東方遊々記 ~のらりくらりと幻想探訪~   作:ジャンヌ

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 さて、今回は茨華仙さんが出てきます。で、実は私ジャンヌ、東方茨歌仙を二巻までしか読んでません。今後続刊をよんで矛盾していれば修正しますが、今回はネットからの信用できそうな所からの情報を基にしてキャラ構成しました。もし、『こんなの、華扇じゃねぇぇ!!』と思う方がいたら、消してさきに柳仙を地底に行かせます。OK?


第五話 懐かしゅう・・・のぉ?華扇

 片腕有角の仙人、茨華仙は、迷っていた。

 いつも通り、行きつけの団子屋に寄り、説教の一つでもわたさねば(どこか店主が諦めたような雰囲気なのだ)、と考えていただけだった。そして団子が食べたかっただけだった。

 外見は、いつもと同じ、錆びれた雰囲気。店主が一人でいるのも、いつも通り。閑散としているのもいつも通り。

「いやねぇお客さん、そんなに美人に見えます?」

「ああ、みえるみえる、わしから見たら全然ピチピチの女子じゃよ」

「もう、世辞がうまいねぇ」

「おいバーさん、よかったじゃねぇかめったにないことだぞ」

「ジーさんは黙っててもらえます」

ーーーめっちゃ、ニコヤカなんですけど。

 ダウナーとは誰が言ったのか。満面の笑みを浮かべて、体をちょっと気持ち悪いくらいまでにくねらせ、お爺さんまでもしゃべっている。

 いや、問題はそんなもんじゃない。

 そんなおチャラけた発言ばかり繰り返す奴が気になり、顔をのぞき見たときのことだ。

ーーーえ?

 少し薄汚れた帽子。黒い着流し。白い首巻。キセルを片手に、お婆さんと談笑する、二十半ばの外見の青年。

 いや、青年とは到底言えない。

 華扇は、その男の顔を、片時も忘れたことはなかった。自分の人生で、最も影響を与えた男。憧れ、同時に反面教師にもなった男。

 あり得ない。もう、会えないって思ってた。

ーーー柳仙さま?

 信じられず、胸の気がぐちゃぐちゃと暴れまわっている。吐き気にも似たその感情を抑えようと、口に手をあてる。

ーーー・・・萃香さんが、死んだって・・・でも、あれは・・・!

 もう、目の前の人物が亡霊なのかと思ってしまう。いや、鬼が亡霊になるかは疑問だが。

ーーーん?・・・あっ、そうか。偽物か。

 よくよく考えれば分かることだった。そう、もし生きていたなら真っ先に自分に連絡に来てくれるはずだし、私をこんなに悲しませることもなかっただろう。

 だんだんと怒りが台頭してくる。柳仙鬼人の姿を真似て人間を誑かそうとは、とんだ罰当たりな妖怪もいたものだ。

ーーー私に見つかったのが、運の尽きよ。フフ、ただでは殺さないわ、ねぇ?私の大事な人を愚弄するような真似をしたおバカさんには。そうね、四肢は引きちぎるのは当然として、魔女にも来てもらおうかしら。治癒魔法をお願いしないと。死神にたのんで地獄にでも、いやそれはないわ。地獄にもどこにも逃がさない、ずっと延々と苦しみを・・・。

 

 ・・・おおよそ、仙人とは思えない、残虐な思考へとつかろうとしていた。

ーーーなによりまず、確かめないとね。

 これから殺す者の名を。

 つかつかと二人に近づく。どうやら私の存在に気づいていなかったらしく、驚いた表情を浮かべる。

「あら、こりゃどうも」

「ほー、こりゃまた。また見ない美人じゃのぉ。どんだけここは美人揃いなんじゃ?」

 ふざけた言動は止まることを知らないらしく、お婆さんに睨まれている。

 声まで似せて。有象無象のゴミに褒められたって、何にも心に来ない。

 それでも、さも嬉しいかのように作り笑いを浮かべ、丁寧に挨拶をする。

「はじめまして、私は茨華仙。仙人です。貴方は?」

 仙人、ときいてもまったく狼狽しないあたり、相当肝の据わった奴らしい。ますますもって、腹の立つ。今すぐ退治してやろうか。

「・・・?そうか、まあいい。丁寧にありがとな、わしの名は柳仙鬼人。しがなきお・・ゲフン、何でもない」

「・・・へ、え」

 プツン、と、私の中で何かが切れた。

「外来人ですか?」

「まぁー、そうなっとるらしい、の」

「それはよかった、じゃあ死んでください♪」

「カッカ、そりゃありがた・・へ?」

 言うが早いが、私は顔面めがけて拳を振りぬいた。

 

***

 

 

団子屋どころか、三軒越しまで柳仙の体はぶっ飛んだ。埃と土が、もうもうとたちこめる。

−−−いやいや、なんちゅう粗暴な仙人じゃ。

もしや自分が妖怪とばれていたか?いや、根本から弄っているのだから、出会ってすぐには、あ、アリスにはばれてたか。

とにかく、荒ぶる仙人を押さえなければならない。ほら、殺意をばらまきながらこっちへ歩み寄っている。

ぐっと体を起こし、立ち上がる。

「のう、わしゃあなにかしたかの?」

「…あなたは大変なものを盗んでいきました…、そう、私の良心です」

「話きけやっ!?なんじゃ、紫と同じか!?演技か!?」

「へえ、スキマ妖怪さんともお知り合いなんですね−、ますます、あの方にかぶせてっ!!」

…もはや話し合いはできそうにもない。いや、どちらもする気はなかったが。

−−−にしても、口調といい、顔といい、名前といい、髪の色といい、鎖といい、義手といい…あやつに似てるの。

そこまで合致してれば本人と気づいても良さそうだが、生憎、柳仙の知っている華扇はもっと大人しく、茶色の着物を着ていた。

すくなくとも、初対面の人を殴るやつではない。

それより、いまはこの場を治めなくてはならないわけで。

「ちょいちょい、ここじゃちと都合が悪い。どんな理由でわしを襲うのかは知らんが、無関係の人間を巻き込みたくはあるまい?」

「…」

沈黙は是なり。そう受け取った柳仙は、ニヤリと笑って、指をパチンと鳴らす。

「紫、おる?」

「はぁい、何かしら?」

華仙の足元に転送魔法陣…ということはなく。間の抜けた呼び掛けに応えた紫。

「ふぅん、そういうことね」

「え?ちょ、なんであなたのような人がこんなや」

「ほな、たのむわ」

「二名さまご案内〜♪」

華仙の抗議もむなしく、スキマにボッシュートされる二人。

それを見届け、ゴシップ好きなどこぞの鴉天狗のような、ゲスな笑みを浮かべる。

「さてさて、積もるお話もあるでしょう、二人とも。どうぞ、ごゆっくり」

「な、なんじゃこりゃ!?」

「ああ、修理ならこちらで全額ご負担いたしますわ、ご婦人」

「本当かい?それじゃ三階建てに」

「それは自己負担でお願いしますわ」

 

***

 

 

 スキマから吐き出された二人の落下地点は、日に照らされた、思わず寝転がりたくなるほど、開けた草原であった。

「てて・・・もう少し丁寧にしてくれんかのぉ、今は人の身じゃき・・・」

 そうぼやき、腰をさすりながら立ち上がる。

 しかし、場所のセレクトは非常に良好といえる。こんな私闘さえなければ、キセル片手に一服しゃれこみたい。

 もちろん、そんな余裕など、相手が与えてくれるはずもない。

「さて・・・懺悔の時間はすみましたか?」

「カッ、そりゃお前さんのほうじゃき」

 そして、どちらからということもなく、ほぼ同時に地を蹴った。

 お互いの距離などなかったかのように、一気に詰め、右拳を振りぬく。

 あり得ないほどの爆音が、草原に響き渡った。

「くっ・・」

「ほう」

 予想以上の強さだったようで、華仙は苦い顔に、柳仙は目を見開く。

 バッとお互いに後方に飛び、向き合う。

「・・・なかなかやりますね?」

「ああ、同意見じゃ。しっかしのぉ、仙人とはいえ人間じゃ有り得んパワーじゃのぉ。お前さん、もしや」

「っ!!」

 構える余裕もなく、華仙は柳仙へ飛びかかる。

 反射で防御せんと前に組んだ腕を無視するかのごとく、華仙は空を蹴り、首へ回し蹴りを落とした。

「がっ・・」

 グワン、と脳が揺れる。どうすることもできず、前へと倒れる柳仙。

 ドサリ、と背後で聞いた華仙、ふぅと息をつく。ただの敵討ちをするところが、危うく感づかれるところであった。

 もしも”鬼が仙人をしている”なんて噂が流れれば、当然天狗が記事に起こし、仲間ーーー萃香や勇儀の目にも止まる可能性が高い。そしたら、自分がひた隠しにしている目的を諦めざるを得なくなる。

 ただでさえ、会うのが気まずいというのに。

ーーー私もホント、感情的になっちゃったわ。

 どうも自分の欠点なのだろう。あの時は自分が口火をきって口論まで発展してしまったし、今だってそうだ。偽物なんて無視すればよかったのに、つい衝動のままに殺してしまった。

 はぁ、とため息をつき、帰ろうと妖怪の山へむかう。もはや先ほどの黒々とした感情はなりを潜め、虚しさしか残っていなかった。

 これでは、柳仙様に顔向けができないな。

 

「やー立派じゃ立派!!よくもここまで、じゃのぉ!!」

 

 ・・・有り得ない。確かに手ごたえはあった。妖怪とはいえ、よくて一日はめを覚まさないくらいの衝撃は与えた。ありえない、もうその偽りの声は消えたとばかり・・・。

 唇をかみしめ、拳を握りしめる。またもや湧いてきた殺意のまま、振り返ろうとして、

 ゾク、と背中に悪寒が走る。

 今まで男から感じていた妖力などと比較できないほど、膨大な、禍々しい。そして、同時に・・・威厳があった。よく知っていて、自分がいつも後を追っていた、その背中と同じ。

 ためらうように、ぎこちなく男の顔をみる。先ほどとほぼ変わっていなかったが、角。鬼の誇りである角が、今は男の額に鎮座していた。

 間違いない。こんな真似、人間と妖怪との境界などものともしないような者は、八雲紫とーーー柳仙鬼人だけだ。

 言いたい言葉がある。しかし、締め付けられたような、かすれた声しか出ない。

「うぁ・・・ほんとに・・柳仙さま?」

 ようやくでてきたのは、そんな陳腐な問いかけだった。

 ニコリ、と相対する男は笑う。

「ああ・・・まー紆余曲折あったがのぉ、正真正銘、わしじゃよ」

 カッカ、と笑う。出来の悪い生徒を慰める、教師のように。

 もはや、疑いようもなかった。

 目から、一粒、一粒、涙が流れる。思わず飛びつきたい衝動に駆られるが、ぐっとこらえる。そんなことをしては、本当に成長がない、と笑われてしまう。

 だから、華仙は左の掌に拳を合わせ、その場にひざまずく。

 喉から声を振り絞り、毅然と。

「・・・りゅ、柳仙さま・・・ひぐっ、お会い、したかったです・・ご、ごめんなさい・・ 」

 鼻水をすすりながら、何とか言葉を紡ぐ。

 柳仙は、いつものふざけた笑いではなく、慈しむように華仙を見、目線までしゃがむ。

 ポンッ、と頭に手を置き、なでる。温もりが、伝わる。

「悪かったのぉ、ちと待たせたが・・・大きくなったのぉ。ほんに。わしは、お前さんが一人前になって、ほんとに嬉しいよ」

 殴られるのは勘弁じゃがな、と付け加え、グシャグシャと華仙の頭をなで回す。

 もう、限界だった。

「あ、あり、が・・・うっ、うわぁぁ!!」

 今朝の萃香よろしく、飛びついた。体制がとれず、地面に倒れる柳仙。

 少し苦笑いしながらも、奇跡ともよべるこの再開に、神様にでもお礼を言いたい気分の柳仙だった。

 

 

「う~ん、今日はいいネタがないですね~、まったく、少しは色恋沙汰でもありませんかねぇ~」

 清く正しい者としてかなりOUTな台詞をいいつつ、地上を見渡す鴉天狗こと、射命丸文。スクープらしきものもなく、用はぶっちゃけ暇ということである。

 ペンをくるくるとまわしつつ、砂粒一つ見逃すまいと目を凝らす。こんなときに犬走椛の能力が欲しいな、と切に思う。

 それぐらい必死だったものだから、もちろん草原なんて、見逃すはずもない。

「・・・お?おお?・・・あややっ!!よしきた!!スックーーープ!!」

 華仙をを抱いている柳仙の絵図など、部外者から見れば、ロミオとジュリエット的なものにしかみえないわけで。

 それは、このダ天狗の好物なわけで。

 「とつげきぃぃぃ!!」とかのたまいながら、地上へ急降下したのであった。

 

 

「うぐっ、えぐっ」

「おうおう、いっぱい泣け。減りはするけどのぉ」

「蹴って、すみま・・うう」

「いいきに、わしも最初は気付かなかったんじゃ、お互いさまじゃき。そうそう、その格好はなんじゃ?」

「その・・実は」

 華仙の言葉は、ドォォォン!!との爆音にかき消された。

 茫然と見つめる二人、そして砂埃からカツカツと誰かが歩み寄ってくる。

「ども、毎度おなじみ、清く正しい射命丸ですっ!さっそくお二人さん、取材してよろしいですよねっ!」

 ややハイテンションの鴉天狗と認識した、二人の行動は早かった。

「いきなりでてきて・・・」

「「なにをいっとるんだこのバカラスッ!!」」

「あやばっ!?」

 スパコーンと飛び蹴りがさく裂。どうでもいいが、二人のコンビネーションは抜群のレベルであった。

「いたた、なにを」

「どーもこーもないわよっ!!せっかくいい雰囲気だったのになに邪魔してくれてんですか!?」

「あやや、それではやっぱりお二人は恋人なんですねっ!」

「な、なっ!?」 

 鬼の攻撃を食らったとは思えないスピードで復活した文の言葉に、顔を赤らめる華仙。その、いや、とかブツブツ言っているが。

「よー、文」

 初対面にしては馴れ馴れしいな、と思いつつ、文は元気に答える。

「はいっ、なんでしょう?」

 トントン、と額を叩く柳仙。なにを、といぶかしむも額を見やり、

 絶句した。

「・・・う、うぇ!?おおおお、鬼ぃ!?」

「そーじゃ。たく、お前さんは変わっていてほしかったのぉ、文」

 そういえば、と改めて全身を見る。

 キセル、帽子、角。こんな特徴的な鬼は、文の知る限りで一人しかいない。

「りゅ、柳仙鬼人さんですかぁ!?」

「はい、正解じゃ」

 カッカ、と笑うも、目が笑っていない。さぁ、と顔が真っ青になる。

 古来、妖怪の山を治めたのは天狗ではなく、鬼である。そのなかでも強者をまとめて四天王とよび、さらに指導者として絶対的な強さを持つ総大将がいた。

 つまりは、文は子会社、柳仙は親会社の会長的存在なのである。

「あーあのー、ぜ、絶対記事にはしませんから、ね?どうかご慈悲を・・・」

「おう、いいぞ。そう言ってくれんかったら、首、吹っ飛ばしてるが、の」

 ふぅ、と安堵する文に、手をさしのばす、柳仙。

「え、あの?まだ何か?」

「それ、なんかの記録媒体じゃろ?消せ」

 ギクゥ!!と聞こえてきそうなほど、のけぞる文。

 昔からこうなのだ、裏をかいて瓦版の特集記事を組もうにも、すべて回り道されて、すごすご帰るはめになる。

 さすがに、諦めざるを得ない。隠し事は無理そうだ。

 結局、使い方のわからない柳仙にかわり、復活した華仙が写真を消したという。

 

 




華仙と柳仙の文字がにている・・・偶然です。はい。
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