驚いたのは千切れたはずの腕が何故か繋がっていたことだ。あの時鉄の鳥に落とされた際、火傷に腕の欠損などこの程度で済まない傷を負っていたはず。
だが今の俺の体は火傷と傷だけで、五体満足で立っていられる。ただ傷が酷く出血で死にそうだが。
とにかくまずは治療をせねば。清潔な布さえあれば圧迫して止められるのだが。
砂埃もようやく落ち着いてきたので周りを見渡し始める。
「レオン様!」「無事だよ。体はなんともない」
ゼロの心配は不要と告げる。あの魔法陣は砂埃を派手に撒き散らしたが、剣や魔法が飛んでくることはなかった。マントが汚れるくらいですんで良かった。
砂埃が晴れていき視界が明細になっていく。
「一応警戒してよ……何が出てくるか分からないし」
「当然です」「俺の魔の餌食となれ…」
ガツ、ガツ、ガッ!
「………コイツが?」
それは随分とノロノロと出てきた。男。鎧に武具、杖代わりにからだを支えているような剣。その様子からどこかの兵士だとはわかる。
しかし男の防具は暗夜では見ないもので剣も暗夜、白夜のものより分厚くかなり良い素材で出来ているように見えた。
だがその剣も防具もかなり使い込まれ、無事なところが何処もないくらい傷に覆われ、刃毀れもあり使い込まれ過ぎているような気がした。
男の方を見ればかなり出血しているようで服は赤く染まってもともとの色が分からない。火傷まで負い、もう立っているのがやっとのようだった。
「お前、何処の…!」
息をのみ、一瞬背筋をゾワリと恐怖が駆け抜けた気がした。
王族たる者、常時胸を張っていけ。そういう王族としての誇りをいつも兄さんは僕たちに聞かせていた。偉大なる暗夜王国の象徴として国を守っていくのだと。この血に誇りを持っていた。
だがその誇り、この男から見れば何に見えるのだろう。こちらを見つめて口を三日月形に歪ませ、その青い目を純粋な殺意で満たし、一言では表せないドロドロに溶けこんだ狂気を宿した男にレオンは恐怖した。
臣下の二人も同じようで、「おいおい、マジかよ……」「これ、俺たちかなりやばいんじゃね…」と警戒心むき出しで男に武器を向ける。
「……ッ…!」
ブリュンヒルデを発動し、急ぎこいつを殺す。こんな奴を王城に入れていたら大混乱が起きる。
「…………ゴフッ!!」
ビチャ!ビチャ!
ゴトンッ!
「……死んだ、ですかね」
「かなりの怪我だったからな。まぁまず…」
ゼロが近くに恐る恐る寄り、脈をとる。
「…!生きてます、息もしている」
「はぁこの怪我で生きてる!?マジかよ……!」
オーディンは驚き、いつもの芝居口調が消えている。
「…………念の為、医務室に運ぼう」
「宜しいんで?」
「本音を言えばさっさと不法侵入で牢屋か、過剰でも死刑にすべきと思うよ。けどここ最近の
そう決断してため息をついた。
「どちらにしろ王城内で勝手な殺害は許されない。兄さんか父上の判断を伺おう」
オーディンとゼロに頼み男を運んでもらう。そして男の武器の大剣を運ぼうと手に触れた。
「……(この剣、魔力が付属している。けどこの禍々しい力は…?)」
まるで呪いのようだ。サンダーソードとは全く違う質の魔力だ。
その剣を持ち上げ(かなり重さにちょっと引きずってしまった)、取り敢えず男を医務室へ。剣は念には念を丁度僕の部屋に置いてあった雑貨入れの木箱に牛革を固く巻きつけ保管することにした。
あいつにエリーゼ達が不必要に近づかないよう兄さん達に報告しないと。
そして王城の中庭から自室へとレオンは向かった。
「なぁんだ騒がしいから何かあると思ったのにもう終わったのかよ」
「ちょっと
「うっるさいなぁ、でかい声出して呼ぶなよ。買い物バカ」