1話 キセキの始まり
私には幼い頃から支えてくれる幼馴染みがいます。最も古い記憶だと幼稚園でのお遊戯会の時だったかな?緊張して泣いちゃった私に
「一緒だから絶対大丈夫!2人で思いっきり楽しんじゃお!」
って声をかけてくれたよね。あなたははっきりと覚えてないみたいだけど私にとってはすごく大切な思い出なの。
そんな風にいつも私を支えてくれたあの子にも大きな目標が出来たみたい。だから今度は私があなたを支えられるように頑張りたい、力になりたいとそう決めたから…
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ある日の朝、珍しく起きるのに遅れてしまった私は急いで身支度を整えていた。
「い、急がないと…普段なら私が起こしてる側なのにどうして…」
スマホにはまだ余裕あるから急がなくていいよ!とメッセージが来てたし家も隣だけどそういう訳にはいかない。準備を終わらせた私はすぐに部屋を飛び出した。すると家の前で楽器のケースを背負った彼がスマホ片手に暇つぶしをしていた。
「ケイくん!」
そう声をかけると彼は私の方を向いてにこやかな笑顔を浮かべた。
「おはよう、歩夢ちゃん!」
「ごめんね!待ったよね?」
「ううん、そんなに待ってないから大丈夫だよ。じゃあ行こっか!」
彼は
「ほんとにごめんね!いつもならこんなことないのに…」
「普段は俺が起こしてもらってるんだから文句は言えないよ。たまにはそういう日もあるんだから気にしないで!」
いつも通りの他愛もない話をしているとすぐに学校に着いてしまう。虹ヶ咲学園には色々な学科があって学科ごとに学ぶ施設も異なる。だから別の学科に属している彼とはここで暫しのお別れです。
「じゃあ俺はこっちだから。それじゃまた放課後に!」
「うん、ケイくんも頑張ってね!」
そう言い残して彼は行ってしまった。その後ろ姿を見送りながら私も教室へと向かっていった。
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今日の授業も一通り終わって放課後になった。この時間になるとケイくんが教室まで迎えに来てくれて一緒に下校している。
「今日も来てくれてありがとう!それじゃ帰ろっか!」
「もちろん!けど生徒会室に持ってかなくちゃいけない物があるからちょっとだけ待っててもらえないかな?それか着いてくる?」
「そうなの?じゃあ着いてっちゃおうかな?」
その用事はすぐに終わるということもあったので着いていくことにしました。普段みたいに雑談をしながら生徒会室の前に来ると何やら言い争ってる声が聞こえてきました。私達は悪いことだと思いながらも部屋の声を盗み聞き。
「…だから…みんなすぐに戻ってきます!」
「戻ってきたとしてもまた同じ結果になっては意味がありません!」
「…ッ!わかりました!あなたの言う通り部員を10人集めてくればいいんですよね?今すぐにでも集めてきますから!」
その声と同時に生徒会室から一人の女の子が出てきてそのまま走り去ってしまった。その目には涙が浮かんでいたようにも見えた。
「何があったかわかんないけど深刻そうだね…おっと早く用事を済ませないと…」
「そうだね…」
あの子…部室棟の方に行ったけど大丈夫かな…
「失礼します。生徒会長、今度のライブで使うホールの使用許可をいただきに参りました。こちらが申請書です」
「…はい、問題ないです」
「ありがとうございました。それでは」
ケイくんは無駄のない動きで用事を済ませて私の元へ戻ってきてくれた。そして私の大好きな笑顔を浮かべて言う。
「ホールの使用許可取れたよ!ライブ、楽しみにしてて!」
ケイくんは学校の部活動には入ってないけど外部でバンドを組んで活動しています。担当はギターでたまにボーカルをすることもあるの!ケイくん達の演奏はとってもカッコいいんだから…
「よかったね!ライブ楽しみだなぁ…」
「そう言ってくれると嬉しいよ!それじゃ帰ろっか!」
私とケイくんはいつも通り下校していると廊下の隅で涙を流し、膝を抱えたまま座り込んでる子がいた。あの子ってさっきの…
「あの子大丈夫かな…ちょっと行ってくる!」
「歩夢ちゃん?待って!」
「どうしたの?どこか痛いの?」
そう声をかけるとその子はゆっくりと顔を上げた。その顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。
「ううぅ…せんぱーい…!」
「ああっ、泣かないで!よしよし大丈夫だからね…」
しばらく背中を撫でてあげてると段々と涙が引いてきたみたい。これなら話が出来そう。
「えっと…さっき生徒会室にいた子だよね?なにかあったの?」
「それは…部室の方でお話しします。着いてきてください」
そう言って部室棟の階段を登っていく女の子。私とケイくんはその子の案内で女の子が使用しているという部室に向かった。
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「ここです。お入りください」
「失礼します…」
女の子に連れてこられた部室はかなりの広さがあって大人数でものびのび使えそうな部屋。だけどなんか寂しげ…
「まずは自己紹介からさせてもらいます。私は1年生の中須かすみっていいます!」
「私は2年生の上原歩夢。こっちは幼馴染みの藤波圭介くん。私と同じ2年生だよ」
「よろしくね」
「2人ともよろしくです!それじゃ早速…」
かすみちゃんはさっきまで生徒会室で何をしていたか、そこに至るまでの経緯を話してくれた。
「まずこの部活…スクールアイドル同好会は元々5人の部員がいて仲良く活動していたんです。だけど1人のメンバーと揉めてしまって…それから他の3人も来なくなっちゃったんです…」
「なるほど。だけど衝突することは真剣にやってるんだったら起こり得ることだし仕方ない部分もあるよね」
「そうなんです。だけどそれ以来私以外来なくなってしまって…生徒会長からは活動の実績がないなら部室を開け渡すようにとまで言われてしまって…だけどもう少ししたらみんな戻ってくるはずなんです!絶対に!」
かすみちゃんは自分1人になっても他の部員のために同好会を守っていたみたい。けど部活や同好会の数が多くて部室が足りない今、ちゃんとした活動を行っていない部活は部室を言い方を悪くすると取り上げられるということになっていた。
「ですから生徒会長に直接伝えたんです。もう少し待ってくださいと。そしたら『あなたの熱意はわかりました。部員を10人集めてきたら部室を開け渡す話はなかったことにします』と言われて…」
「そうだったんだ…でも同好会って普通5人いれば成立するよね?なんて10人なんだろう…?」
「同じ人数だとまた前と同じような問題が起こることも否定できないって言われて…私…悔しいです…」
「そっか。よく頑張ったね…」
まだ1年生なのにこんなに大きなプレッシャーをかけられて活動するのがどんなに大変なことか私には想像できない。私はかすみちゃんのことを放ってはおけない。何とかして彼女を助けてあげたいと強く思いました。
「そこで先輩達にお願いがあります」
「お願い?何をすればいいの?」
「俺達に出来ることなら何でも言って!」
「先輩………スクールアイドル同好会に入ってください!」