インフィニット・ストラトス~失われた記憶~   作:嘘つき魔神

1 / 7
 書きたい……書きたい……


旧き織斑一夏の死
あの日、何があったか


-------------------------------------------

 

織斑千冬(おりむらちふゆ)選手!モンドグロッソ2連覇ぁ!初代世界最強(ブリュンヒルデ)の名は伊達じゃない!』

「……あぁ、やっぱりね」

「どういうことだよガキィ!てめぇを誘拐すりゃあ織斑千冬がすっ飛んでくるんじゃあねぇのかぁ!?答えろ織斑一夏(おりむらいちか)ぁ!」

 

 俺は、流れるラジオを聞きながらどうせ国が千冬姉に伝えなかったんだろうなと考える。俺のことを疎んでいる奴なんかいくらでもいるからな……曰く、剣道しか能がない面汚し、姉のヒモ、弟の足かせ、エトセトラエトセトラ……そんな風に言われてる俺をよく千冬姉と春万(はるま)は愛してくれたと思うよ。

 

 でも、あの二人がどれだけ俺を愛してくれていても、周りはそれを許してくれない。多分、女性権利団体か日本政府が千冬姉の栄光を守るためにやったんだろう。どうでもいいが。この誘拐犯達には同情する。せめて、春万を誘拐したなら周りも動いただろうに。

 

「いやぁ、俺、周りから嫌われてるんで。むしろあの二人が周りからしたらおかしいんじゃないですかね?こう言っちゃあれですけど」

「くそっ!ふざけんじゃねぇぞボケぇ!わざわざリスク犯して、結果がこれぇ!?舐めやがってぇ!くそがっ!くそがっ!くそがぁ!」

「ぐふっ……がほっ……」

 

 怒った男が俺の腹を蹴りあげる。すごく痛い……でも、すぐに仲間らしき人に咎められた。

 

「やめんかアホ。死ぬだろ。おい、一夏っつったか?お前、これからどうなる知りたいか?」

「……どうなるんだ」

「お前は、今から撃ち殺される」

「……そうか」

「おう、あばよ」

 

 そう言って、男が俺に拳銃を向ける。あぁ、死ぬんだな。そう考え、目を瞑る。この生きてきた15年、存外悪いものではなかった。友人にも恵まれ、家族に恵まれ……たかは知らないが、少なくとも姉弟には恵まれた。悔いがあるとするなら、最期に千冬姉と春万に会いたかった……

 

 パン、パンと乾いた銃声が響く。血が俺の体から抜け出ていくのがはっきり分かる。覚悟は決めたはずなのに、今更恐怖が沸き上がってくる。心のどこかで、ヒーローが現れて、助けてくれないかと思っている。そんな都合のいい存在がいるわけがないのに。助からないなら、せめてこれぐらいは祈っておこう。あの二人が俺の死を乗り越えてくれますように。

 

「……さよ、な……ら……」

 

 そのまま、俺は意識を手放した……




 銃って、いいよね。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。