殺戮王子の異世界奔走記   作:迷子の鴉

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一話 召喚

 引き千切れた腕

 焼けただれた皮膚

 落ちていく身体

 灰色の空

 真っ赤に染まる視界

 飛んでいく2つの鉄の鳥

 後から続いて落ちてくる骸骨面の竜

 

 

 脳裏に巡るはここまでの記憶。

 

 

 散々抗って行き着いた先がこれか

 

 俺らしいような終わり方だ

 

 

 ウェルドレはどうでもいいが、仲間たちや約束したセエレに少々申し訳ない。

 死に瀕するとどうでも良かったことが懐かしくも感じるのだなと呑気に思う。

 妹と親友の骸が待つあの世界に帰れなくなるのが心苦しくも感じる。心苦しさなど捨てたと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが………

 

 

 

 

 

 

 俺たちの………終わり方、か

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皮肉だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ドラゴン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もの一つ落ちず、潔癖を整えた王子専用の執務室。そこで私はここ最近の軍の予算の管理の報告書に目を通し、訂正箇所に追記を記していた。

 ここ最近の父上の強引な軍費への過剰な金流を抑えるため、少しばかりの細工をしていた。 

 

 私、暗夜王国第一王子マークスはこの事態に頭を抱えられるなら抱えたいと思うが、第一王子たるもの無様な姿を部下たちに見せるわけにはいかない。

 しかし少々前頭に頭痛を感じてきたので眉間のシワをほぐす。

 

 故あってワケアリの新たな臣下を加えたのだがこの臣下。ナンパ癖が酷く毎日が如く苦情が私の耳に届けられてくる。

 最近は白夜の結界付近でのいざこざが多くなっているから、少しでも悩みの種を減らしたいのだが。

 

コンコン

「マークス様失礼します」

「…入れ」

 兵を自室に入れ、報告の内容を聞き、また眉間にしわが寄る。

 

「城下の民から苦情の声が届けられております。ラズワルド様のナンパについてとのことです」

「……わかった(またか……)」

 

 毎日の如く届けられるラズワルドのナンパの被害に頭は煮えきり頭痛がやまない日々を送るようになったことに「アイツを臣下にしたの間違ったんじゃないか」と度々考える。

 

 ただでさえ暗夜は白夜との全面戦争間近の緊張が全土に走り、私も第一王子として軍を率いらなければならない身としてアイツの尻拭いを何時までもするわけにはいかない。

 

 とは言うも具体的な案が思い浮かばず、現状維持ということになっているのが痛ましい。

 ピエリ一人の時のほうがまだマシだったと過去の私が聞けば全力で否定するであろう事を内内(ないない)思い込む。

 

 

 

 

 もし、また変わり者がうちに来たら……。

 

 いや、起こらないことを考えるのは無駄だ。それは非効率だ。無駄な想像を切り捨て、事務処理に打ち込む。

 近いうちに北の城塞に往くことも決めているので出来る限り仕事を減らしておきたい。

 久しぶりにあいつと合うのだ。

 

 今日もマークスは筆を走らせ庶務に勤む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈座標設定完了>

<目的地に移送開始>

《目的地到着まで残り60秒》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭を悩ませているのは第一王子の弟、第二王子『レオン』も例外とは言えなかった。

 理由は2つ。

 一つは独特の言葉づかいで相手を混乱させ、嗜虐趣味を持つ元・盗賊の臣下。

 もう一つは血が騒いだりだの闇がうごめくだの芝居がかった口調でこれまた相手を困惑させる素性の知れない魔術師の臣下。

 

 このろくでもない部下共を引き受け臣下にまでしたのは紛れもない自分だが、せめてそれを外に開け放つのは控えてほしい。欲を言えば黙ってくれ。

 

「レオン様、今度はどのように俺をイイようにしてくれるんですか」

「俺の血が騒ぐ……今宵の闘争は俺の闇が舞い踊る! レオン様次は期待して下さい!」

 

 

 ああうんもう黙ってくれ。いや、コイツらのこれはもう完全に手遅れだった。今更下らない泣き言を愚痴る場合ではなかった。

 

 レオンはこの時、白夜との小競り合いからの期間で疲労が出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、突然のことに対処が遅れ、九死に一生を得る体験をする羽目になり、彼は()()を抱えることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、眼前に光が集る。

 雷閃が舞い、魔法陣が形成されゆく。

 風は吹き荒れ、旋風が舞って陣が高速回転を起こす。

「な、なんだぁ!?」

「こりゃイロめいたもんだ。って言ってる場合じゃないなこれは」

(これは……転送の魔法!? けどこの文字は!) 

 見たことの無い言語で構成された魔法陣に目を奪われるが途端に正気に戻る。

 そして声を飛ばす。

「っ! 下がれ!」「「!」」

 三人、突然のことに呆け目を奪われるもとっさに後に下がる。 

 

 

 そして、魔法陣は吹き飛び辺りに砂風が舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処だここは。

 目を開ければ見知らぬ場所。

 とはいえ、砂埃が酷く前が見通せない。足元の芝生がさっきまでいた空の上でなく地上ということは分かる。

 さっきまで赤く染まっていた視界が開け、目の前の状況に混乱する。一体何がどうなっている。

 しかし混乱も体に刻まれた怪我で消える。火傷に切り傷、打撲。あの未知の攻撃にヤラれた割には死んでいないのが気になるがそれでも重症には変わりなく、疲労困憊で息も上がっている。

 

 息を整えようと深く吸い込む。

 と思ったがのどに激痛が走り、咳と同時に血も吐きだす。あのとき口を開いていたせいで喉まで焼かれていたのだろう。かなり痛い。

 

 

 とにかく治療だ。まずは外傷から塞がねば、これ以上血を失うと本当に危険だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この男。カイム・カールレオン。

 レッドドラゴンと契約し、復讐と憎悪の火に身を焦がす男。

 滅びの運命に抗い続ける男。

 

 今、この混沌の世界。白夜と暗夜がせめぎ合う幻想の世界に降り立った。

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