あの日、何があったか
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『
「……あぁ、やっぱりね」
「どういうことだよガキィ!てめぇを誘拐すりゃあ織斑千冬がすっ飛んでくるんじゃあねぇのかぁ!?答えろ
俺は、流れるラジオを聞きながらどうせ国が千冬姉に伝えなかったんだろうなと考える。俺のことを疎んでいる奴なんかいくらでもいるからな……曰く、剣道しか能がない面汚し、姉のヒモ、弟の足かせ、エトセトラエトセトラ……そんな風に言われてる俺をよく千冬姉と
でも、あの二人がどれだけ俺を愛してくれていても、周りはそれを許してくれない。多分、女性権利団体か日本政府が千冬姉の栄光を守るためにやったんだろう。どうでもいいが。この誘拐犯達には同情する。せめて、春万を誘拐したなら周りも動いただろうに。
「いやぁ、俺、周りから嫌われてるんで。むしろあの二人が周りからしたらおかしいんじゃないですかね?こう言っちゃあれですけど」
「くそっ!ふざけんじゃねぇぞボケぇ!わざわざリスク犯して、結果がこれぇ!?舐めやがってぇ!くそがっ!くそがっ!くそがぁ!」
「ぐふっ……がほっ……」
怒った男が俺の腹を蹴りあげる。すごく痛い……でも、すぐに仲間らしき人に咎められた。
「やめんかアホ。死ぬだろ。おい、一夏っつったか?お前、これからどうなる知りたいか?」
「……どうなるんだ」
「お前は、今から撃ち殺される」
「……そうか」
「おう、あばよ」
そう言って、男が俺に拳銃を向ける。あぁ、死ぬんだな。そう考え、目を瞑る。この生きてきた15年、存外悪いものではなかった。友人にも恵まれ、家族に恵まれ……たかは知らないが、少なくとも姉弟には恵まれた。悔いがあるとするなら、最期に千冬姉と春万に会いたかった……
パン、パンと乾いた銃声が響く。血が俺の体から抜け出ていくのがはっきり分かる。覚悟は決めたはずなのに、今更恐怖が沸き上がってくる。心のどこかで、ヒーローが現れて、助けてくれないかと思っている。そんな都合のいい存在がいるわけがないのに。助からないなら、せめてこれぐらいは祈っておこう。あの二人が俺の死を乗り越えてくれますように。
「……さよ、な……ら……」
そのまま、俺は意識を手放した……
銃って、いいよね。