ストライク・ザ・ブラッド~神代の剣~   作:Mk-Ⅳ

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区切りよく切ったら短くなってしまいました。


第四話

前回のあらすじ

遅かったじゃないか…

 

アイランド・ノース。企業の研究所が立ち並ぶ、絃神島北区の研究所街。島内でももっとも人工島らしさを感じる未来的な街である。

そこにあるスヘルデ製薬会社の研究所前でトルネイダーを停車させ降りると建物の入り口まで歩く俺。

 

「ふーん、幻術か」

 

入り口の扉に手を触れると違和感を感じる。たぶん人を近づけないように細工してあるんだろう。

 

「ま、俺には効かないけどね」

 

神代の人間には肉体に霊力や魔力の影響を軽減する術式が組み込まれているので、この程度の幻覚は受け付けないのだ。

迷うことなく扉を明け、中へ入ると明かりは当然点いてなく真っ暗である。

 

「…こっちかな」

 

暗闇での訓練も受けているので直ぐに慣れると、感に任せ進んで行く。

奥まで進むと、教会の聖堂のような部屋へと出る。ホムンクルスの調整槽である円形状の水槽が規則正しく並べられていた。

 

「これはまぁ。よくやるねぇ」

 

水槽の濁った琥珀色の溶液が満たされており、その中には子犬ほどの大きさの自然界には存在しえない生物が入っていた。

 

「予想通りだねぇ」

 

予想が確信に変わった瞬間、背後に気配を感じ振り再び前を向いた。

 

「やあ、久しぶり」

 

水槽の隙間から現れたのはアスタルテと呼ばれていた少女である。

足調整を終えて水槽から出てきたばかりのようで、身に着けている手術着は濡れており、肌に張り付いて肌か同然である。

だが、彼女の肌から虹色の影が揺らいでおり、倉庫街で遭遇した時より異様さを放っていた。

 

「……警告します(ウォーニング)、ただちにここから退去してください」

 

返ってきたのは警告だった。無防備な姿のまま彼女は俺に逃げろと告げてくる。

 

「この島は、間もなく沈みます。その前に逃げてください。なるべく、遠くへ……」

「連結部の要石から聖人の右腕を抜き取れば、この島は崩壊する。その前に逃げろってことかい?」

「……肯定」

 

僅かに間を空けて頷くアスタルテ。多分何故知っているのかと思ったのかな?

 

「心配しなくていい。俺があの腐れ宣教師をしばいてそれで終わりさ」

「……それならば、何故この前の戦闘で実行しなかったのですか?あのような茶番をしなければ容易く私達を排除できたはずです」

 

真っ直ぐに俺を見据えながら問い掛けてくるアスタルテ。その姿はまるで暗闇の中で必死に手を伸ばしているようだった。

 

「君のような、自分の戦う理由をもたない相手と戦うのが嫌なのさ」

(マスター)の指示に従い戦うのが私の存在意義です」

「そうじゃない。そんなのは他人に与えられたものだ。君の理由じゃない」

 

首を振りながら否定すると、首を僅かに傾げるアスタルテ。さすがに直ぐにはわかってもらえないか。

 

「戦いってのは信念と信念のぶつかり合いだ。それを持たない者とは戦いたくない」

理解不能(インカァンプリィヘェンサァブル)

「ま、今は難しいかな。後は借りを返すためさ」

「……借り?」

「そ、俺を殴った時、手加減してくれたでしょ?」

「!?」

 

アスタルテの目が見開かれる。図星のようだな。あの時容赦なく殴ったように見せかけて、俺を逃がしたかったのだろう。先程の警告もそうだ、無関係な者を巻き込まないようにという彼女の優しさだ。

 

「俺だけじゃない。今まで君が襲ってきた魔族達も、半死だけど急所は外れていたから直に回復するだろうさ」

「……」

 

無言で俺を見据えてくるがその瞳には動揺が伺える。

 

「本来君は方法はどうであれ、だれかを救うために生み出された。それが、相手を傷つけるためだけの存在に変えられてしまったのが嫌なんだろ?」

「……」

 

無言を貫くアスタルテ。それを肯定と受け取り歩み寄る。アスタルテの前まで移動すると右手を差し出す。

どうしたらいいのかわからない、といったように戸惑っているアスタルテ。

 

「来い、お前の居場所はここじゃない」

「…私、は」

 

おずおずと手を伸ばすアスタルテ。互いの手が触れ合おうとする瞬間。

 

「ッ!?」

 

身の危険を感じ後ろへ飛ぶと、俺がいた場所に飛来してきた半月斧が突き刺さる。

 

「困りますね。私の道具に余計なことを吹き込むのは、アルディギアの英雄よ」

「オイスターソース!」

「オイスタッハです」

 

暗闇から現れたのは、装甲強化服を纏ったオイスターソースだった。

 

「邪魔すんなよ。今、彼女と話してるんだからよ」

「人形と会話とは、酔狂なご趣味をしていらっしゃる」

 

嘲笑うような目をするオイスターソース。腹しか立たねぇ…。

 

「うるせぇ、これ以上その子に罪を重ねさせないために、テメェはここでしばき倒す!」

 

肩に下げていた竹刀袋から日本刀を取り出し抜刀する。

 

「いいでしょう。こちらも準備が整ったどころです。あなたにはここで消えて頂きましょうアスタルテ!」

「……」

 

オイスターソースがアスタルテに命令するも俯いたまま動かない。

 

「たぶらかされるとは…。ならばこうするまで!」

「っ!?あっぐぅ!!あああアアァァァァァァッ!!」

 

オイスターソースが何やら術式を唱えると、膝を着き両手で頭を抱え苦しみだすアスタルテ。

 

「アスタルテ!!」

「たす…け…て…」

 

助けを求めるように俺へと手を伸ばすアスタルテだが、彼女の宿す眷獣が陽炎のように現れ飲み込まれてしまう。

顔が無く体長六、七メートルのゴーレム型で腕が四本となっている。

 

「貴様、彼女の自意識を封じたのか!しかも眷獣を無理矢理改造したな!」

「ええ、あなたに対抗するためにね」

「そんなことをしたらあの子の体がもたないぞ!」

「問題ありません。私の目的を達成するまでは保ちますので」

 

悪びれる様子もなく、まるで使い捨ての道具であるかのようにアスタルテを見るオイスターソースいや…。

 

「オイスタッハァァァァァァアアア!!!」

 

もはや奴にかける情けは無くなった。オイスタッハ目掛けて駆け出すが、それを阻むようにアスタルテが拳を振り下ろしてくる。

それを後ろに飛んで避けるも、振り下ろされた地面が粉々に砕け散りクレーターを作りだす。

 

「やめろアスタルテ!自分を見失うな!」

「……」

 

なんの感情も宿さなくなった目で、次々と拳を振るって来るアスタルテ。避けられているが次第に壁際へと追い詰められてるな。

 

「私もお忘れなきよう」

「ぐっ!?」

 

アスタルテの放った拳を横っ飛びで回避する。

そこにオイスタッハが戦斧を振り下ろしてきたので、素早く体勢を立て直し日本刀で防ぐが重い!?

 

「てめぇ!呪的身体強化(フィジカルエンチャント)か!そんなに強化したら死ぬぞ!?」

 

明らかに人間が耐えられない程の強化率、正気じゃねえな!

 

「結構!我が悲願成就のためならいかなる犠牲でも払いましょう!」

 

そう言いながら戦斧を押し込んでくるオイスタッハ。

 

「死んだ人間のために死ぬ気か、馬鹿野朗!!」

「我が目的に気づいていましたか!ならば何故邪魔をするのです!神に仕えるべき身分でありながら!」

「生まれなんて関係ねぇ!どう生きるかは自分で決めるもんだろうがぁ!」

 

戦斧を弾き返し、オイスタッハに切り返そうとするが、横からきた衝撃に弾き飛ばされ地面を跳ねながら転がる俺。

 

「ぐっ、アス…タルテ…」

 

視線の先には腕を振りぬいた体勢のアスタルテがいた。どうやら彼女に殴り飛ばされたようだ。

 

「残念です。あなたなら理解して頂けるかもと思っていたのですが…。アスタルテ止めを」

命令受諾(アクセプト)…」

 

落胆の篭った声でアスタルテに命令するオイスタッハ。

抑制が全く感じられない声で答えると、こちらへとゆっくりと歩み寄って来るアスタルテ。

起き上がろうとするが、思っていた以上にダメージが大きくて体が動かねぇ…!

 

「さっきの感覚…まさか!?」

「気がつきましたか?アスタルテの眷獣に神格振動波駆動術式(DOE)を組み込んだのですよ!」

神格振動波駆動術式(DOE)を、だと!?」

 

得意げに自慢するオイスタッハ。だが、あれは獅子王機関のみしか実用化していないはずだぞ!?

 

「独自に研究するのは困難でしたが、先日運よくオリジナルのデータを得ることができました!これぞ神の導き!」

 

チイッ!姫柊がこいつを止めようと戦ったことが裏目に出ちまったか…!

 

「いかに天部によって強化されている一族のあなたでも、術式である以上今のアスタルテの攻撃を防ぐことは不可能なのですよ!」

 

狂ったように笑い出すオイスタッハ。

そしてアスタルテが俺の元へ辿り着くと、鷲掴みにして壁へと投げつける。

 

「が、はぁ…!」

 

轟音と共に壁へとめり込む俺に追撃の拳が振るわれる。四本の腕が交互に振るわれさらに壁にめり込んでいく俺。

そして止めと言わんばかりに振るわれた拳によって、壁が崩壊し瓦礫へと飲み込まれる俺であった。

 

「ハハハッハハハハ!これで最大の障害は排除しました!残る不完全な第四真祖と未熟な剣巫など恐るるに足らず!我が悲願達成したも同然です!」

 

聖堂のような部屋にオイスタッハの狂ったような笑い声が響き渡る。そんな中崩壊した壁を見つめるアスタルテの目から一筋の涙が流れていた。




オリジナル感を出そうとしたら、オイスタッハさんが完全に狂人になってしまったでござる。
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