Roselia -解散-   作:Ryu/RyuTu部

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第1話「大好きなRoseliaの、私たちのその先」

私は湊友希那。女子高生ガールズバンドの「Roselia」のボーカリスト、と共に、2週間後には卒業を控える高校3年生。日々練習を重ねて頂点を目指してきた。けれど、私は「その先」が見えていなかった。いや、あえて見ようとはしていなかったのかもしれない。

 

「留学...?」

「はい。高校を卒業したら、海外の大学に留学することになりました」

 

紗夜は、高校を卒業する1ヶ月前に唐突にそのことを伝えた。この場には、私とリサ、それと燐子が招かれた。

 

「ちょっと紗夜、それ本当なの?」

 

リサが驚きを隠せないという表情で紗夜に問いかける。

 

「ええ、本当です。私は...既にその資格を得ました。試験にも合格することができましたから」

「あなた...!ちょっと待ちなさい!」

「友希那さん...?」

 

燐子が私の方を向く。

 

「湊さん、あなたが怒る理由も、確かに分かります。私は...もっと早くこの事をRoseliaのメンバーに伝える勇気が...ありませんでした」

「私が怒っているのはそんなことに対してじゃないのよ!?」

「ちょっと、友希那、抑えて」

 

正直、この時の私は怒りに身を任せていた。

 

「リサは少し黙っていなさい!紗夜、人一倍真摯にギターと、Roseliaと向き合ってきたあなたがどうして今更そんな決断を...」

「そんな決断!?私は本気です!!」

「じゃあ何で...」

「Roseliaのことはもちろん大切に思っています!このメンバーで頂点を目指してきたことは全く無駄なことではない!ただ私は、『その先』を考える時期になってしまったんです」

「その先...?」

「初期の私は、バンドに馴れ合いなど必要ない、技術こそが全てだと思っていました。しかし、日が経つにつれ、私は...Roseliaが...」

 

紗夜は、泣き出した。私は今まで紗夜のこんな姿を見たことがなかったから、反論することをやめて素直に話を聞いてみようと思った。

 

「Roseliaが...大好きに...なったんです...!」

「紗夜...なら、どうして」

「どうしても、大好きなものだけを続けていてはダメだ、と私の中で感じるようになったんです...だから私は...もう、Roseliaを脱退したい、そう決心しました」

 

私は、心臓を撃ち抜かれたような気がした。恐らくそれは、涙を流しながら話を聞いている燐子とリサも同じだろう。

 

「脱退...?本気なの...?」

「私が言う『その先』は、私の将来のことです。このバンドは、高校生の内の私の宝物として留めておきたかった...だから、将来のために経験を積むという意味で、卒業したらすぐに日本を離れようと決めました」

「氷川さん!!」

「白金さん...?」

「私たちは...どうなるんですか?ただでさえ、あこちゃんは学年が2つ下だし、私たちが卒業したらどうしようかと悩んでいるところなんです...そんな時に氷川さんが抜けたら...きっと、バンドの存続自体危うくなると思います」

 

燐子のその言葉で、私たちは凍りついた。確かに、信頼している紗夜が抜け、さらに私たちも卒業となればあこの精神状態は揺らぐはず。

 

「...紗夜、私は、紗夜のやりたいことを止める権利はないから、応援するよ」

「リサ...?」

「でも、紗夜は本当にそれでいいの?」

「今井さん...私は本気なのです」

「...そっか、凄いね、紗夜は。強いよ、私なんかよりも...私なんか...この話を聞いて、紗夜に辞めてほしくないとしか考えられなかったよ」

「今井さん...」

「リサ...」

「...皆、私からも一つだけ話があるの」

 

リサの顔が、暗く見えた。

 

「私も、Roseliaを脱退したい」

 

私は、この時の記憶はあまりない。重なる衝撃に、正常な思考ができなくなっていたんだろう。

 

「リサ...嘘よね?」

「今井さん...どうして」

「私は...紗夜と同じ理由かな。Roseliaも、友希那も、紗夜も、燐子も、あこも、ベースも、私は全部大好き。私のこれまでの人生の中で一番輝いていたのが、このRoseliaでの活動なんだ。でも、この先バンドがいつまで続けられるかもわからないし、私が限界を迎える時がくるかもしれない。それに、私も、将来やってみたい職業ってのが見つかったんだ...そんな時、紗夜の話を聞いて、もしかしたらこの先、皆同じ考えになってしまうかもしれない可能性もあるのかな、って思い始めた」

 

リサは、笑顔で話すが、泣いていた。

 

「...どうして...どうしてリサまでそんなこと言うの!?私には理解できないわ!大切な仲間の言うことだし、理解したいとは思うけど、今の状態じゃとても無理よ!」

 

私は、気づくと泣きながらライブハウスを抜け出していた。私が目指す頂点は、もうゴールが近いのかもしれない、そう考えると涙が止まらない。

 

「あれ?友希那さん?」

「あこ...」

 

曇り空の中、あこが前から走ってきた。

 

「今日は練習ないですよね?どうしてライブハウスに...あと、泣いてません!?どうしたんですか!?あこ、話聞きますよ!」

「ありがとう...少し、私に付き合ってくれるかしら」

 

私はあこを連れて、私の家に帰った。

 

「友希那さん、なんでも話してください。Roseliaっていう仲間なんですから!って、こんな言い方、昔だったら怒られちゃいますね...」

「いいのよ、私だってあなたのことは大切な仲間だと思っているもの」

「ゆ、友希那さん...!」

 

笑顔のあこ、泣く私。私はこの先、この辛い現実をこの無垢な笑顔の前に突きつけることになる。いつまでも真実を隠し通していたい。紗夜の気持ちが、少しだけ分かった気がした。けれど...

 

「あこ、今から燐子と話しなさい」

「は、はい?」

「燐子と、話し合うの。私は、とてもそういう状態にないから」

「友希那さん、今日変ですよ?それに、友希那さんが話があるって言ったんじゃないですか...」

「いいから燐子と話しなさい!!」

「ひっ...ごめんなさい...わかりました」

 

あこは、部屋から出て行った。私はこの時、私のことを心底嫌いになった。何の価値もない人間だと感じた。

 

 

「りんりん...急にごめんね。今からうち来れる?」

「あこちゃん...いいよ。私も話したいことがある」

「あっ、ありがとう...!」

 

私は、驚いた。あこちゃんから電話をかけてくるなんて。そして私は言われるがまま、あこちゃんの家に向かった。

友希那さんが出て行った後、氷川さんと今井さんの話を聞いて、私はこのバンドで何かが崩れだしていると感じた。もちろんそれは、友情の亀裂とかそういう類のものではない。でも、この先円滑にバンド活動ができなくなってしまいそうな、そんな不穏な空気を感じた。

 

「あこちゃん、あこちゃんは、Roseliaのこと好き?」

「何言ってんのりんりん!当たり前じゃん!私はカッコよくて楽しいRoseliaが大大大好きだよ!!」

「そっか...そうだよね。安心した」

 

あこちゃんは、変わらずRoseliaを愛していた。まるで、友希那さんのように。

 

「もし、Roseliaがこの先なくなるようなことがあったら...あこちゃんはどうしたい?」

「そんなこと...考えたくないよ」

「そう、だよね...私も、考えたくない。でもね」

「りんりん...?」

 

私は、泣いてしまった。

 

「私は思うの、頂点を目指すバンドにも、いつか終わりが来てしまうのかな、って。私は、それが怖いんだ。だから...」

「りん...りん?」

 

 

「私は、Roseliaを辞めようと思うの」

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