前回のあらすじ
そうだ私はどMだ。それ以上でも以下でもない
ヴァトラーとの会談の翌日。朝から古城が浅葱と爆ぜろ的なことが起こったようだが、面倒なので割合させてもらう。
そして昼休になったので、中庭のベンチでアスタルテと委員長こと築島 倫の三人でお昼ご飯を食べている。
何故、委員長がいるのかと言うと、中学から俺が何か事件で授業を抜けていることが多く、その度にノートをとってくれたりと助けてくれるのだ。
そのお礼に彼女の分のお弁当を作ってあげて、一緒に食べたりしている訳である。後、那月ちゃんのも作るのも俺の役目である。
んで、委員長がアスタルテと話してみたいとのことなので、一緒に食べている訳である。
「ホント、勇君って料理上手よねぇ」
委員長が卵焼きを食べながら褒めてくれる。
「家の家主が家事出来ないからねぇ。自分でやっている内に覚えちゃったのよ」
「南宮先生って、何でも出来るってイメージだけどね」
「まっあの人も人の子ってことだねぇ」
母さんが生きている頃は家事を教わってたけど、攻魔官として活動しだしてからは忙しくて俺任せにしてたからなぁ。最近そのことを後悔してるようだけど。
「アスタルテも美味しい?」
「はい、美味しいです」
隣でもくもくと食べているアスタルテに問い掛けると、コクコクと頷いてくれる。
ちなみに、アスタルテは本来医療メーカーに設計された臨床試験用のホムンクルスである。そのため医療活動に必要な知識が
簡単に言えば新米医師レベルの知識を有しており、現在出張中の養護教諭の代わりに保健室に勤務しているのである。
「それにしても、アスタルテさんの服装って勇君が選んだの?」
委員長が珍しそうにアスタルテのメイド服を見ながら問い掛けてくる。
「そうです。家に住むならこれを着ろと勇さんに言われました」
「言ったのは那月ちゃんだからね!?捏造しないでくれる!?」
「ですが、この服を選んだのは勇さんです」
「どれも似たようなのしかなかったんだから仕方ないでしょう!」
あられもない罪を被せられそうになったので、慌てて反論する。俺だって好きでそんな露出度の高いのを選んだ訳じゃない。訳じゃないんだ。
「でも、メイド服かぁ。私も着てみたいかも」
「委員長って確かお嬢様じゃなかったけ?」
するよりされる方ではなかろうか?そう言えば浅葱もだったけか。
「そうだけど女の子なら着てみたいって思うのよね」
「ふーん。まっ委員長なら似合うんじゃない?」
委員長がメイド服か…。清純な委員長なら良く合いそうだなうん。
「ふふ、ありがとう。でも、勇君ならもっと似合いそうよねぇ」
「激しく同意します。ミス倫」
「せんでいい!女物なんか着たくないわぁ!」
いたずらっぽく微笑みながら告げる委員長に、頷くアスタルテ。
思わず頭を抱えて空を仰ぎ見ながら叫んでしまう。
「そう?いざ着るとノリノリになるけど」
「それは止むを得ない時だけであって、決して好きでやってるんじゃない!」
女装すると性格変わっちゃうから、やりたくないんだよぉ!
「南宮教官から話は伺っていますが、そんなに変わるのですか?ミス倫」
「ええ、ホントに女の子みたいになるのよ」
「わぁぁぁぁぁぁ!!その話はやめれぇぇぇぇぇぇえええ!!」
いらんことをアスタルテに話そうとする委員長を、慌てて止めようとすると学園の屋上から膨大な魔力が溢れ出した。
「っ!?」
「勇君?」
突然立ち上がって屋上を睨みつける俺に、いぶかしむ委員長。
それと同時に地面が激しく揺れだした。
「え、何これ!?地震!?」
「これは!?」
突然の揺れに困惑する委員長。だが、これは地震じゃなく古城の眷獣が暴走してやがる!?
「アスタルテ委員長を頼む!」
「わかりました。お気をつけて」
アスタルテに委員長を任せると、ベンチに立て掛けていた獅子王を掴むと壁へと駆け出す。
壁にある窓や配水管のくぼみを足場にして、飛び上がりながら屋上へ向かうのであった。
「ア・ホ・かぁ!!!」
彩海学園高等部の屋上に俺の怒鳴り声が鳴り響く。
今俺の目の前には古城と、ヴァトラーの監視役として獅子王機関から派遣されている舞威媛の煌坂 紗矢華が正座している。
俺が屋上に着くと、既に眷獣暴走は姫柊と雪霞狼によって抑えられていた。
事情聴取の結果。古城の眷獣が暴走したのは、煌坂が古城を抹殺しようと襲いかかり、古城の防衛本能に未掌握の眷獣が反応したためらしい。
さらに最悪なのはその暴走に浅葱を巻き込み負傷させてしまったことである。
現在浅葱は姫柊とあとから来た凪沙よって保健室へ運び込まれ、俺が連絡したアスタルテによる診察の結果大事は無いそうだ。
そして目の前の二人は姫柊の命により正座させられているのである。
「周囲に一般人のいる所で戦闘行為を行った挙句、真祖の眷獣を暴走させかけ民間人に負傷者を出すたぁ馬鹿だろ!!何を学んできたんじゃおのれはぁ!!」
「ご、ごめんなさい」
今回の騒動の原因である煌坂にありったけの声音で怒鳴りつけると、思いっきりうな垂れる。
「だって、この変態真祖が雪菜以外と
「古城が姫柊以外とイチャついてたからって殺しにかかるなよ!!それでどうなるかわかんなかったんかぁ!!」
眷獣は宿主が命の危険に晒されると、それから守ろうと勝手に能力を使う性質がある。
制御出来ていればすぐに抑えられるが、古城はまだ不完全な状態だ。掌握しきれていない眷獣なら見境無く暴れてしまう危険が大きい。
「お、落ち着けよ勇、コイツも姫柊を思ってやった訳だしさ」
「そこで、理不尽に殺されかけたお前が庇うかなぁもう!!」
見かねたのか助け舟を出す古城に呆れて脱力してしまう。しょうも無い理由で命を狙われたのに優し過ぎんだろう…。
「あ~まあ、俺にも原因があるわけだしな」
「はぁ…。もういいそのまま正座していろ。俺は浅葱の様子見てくっから」
苦笑しながら頬を掻く古城。
本来怒るべき者がこん様子なので怒る気力が失せてしまった。
「つーか、何で被害者の俺まで正座させられているんだ?」
「…ま、嫉妬だろうねぇ」
「???」
浅葱と二人っきりで弁当食べてたことに怒ってるんでしょうねきっと。言った本人も良くわかってないんだろうけど。
?マークを浮かべている古城と、うな垂れている煌坂を置いて保健室へと向かうのであった。
保健室に繋がる通路を歩いていると、保健室から那月ちゃんが出てくる。
「お、那月ちゃんも浅葱の様子を見に来たの?」
「ああ、それとちゃんは止めろ。で、暁の眷獣が暴れだしたそうだな。やれやれお前といい面倒ごとをよく起こしてくれる」
「…すいません」
はぁっと盛大に溜め息をつく那月ちゃん。そう言われると頭が上がらんでござる。
「まあいい。それより勇太郎さんから連絡があった。テロリスト共のアジトが判明したそうだ」
「そっか、なら那月ちゃんは行くの?」
「ああ、お前とアスタルテは置いて行く。留守は任せるぞ」
「うん、気をつけてね」
「ふん、私を誰だと思っている」
いらん心配をするなと言わんばかりにふてぶてしく微笑むと、姿を消す那月ちゃん。
「さてと」
保健室へ入ろうとすると、向かいの通路から走りこんで来る人影…ではなく体格と速度から獣人か!
迫り来る獣人が殴りかかってきたので、いなしながらカウンターで蹴りをおみまいすると吹き飛んでいく。
「ッガァ!?」
蹴り飛ばした獣人が仰向けに倒れるのを確認すると、一息つく。
「神代先輩大丈夫ですか!?」
そこに血相を変えながら姫柊が保健室から飛び出して来る。
「ああ、問題無い。アスタルテは?」
「凪沙ちゃん達の側にいてもらっています。それでいったい何が?」
「どうやら招かれざる客が来たようだ」
「え?」
俺の言葉に姫柊が疑問を浮かべていると、人間態の獣人と見られる初老の男が、拍手しながら向かいの通路から歩み寄って来る。
軍服を纏い強烈な威圧感を放ってやがる。
「素晴らしい。その若さで今の奇襲に対処するか、見事だよアルディギアの英雄」
「その呼び方は止めろ。何者だ貴様ら」
「これは失礼、私はクリストフ・ガルドシュ。黒死皇派を率いる革命運動家だ。君のような攻魔管からはテロリストと呼ばれているがね」
紳士的な物腰でそう言うと帽子を脱ぐガルドシュ。
「…今、アイランド・ガードがテメェらのアジトに攻め込んでいるのに、俺を狙うとは余裕だなオイ」
そう、現在父さん率いるアイランド・ガードや那月ちゃんがコイツらのアジトに向かっているのに、何故俺を狙ってくるんだ?
「ああ、勘違いさせてしまったようだが。ここに来たのは君が目的では無いのだよ」
「何?俺が目的じゃ無いなら、何故ここに来た?」
なら、他に狙いがあるってことか、まさか古城のことがコイツらにばれたのか?
「まさか、第四真祖を狙って!?」
姫柊もその可能性に到ったようで、息を呑むようにガルドシュに問い掛ける。
「いや、それも違う。第四真祖がこの島にいるとの情報は得ていたが。先程の魔力で気づいたがまさか、こんな所にいるとは思わなかったよ」
心底驚いたように言うガルドシュ。演技ではないようだ。
「狙いが第四真祖でも無いなら何をしにきたんだお前らは?」
他にコイツらが興味を示すのなんかこの学園には無いぞ?
「我々の狙いはアイバ・アサギという少女だよ」
「「は?」」
ガルドシュの告げた名前に、思わず間抜けな声を出してしまう俺と姫柊。
「浅葱、だと?なんでテメェらが彼女を狙う?」
ますます混乱してきた。この状況下で何で浅葱を狙う?人質が欲しいならこんな危険を冒す必要は無いはずだぞ。
「鍵だよ」
「鍵?」
「そう、アイバ・アサギは我々が持つ切り札をを目覚めさせる鍵を持っているのだよ」
「まさか、ナラクヴェーラか!?あいつ本当にやりおった!?」
万が一の可能性が現実となってしまったことに愕然としてしまう。
「ど、どう言うことですか神代先輩!?」
事態が良飲み込めていない姫柊が説明を求めてくるが、呑気に答えている場合じゃない。
「説明は後だ!とにかくこいつらを浅葱に近づけるな!」
「は、はい!」
とりあえず納得してくれたようで戦闘態勢に入る姫柊。俺も獅子王を抜刀して構える。
「なるほどそちらの少女も戦士か。だが、馬鹿正直に君達と戦う気は無いのだよ」
ガルドシュが姫柊を見ながら驚嘆すると、上着を捲り上げる。
「オイオイマジかよ…」
「ば、爆弾!?」
捲り上げられて晒されたガルドシュの腹部には、コードに繋がれた筒状の物体。おそら爆発物と見られる物が巻かれていた。
「お察しの通り爆弾だ。この建物を吹き飛ばせる位の威力がある」
「んなもん自分にくっつけるとか正気じゃねぇぞ…」
「我々も後が無いのでね。手段を余り選んでいられないのだよ。卑怯者と罵ってくれて構わんよ」
自嘲気味に笑うガルドシュだが、あの目は本気で自分ごと吹き飛んでも構わんと思ってやがる…。
「ちなみに遠くに待機している部下が起爆スイッチを持っている。君達が少しでもおかしな行動をすれば躊躇うことなく押すぞ」
「クソッたれが…!これじゃ保健室にいる浅葱達が人質ってことかよ!」
手も足も出せない状況に、思わず両手を強く握り締めて歯噛みする。
「そう言うことだ。そして君には消えてもらおう、アルディギアの英雄」
そう言って懐から拳銃を取り出し、俺へと向けるガルドシュ。
「ッ卑怯な!」
「動くな姫柊!」
咄嗟に動こうとした姫柊を制すと、ガルドシュを睨みつける。
「君は我々の計画の大きな障害となるだろう。さっきも言ったようにもう後がないのだよ。許しは請わない恨んでくれ」
「撃ちたきゃ撃てよ。ただし、姫柊達は傷つけるな」
「…自身の身が危険だというのに他者を気に掛けるとは、見事だよアルディギアの英雄。約束しよう無論抵抗しなければ、だがね」
俺の姿勢に感嘆したように告げるガルドシュ。
「最後に一ついいか?」
「何だね?」
「あんたは、今の生き方に満足か?」
「…ああ」
そう言ってガルドシュトリガーを引くと、発射された数発の弾丸が俺へと撃ち込まれる。
その衝撃で体が吹き飛び仰向けに倒れると、痛みを感じる間もなく意識が暗闇へと落ちていくのであった。
最初の部分は倫の出番を増やしたかったので書いてみました。
結構好きなキャラなんです倫。