天災と最強と変態   作:嫁にするなら千冬、愛人にするなら束

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二話

 

「つーわけで、行ってくる」

 

「えー……」

 

 束は唇を尖らせてぶーたれると、俺にすり寄ってきた。

 

「心配だよ、あそこは女子校なんだから、下手な事したら即タイーホだよ? 分かってるの?」

 

 そう言っていつもの白衣を脱ぎ捨てると全裸になり、抱きついてくる。むにゅりと柔らかな乳房が押し付けられて、さわりさわりと股間を撫でられる。

 

「まーくんが我慢出来るとは、到底思えないなぁ……♡」

 

「束、こんな言葉を知っているか?」

 

 「んにゅ?」と首をかしげる束に、俺は優しく囁いた。

 

「バレなきゃセーフ、なんだよ」

 

「お、おう、せやな……?」

 

 若干困惑気味の彼女の頬に軽く口付けすると、手を振って離れる。

 石鹸の香りと女性らしい良い匂いがした。

 

「もー、相変わらずちーちゃんには甘いんだからー……」

 

「いやいや、アイツの事女扱い出来るのなんて俺くらいなんだから、甘やかすに決まってるだろ」

 

「えー、じゃあ束さんはー……?」

 

「ここ数年毎日甘やかしただろうが。じゃ、行ってきます」

 

「ぶー……行ってらっしゃーい……」

 

 ふくれっ面の彼女に苦笑しながら、俺は歩き出した。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

 何年振りかの航空機に乗り、これまた何年振りかの日本に降り立った俺は、息つく暇もなくIS学園なるものに向かった。

 

「ここか」

 

 電車だのモノレールだの。何度か乗り換えるとついに目的地にたどり着いた。

 広い敷地、というより島全体が敷地か。頭の悪い立地に苦笑した後、俺は青空の下、静かに学園へと歩き出した。

 春先の心地よい気温。太陽の下をどこぞのテーマパーク並みに歩くと、すぐに大きな校舎が見えた。

 白い建造物。ゴテゴテしたマシンめいた外装がたっぷりの、近未来ハイスクールだ。

 最新鋭の設備は外観からして即座に理解できた。束の近くにいると感覚が麻痺するが、ここもやはり文明の最前線なのだろう。

 IS学園。なんとも面倒くさいところに来てしまった。

 まぁ千冬の頼みだし、仕方ない。

 そんな事を考えながら歩いていると、校舎にほど近い場所で一人の女性が近寄ってきた。

 ばるんばるんと、やけに大きな膨らみが揺れていた。

 

「え、えっと、太刀川マキさんですか……?」

 

「あ、はい」

 

 頷くと、ホッとしたように巨乳ちゃんが笑った。

 そして直ぐにその表情を曇らせた。

 

「本当は織斑先生がお迎えに来る予定だったんですけど、突然予定が入ってですね……」

 

「いいおっぱいですね」

 

「あ、はい、そう言って頂けるとこちらとしても助かります。何でもお知り合いだそうで、織斑先生も自分で誘ったからには案内くらいしてやろう、なんて言ってま、し──」

 

 自信なさげに俯き、まくし立てるように言葉を連ねる巨乳ちゃん。その途中、突然体にエラーでも生じたように硬直し、動作を停止させた。

 

「……え?」

 

 そこで彼女は初めて俺の顔を見た。初めて目があった。

 童顔で、可愛らしい顔立ちであった。胸に育った大きな果実はその顔立ちとはとても釣り合っておらず、ともするとアンバランスな印象を受ける。

 ああ、この分だと俺の賛辞の言葉は聞き取れていなかったのかもしれない。ならばこそ、今一度声に出して言おう。

 

「いい、おっぱいで──」

 

 ──すね。

 

「早速くたばれ阿呆が……!!」

 

 俺の言葉は、言い終わる前に霧散した。

 陸上選手みたいなフォームで全力疾走してきた千冬は、勢いそのままドロップキックをかましてきたからだ。

 当然、プロの武道家でもない俺にその人外の一撃は回避できる筈もなく、ましてや防御すら叶わなかった。

 

「も、ぐほぉっ!?」

 

 パァン、と自身の身体が音速の壁を超えた証の衝撃波を耳にしながら、俺は空転する車輪のごとくその場で三回転を決めた。

 くるりくるりと景色が回転し、狙いすましたかのように足から着地してしまった時には、俺の頭から煩悩は吹き飛んでいた。

 

「全く、心配だから急いで来てみれば……まぁいい。ほら言うことがあるだろう?」

 

「ハジメマシテ、タチカワマキデス……」

 

「は、……え……はっ……!?」

 

 全く脳の処理が追いつかない巨乳ちゃんを横目に、千冬は俺の肩を抱くとゆっくりと歩き出した。

 

「山田先生、後のことは私に任せてもらおう。業務に戻りたまえ」

 

「え、いや、でも……え、目とか耳とかから赤いなんか出てますけど……?」

 

「私に会えて興奮しているのだろう。嬉し汁というやつだな」

 

「ウレシイ……オシルデチャウ……」

 

 「本人もこう言ってるぞ」と高笑いしながら千冬はしきりに俺の腹筋に肘鉄を叩き込んでいた。何か人間として大切なモノが口から出そうだったが、千冬がなんとか誤魔化そうとしている以上逆らえるはずもなく俺は操り人形と化した。

 

「キョニュウチャン、マタネ……グホッ……!」

 

「──彼女の名前は山田真耶だ。さ、言ってみろ」

 

「ヤマダサン、マタネ……」

 

「は、はい……」

 

 ドン引きしている巨乳ちゃん──もとい、山田ちゃんを尻目に、俺たちはゆっくりと校舎の方へ歩き出した。

 

 束、すまない。俺はもうすぐ死ぬだろう。許してくれ。

 だが、俺を殺した千冬を恨まないでほしい。俺が乳を愛するのが当然のように、千冬もまた俺を逮捕させないためにあらん限りの暴虐を尽くすのが当然なのだろうから。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

「先に言っておく。この学校の敷地内では誰の乳も揉ませない」

 

 空き教室に素早く連れ込まれた俺は、即座に死刑宣告を下された。

 

「俺に死ねと……?」

 

 戦慄の面持ちで彼女を見つめると、彼女もまた沈痛な面持ちで首を振った。

 馬鹿な……こいつ、殺す気か。

 

「マキ。分かってくれ、ここは学び舎なのだ。貴様の品定め品評会ではない」

 

「……」

 

「だから、むやみやたらにセクハラまがいの発言をしたり、体に触れるなどといった行為を、私は見過ごせない」

 

 彼女の言い分はもっともだ。女子高生にお触り、エッチダメ、絶対。

 しかしそんな言葉で止まるような男なら、俺は俺でない。そんなもの、この太刀川マキ様ではない。

 

「……千冬」

 

 とはいえ相手はあの世界最強の女。約束を違えてしまえばデッドエンドは目に見えている。

 

 だから、俺は黙って懐からスマホを取り出した。

 

『もひもひ? どしたのー?』

 

 こうするしかなかった。

 

「束、帰る。俺、おうち、帰る。おっぱい、足りない」

 

 数秒の沈黙の後、電話越しにニヤニヤと微笑むような雰囲気が伝わってきた。

 

『んもー、束さんのおっぱいが恋しくなっちゃったのかなー?♡ しょうがない甘えんぼさんなんだからぁ……んふふ、早くママのところに帰っておいで♡♡』

 

「話を最後まで聞け」

 

 千冬はハイヒールのつま先を異次元の速度で振り抜き、俺の手からスマホを蹴り飛ばした。

 あまりの速度に、俺の頬からつー、と血が垂れる。

 今日はやけに暴力的だ。俺じゃなったから五回は死んでるぞ。

 

「……だが、お前ばかりに我慢させては不公平だろう。だから代わりに私で我慢してほしい」

 

 千冬は真剣な眼差しで俺を見つめた。

 ちょっぴりほっぺが赤いのは、自分がどれほど恥ずかしい言葉を言っているのか理解しているからに違いない。

 

『ひゅーひゅー! こいつぁ熱い展開になってきたぜぇ──』

 

「黙れ!」

 

 吹き飛んだスマホ目掛けて千冬の拳圧が飛んだ。

 メキリと音を立てて沈黙する俺のスマホ。

 俺はどう言葉を返していいのかわからず、とりあえず目の前のおっぱいに触れた。

 

「んっ……」

 

 スーツの上に深い皺を作るその巨乳は、布地と下着を挟んでもなお母性的な弾力を感じ取れた。

 濃密で、悩ましい、柔らかな感触。

 俺は遠慮なく彼女のその巨乳を揉み揉みとした。

 

「お前が言ってるのは、つまりこういう事だぞ……?」

 

「ん……ぁ、ああ、分かっている……ぅ……♡」

 

 どうせ耐えきれずにパンチの一つでも飛んでくるかと思ったが、千冬は下唇を噛んで我慢し続けた。

 彼女は俺の特性を知ってなお、この条件を飲めと言っているだ。

 俺と束と、そして千冬。この三人にしか理解できない、その特性を知った上で、彼女はそれを受け入れていた。

 

「……分かった、言う通りにしよう」

 

 ならばこうするしかない。

 俺は降参だと意思表示し、両手を乳から遠ざけて頭の上に動かした。

 

「あっ……♡♡」

 

 ちょっぴり名残惜しそうに吐息を漏らす千冬。

 潤んだ瞳は、物欲しげに俺を見つめていた。

 

「マキ──」

 

 

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