殺戮王子の異世界奔走記   作:迷子の鴉

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 ディト。
 はいはい。
 付いてきなさい。
 はぁ?なんで?
 カミラ様がお呼びよ。
 ・・・ちっ。
 舌打ちしない。


六話 道中

「それでは兄さん、行ってまいります」

「ああ、……気をつけていってこい」

 後日、カムイはガロン王の命により無限峡谷の砦の調査を命じられ、ジョーカー、ギュンターなどの臣下を連れて調査に赴くことになった。

 

「…………」

「…………」

 その傍らに丸禿げの男とフッサフサのカイムが立っていた。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、気になるね兄さん」

「ああ、何故父上はいきなりこの任務を……

 丸禿の男。ガンズは危険な犯罪者として収監されていた男。

 そしてカイム。見ず知らずの男をいきなり王女の護衛につけるなど、危険性しかない。

 父は王女の身に何かあっても問題ないと考えているのか? 

 仮にも自分の娘として扱うあの子を? 

 

 

(私ではもう父上の考えを理解することが出来ないかもしれない。だが……)

 

 まだ信じていたい。父が、戻ってきて来てくれることを。昔のように笑ってくれることを。

 

 こんな願いを抱く私は王子として正しくはないだろう。

 

 

 だが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無限峡谷付近

 

「だいぶ歩きましたね」

「ここで一度休憩を挟みましょう」

 従者の老騎士ギュンターの提案により一同は休息を取る事に決めた。

 カイムはカムイ達から距離をとり枯れ木に寄り添い腰を下ろし、ガンズはカイムの近くに座り込み乾パンに齧り始めた。

 

「……」

「カムイ様、やはり気になりますかな」

 カイムを見据えるカムイにギュンターが声をかける。

 

「あれほどの力を見せた方とはいえ、平時であれだけ落ち着けているなんて……」

「私もあの者の戦いを隅から見させてもらいましたが……あの男はかなりの手練です。幾度とない死線をくぐり抜けた猛者のような覇気を見せています」

 

 歴史に刻まれる激戦を潜り抜けたギュンターをもってしてこの感想を口から出させるのだからかなりの手練れなのだろう。

 カムイは改めてカイムを見る。

 

 歳は二十代。洗濯したのか以前より少し血の赤みが落ちた青い服。その上からも分かる筋肉質な体。

 

 男性ともあり華奢な自分とでは力の差がありすぎる。

 今のままでは決して彼に勝てる訳が無いだろう。

 だが、

(戦意が消えた相手にあそこまでのことをするなんて……)

 殺された彼らは敵国の兵士といえ同じ人間だった。

 そんな彼らの最後のむごたらしい死体を思い出し、少々気が滅入る。

 決して油断してはならない。兄たちからもそう釘を刺された。

 

 

 

 

 

 

 

(ですが今のあの方からは、あの時の狂気が感じられません。‥‥何かに疲れきったような……?)

 

 出がらしの茶葉みたいだと頓珍漢な考えが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(成り行きとはいえずいぶん面倒なことになったな)

 枯れ木に寄り添い遠くから焚き火を見つめながら物思いにふける。

 こんな素性の知れない俺を簡単に王女の護衛として使うとはこの国の王は何を考えているのか。

 娘の命が心配でないのか? 

(まぁ宿なしで放り出されるよりいいが)

 ここに来た時からあまり良い雰囲気を感じない。ミッドガルドより薄れてはいるが、そこら中に死の空気が漂う。

 挙句何故だか()()()()()湿()()()が体中に張り付いて、口に出さなかったが気が気でなかった。

 

(さて…)

 カイムはガンズを見据え目を細める。

 

 

 

(この任務。あの女がどれだけ使えるかによるな)

 

 せいぜい楽しめる相手がいればいいが。

 少しの間目を閉じ瞑想を始めた。

 

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