IS〈インフィニットストラトス〉ゲーム版をゆっくり通常プレイ 作:鰹みりん
side織斑一夏
『事実は小説よりも奇なり』 なる言葉がある。意味は読んで字のごとくだ。俺はこの言葉を考えた先人には失礼だが、この言葉を信じていなかった。…そう、過去形だ。でも小説より突拍子もない事が現実で起こりうるんだ。それを身に染みて体感したのは高校受験の時だった…
俺はその日、女性以外に起動不可能と言われていた超兵器「IS」を起動させてしまった。断じて俺の性別が女の子だった なんてわけではない。そこら辺にいるような普通の中学三年生だったにも関わらずだ。
確かに、俺の姉はISの世界大会で一位を取るような猛者ではあったが…
それからは大変だった。うっかりISを起動した俺はすぐさまIS学園教師に確保され、急いでやってきたと思しきテレビをほとんど見ない俺でも名前がわかる様な政府高官と話をして、家に帰ってしばらく外出はもちろん友人や千冬姉にすら連絡させてもらえなくなったりした。
テレビを見て、ISを起動した男性として世界中で俺は有名人になっていたこと、世界規模での検査の結果、男性で俺以外にISを起動させた人はいないという事が分かった。
そして3月初旬、前にあった政府高官に急遽呼び出されて、4月からIS学園に入学する事になったと聞かされた。なんでも世界中からISについて学ぶ為、女の子が集まる学校らしかった。
当然俺は(控えめに)反対したのだが
「学園に行かなければ君の身の危険がある」
「後ろ暗い組織の連中だけじゃない。全世界の科学者からも研究用モルモットとして狙われることになる」
などと言われ、「世界で唯一の男性操縦者」の立場の重要性と危険性を説明されてしまえば、彼の提案に納得するしかなくて。
俺が了承の意を示すと分厚い本を何冊も渡された。どうやら学園で使う教科書らしい。最低限、必読と書いてあるものだけ読んでおけば問題ないらしいのでそれは救いだろうか。でもこの本、辞書かよっていうレベルの厚さなんだよなぁ…
その後、細々とした話をまとめ、帰ろうとしたのだが、去り際に不安を彼にぶつけてみる。彼にはどうにも出来ないことはわかってはいるのだが、泣き言や不安の一つも言わないとやってられないから。
「ああ。その点は心配ないと思うよ」
「あそこには君の味方がいるからね」
どういうことだ?俺に好意的な教師がいるのか?
俺は不本意ではあるが天下に名だたる女子校であるIS学園に男でありながらも進学する事になったのだ
……あれ?必読の本ってどこ置いたっけ?
かくして、黒服の厳ついお兄さん達に護衛?されながら俺はIS学園に足を踏み入れた。その時、生徒たちの視線が自分に集まった気がしたけど、俺だって同い年くらいの子が護衛を引き連れながら登校してきたらガン見するだろうから他人のことは言えないか…
その後、入学試験の時にお世話になった教師と少し話したあと、黒服達や山田摩耶と名乗った教師と別れ、自分のクラスである1組に行くことになったのだった
(で、今に至ると…)
現実逃避気味にあの日から今までに至るまでの事を回想していたが思ったよりすぐ終わってしまった。記憶する間もないほど慌ただしかったとも言えるが。
(ヤバい…想像以上にキツい…)
自分以外に男がいないっていうのが辛い。男が居たからと言ってソイツと仲良くなるかは分からないが、少なくとも1人だけということによる、ある種の圧迫感を味わうことは無かっただろう。
というか幼なじみの箒(恐らく確定)にすら無視されてるのも辛い。お前1回俺の方みたよな?そして『アッ』っていう顔したよな?
俺がなにかしてしまったのだろうか?彼女が引っ越しして以降剣道を辞めてしまったからそれだろうか?
「ちょっといい?」
「…!あ、ああなんだ」
気づけば俺の席の前に女の子がいて、その子が俺に話しかけてきた。完全に意識の外だったからビックリしてしまった。
彼女の外見は…日本人だろうか黒目黒髪だし。そしてその黒い髪はある程度伸ばされていた。セミロングというやつだ。目付きからは比較的穏やかな印象を受けるが、俺になにか用だろうか。
「いや〜特に用って訳でもないんだけどさ」
そう言って頭をかきながら
「なんか、不安そうだったから」
「ッ!」
自分は感情を隠すのが下手だという自覚は元からあったが流石に面と向かって不安だっただろうとか言われるのは恥ずかしすぎる!
「あんまり緊張しすぎるのも良くないと思うよ?適当にいこう。適当に」
見てる側までつられて笑ってしまいそうになる様な柔らかい笑みを浮かべながらそういう彼女を見て、俺は気が軽くなるのを感じた。
「あっ、そうだ。挨拶しておかないとね。
ボクは堀田 夜未っていうんだ。一応日本の代表候補生やってるからさ、なにか分からない事があったら聞いてよ」
「あ、ああ…こちらこそよろしく(ボク…?)」
丁寧に挨拶されたものの、上の空で返事をしてしまう。だって現実にボクっ娘がいるだなんて思わなかったから。ラノベとかの中にしか存在しないのかと思ってた…
自分の動揺を悟られたくなかった俺は別の話を振ることにした
「ところで、代表候補生ってなんだ?委員長みたいな役職のことか?」
うん。咄嗟にしてはちゃんと気になってた事を聞けたな。
「あれ?知らないの?教科書に書いてたはずなんだけどな…」
あー…教科書読んでなかったな…
それから彼女は俺に代表候補生のことに関して教えてくれたが、正直な話なかなか頭に入ってこない。なにせ彼女の一人称が気になってそれどころではなかったのだ。
「んー…じゃあネットとかを調べてみるのもいいかもね。そっちの方が分かりやすかもよ?」
そう言って早足ぎみで去っていった。理解が遅すぎて怒らせてしまったのだろう。このままでは不味いと思い、俺は教科書をめくり、少し勉強する事にした。
1話で終わらず視点が2話連続になるとかこれマジ?
書きだめが無くなったので失踪するかもしれません。