名はカムイ。
基本はカイム目線で進行していきます。
白夜の兵士たちとの切り合いを終え、カムイは初めての殺し合いの緊張から離れたことに安堵し、息を深く吐き深呼吸。
「お疲れさま」「良かったわ、無事で」「カムイお姉ちゃんならできるって信じてたよ〜」
彼女にかけられる兄弟たちの歓喜の声。
「お前なら出来ると思っていた。良くやったなカムイ」
第一王子マークスもカムイに近づき、珍しく彼女を賞賛する。
「カムイよ。先の戦い、見事であった」
中庭の玉座から暗夜王国国王ガロンがカムイを称賛する。
「やはりお前は城塞に置くには惜しいものであったな。日々の研鑽がお前をここまで強くしたとは驚いたぞ」
「はい。マークス兄さんやカミラさん、レオンさんにエリーゼさん達がいてくれたからこそ、こうしてお父様とお会いすることが叶いました」
一礼を行い、中庭を後にし兄妹たちのもとへ寄る。
「待てカムイ」
しかし、カムイの背にガロンが呼び掛ける。
「この者どもを生かしておく価値はない。殺せ」
「え?」
言葉が紡がれ催促される。
「で、ですがお父様。彼らはもう戦う意思はありません。殺すなどと…」
「カムイ……貴様は儂の言うことが聞けぬのか」
「父上!」
状況が悪化しかねないことにマークスは慌て、ガロンに止めの声を上げる。
「カムイはまだ城塞から出たばかりであり。意思が分からないところもあるのです!どうかお許しを…」
「マークス……聞けばお前は軍費の管理に口を出しているようだな」
「で、ですが父上!あれ程の出費では民への負担が更に大きく…」
「余計な真似をするなっ!貴様が口を出すことではない!」
激昂したガロンは玉座から立ち上がり、肘掛けを砕く。
「お待ち下さいガロン王様」
そこにガロンの側に控えていた暗夜王国軍師、マクベスが進言する。
「この後、レオン様が捕らえたという兵士の処分の件がございます。これ以上このクラーケンシュタイン城の庭を汚らわしい白夜の血で汚すのはおろか、兵士の試験の相手を減らすのは如何なものかと思われます」
「……ふむ」
暫し考え、ガロンはちょうど戻ってきたレオンに問う。
「レオン。お前が捕らえた兵士は何処だ」
「ここにおります。父上。」
レオンに連れられ一人の男がカムイの目の前へと進み出た。
その男は不思議有り様だった。鋼の剣を持つが防具をを付けず、所々赤く染まった服を纏い、中庭のカムイの横へと付いた。
「貴様が、カイムと言う者か。我がクラーケンシュタイン城に許可なく入り込んだ不届き者め」
ガロンの眉間が深くなり、少しばかりの殺気が漏れ出る。そんな状況でも男、カイムは無表情でガロンと向かい合っていた
「本来であれば貴様は即刻罪に問われ、死罪か身ぐるみを剥ぎ追放罪でも出しているところだが。特例だ。我ら、暗夜王国に益を齎すものとあらば貴様を無罪にしてやる」
「エリーゼこっちへ」
「?どうしたのレオンおにいちゃん?」
「これ以上此処にいても仕方ないからね。先に中に戻ってお茶の用意をしてくれないかな。父上には僕から言っておくから」
「うーん。分かった。エルフィ達と待ってるから早くね!」
「…ああ」
「はいカミラ様ぁ。連れてきましたよ、ったくおいおらさっさと行け!」
現れた子供は引っ張ていた捕虜を乱雑に中庭に放り投げ、カミラのもとへ向かう。
「ぐはっ!」「畜生…」「あれは…リンカ様!」「スズカゼ殿も…」「ご無事であったか…良かった」
「馬鹿な、これ程の兵が捕らわれていたなど…」
スズカゼは驚き兵に駆け寄る。
「大丈夫ですか!」
「わ、我々の事はいい…それよりも」
コツ、コツ、コツ
カイムはスズカゼたち、白夜兵十八人の元へゆっくりと歩き出てくる。
「………」
もはや打つ手なし。先の戦いで体力を消耗し、武器も尽きてる。
何よりあの男から発せられる殺気が尋常では無い。
これまで幾多の戦を乗り越えた。その中で憎しみや怒りで武器を振るってくるものと戦い、それなりに腕を上げてきた。
だがあの男は次元が違う。王族と同じだ。
人間として限界を超えたようなもの。
何より奴は笑っていた。口を歪め、目は優しく、生粋の異常者。誰もがこの男の前では生き残れないと察した。勝てる者がいるとすれば、われらが誇りの第一王子リョウマであるかもと。
「スズカゼ殿」
兵士の一人が駆け寄る。
「生きてください。あの男にはこの場にいる者全員で挑んでも勝てないでしょう。せめてあなた方は生き延びてください」
「リンカ様。あなたは我ら炎の部族の誇りであり、希望なのです。ここで死なれては歴代の族長はおろかお父上様に顔向けできません」
「貴方方のような御方が白夜へお戻り頂ければ、我々の抗いは報われます」
「ふざけるな!馬鹿なことを…」
「お止めください!貴方方のお気遣いはありがたい。ですが…!」
「スズカゼ様……我々はもはやこの傷では満足に戦うことはできません。さらに白夜へ帰るなど以ての外」
「この命せめて‥‥あなた方の逃げ道を空けることはできましょう」
「さっきから聞いてれば馬鹿言ばかり…!あたしのことはいい。早く!」
白夜兵は残る力を振り絞りカイムと向かい合う。
そして一気に走り出した。刃毀れが目立つ刀を構え決意を固める。死を覚悟して。
「白夜は我らと共に在り―‼」
「御二方を守れー!」
「一瞬でいい!奴の足を止めろー‼」
「進め‼進め―‼」
「やめろ!止めてくれー‼」
リンカの制止も効かず、兵士は次々とカイムへと刃を振りに行く。
静止の声を振り上げる二人を回復床まで運ぶ。
「お二方を守れ!少しでも時間を稼げ!」
「お止めください………!私達に構わず早く」
「この方達がいなければ俺たちはもっと早くに死んでいた!」
「今こそ、この恩報いる時!」
「止めろ!止めろー!」
チッ
カイムは舌打ちを鳴らし、目の前の棍棒を振りかざす男を逆に剣を振り下ろして棍棒ごと真っ二つにした。
時が立つのは早いもの。
切り払い、蹴飛ばし、目を抉り、両断し、引き裂き、砕く。
下ろし、払い、切り上げ、振り下ろして吹き飛ばす。
次々襲い掛かる白夜の兵はカイムの前に骸となり、血を流し池を作り始める。
赤い池はばちゃばちゃと音立て面積を広げ、
目は転げ落ち、叫びは笑いで消えていった。
「オラオラオラオラ!!」
「ゴバッ」「ゴルゥペッ」「ペェェェェ!」「痛い、痛いぃ」「泣き言言うな!守りきれ!」「ぐぽおおぉ」
「ハハッ‼スッゲッ、やるじゃんアイツ!あ、おいそこだ!もっとやっちまえオラ!」
「……アンタほんっと狂ってる」
「…同感」
「放してください兄さん!」
「やめろカムイ‼お前ではあの男には勝てない!」
「ですがこれ以上続かせれば‼」
「今は父上もいる。迂闊な真似をすれば死だけでは済まされない…。堪えろ。堪えてくれ…‼」
「ツゥ……‼‼」
十分後
数分も経たずに全ての兵士は肉塊となり、血の海の岩礁として歪なオブジェが作りあがった。
目は浮き臓物がビチャビチャ垂れ、手は上に上がって頭が転がる。
「ッ見事だ。よくぞここまでの数を相手に」
「こいつらは既に手負いだった。振り回していれば勝てる」
マクベスの上ずった声が耳障りのようでカイムは顔を顰める。
全くもって歯応えのない敵ばかりだった。手負いのせいか満足に武器を振れない者共。そのせいでまだ足りなく感じる。こんなものでは満足できない。
どこかに戦場でもないだろうかと物騒な考えがよぎる。
剣に付着した血を乱雑に振り払い中庭を後にする。
「お前、お前、オマエェェェ‼‼」
リンカは涙で頬を濡らし、カイムと向き合う。
「よくも、よくもあたしの一族を殺したなぁ!」
殺されたこともある。しかしそれ以上に目の前の男は同胞たちの誇りを汚した。あんな惨たらしく死ぬことは無かった。原型を留めずに打ち捨てられた同胞たちはどれも苦痛に歪んでいた。炎の部族としての誇りなどどこにもなかった。
「………だから何だ」
だがカイムには関係のないことであった。向かってきたから斬っただけ。弱いのが悪かった。
「!!……、お前ぇぇ!」
「いけません!リンカさん!!」
激昂したリンカは少しばかり回復した身体に鞭を打ち、カイムに一撃を食らわせようと飛びかかる。
悪くは、ない。この力ならかなりの良い相手になったであろう。
だが無意味だ。
当てなければ意味がない。
惜しいがここで殺そう。
カイムはリンカの着地点を狙って突きの構えをとり駆けだす。
そして一気に突く。
だが剣がリンカに当たることは無かった。
評価お願いします。
次回は
ガンズ木っ端みじん