夢の向こう側へ   作:大天使

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今回のお話は時系列とは関係ありません
IFルートだと思っていただければ幸いです



外伝 Sweet Valentine

とある日の朝、カレンダーを見て気がついた。

 

「そーいえば今日はバレンタインかぁ…」

 

当日になるまで存在を忘れていた。この時期になるとチョコくれー!って騒ぎ出すやつとかバレンタインの日だけ服装や髪型をビシッとキメてくるやつとか色々いて笑ってしまった記憶がある。去年までは歩夢ちゃんがくれてたけど今年はどうなるのかな。

 

「ま、今日は学校ないし渡してくれるなら明日かな?かすみちゃん達からもメッセージ来てたし」

 

俺はそう考えてもう一眠りすることにした。

 

 

 

 

 

どれだけ時間がたっただろう。ふと時計を見たら12時を過ぎていた。いくらなんでも寝すぎだし昼食も作らなきゃならない。そう考えて起きあがろうとすると俺しかいないはずの部屋からもう1つの声がした。

 

「あっ!やっと起きたんだね!」

 

「ん…?その声は歩夢ちゃん?」

 

「うん!おはようケイくん♪」

 

隣に住んでる歩夢ちゃんが家に来ること自体は珍しくないけど急に来るなんて久しぶりのことだ。

 

「いつ来たの?」

 

「えっとねー2時間くらい前かな?」

 

「えっ、そんなに早く?それなら起こしてくれてよかったのに…退屈だったでしょ?」

 

「ううん。あなたの可愛い寝顔をずっと見てたから全然退屈なんかじゃなかったよ!」

 

「え」

 

…まぁいつものことだ。いちいち気にしてちゃやってらんない。

 

「さて、こんな時間になっちゃったし昼食でも作るとするよ。歩夢ちゃんは何か食べたいものある?」

 

「あ、ケイくんは何もしなくていいよ!今日は私が作るから!」

 

そう言って返事をする前に台所へ行ってしまった。ここは歩夢ちゃんに任せるとしようかな。そう考え俺も自室を出た。

 

 

──────────────────────────

 

 

「腕によりをかけて作ったの!召し上がれ♪」

 

「いただきます…」

 

結局昼食作りも全て歩夢ちゃんに任せてしまった。何度か手伝おうとしたんだけどその度に止められたりしたので諦めた。

 

「どうかな?」

 

「とっても美味しいよ。いつも思ってるけど歩夢ちゃんの料理は最高だね」

 

「えへへ、ありがとう!」

 

「本当はね、毎日でも食べたいなって思ってるよ」

 

「…うん///」

 

こんなに可愛い幼馴染みがいてくれて俺はなんて幸せ者なんだろう。その幸せを噛み締めながら残りの料理も平らげる。

 

「ご馳走様でした。とっても美味しかったよ」

 

「お粗末様でした。喜んでくれて私も嬉しいよ!」

 

「本当にありがとね。今度は俺が作るよ」

 

「うん、楽しみにしてるね!」

 

さて、これから何をしようかな。せっかく歩夢ちゃんが来てくれたんだし2人でやれることがいいんだけど何があるかな。そんなことを考えていると片付けを終えた歩夢ちゃんが何かを隠しながらやってきた。

 

「ケイくん、渡したい物あるんだけどいいかな?」

 

「もちろん!まぁ…何となく想像ついてるけどね」

 

「毎年渡してるしそうだよね。本当は明日同好会のみんなと一緒に渡そうと思ってたんだけど待ちきれなくて…」

 

「みんな作ってくれてたんだ…なんか嬉しいな」

 

「これは私から!去年より上手に作れたと思うから食べてほしいな!」

 

歩夢ちゃんは毎年くれてたから今年も貰えるかなとは思ってたけどいざ渡されるとなるとやっぱり嬉しい。

 

「ありがとう。いただきます」

 

「美味しくできてるかな?」

 

…とっても美味しい。今まで貰ってきたチョコも美味しかったけど今年のは特にだ。元々料理が得意な歩夢ちゃんだけど現状に満足せず努力を重ねてきた成果なんだなと強く思う。

 

「すごい…こんなに美味しいチョコ食べたの初めてだよ。舌触りもよくて味付けも俺好みで完璧だ…」

 

「やったぁ!ケイくんの好きな味は誰よりも理解してる自信あるからね!」

 

「それにしても本当に美味しい。これは高級店のに勝るとも劣らない良いチョコだと思うよ」

 

「そ、そんなに褒められると嬉しいけど恥ずかしいな…」

 

褒める度にすごく嬉しそうな表情を浮かべる歩夢ちゃん。そんな彼女のことがとても愛おしくなってしまって気づいたら頭を撫でていた。

 

「本当にありがとう。ホワイトデーに返すよ」

 

「えへへ、1ヶ月も待てないなぁ。今すぐ欲しいんだけど…ダメ?」

 

「そう言われてもあげられるものなんてないよ?」

 

「だったら…んっ…」

 

突然歩夢ちゃんに口を塞がれた。突然の事で驚いたけどその正体が何かに気づくまで時間はかからなかった。ほんの一瞬の出来事だったけどやけに柔らかかった唇の感触は当分の間忘れることは出来ないだろう。

 

「………へ?」

 

「ふふっ…動かないでね♪」

 

すると何を思ったのか歩夢ちゃんは俺を押し倒し、覆い被さるようにして退路を塞いできた。脚の間に膝が置かれ両腕も押さえつけられて身動きが取れない形にされている。

 

「え、ちょっと…歩夢ちゃん?」

 

「………いただきます♡」

 

その後何をされたかは言えない。ただいつも以上に綺麗な歩夢ちゃんの姿だけが鮮明なまま脳裏に残っている。

 


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