前回のあらすじ
レッツパーリィィィィィィィィィィィ!!!
「うっしゃぁ!」
ヴァトラーが突き抜けて空いた壁の穴を見ながら、思いっ切りガッツポーズを取ると煌坂に殴られた。
「あだっ!?」
「何が「うっしゃぁ!」よ!あんた人の話を聞いてた!?我慢しろって言ったでしょ!」
「我慢したよ。三秒くらい」
「短かい!我慢短かいから!どうすんのよこれ!?アルデアル公吹っ飛んでちゃったんだけど!」
物凄い形相で捲くし立てて、俺の襟を両手で掴み上げて揺すってくる煌坂。正直見ていて面白い。
「まあまあ。紅茶でも飲んで落ち着きなよ」
「ありがとう。あ、おいしい…って違う!!」
取り合えず、部屋のテーブルの上に置いてあったティーポットからカップに注いで煌坂に渡す。
素直に受け取り一口飲むとホッとしたようだが、直ぐにハッとしたようにツッコミながらカップを地面に叩き付ける。
「あ!ああ…」
粉々に砕け散ったカップを見てやっちまった!的な顔でうろたえる煌坂。
「お、カステラ発見!アスタルテも食べる?」
「頂きます」
部屋の棚を探っていると、高級そうなカステラを見つけたのでアスタルテと一緒に食べる。うん、美味い。
「って何勝手に部屋を物色してんのよ!?」
「ん?君も食べる?」
「ありがとう。ホント美味しいわね…ってああ!もう!そうじゃないってば!!」
先程と同じようなやり取りをして髪をかき乱す煌坂。からかいがいがあるなぁ。
「ひどいじゃないかぁ勇。せっかくの再開が台無しだヨ。後、そのカステラはボクの隠しておいたとっておきなんだ全部は食べないでくれよ?」
自身で空けた穴からヴァトラーがスーツに付いた
「チッ生きてやがったか。カステラは全部頂いたぞ、美味かった」
「ふふ。その容赦の無さ、それでこその君だ」
見せ付けるように空箱を掲げると、気にしていないように優雅に振舞うヴァトラーだが、その目尻はうっすらと濡れていた。
「おら、さっさっと黒死皇派の情報を寄越して美味いもん食わせろ」
「そう慌てずともちゃんと話すさ。第四真祖も来たらね」
「古城も?あいつも呼んだのか?」
「ああ、この島の支配者である彼にも挨拶しないとね。個人的に興味はあるからね。別に浮気とかではないよ?誤解しないでくれヨ」
「そんな心配はいらん」
俺の問い掛けにおどけたように答えるヴァトラー。別にあいつは支配者じゃないんだが、世間じゃそう認知されてるのかね?つーか最後の一言はいらんわ。
「そうなの煌坂?」
「ええ、まあ…」
念のため煌坂にも聞くとしかめっ面で答える。そういや車の中でも古城の話をすると苦い顔してたな。
「なら、それまで待たせてもらおう」
「だったらあそこで寛ぐといいヨ」
そう言ってヴァトラーが指差した先には、豪華なツインベットがあった…。
「三枚に卸すぞテメェ…」
「そう睨まないでくれヨ、興奮するじゃないか」
殺気を込めて睨みつけると、恥ずかしそうに前髪を掻き揚げるヴァトラー。もうやだコイツ…。
「ホント帰るぞオイ」
「仕方ないなぁ紗矢華嬢、部屋に案内してくれるかい?」
「承知しました」
ヤレヤレと肩を竦めて首を振るヴァトラー。何で俺が悪いみたいになってんだよ…。
一礼して部屋を立ち去ろうとする煌坂についていこうとするが、アスタルテがヴァトラーを睨みつけたまま動かない。
「ふぅん…。成程、君も恋敵って訳か。いいねぇ障害があるほどに恋は燃え上がるって言うしね」
「いいでしょう。受けて立ちましょう」
「いや、俺をほったらかして勝手に盛り上がらないでくれません?」
ゴゴゴッと聞こえてきそうな雰囲気で睨み合う両者。正直勘弁して下さい。
その後、一触即発だったアスタルテをなんとか
すれ違う人間が奇異の視線で俺やアスタルテを見つめているが、気にすることなく歩いていると急に煌坂が立ち止まった。
「煌坂?」
不審に思い呼びかけるが反応すること無く、殺気を漲らせながら前方を注視している。
「あれは…」
煌坂が向いている方向を見てみると、スーツを着ている古城とドレスを身に纏っている姫柊がいた。
仲睦まじそうに歩いている二人、ふと姫柊が古城に手を差し伸べる。
それを古城が握ろうとした瞬間、いつの間にかフォークを握り接近していた煌坂が古城の腕目掛けて振り下ろした。
「おいおい…」
多分姫柊を大切に想うが故の行動だろうが、やり過ぎである。
「あれが、猟奇的なまでの愛ですか…」
アスタルテがなんか感心するように呟いているが、無視して古城と言い争っている煌坂の背後に回り、後頭部を引っぱ叩く。
「あうっ!?何するのよ神代!」
「こっちのセリフだ主賓を刺そうとする奴がいるか」
「だって!コイツが私の雪菜に汚らわしい手で触れようとするから!」
「おい待てよ!汚らわしいって何だよ!?」
まったく悪びれずに古城を指差して罵倒する煌坂に、古城が食いついて再び言い争いとなる。
「紗矢華さん?」
今まで唖然としていた姫柊が煌坂の名を呼ぶと、満面の笑みを浮かべ勢いよく姫柊へと抱き付いていった。
傍から見れば、仲の良い姉妹が久しぶりの再会を果たしたように見える光景だろう。
「たくっ。大丈夫か古城?」
「あ、ああ。お前も招待されてたのか勇」
「まあ、ヴァトラーの奴とは殺し合った仲なんだよ」
「え?それどんな仲だよ…」
俺の言葉にどう反応したらいいのか困っている古城に、取り合えず姫柊を助けた方がいいぞと指差す。
今だに姫柊にむしゃぶりつくように頬擦りをしている煌坂の後頭部に手刀を振り下ろす古城。
きゃっ! と悲痛な悲鳴を上げると、煌坂が怯えたように跳びずさった。
その隙に姫柊は古城の背後に回り込み、古城と煌坂が睨み合う。…頭痛くなってきたんだけど。
「ふふ、面白いことになっているね」
「さりげなく隣に立ってるんじゃねえよ蛇」
気配も無く現れたヴァトラーを睨みつけるが、何処吹く風といった感じ受け流される。
「あ、アルデアル公!?」
「「え?」」
ヴァトラーの存在に気が付いた煌坂が素っ頓狂な声を上げ、古城と姫柊が声を揃えて驚いている。アスタルテは仇と言わんばかりに睨みつけていた。
「今まで何やってたんだお前?」
「君の父上と話していたのさ。今後何かとお世話になるだろうしね」
ああ、父さんも来てたのか。一応アイランド・ガードの本部長だし当然か。
「つーかここじゃ話ずらいな。おい、甲板にでるぞ」
「ああ、いいヨ」
ヴァトラーと気兼ね無く話している俺に周囲の視線が集まっているので、鬱陶しくてかなわん。
固まっていた古城達を連れて上甲板に出ることにした。
上甲板にでると、俺の隣にアスタルテとヴァトラーが立ちその対面に古城達が立つ形となった。
「んで、コイツがヴァトラーだ」
俺が紹介すると古城に近づき肩膝を突き、恭しい貴族の礼を取るヴァトラー。
「始めまして第四真祖。我が名はディミトリエ・ヴァトラー、我らが真祖”
余りにも見事な口上に、うろたえる古城。
姫柊と煌坂も唖然とその場に立ち尽くしている。
「似合わんから止めろ。気色悪い」
「うちの爺様の同胞なんだから相応しい礼は取るべきだろう?」
俺が不機嫌そうに鼻を鳴らすと、ヴァトラーが悪戯っ子のような微笑みを浮かべ顔を上げる。
「で?テメェは
役者が揃ったので本題に入るべくヴァトラーに問い掛けると、絃神島が背景となるよう移動するヴァトラー。
「それは勿論、君と式を挙げるためさ勇!!」
満面の笑みで俺を迎え入れんとするように、両腕を広げて宣言した瞬間、その場の空気が凍った。
「クソッたれなこと…」
一瞬でヴァトラーの背後に回り抱きかかえる。
「言ってんじゃねェェェェェェェェエエエッ!!!」
そのまま頭部が甲板にめり込む程のバックドロップをお見舞いするのであった。