「私達が…スクールアイドル同好会に?」
「そうです!先輩達が入ってくれれば…」
「あれ?俺も頭数に入ってる?」
スクールアイドルね。一般的には女性がやってるイメージがあるけど男性はどうなのだろうか。それに俺はバンド活動もあるし…
「ケイ先輩にはサポートとして、歩夢先輩には私と…私達と一緒にスクールアイドルとして活動してほしいんです!お願いします!」
サポートとして…か。まぁスクールアイドルの活動を裏から支えていくのも悪くはないかな?俺がそう思っていると歩夢ちゃんは言った。
「ええ!私がスクールアイドルに!?出来るのかな…?」
「だけど歩夢ちゃんさ、この前遊びに行った時に…」
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「ねぇねぇ、次はどこ行こっか?」
「うーん結構買い物して疲れちゃったからなぁ…俺は少し休憩したいなって思うんだけど歩夢ちゃんはどうかな?」
「うん!それじゃいつものカフェに行かない?」
そう言ってお気に入りのカフェに行こうとする俺達。その途中で俺達の目を引いたのは大きな盛り上がりを見せる人だかりだった。
「ん?この人だかりはなんだろう?」
「うわぁ…歩夢ちゃん!あのモニター見て!」
俺達が見上げるモニターの先には赤を基調とした衣装を纏った9人。そして青を基調とした衣装を纏った9人が歌ったり踊ったりしている映像が映っていた。その途中にやたらと目立つ見出しが映る。
『μ'sとAqours、スクールアイドル戦国時代を牽引している2グループの夢の共演が実現』
そのパフォーマンスは時代を代表しているスクールアイドルとして恥じない素晴らしいものだった。
「すごい…こんな上手に歌ったり踊ったりできるなんて…」
「ケイくん…スクールアイドルっていいね!」
「…そうだね!」
「私もこの人達みたいになりたいなぁ…」
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「…って言ってなかったっけ?」
「そ、そうだけど…」
「大丈夫だよ!歩夢ちゃん可愛いしμ'sやAqoursだったかな?みたいなすごいスクールアイドルにもなれるよ!」
「か…かわっ!」
そこまで言うと歩夢ちゃんは顔を赤くして俯いてしまった。うーん、こればっかりは本人次第だからなぁ…
「ケイくん…ケイくんはどう思う?私にもできるかな…?」
…そう聞かれたところで俺の答えは決まってる
「うん!さっきも言ったけど歩夢ちゃんなら大丈夫!絶対やれるよ!」
「ケイくん…!私、やってみるよ!かすみちゃん、これからよろしくね!」
「歩夢先輩…ありがとうございます!」
本当によかった。いつも支えられてばかりの俺だけど少しは歩夢ちゃんの背中を押すことができたみたいで。
「それじゃ、ケイくんも入部決定だね!」
「はい!ケイ先輩もよろしくお願いします!」
…やっぱり俺も頭数に入ってた…まぁいっか。
「…歩夢ちゃんを入部させたのは俺だからね。もちろん俺も入部して2人のサポートをさせてもらうよ。よろしくね!」
これから2人がどんな活躍をしていくのかとても楽しみだ!
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「やばい…思ってたより時間なかった…このままじゃ遅れる…」
あの後、歩夢ちゃんはかすみちゃんともっと話がしたいということで部室に残って用事のあった俺だけが帰ることになった。けど自分が思ってたよりも時間が無く、大急ぎでライブ会場へ向かうことになってしまった。
駅から走って5分少々、目的地であるライブハウスに着くとそこには仲間達が各々準備をしている様子が見えた。
「悪い!遅れた!」
「やっときたか。俺達は先に準備終わらせちまったからケイも早めに頼むぞ」
バンドのリーダーであり、ベース担当の博之はそれだけ言い残すと再びベースのチューニングをし始める。
「シンと達也はどこ行ってるの?」
「あいつらなら先にステージの準備してる。終わり次第戻ってくるだろうからそしたら後は本番だけだ!」
俺達は6人でバンドを組み、曲を作ってCDも出したりしている。まだまだ駆け出しの段階だしランキングになんて下の方の順位しか載ったことないけどこれからもっと大きくなって俺達の音楽を多くの人に届けたいと思っている。
ちなみに俺とシンがギター、達也がドラム担当だ。
「お待たせ!こっちは終わったぞ!」
「お、ケイもやっと来たか。それじゃいよいよライブだな!集中モードに入ってるとこ悪いけどあの2人にも声かけないとな!」
イヤホンを耳につけて集中モードに入っていたうちのボーカルである陽成と1人で音の確認をしていたキーボード担当、怜也を呼んで各々の楽器を手にする。
「そんじゃ始めますか!今日も俺達の最高の音楽を届けよう!」
「ケイとシンはいつも通り頼むぞ!今日はいつも以上に煽っていくから着いてきてくれよな?」
「もちろん!期待してるよ陽成?」
「俺達も置いてかれないようにしねーとなぁ…」
「けど、ドラムはあんまり先走んないでくれよ?」
「おう!きーつけるぜ!」
そろそろ開演時間だ。俺達はお互いを鼓舞するように言葉をかけ、いつものように円陣を組む。
「行くぞThe Answer!今日も俺達の最高の音楽を届けるぞ!」
「「「「「おお!!!!!」」」」」
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結論から言うとライブは大成功に終わった。キャパ数もそこまで多くないライブハウスだったけどなんとかsold out。これからの活動に弾みを付けられるいいライブだったと思う。
「よっしゃあ!今日もやりきったぜぇ!」
「めっちゃ楽しかった!そんじゃ打ち上げといきますかぁ」
これから打ち上げ…!と行きたいところだけど俺には寄らなきゃいけない場所があるんだった。
「みんな!先に行っててもらえる?後で合流するからさ」
「了解!んじゃ行こうぜ!」
そう言い残してみんなとは反対の方向に向かい、ライブ会場の出入口付近で待っている二人に会いに行った。
「歩夢ちゃんにかすみちゃん!来てくれてありがとう!」
「ううん!途中からだったけどあなたの演奏が見れてすごく楽しかったし…かっこよかったよ!」
「先輩のためなんだから当然ですっ!それにいい刺激になりました!」
「そう言ってくれて嬉しいよ!」
普段はロックを聴かないというかすみちゃんもとても楽しかったと言ってくれた。こうやって俺達の音楽をもっと広められたらいいなあ…
「バンドの曲って先輩達が作ってるんですか?」
「そうだね。俺ともう1人のギターのやつが中心になって作ってるよ。俺はどちらかといえば作詞の方が得意かな?」
「…だったらお願いなんですけど…私達の曲も先輩に作ってもらうってことは可能ですか?」
何となく想像ついたけどそういうことか。かすみちゃん本人も流石に図々しいのではという思いがあったみたいで申し訳なさそうに頼んできた。
確かに難しい相談ではある。これから歩夢ちゃんとかすみちゃん以外にもメンバーが増えることは確定事項だし、バンドメンバーやマネージャーと話し合ってアルバムを出す予定もある程度決まっていて今は制作中。それにライブで東京を離れることも少なくないし曲が完成すればレコーディングだってある。
正直に言うとかなり厳しいと思う。だけど俺は…
「………わかった。その仕事、引き受けるよ」
「え?ほんとにいいんですか?」
「もちろん。大切な幼馴染みと後輩のためだから…」
「だけど大変じゃない?ケイくんにはバンド活動もあるんだし…」
「大変なのは事実だよ。けど自分の技術をさらに磨けるし、これから大きくなっていくために、成長していくために必要な機会だと思うんだ。だからやらせてほしい」
「ケイ先輩…ありがとうございます!」
「けど!やるからには本気だ。俺が納得出来るまでやらせてもらうからね」
とりあえずこの件に関してはメンバーにも相談だ。1度引き受けたんだから投げ出すことは絶対にしないけどやることが増えるのに変わりはないしあまり迷惑もかけられないからね。
「みんな待ってるからそろそろ行かなきゃ!2人ともまたね!」
「またねケイくん!」
「はい!また学校で!」
スクールアイドル、そして新しい仲間との出会いがあって明日からの日々も充実したものになるだろう。これから歩夢ちゃんとかすみちゃん、そしてまだ見ぬ仲間達がどんな道のりを歩んでいくのかとても楽しみだ。