-------------------------------------------
『やだよぉ!一兄を一人でおいていっちゃうの!?』
あの日の、春万の怒りと悲しみの混じったような顔と声は忘れられない。あの時、私が一夏がいなくなったことに気づいていれば……そう思わずにはいられない。
「-官……教-……教官!」
-------------------------------------------
「うぉっ!?」
「ひゃっ……教官、どうしたんですかいきなり黙り込んで……」
「いや……何でもない」
いけない。最近、考え事をするとすっかり周りが見えなくなる。これでは、ドイツ軍に申し訳がたたないな。
「で……どうした?ラウラ」
「いえ、なにか考え事をしていたようなので……」
あぁ、どうやら心配をかけていたらしい。いい加減、切り替えないといけないのは分かる、が……
「……織斑、一夏のことでしょうか?」
「……あぁ」
どうしても、あのモンドグロッソの日は忘れられない。あの日、私が一夏がいなくなったことに気づければ……春万も、あそこまで塞ぎ込まなかっただろう……神童とまでいわれたあいつを腐らせたのは私だ。私が、一夏を助けていれば……
「……どんな、男だったんですか?」
「……気になるか?」
そう聞くと、ラウラは頷く。
「そうか……いいぞ、話してやる」
さて、どこから話したものか……そうだな、全て話すか。
「一夏は、滅多に泣かない奴だったよ。私達は親に捨てられ、三人で生きていかなきゃいけなくなった。それでも、あいつは泣かなかった。春万はわんわん泣いてたが……いや、だから泣かなかったんだろうな」
あいつが泣いたことは、一時期春万が家出紛いのことをして、そのまま2日ほど帰ってこなかったときくらいか。
「それから、あいつは……そうだな、あまり怒りもしなかった。あいつは、剣道をしてたんだ……すごかったぞ?小学生の時の大会で優勝したんだから……だが……」
「……教官?」
あぁ、思い出すだけで腹が立つ。
「……ISが現れ、私がブリュンヒルデになってから、あいつへの周りの評価は変わったよ……曰く織斑の面汚し、曰く私のヒモ、曰く春万の足枷……あいつが、どれだけ私たちを支えてくれていたかも知らないくせに、あいつらは一夏を……!」
「……日本政府が情報を伝えなかった、と聞きますが……」
「……事実だ。私も、
あれ以来、近所の私へ向けられる目は3つに分かれた。興味なし、同情、失望……インタビュアーが家に来て、何度もインタビューを求めてきたこともあった。「代表を降りて、後悔はないか」と。私はそれに笑顔で答えるだろう。「ほんの一欠片の後悔もない」とな……
千冬さん本人の心境でなく、一夏の過去みたいになりましたね……