記憶喪失って、出血しすぎでもなるんですかね?いや、まぁ、死、というのはかなりのストレスでしょうし、それを回避するためになった?
失われた記憶
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……目が覚めると、知らない天井だった。いや、というか、何故俺は液体に浸されている?確か、俺は……
『あぁ!いっくん!起きた!?待ってて、すぐ開けるから!大丈夫、傷は治ってる!』
考えを打ち切るように誰かが叫ぶ。いや、悪気はないのは分かるが……考えている内に、俺の周りにあった液体はなくなり、俺が寝かされている何かの蓋が開く。そして、叫び声がどんどん近づいてきて……
「いっくぅぅぅぅぅん!」
「は、いや、誰……ぶげぼぉ!?」
俺に飛び付いてきた。痛い。傷がどうとか言ってたから、多分こっちは怪我人だというに。とにかく、退いてもらわないと。
「……すみません、退いてもらえませんか?起き上がるのもできやしない」
「え、あぁ、ごめんね?」
そう言いながら、女性が俺の上から退く。あぁ、痛い。重いとかじゃないが、質量のある物体がそれなりの勢いを持って落ちてきたらそりゃ痛い。
「ねぇいっくん?ここがどこか分かる?」
「……いっくん?」
いっくんとは、俺のことか?つまり、この女性は俺の知り合い?だが、おかしい……というか、そもそも、俺の名前は……?
「……俺の、俺の、名前は……あ……え?」
「いっくん?」
何でだ?自分の名前が出てこない。俺はいったい誰で、何なんだ?もしかしたら……この女性は知っているか?
「……あの、あなたは?」
気づけば声に出していた。そもそも、相手の名前も分からないのを失念していた。
「……え?いっくん、
「いや、だから……
「……ま、まさか……」
そう呟くと女性は俯いて、何かを考え出した。その間の時間が、とても長く感じた。
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「記憶喪失、ですか……?」
あの後、女性こと束さんに検査してもらったのだが……俺は、記憶喪失だと。で、束さんが俺を助けてくれたらしいのだが、そのときの状況がこうだったとか。
まず、俺は死にかけで、海に捨てられそうになっていたのを束さんが見つけ、そのまま俺を捨てようとしていた奴を半殺し、そのまま俺を回収してきて治療してくれたとか……だが、誘拐され、殺されかけたストレスが記憶喪失を引き起こしたのでは?というのが束さんの見解らしい。だが、今はそれよりも、俺の名前が知りたい。俺は、誰なんだ?
「で、束さん。俺はいったい、誰なんですか?それだけがすごく気になっているんです。教えてください」
「……あー、どうしよ?教えるべきか……うーん、うん。君の名前は……」
少し迷った様子で、俺の名らしきものを紡ぐ。その名は……
「……
実は、春万と千冬を喧嘩させようかと思ってたり。カタカナなのは、2章のタイトルを見れば分かるかと。