ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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観測者たちの宴
プロローグ


前回のあらすじ

求めている人がいるのサ!

 

結果的に言えばリアと煌坂と魔女らの戦いはあっけなく終わった。

魔女が操る使い魔の触手はリアが降臨させた精霊の力と、煌坂の呪詛によって全て焼き払われたのだ。

その後突入してきたアイランドガードによって魔女二人は逮捕された。

 

「思っていた以上に早かったな」

「ええ、仕掛けさえ解ってしまえば大したことありませんでした」

 

肩透かしだったと言わんばかりに肩を竦めるリア。煌坂も同意見なのか軽く頷いていた。

 

「さてと、後は古城達は上手くいっているかだが…」

 

こちらは一段落したが、肝心の仙都木優麻を止められなければ意味が無い。

 

「俺達も向かった方が、む!?」

 

いいだろうと言おうとしたら監獄結界に異変が起きた。

蜃気楼の様に不安定だった筈の島が完全に姿を現し、燃え上がりながら崩れ落ちようとしていたのだ。

 

「ちょ、ちょっとやばいんじゃないあれ!?まさか雪菜達が失敗したんじゃ…」

「いや、まだ防壁が破られただけだ。あの島はただの幻だ、那月ちゃんさえ無事ならあれくらいどうとでもなる」

 

慌てだした煌坂に説明すると、一先ず落ち着いてくれた。普段勇ましい反面、予想外の出来事に直面するとすぐに取り乱してしまうのが彼女の問題点の様だ。

あの島はあくまで那月ちゃんの夢でできた幻である。なのでいくら壊れても、核である那月ちゃんさえ守りきれれば俺達の勝ちなのだ。

 

「俺と煌坂が行くからリアはそこのホモをってああああああ!!いねぇ!?」

「い、いつの間に…」

 

リアに見張っていてもらおうと、さっきまでホモラーがくたばっていた方を見るが、既に跡形もなくいなくなっていた。

リアと煌坂も周囲を探すも、完全に気配を消されており追跡するのは困難だった。

 

「おのれ!俺達が監獄結界に気を取られている間に蘇生して逃げやがったな!」

「どうすんの勇。アルデアル公を放置しておくのは危険じゃない?」

 

煌坂の言う通り、あのヤローを放っておくのは大変危険極まりない。となると俺達が取るべき行動は――

 

「…俺とリアがあのホモを追いかける。煌坂は古城と姫柊の方へ向かってくれ」

「分かりました」

「雪菜あああ!今行くわよおおお!ついでに暁古城も!」

 

姫柊と古城が余程心配なのか猛スピードで出口へと向かっていく煌坂さん。ついでと言いながらも、同じくらいに古城の心配をしているだろうに。

 

「素直じゃないですねぇ」

「そうだなー」

 

同じことを考えていたリアと微笑みながら、その後を追いかけるのだった。

 

 

 

 

絃神島――人工島の北端の岸壁。眩く降り注ぐ陽光の中に男は立っていた。

金髪碧眼の美しい青年貴族。ディミトリエ・ヴァトラーだ。ラ・フォリアから受けた傷は最初からなかったかの様に塞がっていた。

対魔族弾を頭部に受ければ吸血鬼であろうとも回復には時間を要するが“旧き世代”でも飛び抜けた力を持つヴァトラーにはかすり傷程度でしかないのだ。

彼の視線の先にあるのは、壊れかけの聖堂。真の監獄結界を守護する最後の城塞である。

彼がこの場に来た時には、第四真祖の身体を奪った仙都木優麻が、獅子王機関の剣巫と暁古城に敗れていた所であった。

そして監獄結界の本体(・・・・・・・)が、今も通常空間に、無防備な姿で残されているということも――

 

「仙都木阿夜の娘も、ここまでか。残念だな」

 

口元に笑みを滲ませたまま、無念さを微塵も感じさせない口調で、ヴァトラーが呟く。どこか子供っぽい仕草で人差し指を伸ばしてリズムを刻む。

 

「とは言え、監獄結界は現出している訳だし、最後の鍵くらいは、自分の手でぶち壊すという選択肢もありかな――」

 

細めた彼の碧眼が、血の様な紅に染まった。全身から立ち上る禍々しい血霧が、やがて巨大な蛇の姿へと変わる。

それはディミトリエ・ヴァトラーが”血”の中に宿す、九体の眷獣の内に一体だ。水圧を操る海蛇の眷獣。あの聖堂内の大気を一瞬で数千気圧まで圧縮することも、逆に真空状態に変えることもできる。

眠り続ける南宮那月を殺し、彼女の夢の中に囚われている魔導犯罪者達を解放する。

ついでに、ヴァトラーの眷獣が、第四真祖に通用するか試してみるのもいい。獅子王機関の剣巫が、その危機を乗り越えられるか、確認してみるのも悪くない。

そんなことを考えていると背後からエンジン音が響いてきた。

現在ヴァトラーがいるのは、絃神島北地区のコンテナヤード――”魔族特区”内の企業が、原材料や資材を輸送船に積み込むための工業湾である。波朧院フェスタ開催期間と言うことで、港の業務は休止しており、誰もいない無人地帯となっていたため辺は完全な静寂に包まれていた。

その静寂を切り裂く様に響くエンジン音は段々を大きくなってきていた。ヴァトラーが振り返ると、一台のバイクが迫って来ており、ヴァトラーの前でドリフトしながら減速を始めると、摩擦熱でタイヤから火花を散らしながら停車する。

ヴァトラーはそのバイクに見覚えがあった。勇の愛車であるトルネイダーである。

 

「ヴァトラァァァァ!!!」

 

勇が吠えながら被っていたヘルメットを脱ぎ、トルネイダーから降りる。その後を追う様に後ろに乗っていたラ・フォリアも降りた。

 

「やあ、勇!追いかけて来てくれたんだね。嬉しいよ!」

 

満面の笑みを浮かべながら両手を広げて迎え入れる様な仕草をするヴァトラー。

対する勇はこめかみに青筋を無数に浮かべており、今にも血が吹き出しそうな程激怒していた。

 

「テメェ。那月ちゃんを殺そうとしただろう!!」

「ああ、最後の鍵くらい自分で開けてみようと思ってね」

「ぶっ殺す!!!」

 

勇が獅子王を抜刀して斬りかかろうとするが、それをヴァトラーは手で制した。

 

「まあ、ボクが手を出すまでもなかったけどネ」

「何?」

 

どう言う意味だ?と言った感じで眉を潜ませる勇に、笑みを浮かべながらその場から退くヴァトラー。すると監獄結界が勇の視界に入る。

勇らのいる位置から監獄結界まではそれなりの距離があるが、勇の超人的な視力であれば十分に視認できる距離である。

そして目に映ったのは、顔のない黒騎士が手にしている剣で貫かれている那月の姿であった。

 

「あ…」

 

その光景を見た瞬間、勇の中で何かが切れた。

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