八雲亭の奥へと引きずり込まれる柳仙。締まる首を必死で対処しつつ、屋内を見渡す。
―――あの時と変わらんのぉ・・・いやはやあのときにゃまだ、新築同然だったきに。
どうせ境界でも弄っているのだろうと納得する。
それより、回避すべきなのは、窒息死。今は陰=妖力を押さえているから、洒落にならない。
「おーい、ゆかりーん?」
「フフ・・・待ってて幻想郷・・・」
あ、だめだオワタ。
薄暗い部屋に連れ込まれ、ポイと投げられる。着地の際、ゴキと腰が砕けた音がしたのは、気のせいだ。
ま、まさか凌辱かいな・・・と意外と余裕のある様子。腰をさすっているうちに、紫が中央の明かりをつけた。
白い光に照らされる紫の姿。なるほど、600年前とはえらい変貌した。
背は伸び、顔もあどけなさが消えてまさに妖艶。一国の主を落とせるほどに美しい。まあ、胸も尻もムチムチに・・・
「殺すわよ?」
「・・・なんでお前さんは思考を読んでくるんじゃ」
美人の笑みが最凶の武器であることは、流石に分かる。これでも人の顔は伺える、いやむしろ得意かもしれない。
「ま、まあ嬉しいこともないのだけれど・・」
「ん?そうじゃろそうじゃろ、どうじゃいっちょ再会のあいさつを」
「え?なにアソコの境界無くしてほしい?」
「すまんかった」
表情が読み取れなければ、死、あるのみである。
はあ、と息を吐く紫。
「久しぶりに会ったと思えば、全然変わっていないじゃない・・・」
「まあ、な。それより、口調・・」
「ああ、あれは演技ですわ」
いや、そんなレベルじゃないじゃろ、と思わず漏らす。いや、流石にあれは怖かった。どこのとち狂った教祖かと思った。あの触れてはいけない邪心的な。時代が合わないとか言わない。
「藍には聞かれたくなかったもの。とくに、あの日のことは」
「なあ・・・それなんじゃが。いや、話すよ?渋ってるわけじゃないんじゃが・・」
ん?と首をかしげる紫。やはり話すには辛いのか、と心配していたが、そうではないという。
「・・・あの日あの日って・・・うるさくない?」
・・・なにを言ってるんだ、この遊び人は。
「まあミステリアスじゃけど。これじゃあ読者が離れるっちゅーか。くどけりゃ、そりゃ読むの止めるわな。この時点で、UA数も三桁いっとらんし」
「貴方は誰目線で話しているの?というより、そこまで言うなら早く話したほうが」
「―――それじゃ!」
「いま気付いたの!?遅くない!?」
「いやー、さすが妖怪の賢者、だったかの?」
「あなたの頭がおかしいだけよ!!」
はーっはーっ、と肩で息をするほどに脱力した。思えば、以前もずっとこんな調子だった。そうして、話をはぐらかされる。
今回ばかりは、絶対、聞き出すが。
「―――そう。博麗神社で、ねぇ」
「そうじゃ。やっぱ思い出の場所だしのぉ。あ、見つけるのは無理じゃよ?お前さんでも破れぬ結界じゃから。正直、あと百年はもってもおかしくなかった」
「まあ、それはいいわ。無事だったならそれでいいもの。それにしても・・・自爆したのに生きてるとは、ね」
「いや、自爆やない。巻き添えになっただけや」
「それは大丈夫、ただのアホというのよ」
「あのなぁ・・・おう、ずれたの。それで、レイミアは?」
「ええ、確認したけど、しっかり霊痕が刻まれていたわ。今も劣化していない」
「・・・ほうか。そりゃ、あれだけした甲斐があったものじゃ。―――そうじゃ、博麗の巫女にあったぞ」
「ああ、言っとくけど、祈璃には何も関係ないわよ?私が外界からスカウトしてきた子の娘だから」
「・・・まあ、そうかい」
「煮え切らない返事ね?まあ、確かに雰囲気は似ているけど・・・。事実、あの子の霊力は尋常じゃないわ。祈璃とはおお」
「あ?なにかいったかスキマ?」
「し、失礼したわ。でも、博麗大結界の管理もしっかりしているし」
「そう、それじゃ。ついに成功したんじゃのう、やったじゃないか、紫」
「べ、別に・・・まだ途中だし」
「おう、その意気じゃ。わしも昔みたいに協力するけぇ、安心するきに」
「フフ・・・昔、ねぇ。あれだけ私を避けてたのが、嘘みたいな発言をするのね?」
「流石に理想を実現したやつに反発などせぇへんよ。ま、ゆっくり視察させてもらうがの」
「どうぞ、ご自由に。幻想郷は、意固地な鬼をも受け入れますわ」
「・・・カッカ、堂に入ってるやないか。そうじゃ、轟斗は?薫はどこにおるけぇ?ここかいの?」
「そうねぇ、風雷神轟斗は今も全国放浪・・刃野薫についてはごめんなさい、行方が分からないの」
「そう、かい。ま、元気でやっとるじゃろ。さ、そろそろ茶をくれないかの?」
「はいはい、藍おちゃ・・・って。防音結界張っていたんだったわ。さ、居間へ案内するわ」
「へいへい、よろしゅう」
***
紫様とあのダメオは、何でもなかったような顔で戻ってきた。
いや・・・二人とも、妙に清々しいというか。さぞ昔話に花を咲かせたのだろう。忌々しいが。ああ、いますぐ弾幕で押しつぶしたい。
そう、四人分の緑茶とお茶うけを用意しながら、そう呪った。
狐の恨みとは、崇り神のそれより恐ろしいのだと、いつか思い知らせてやる。
「はいどうぞ紫様、えっと・・・だれでしたっけ?」
「おう、柳仙鬼人じゃよ。それはそうと、この猫ちゃんお前さんの式じゃろ?茶汲みくらいやらせたらええのに」
「馬鹿言え、橙にはまだ・・ってな、なにをやっているんだっ!?」
あ、あろうことか・・橙が。わたしのちぇんがぁ・・。
女ったらしの汚らしい膝の上に座ってる、だと・・・!?
「ちぇ、橙!!今すぐそこから離れろ、穢されるぞ!!」
「カッカ、なんという言い草じゃ。のう、橙?」
「藍さま、そんなお怒りにならなくても、」
「あー聞こえないっ!!私のチェンがこんなに穢されたわけがないっ!!」
「いいじゃない、そんな目くじら立てなくても。橙も満更じゃないみたいだし」
「紫様は黙っていてください!!というか自分も、みたいな目線をむけてはいけません!!」
驚いた表情の紫様はさておき。
これだから嫌なのだ、この男は。
いつだって、私の大事なものにとりいって、否、心の隙に入り込んで、奪っていく。
あの応仁のときのように・・・!
ギリ、と思わず歯ぎしりをする。殺したい。でも八雲紫の式に、そのような蛮行は許されない。
「はぁ、もういい。お茶だけはくれてやるから、とっとと帰れ」
「お、なんじゃお菓子ほしいんか?遠慮せずとも、やるきに」
「な、ち、違うっ!!というよりこれはうちのものだ!!」
・・・嘘ではない。あ、一人分増えるな、とか断じて思っていない!
ああもう、橙も紫様までニヤニヤと・・・地底への穴があったら、落っこちたい・・・。
「カッカ、まあおもろいものも見れたし、そろそろおいとまするきに」
「あら、もう行くの?よければ、ここに泊ってもいいのよ?」
「断じて反対ですっ!!」
「次はいつ来るんですか、柳仙さん!」
「カッカ、風がここに向けて吹いたら、足を運ぶきに」
「???」
「あー、橙?この男の言うことを真に受けてはだめだぞ?」
・・・まあ、紫様が喜ぶのなら、それでよいのだが。
だからといって、柳仙を認める気にはなりたくない藍だった。
***
「それじゃあ、行き先は人里の門の前・・・間違いない?」
「ああ、おっけいじゃ」
「またね、柳仙さん!!今度会ったら、四人でカルタしましょう!!」
「フフ、楽しみね」
「私は席をはずします」
藍も意固地なんだから・・・と呟き、紫はスッと人差し指を宙に走らせる。
間髪待たず、柳仙の目の前にスキマが現れる。
流石に境界の使い手の前で、古いスキマをこじ開ける気にはなれないのだろう。いや、普通そんなことは誰にも出来ないのだが。
「それじゃあ・・・またな」
手を後ろ手に振り、スキマへと姿を消した。
その姿を見届け、紫は思う。
―――大丈夫。ここにもう悲劇がおこることはない、いや絶対起こさせない・・・!。
―――だから・・・いつか、きっと・・・!!
(後書き)
紫「途中、会話文が多すぎたわね・・・」
柳「・・・ああ、それは思った」
ごめんなさい。
あと最後の思わせぶりですけど、さて柳仙の身になにが・・・!
嘘です。ジャンヌはまだ何も決めてません。