ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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これからも多くの方に楽しんで頂けるよう頑張っていきます。


第八話

前回のあらすじ

女物なんか着たくないわぁ!

 

「ぐむぅ」

 

重たい瞼を開けると、ぼやけた視界に広がる見慣れた天井。

 

「知ってる天井だ」

「彩海学園の保健室ですからね」

 

思わず零れた呟きに返答があったので声のした方を向くと、アスタルテが丸椅子に腰掛ていた。

 

「俺は生きてる?あんなに撃たれたのに?」

 

至近距離で対魔族用弾を5~6発は喰らったのにか?

 

「奇跡的に急所から外れていました。ですが相当な深手ですので安静にしていて下さい」

 

急所から外れていた?ガルドシュ程の奴が外すとは思えないが…。

 

「俺はどれくらい寝ていた?」

「三時間十五分四十二秒です。その間にクリストフ・ガルドシュによって藍羽浅葱、暁凪沙、姫柊雪菜の三名が連れ去られました」

「君は連れて行かれなかったのか?」

「ミス・相羽が私をここに残すことを条件にし、ガルドシュがそれを了承したためです」

 

なるほど、俺の治療のためにアスタルテを残したのか。

にしても一般人なのにテロリストと交渉するとは度胸があるよね。それが彼女の長所なんだけどさ。

 

「古城と煌坂は?」

「お二人はあなたの治療を終えた後、ガルドシュを追ってサブフロートへ向かいました」

「オッケー、状況は掴めた。んじゃぁ俺も行きますか」

 

必要な情報は得られたし俺もガルドシュを追うとしますか。

と思って体を起こそうとしたらアスタルテに頭を引っ叩かれた。地味に痛い…。

 

「あなたは人の話を聞いていましたか?安静にしていて下さいと言ったはずです」

「この状況で呑気に寝てられるかよ。君が何と言おうが俺は行くぞ」

 

そう言いながら起き上がりアスタルテを見据える。

 

「それで死ぬとしてもですか?」

「死なないさ。何があっても生き抜いてみせる。もう後悔しないために」

 

あの日そう彼女に誓ったんだ俺は。

一瞬の間を置いて、ハァと溜め息を吐くと呆れたように俺を見るアスタルテ。

 

「本当にどうしようもない馬鹿ですねあなたは」

「ほっとけ。馬鹿でケッコー俺はやりたいようにやるだけだ。それにやられっぱなしで終われるかよ」

 

やられたら倍返しが神代家の家訓よ。ガルドシュ共に生まれてきたことを後悔させてくれるわ。

 

「そんな悪人面してないで行くなら早く行きましょう」

「ん?思ったより簡単に引いたね」

 

ドアを開けながら呆れた様子で告げてくるアスタルテ。普通ならもっと引き止めるんじゃないかね?

 

「やはり止めても無駄だと再認識しました。なら早くこの件を片付け、ベットに縛り付けて休養してもらいます」

「なんか物騒なことが聞こえたけど、冗談だよね本気じゃないよね」

「ふふ」

「何で笑った!?」

 

何時もの無表情なはずなのに目が物凄く怖かったです。

 

 

 

 

 

保健室から校門前へと移動すると、呼び出しておいたトルネイダーがやって来て俺達の前で停車する。

 

「トルネイダーですか。二人乗りしても大丈夫なんですか?交通法違反で補導なんて笑えませんよ」

「元々人員輸送用だからね緊急時ならいいんだよ。ほらここを押すとシートが二つになるんだよ」

 

メータの下についている複数のボタンの一つを押すと、シートの後ろ部分がスライドしてシートが二人分になった。

そしてアスタルテの分のヘルメットを取り出して渡し、自分用のを被る。

 

「んじゃ行きますか。しっかり掴まってろよ」

「はい」

 

トルネイダーに跨ると、後ろに乗ったアスタルテが腰に手を回して抱きついてくる。あ、やっぱり胸薄い…。

 

「今、失礼なことを考えませんでしたか?」

「グフォ…!そ、そんなこと、ないですよ…」

 

氷のように冷えきった声で、腰に回していた腕で締め付けてくるアスタルテ。この華奢な体のどこからこんな力が…と、飛び出る!内臓が飛び出ちゃうよぉぉぉぉ!!

 

「…次はないですからね」

「い、イエッサー」

 

許してくれたようで腕の力が弱まる。た、助かった。河の向こうで母さんが手を振っている幻覚が見えたよ…。

出発前から再び死に掛ける俺であった。

 

 

 

 

 

彩海学園からサブフロートまでの道路が渋滞していたが、車の間をすり抜けながらトルネイダーを走らせていると、島の拡張ユニットの一つであるサブフロートが見えてくる。

それと同時に激しい爆音と共に地面が激しく揺れだした。

転倒しないうように車体を安定させながらサブフロートを見据えると、巨大で禍々しくそして、人工的な魔力を感じ取った。

急ぎたいのだがサブフロートへと繋がる連絡橋は、アイランドガードが封鎖しているため通過するのに時間がかかってしまう。

だが、島とフロートの距離は、普通の人間でも飛び越えられる程だ。なのでこのまま進むとしよう。

 

「このまま飛び越えるぞ!」

「わかりました」

 

アスタルテが強く抱きつくのを確認すると、スピードを落とさずにサブフロートへと飛び越える。

だが、勢いをつけ過ぎたため着地しても直ぐには止まれず進路上にいた人影を跳ね飛ばしてしまう。

跳ね飛ばされた人影は、きりもみしながら空高く舞い上がり受身も取れずに地面に激突した。

 

「ん?今のヴァトラーか」

「そのようですね」

 

ブレーキをかけて滑りながら停車し、跳ね飛ばし人物を確認すると、金髪に白いスーツを着た男―ヴァトラーが仰向けに倒れていた。

ああ、だから無性に轢きたくなったのか。まあ、あいつなら直ぐに起き上がるだろう。

 

「勇か、やはり来たなこの大馬鹿者め…」

 

停車位置の側に呆れはてている那月ちゃん。それと古城に煌坂、それと傷だらけで倒れている基樹がいた。

 

「オッス那月ちゃん。それで、あれがナラクヴェーラか」

 

トルネイダーから降りて視線を真紅の閃光を放ちながら、アイランドガードの装甲車を焼き払っているデカ物に向ける。

 

チュドオオオオオオオオォォォンンン!!!

 

『アッー!』

『本部長ォォォォォォォォ!!!』

 

ナラクヴェーラが放った閃光の爆発と共に、父さんと見られる人影が空高く舞い上がった。

多分部下を庇って攻撃を喰らったんだろう…。ま、あの程度じゃ死なないから心配しないけど。

ひときしり破壊活動を終えるとナラクヴェーラの動きが止まる。どうやら当面の脅威を排除したと判断したようだ。

だが、頭部に目玉のようなのが、次の獲物を探すように絶え間なく動いている。

 

「アイランドガードは撤退できたか」

「そのようだね。君の父君も無事のようだ」

 

那月ちゃんにした質問に答えたのは、復活していたヴァトラーだった。

全身血だらけだが、その優雅さは健在なのが余計に腹が立つ。

 

「お前が答えんな!どうせ暴れる機会を伺ってたんだろうテメェ!」

「さすが勇。ボクのことをよく知っているじゃないか」

「いや、テメェのことを知ってる奴なら直ぐにわかるんだよ!」

 

だから熱い視線を向けるんじゃねぇ!鳥肌がマジで止まんねぇんだよ!

 

「つーか、浅葱達は無事なのか?」

「ああ、彼女達なら"オシアナス・グレイブ"に監禁されているようだよ」

 

またしても俺の質問に答えたのはヴァトラーだった。って待て待て。

 

「はぁ?お前の船にってどう言うことだよ?」

「恥ずかしながら、船を乗っ取られてしまったんだヨ」

 

飄々とした口調で告げるヴァトラー。嘘だ、コイツ思いっきり嘘ついてやがる…!そんな状況になったら船ごとテロリスト共を焼き払う筈だ。

この野郎自分から船を明け渡しやがったな…。つまりガルドシュの奴らを絃神島に連れてきたのはコイツか…。

 

「チッ後で覚えてろこの蛇が。そんじゃ浅葱達は頼むわ、那月ちゃん」

「無駄だとわかっているから止めはせんが。やるからには勝て、負けることは許さんぞ」

「当然!あんな鉄クズに負けるかよ!」

 

今まで優雅に日傘を回していた那月ちゃんが、真剣な表情で激励してくれる。

それに親指を立てて答えると満足そうな顔をする那月ちゃん。

 

「アスタルテこの馬鹿を頼むぞ」

「はい、教官」

 

アスタルテにそう告げると姿を消す那月ちゃん。あんまり馬鹿馬鹿言わないでもらいたい。結構傷つくから。

 

「他人の獲物を横取りするのは、礼儀としてどうかと思うな、勇」

 

そう言ってやんわりと抗議してくるヴァトラー。そこに古城が割って入る。

 

「それを言うなら、他人の縄張りに入り込んで好き勝手してるあんたのほうが礼儀知らずだろ。俺達がくたばるまでは引っ込んでろ、ディミトリエ・ヴァトラー」

「ふゥむ、そう言われると返す言葉もないな」

 

以外にもあっさりと引き下がったヴァトラー。だが、その瞳が真紅に染まっていた。

 

「それでは親愛なる勇と、領主たる君に敬意を表して、手土産をひとつ献上しよう。君達が気兼ねなく戦えるようにね―"摩那期"(マナシ)"優鉢羅"(ウハツラ)!」

 

ヴァトラーが解き放った膨大な魔力が二匹の蛇となって出現する。全長数十メートルにも達する荒ぶる海のような黒蛇と、凍りついた水面のような青い蛇である。

そして二匹の蛇が空中で絡み合い、一体の巨大な龍の姿へと変わる。

 

「二体の眷獣を合体させた!?これがヴァトラーの特殊能力か―!」

「そうだこの能力があるから、奴が真祖に最も近いと言われている」

 

複数の眷獣を合成し、強化する。この世にヴァトラーのみしか持ち得ない力である。

 

「まあこんなものかな」

 

ヴァトラーが満足そうに呟いて、荒れ狂う群青色(ぐんしょう)の龍を降下させた。

そしてサブフロートと、絃神島本体を連結するアンカーを一つ残らず破壊していく。コンクリートブロックと金属ワイヤーで頑強に造られたアンカーが、ガラス細工のように粉々に砕け散り、その爆発の余波でサブフロートは、ゆっくりと洋上を漂い始めた。

そして絃神島の本体にもかなりの被害が出ていた。

 

「うおらぁ!」

「オッフゥ!」

 

ヴァトラーの腹部を蹴りを入れると、奇妙な呻き声と共に吹き飛ぶ。

 

「な、ナニをするんだい勇」

「やかましい!テメェただ暴れたかっただけだろ!そして何をカタカナにするんじゃねぇし、嬉しそうにするな!」

「ふふ、君からご褒美が貰えて嬉しくてネ」

 

だめだコイツ完全にMに目覚めてやがる。どうしてこうなった。

 

「って言うかナラクヴェーラが動きだしたんだけど!?」

 

煌坂の声に振り返ると、周囲の瓦礫や鉄骨を蹴散らして、ナラクヴェーラが地表に這い出してきていた。

全体的に六本の脚を持ち戦車とアリを合わせたような姿をしている。

楕円形の胴体に、半球型の頭部が埋もれるような形でついており、その先端に触覚のような副腕が二本生えている。

装甲は土偶や銅鐸みたいな質感で「私は古代兵器です」的な感じを主張していた。

 

「ふゥむ。ボクの眷獣を脅威と判断して、活性化したようだな。なるほど、やはり自己防衛プログラムだけで動いているのか―」

「って、あいつが動きだしたのは、お前のせいかよ!?」

 

他人事のように呟くヴァトラーを睨んで、古城が絶叫した。

その間にもナラクヴェーラが迫って来る。

 

「暁古城!」

「ああ、くそっ!結局こうなるのかよ!」

 

剣を構えながらの煌坂の叫びに、やけくそ気味に叫びながら走り出す古城。

 

「俺達も行くぜぇアスタルテ!」

「はい、薔薇の指先(ロドダクテユロス)

 

俺は獅子王を抜刀し構え、アスタルテは自身の眷獣を身に纏い古城達の後に続いた。

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