「ということで、めちゃめちゃるんっ♪とくる3年間でした!!以上で卒業生代表答辞を終わりま~す!羽丘女子学園生徒会長の氷川日菜でした~!!」
「日菜先輩...」
「もう!日菜先輩!真面目に答辞読んでくださいよ~!」
「え~~いいじゃんつぐちゃん~~!」
「まあ、最後までいつも通りの日菜さんって感じでしたね...」
「あぁ...儚い答辞だったよ...!」
「あっ、皆卒業式お疲れ~!」
「ちょっとリサ、待ちなさい...」
卒業式も無事に終わり、校庭に出て談話しているつぐみ、日菜、麻弥、薫を見つけたアタシは、彼女たちに向かって走り出す。もちろん、友希那も共に。
「あっ!リサさん!お疲れ様です!」
「麻弥~!お疲れ!」
「お~~全員集合だね~~」
「つぐ~~~!!感動したよ~~!!」
Afterglowのメンバーも合流し、早速ひまりがつぐみに抱きついている。
「おいおい、ひまり泣きすぎだろ!」
「だって~~!!先輩たちがもう卒業しちゃうなんて信じたくないよ~~...」
「それは、まあアタシもそうだけど」
「...湊さん」
「何かしら?美竹さん」
「...あの、卒業、おめでとうございます...」
うわっ...可愛いなぁ蘭は...って、こんなこと本人に聞かれたらどつかれる。
「あら、あなたからそんな言葉が出るなんて、どういう風の吹き回しかしら」
「い、一応ライブとかでお世話になったんで...その...」
「蘭~!素直になりなよ~~」
「ちょっ、リサさん!」
「そうだよ~~蘭はね~本当は湊さんと学校で会えなくなるのすっごく寂しがってるんですよ~~」
「モカ!!怒るよ!?」
「ふふ、私も、少し寂しくなるわね...」
「うっ...うっ...」
「いいね~~!るるるるんっ♪とするよ!!」
ひまりは相変わらず泣き続けてるし、アタシもこういう光景を見るのもこれから少なくなっちゃうのかな...。
「そういえば、湊さん。Roseliaは...」
「あなたには関係のないことよ」
「...そうですか」
おいおい、もう関係を悪くしてどうする...。
「ま、まあまあ!ジブンは、Roseliaの問題は当事者自身で解決すべきだと思ってますよ...?」
「そ、それもそうだよな!」
麻弥と巴が慌てて空気を持ち直す。ドラム組...さすがだね。
...ドラム組、?
「ねえ友希那、あこは...?」
「...あこなら、もう帰ったわよ」
「!?」
「えっ...あこ帰ったんですか!?」
巴が凄く驚いている。無理もないだろう、彼女はあこの姉として彼女を心配しているはずだから。
「えっ...どうして...?」
「リサ、あなた、昨日のことを覚えていないのかしら?」
「あっ...」
「あこは、私に帰るとだけ伝えて去ったわ」
昨日のこと、アタシはその衝撃が大きすぎて記憶から抜け落ちていたのだろう。
昨日のRoseliaでの話し合い。そこで、あこは燐子の元を離れた。Roseliaに加入する前からゲームを通して仲良くしていたあこに、突然言わば絶交のような宣言をされたから、燐子も憔悴しきっていた。アタシが家に帰ってから、燐子からメールが来た。内容は、普段の燐子からは想像できないほど暗くネガティブなものだった。アタシは、正直この状況をどうすればよいか全く分からなかった。
「...あこ、ウチに帰ってからもずっと部屋にこもって出てこなかったんですよ」
「あこちゃんがそこまで落ち込むって、今まであんまりなかったよね...」
「...ねえ、あこ、本当に帰ったのかな?家に...帰ったのかな?」
「...えっ?」
「あっ...あこ!!」
巴は、私の言葉を理解したのだろう。顔が青ざめていた。
「リサさん、湊さん、アタシ、あこを探してきます!!」
「ちょっと巴!!待って!!」
その後ろから、Afterglowのメンバーも続いた。今考えれば、ここでアタシたちも行くべきだったんだけど、怖くて足がすくんでいた。本当に、ダメだなあ、アタシたち。
あこは、本当に家に帰ったのだろうか。あこに限って、まさか、失踪...なんてことをするはずがないと心の中では思っているのだが。そう、思わなければ心が押し潰されそうだった。
それからどのぐらい時間が経っただろうか。空はオレンジ色に染まっていた。いつもより、暗かった。
呆然とするアタシに声をかけ、3年生組は帰っていった。友希那だけは、下を向いてアタシの隣にいた。
「ねえ、友希那」
「何かしら」
「あこ、無事だよね...?」
「宇田川さんからの連絡がないから、まだ分からないわ」
「ちょっと!?どうしてそんなに平然としてられるの!?あこ、どこに行ったか分からないんだよ!?あこに何かあったら...アタシが...燐子が...!!」
「...これを読みなさい、リサ」
友希那はそう言って、スマホの画面を私に見せた。あこからのメールだった。
『友希那さんへ。あこを、Roseliaに入れてくれて、本当にありがとうございました。あこ、とっても、楽しかったです。友希那さんと、紗夜さんと、リサ姉と、りんりんと、いっぱいステージに立って、演奏できて、本当に楽しかったです。でも、もう限界です。りんりんは、あこのことをいつも最優先に考えてくれて、でも、あこは、りんりんに酷いことを言っちゃった。このままこんなRoseliaが続くなら、あこはもうこの場所にいられません。りんりんとも、もう友達でいられません。今まであこが探してきたカッコいいは、このバンドで見つかりました。ほんとうに、ありがとう...いままで、ありがとう、さようなら。あこは、一人で』
メールはそこで途切れていた。一人で...?
「嘘...そんな...!?」
アタシは、大声で泣いた。Roseliaの結末が、こんな暗いものだなんて、信じたくなかった。あこは、変わってしまった。
「...リサ、あこは...」
「いや...信じない...!!信じないから!!あこは、こんなじゃない...」
アタシはいつの間にか正常な判断ができなくなっていた。友希那も、少しばかり涙目になっていた。
「...湊さん!!今井さん!!」
突然、聞きなれた声が聞こえた。
「...あら、紗夜、遅かったじゃない」
「...紗夜、燐子は」
「彼女は...」
「...そう」
どうやら、『向こう』でも同じ状況があったみたいだ。
「...宇田川さんは!?宇田川さんはどこですか!?」
「...卒業式が終わった途端、すぐに帰ったわ」
「そ、そんな...!?」
「あこはもう、元には戻れない...よ」
「元には...って、どういうことですか...!!」
「燐子も、同じ状況じゃないの?」
「えっ...?」
「燐子は、今日どうしていたの」
「...普通にしているように見えましたが」
って、燐子は行動に出すようなタイプじゃない、か。
アタシは、友希那の代わりにあったことを紗夜に話した。メールも見せた。
「こ、こんなこと...宇田川さんが...」
「...Roselia、こんな終わり方だけは、したくなかったなぁ、アタシ」
「...リサ...」
「...もう、状況は良い方向に動かないのかもしれません」
お互いが顔を見つめて、泣きそうな顔のまま、黙っていた。
その時だった。
「ユキナ...!!」
「なっ...なぜあなたが...」
そこには、チュチュがいた。涙を流して、柄にもなく焦っていた。
「Roselia解散は、本当なのかしら」
「...しつこいわね、もう放っておいてくれる?あなたには関係のないことでしょう!」
「放っていられると思ってるわけ!?私は一度はあなたたちの音楽を認めた身なのよ!?そんな簡単に解散してもらっちゃ困るのよ!!」
「...いくらなんでも非常識です、帰ってください」
「嫌!!解散を取り消すまで...帰らないわ!!」
「...ねえ、あなたは自分の音楽を見つけたんじゃないの?それに、Roseliaをぶっ潰すとかいつも言ってるのに...」
「そうです、今更あなたがRoseliaに、私たちに言及することなんて...」
「あるわよ!!私は...あなたたちの音楽が大好きなの!!」
「...えっ...?」
「私がどうして今まで自分の音楽を探していたか分かる...!?私は、あなたたちが自分の音楽を持っていることが悔しかったのよ...!確固たる『Roseliaだけの音楽』があなたたちにはある...!それは、観客を惹きつける力を持っているの!私も、いつの間にかあなたたちに惹かれていた...解散なんて、ありえない!」
「なら、RASがアタシたちの音楽をを受け継いでよ」