

「こちら高神シドウ。周辺のオラクル反応はありますか?」

『現在、シドウさんの周辺には反応はありません。ですが、ユウさんの周辺に三つの反応があります!』

「了解。ユウ、わかった?」

『大丈夫。もう見つけたよ』

 

 その直後、ユウがいる方角から銃声が聴こえて来た。

 リンドウさんからは、見つけたら攻撃してもいいと許可は得ている。

 

『やり! オウガテイル一体倒れたよ!』

『気をつけろー。二体近づいてきてるからな』

『はい!』

 

 ユウの方は大丈夫みたいだな。

 俺の方は依然として反応はない。どこかに隠れているのか?

 

『シドウさん、気をつけてください! オラクル反応多数! 来ます!』

「っ!」

 

 ガアァァァァ!!

 

 ヒバリさんからの警告を受けた瞬間、地面からオウガテイルが数体飛び出してきた。

 危なかった。咄嗟に跳躍(とば)なかったら喰われてた……!

 

『シドウ、すぐそっちに向かう。死なないように立ち回れ』

「了解」

 

 倒壊したビルの瓦礫に着地し、地面を駆る白い鬼のような顔をしたアラガミ──オウガテイルを見下ろす。

 今、俺はアラガミと対峙するという実感が、初めて湧いてきた。

 擬似アラガミと全然違う。こいつを喰ってやるという意思が届いてくるようだ。

 

「……やってやる」

 

 小さく呟く。

 脳裏によぎったのは、両親を殺したアラガミの姿。淡い紫の色が輝く大きなアラガミ。

 復讐なんてどうでもいい。両親の顔なんて覚えていないし、記憶もない。けれど、あのアラガミを倒すまでは生きなければならない。

 神機をガンフォームに切り替えて、片目のスコープをつける。

 トリガーに指をかけ、オウガテイルの頭に狙いをつけた。

 

「死ね」

 

 ダンッ! という銃声が鳴り、オウガテイルの頭を吹き飛ばした。

 

「次……!」

 

 再び頭を狙い、トリガーを引く。

 命中。

 その瞬間瓦礫が少し崩れた。

 跳躍して神機を近接にし、バスターにする。身体を捻り、神機で背後から襲いかかってきたオウガテイルの胴体を両断する。

 

『ユウ、援護しろ』

『了解!』

 

 リンドウさんとユウの声が無線から聴こえる。

 少し視線を逸らせば、神機をガンフォームにしたユウが遠くにいるオウガテイルを攻撃していた。

 ユウの銃身ってブラストなんだ……。

 

「あんまり無茶すんなよ、新入り」

「リンドウさん」

 

 気づいたらリンドウさんが俺の近くに来ていた。

 

「良い動きだった。だが危なかっしいな」

「すんません」

「ま、これから直せばいい」

 

 煙草を口に加えて、彼は紅い刀身をエンジンのように唸らせ、寄ってくるオウガテイルを斬り伏せていく。

 そこから数メートル先で、一体のオウガテイルが尻尾の棘を撃ってくる動きを見せていた。

 俺は地を蹴り、刀身をショートに切り替えた。

 瞬時に接近して神機を横薙ぎに振るう。その直後に尻尾を狙って斬り上げ、神機に引っ張られるように俺自身を宙に浮かせる。

 ショートブレードの特徴である、ライジングエッジと呼ばれる技だ。

 

 ガアァ!?

 

 見事尻尾は切り落とされ、棘を発射することはできなくなった。

 宙に浮いた俺は神機を捕食形態(プレデターフォーム)に変え、オウガテイルの頭に切っ先を向けて落下する。

 ズドン、という音を立てて、着地した。オウガテイルは頭と胴体を黒いアギトが喰いちぎったことにより沈黙していた。

 

「へぇ、面白いじゃないの」

 

 神機を捕食形態から通常に戻すと、リンドウさんが楽しそうに呟いた。

 神機を見れば、白銀だった刀身が、黄金に輝いていたのだった。

 

 ……なんだ、これ。

 

 

 

 

 





 流石に長いと思って最後の謎は次回に。
 バースト状態だけど、ゲームで演出されてた光ではないです。刀身自体が黄金に輝いています。
 刀身の名前がアレなので気づく人はいると思いますけどね。

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