「着いたー!」
「思ってたより全然広いね…」
今日は学校も練習もお休み。その貴重な時間を使って俺達はピクニックにやってきた。
「学校の近くにあるのは知ってたけど来るのは初めてだなぁ…」
「エマちゃんはとってもいい場所を見つけたんだね~」
「えへへ、褒めても何も出ないよー」
「それじゃ行こっか。果林さん達がちょっと早めに来てスペースを確保してくれてるんですよね?」
「うん!こっちだよー」
エマさんの案内で公園に入り、少し歩いたところで一足先に来ていた果林さんや愛ちゃんが待っていた。
「あっ、着いたみたい。こっちだよー!」
「愛ちゃんに果林さん、場所取りありがとう!」
「いーよいーよ!愛さんいっつも早起きだし待ちきれなかったからさ!」
「私は寮生だし近くだからこのくらい余裕よ♪みんなも買い出しありがとね」
そう言ってくれてありがたい。俺は袋からそれぞれ頼まれていた飲み物等を取り出して渡していく。
「皆さん、飲み物は持ちましたか?それではケイさん、乾杯の音頭をお願いします!」
「わかった。それでは改めて同好会の再結成。そしてこれからのみんなの活躍がより良いものになることを祈って乾杯!」
「「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」」
みんなの持った紙コップが重なる。小気味良い音…とはいかないがそれでも十分だった。
「みんなで集まることが出来て嬉しいですね!」
「そうだね。何とか時間作れてよかったよ」
休日だとみんな予定あってもおかしくないし家が遠いメンバーもいる。そんな状況だから開催出来たことは大きいと思う。
「あ、もうすぐお昼だね。買い出しの時に昼ご飯も買ってきたらよかったなぁ…」
「ふっふっふ、そろそろお腹空く頃でしょ?彼方ちゃんみんなの分もお弁当作ってきたんだ。見て見て~」
「おお…これはすごい…」
彼方さんが取り出した2段弁当には色とりどりのおかずがいっぱい詰まっていた。どれもとても美味しそう。
「ほら食べて食べて~」
「いただきます…」
早速卵焼きをひとつ取って口にする。するとふんわりとした食感と程よい甘さが口の中に広がってきた。
「…めっちゃ美味しい」
「ほんとだ!いくつ食べても飽きないお母さんの味みたい!」
「えへへ~そう言ってもらえると嬉しいな~」
「先輩先輩!彼方さんのお弁当だけじゃなくてかすみんの作ったパンも食べてくださいよ!」
「ありがとうかすみちゃん。いただくよ」
かすみちゃんから受け取ったパンをひと口かじる。焼き加減もちょうど良くて毎朝食べるのにもぴったりだ。
「どうですかどうですか?」
「とても美味しいよ。パン作りが出来るなんてすごいなぁ…」
「あ~んもっと褒めてくださ~い」
その後も俺達は2人の料理を夢中で口に運んだ。大人数で食べたこともあって弁当はすぐに無くなってしまった。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです」
「お粗末様~みんなすごい勢いで食べてくれたから彼方ちゃんもとっても嬉しかったよ~」
「みんなを満足させちゃうなんてさすがかすみんですね!」
「うん。かすみちゃんのも美味しかった。また食べたいな」
「りな子ってばしょうがないなぁ~そんなに食べたいならまた作ってきてあげるよぉ~」
まだ出会って間もないのに同好会の活動を通じてみんなの仲がどんどん深まっているように思えた。壁があるかもしれないと思っていたけど余計な心配だったかもしれないな。
「それじゃあせっかくの機会なんだし色々話さない?まだみんなのことを完璧に知れてるわけじゃないからさ」
「あ、それならかすみんは歩夢先輩とケイ先輩がどーやって知り合ったのかを聞きたいです!」
「俺と歩夢ちゃんの?どーだったかなぁ…」
「あっ、それなら覚えてるよ!確か…」
────────────────
あれは私達が幼稚園に入るちょっと前のことだったかな?私の住んでいた部屋のお隣にケイ君一家が引っ越してきたのがきっかけで出会ったんだけど…
「初めまして。隣に引っ越してきた藤波と申します。上原さん、これからよろしくお願いします。これ、つまらぬものですが…」
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね」
「こちらは妻と息子の圭介です。ほら圭介、上原さんに挨拶して」
「こ、こんにちは…」
「あら、圭介君はちゃんと挨拶出来て偉いわね。こっちは娘の歩夢ちゃんっていうの。これから仲良くしてね!」
「わたし、うえはらあゆむ!よろしくね!」
「うん…よろしく…」
────────────────
「っていうのが私達の出会いだったの。あの頃のケイくん、すっごく可愛かったなぁ…」
「そんなことあったような…」
「その後は幼稚園から今日までずっと一緒に過ごしてきたんだ!」
そんな小さい頃の記憶なんて俺にはほとんど無い。歩夢ちゃんはすごいなぁ…
「むぅ~歩夢先輩が羨ましいですっ!かすみんももっと早くケイ先輩に出会いたかったぁ!」
「それには私も同意見です!すぐそばに先輩のような人がいてくれたらどんなに心強かったことか…」
「2人ともありがとう。けど遅すぎたなんてことは無いし、これから沢山思い出を作っていけばいいんだよ!」
確かにもっと早く出会えていたらなと思うのもわかる。だけど俺達の関係はまだ始まったばかりなんだ。そんなに焦らなくても楽しい思い出は次第に増えていくだろう。
「ケイの言う通りだよ!しずくもかすかすもアタシ達ともっと仲良くしてくれたら嬉しいよ!」
「そうね。私も可愛い後輩ちゃんに慕ってもらえるように頑張らないと♪」
「…そうですね。これからは上級生の皆さんにもっと頼らせてもらいますね!」
「いやぁ~こんなに頼もしい先輩達がいるなんて幸せですねぇ…ってかすかすじゃなくてかすみんですっ!」
辺りにみんなの笑い声が響く。その表情はとても楽しそうで心の底から笑えているんだなと俺は確信した。この明るくてポジティブな環境を俺は作りたかったんだ。
「………ようやく出来たんだなぁ」
「ケイくん?なんか言った?」
「いや、何でもないよ…っと電話来たから一旦抜けるね」
もっとみんなと話したいけどわざわざ電話で連絡してくるってことは絶対に伝えたい事柄なのだろう。かかってきたのはヒロからだった。
「もしもし?どうしたのヒロ?」
「悪いな急に。突然なんだけど次の練習後にミーティングを開くことになった。菱川さんも来るから覚えておいてくれ」
「わかった。覚えておくよ」
「よろしくな。あと頼みなんだがミーティングのことを達也に伝えておいてもらえないか?」
「うん。任せといて」
そう言い残して電話を切った。そのまま達也にも連絡事項を伝え、話し終わった頃にはだいぶ時間も経ってしまっていた。
「思ってたより長引いちゃったな。みんな待たせてるし早く戻んないと…ってあれ?」
みんなの元に戻るとさっきまでの賑やかな様子は無く、代わりに9人で身を寄せあって気持ちよさそうに眠っている姿になっていた。
「あちゃ~これどうしよっかなぁ…みんなには悪いけど起こした方がいいよな…」
そう思って手始めに歩夢ちゃんを起こそうとした時だった。
「ん…ケイ…く…ん…」
「歩夢ちゃん…?寝言かな」
「ケイくん…好…き」
「…へ?」
ウン。やっぱり歩夢ちゃんは寝言も可愛いなぁ。夢の中でまで俺と…って今なんて言った!?もしかして歩夢ちゃんは…いや、所詮寝言なんだしこのくらいで図に乗っても後で悲しくなるのは俺だよな…はは…
「はぁ…こんなに顔赤くなるなんて…とりあえずもうちょっと寝かせてあげよう。その間に俺は頭冷やすか…」
そう思った直後に歩夢ちゃん達が起きて真っ赤な顔を見られた上に散々からかわれたのはまた別のお話…